36話目 作戦中にエンは何やってんだ
アイスフィールドに隔離した魔族が消えただとう。
どこに行ったんだ。
おばちゃんが隠したのか。
"なんで私がそんなモノをこそこそ隠す必要があんの。
ちっともほしくなんてないわよ。
私の欲しいのはリュウ君の心と体よ。"
えっと、そんなモノを今晩の生贄に。
"大体、水を被って-80℃アイスフィールドで冷やされたら、生きていないわよ。
死んでちゃぁ生贄に何ないでしょ。
それに魔族を生贄にもらってどうすんのよ。"
悪魔を召喚。
"それで? "
悪魔様に俺を魔大陸(意訳: おばちゃんだけが入れるダンジョン)に閉じ込めるように頼むつもりなんだぁ。
"あっ、それは良いわね。
私だけが自由にできる空間でリュウ君と二人っきり。
もう、いつでもどこでもリュウ君を好き放題、堪能しまくりってことよね。
悪魔を召喚すればそれが可能ってことなのかぁ。
そのために魔族を数体、生贄に捧げる必要があると。
があああああああああああ。"
「私の魔族をどこやったぁぁぁぁ。
持って行った奴、出てこいやぁ。
ばっちゃの形見の露にしてやる。」
突然、おばちゃんが、どこから出してきたのか知らんが、ばっちゃの形見を上段に構えて、鬼の形相で仁王立ちし、絶叫した。
「ちょっ、ちょっとぉ、ジェンカちゃん、どうしたの。
親の仇が目の前に現れたような形相になって、それをたたっ切る格好をして。
何が気にくわないのか、おそらく汚物の奴がまたまたエロいことを念話してきたんだと思うけど。
兎に角、落ち着いて。
汚物の奴は今はここに居ないから、今すぐに首チョンは無理だから。」
「これが落ち着いていられますかっての、エリカちゃん。
私の魔族を勝手に奪った奴がいんのよ。
私の大事な魔族ちゃんをどこやったぁぁぁぁ。」
「ジェンカちゃんの魔族って、なんだ。。
弩阿呆の転写魔法で氷漬けになったと思われる魔族って、まさか、ジェンカちゃんのモノだったのか。
ジェンカちゃんが魔族をペットにしていたなんて、初めて聞いたぜ。
今までどこで飼ってたんだ? 」
おばちゃんが密かに飼っていた魔族たちを実地訓練に来たついでに散歩させていたら俺たちに見つかって、魔族を飼っているのがばれるのがまずいから俺にわざと攻撃させて、後で回収しようと氷が溶けるのを待っていたら誰かに大事なペット魔族を奪われた ← いまここ、って言うことでいいんだよな。
経緯的に間違っていないよな。
しっかし、いつの間に魔族を捕まえてペットにしたんだか。
一年以上同じチームに居たけど全く知らなかった。
さすが、おばちゃん。
密かに二重生活を送ってたんだ。
"えっ、私、魔族なんて飼ってないわよ。
二重生活生活なんてとんでもない。
リュウ君に隠し事なんてするわけないじゃない。
第一、魔族を飼うなんてめんどくさいことするぐらいなら、リュウ君を前人未到の山奥に引きずって行って、二人っきりのパラダイス生活をエンジョイするわよ。"
それって、魔族 - 悪魔 - おばちゃん専用ダンジョンコースか、直接山奥拉致コースかの違いで、いずれにせよ俺は誰も知らない土地に隔離されて弄ばれ続けるって言うことだよな。
"まぁね。
あっ、拉致コースだったら魔族は要らないじゃない。"
「しっかし、魔族どこに行ったの。
あんな腐りかけのゾンビ魔族を欲しがる奴がいるなんて。
信じらんないわ、私だったら絶体いらないわよ。」
「「「・・・・・・・」」」
俺はおばちゃんという生物が我儘に手足を付ければ即完成するということだけは痛いぐらい認識できたぞ。
俺と凶暴幼女は我儘なおばちゃんに当てられて固まったままだが、弩S腐女帝様はいち早く立ち直っておばちゃんに問いかけた。
流石だ、薄い本ではこんな理不尽なことが平気で罷り通ると言うことだな。
ちなみに、お淑やかな大男さんは何事もなかったように佇み、童帝様はまだ口をムグムグ乾パンを摂取中だった。
「えっと、魔族を飼ってた・・・・・、まぁ、良いわ。
そこに突っ込むと何も進展がないままで野営に突入することになりそうだから。
汚物君は今のところ何も異常を把握していないと言うことなのよね、ジェンカちゃん。」
「エン君に確認したけど、腐れかけの魔族が消える前後では何も異常は見当たらなかったと言うことなのよ。」
「でも、エリカちゃんは大きな魔力の流れ的なモノをあそこから感じたんだよな。
