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38話目 作戦中に騙されたの 上

まだ、大隊本部と第3中隊は集合場所に到着していなかったが、俺たちお淑やかな大男さんチームは800mほど先にあったアイスフィールドの跡地にゆっくりと、周りを警戒しながら移動することにした。


移動に当たっては防御担当の二人には同じ防御魔法を上掛けした。

俺に対しては、弩S腐女帝様の魔力残量を考慮して、上掛けは見送られることになった。

敵が来たらアイスニードルで足止め、その間にアイスアローかアイスランスを残った魔道具に転写してくれるそうだ。


相変わらず原野は歩き難く、また、敵の急襲を警戒しての移動の為、俺たちが目的地に到達するまで30分も要してしまった。

おばちゃんに依ると、俺たちが目的地に到着するちょっと前に大隊本部と第3中隊も集合場所に到着したらしい。

遠目になってしまうが、俺たちのいる場所も含めて周囲の警戒をしてくれるらしい。


アイスフィールドのあったと思われる淵に立って、その先を見てみるとここまで歩いて来た原野と何ら変わらなかった。

ひざ丈ぐらいまでの草で覆われ、まばらにあまり背の高くない木と岩がその原野の中にあった。

見通しは悪くないな。


先頭を歩いていたおばちゃんが立ち止まって、こちらを向いて口を開いた。


「到着ね。

周囲には特に危険な兆候がないので調査を開始しましょうか。」

「ジャンカちゃん、どうやって調査しようか。

皆が横一列に並んで見落としがないように進もうか。

それを数往復すればアイスフィールドがあった場所の全てを見て回れるし。

どこかに魔族の氷柱があったのは間違いないんだから、幾ら謎の空間転移魔法で持ち去ったとしても痕跡を何にも残さずっていうのはないと思うの。」


おばちゃんは弩S腐女帝様の言葉に直ぐに頷くことはなく、何か考えているような、言われた言葉に引っかかりがあるような表情を見せた。


「おばちゃん、どうした。

乾パンをかじりながらの移動で横っ腹でも痛くなったか。」


そう、既に乾パンとビーフジャーキーを完食した俺を除くここに居るお淑やかな大男さんチームメンバーは、結局、集合場所で昼食を取ることが出来なかったので、ここに来るまでに乾パンをかじりながら、水筒の水を飲みつつ、周りを警戒し、足元にも気を使ってここまで移動してきたのだった。

移動の時に普段は何かと念話で俺に突っ込んで来るおばちゃんも静かだったのでちょっと心配になっていたのだ。


"リュウ君は私のことをいつも考えてくれているのね。

ありがとう。

お礼は今晩に、でへへへへへへ。

遠慮なんてするのは許さないんだから。"


いや、お礼なんていらないから。

おばちゃんがババァになって、ボケたんじゃないかと心配になっただけだから。

まだ、介護保険に入ってないでしょ。


"その時はリュウ君に一生介護してもらうから。

駄菓子屋の奥の自宅でね。

だから心配しなくても良いわよ。"


あぁっ、何だ、それについてはだな。

えっとぉ、腹痛じゃなければどうしたんだ、そんな難しい顔をして。


「ここから先って、1時間ぐらい前はリュウ君の転写アイスフィールドで-80℃で凍っていたのよね。

それもウォターニードルで水を撒いた状態にした後にすぐ凍結したのよね。」


そう言った後におばちゃんは顔を少し強張らせながら前方の原野を指差した。

それを聞いた凶暴幼女がお淑やかな大男さんの背中から下りてきて、おばちゃんの隣に並んだ。


「さっきまで濡れてて、しかもガチガチに凍っていたようには見えねぇな。

ここまでとこの先とで何ら違いがねぇ。

アイスフィールドなんて存在していなかったように見えんぜ。」


凶暴幼女の言葉に弩S腐女帝様のも何か納得したようにうなずいた。


「私も何か変な感じはしていたのよね。

ジェンカちゃんに言われて、その違和感がなんだかわかったわよ。

そう、強力なアイスフィールドが消えるのを待っていたのに、そんなものは初めからなかったような光景が目の前に広がっているのに引っかかっていたのね。」


「エリカさん、じゃ、この目の前の光景が間違っているってのか。」

「弩阿呆、逆も考えられるぜ。」

「逆? 」


凶暴な幼女、幼稚園児の言うことはお兄さんには今一理解できないぞ。

そんなことを思ったら、おばちゃんが俺の袖を引っ張ってきた。


「ボルバーナちゃんはアイスフィールドと凍った魔族が見えていたのが、実は本当じゃなくて、その様に見せられていたと言いたいんじゃないの。」

「ジェンカちゃんの言う通りだぜ。

わかったか、弩阿呆。」


凶暴幼女は俺の転写アイスフィールドが発動していなかったというのか。


「ボルバーナちゃん、少なくてもアイスフィールドは発動したと思うわよ。

弩阿呆君が発動した転写アイスフィールドを妨害するような対抗魔法を使われたような形跡は全くなかったもの。それは確か。

まぁ、魔族がアイスフィールドの範囲に居たというのが幻影との可能性は否定できないけど。」

「と言うことは、アイスフィールドが発生したのに周りと何ら変化がないとのは、この目の前の原野の光景は幻影と言うことか。

さっきの集合場所で監視していたアイスフィールドは本物の景色で、アイスフィールドが消えてからは幻影を見せ続けられていたと言うことになるな。」

「そうすると、この先にはまだアイスフィールドが展開したままなのか。

う~ん、じゃぁ、目の前の光景が幻影かどうか確かめてみるか。」


「リュウ君、それが良いわね。

地面に転がっているこぶし大の石をこの先に投げてみてくれるな。

目の前の光景が幻影であるなら、その投げた石が消えるはずだわ。」


俺はおばちゃんに言われて、地面に落ちている大きな石を両手で拾い上げた。

そして、地面とできるだけ水平に、できるだけ遠くに飛ばすように下手で投げた。

俺の投げた石は小さな放物線を描いて飛んで行った。

飛んで行ったのだが、10m先で突然、空中に吸い込まれるように地面から1mぐらいのところで消えたのだ。


「やっぱり。そうかぁ。

エリカちゃん、風属性魔法で同じように石をできるだけ水平に飛ばしてくれるかな。」

「良いけど、こぶし大の石を飛ばすとなると暴風・レベル3は必要ね。

私の暴風はレベル2だから、う~ん。

弩阿呆君、転写用の魔道具余ってる?

あっ、緊急時に攻撃魔法を転写できるように一つは残しておいて。

二つ余ってない? 」

「まだ、両足のナイフが2本づつ未転写のままだよ。」

「どれか一つを手に持って。

それに暴風・レベル2を転写するから。

転写暴風魔法の発動時にレベル3にして石を飛ばしてよ。」


俺は弩S腐女帝様の言葉に従い素直に左足のブーツに何本か差してある魔道具のナイフを取り出した。


「ちょっと危ないじゃない。

刃先を自分に向けて魔法を転写してもらうのが肉壁ちゃんのエチケットでしょ。

転写してもらった魔法は大事に使います。

そうでなかったら、これで私をどついてくれても構いませんってね。」


えぇぇっ、弩S様にそんなことしたらニコッと微笑んだままでいきなりグサッとそのナイフを突き立てられそうなんですけど。


「なんか文句あんの、弩阿呆君。」


しがない肉壁ちゃんが魔法術士様様に逆らうなんてとんでもない。

俺は黙って、弩S腐女帝様の前にひざまずいて、恭しくナイフの刃先を自分向けて両手でそれを頭の上まで掲げた。


「もう、そこまでしろって言ってないけど。

まぁ、弩阿呆君にそんな機敏な事を期待するのが間違っているわね。

はい、暴風・レベル2を転写したわよ。

後はレベルを3にして発動して。」


俺は立ち上がり、そして転写魔法を発動した。


ここまでの成果

魔力回復: 22%

次にスキルを発動するまでのクールタイム: 23時間51分

(弩Sが発動して持ったナイフを突き立てられなくて良かったよぉ。

ほっとして、スキルUP。)

(弩Sに嬲られるのが好みなの、リュウ君は。じゃぁ、今晩は鞭の他にろうそくが必要ね。それと高笑いの練習もしないとね(悩むおばちゃん)

(どうしてそうなるんだ。)


活動報告に次回のタイトルを記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


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