そして、弩阿呆がやり過ぎたアイスフィールと氷のオブジェとなって腐らないように冷凍保存された魔族が忽然と消えた。
やっぱり、魔族の別動隊がどこかに隠れていて、そいつらがアイスフィールドを解消して、冷凍魔族を回収したっていうのがありそうなことじゃねぇのか。」
ムグムグ童帝様を片手で押し退けながら、お淑やかな大男さんの背中でそう主張する凶暴幼女。
「魔族がアイスフィールドを解消する方法って何かしら。
何らかの炎属性魔法を使ったんなら可能かもしれないけど。
そんなものを使った兆候はなかったし。」
「闇魔法で転移させたんじゃねぇのか、アイスフィールドごと。」
「ボルバーナちゃん、闇属性魔法に空間転移魔法何てのがあるのかな。
空間転移魔法は古の黒魔法の転移魔法陣を使ってしかできないと思ったけど。」
「エリカちゃん、闇属性魔法の実態はまだよくわっていないわよね。
高位の闇魔法術士ならそういう空間転移魔法が使えるのかも。
第17師団の警戒網を掻い潜って、その背後を偵察に来るだけの能力がある敵部隊なんだから、そういう高度なことも出来てもおかしくないわよ。」
アイスフィールドと冷凍魔族が忽然と消えたことについて話をしていると、昼食を終った火力バカチームと土壁チームが俺たちの方に寄って来て、話の輪に加わってきた。
まぁ、どうせ火力バカ共と魔牛乳帝様は推測なんて高度な話に加わることは不可能だから、所謂、賑やかし隊だな。
土壁の皆は話す内容は理解しているけど発言は極力しないから、所謂、頷き隊だな。
お淑やかな大男さんとむぐむぐ童帝様は、まぁ、なんだあ、お淑やかな隊だな。
「それで、大隊本部はこの件をどう言ってるんだ。
何か指示は来たのか、ジェンカちゃん。」
「今はなぜかエレン教官に繋がんないのよ。
何か別のことで忙しくて、そっちに心が行っているのかも。」
「おばちゃん、エレン教官が別のことで頭が一杯で、おばちゃんのことを無視しているってことか。
第17師団の最前線基地に早く到着してまともな飯を食いたいって、乾パンをかじりながら考えてんじゃないの。
俺は乾パンでも良いから早く昼食を喰いたいよ。
もう喰っても良いよな。火力バカ共へのエサやりは終わったんだろ。
監視を交代してもらっても良いよな。」
俺はそう言う前から、もう我慢できずに無意識に乾パンを手に取り、かじっていた。
「ちょっと待って、ジェンカちゃん。
皆が消えた魔族の話に夢中になって、弩阿呆は乾パンをかじって、火力バカ共は食後の昼寝で、今は誰も魔族への監視をしていないんじゃないの。
ちょっと油断し過ぎよ。」
「エリカちゃん、大丈夫。
エン君がいるから・・・・・・・
どぇぇぇぇぇぇぇ。」
おばちゃんが驚愕に打ち震えている。
一体何があった。
満杯の席に5cmの隙間を見つけて、ケツをねじ込むおばちゃんがそんなに動揺しているなんて。
"ちょっとぉ、酷くないリュウ君。
こんなか弱いぴちぴちギャルを捉まえて。
極悪非道なおばちゃんみたいに言うなんて。"
「おばちゃん、でっ、何だってそんなに驚いているんだ。もくもぐ
まさか、この乾パンはおばちゃんのか。もぐもぐ
悪いけど食っちまったよ。もぐもぐ」
「乾パンのことなんてのはどうでも良いけど。
元々分けてあげるつもりだったし。
でっ、そうじゃないのよ。
あの弩スケベがエレン教官の胸に飛び込んできたらしいのよ。
"もう一人には耐えきれない"って言って。」
「えっ、汚物君は索敵とアイスフールドのあった場所の監視をしていたんじゃないの。」
「どうも、勝手に抜け出して、こっちに移動している大隊本体に帰ったらしいのよ。
そんな騒動があってエレン教官と今まで連絡が取れなかったらしいのよ。」
エンは何やってんだ。任務中に。
これって、命令違反と敵前逃亡罪、ついでにエレン教官に対する強制わいせつ罪だよな。
あ~あっ、エン、おまえ首チョンでち~んだぞ。
ここまでの成果
魔力回復: 17%
次にスキルを発動するまでのクールタイム: 23時間28分
(エンがやらかしてしまったようだ。
でも、俺には関係ないのでスキルに影響はないようだ、よかったぁ。)
活動報告に次回のタイトルを記載しています。
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本作品は前作「聖戦士のため息」シリーズのパラレルワールドの位置付けとしています。
本「聖戦士のめまい」とともに「聖戦士のため息」シリーズも合わせてお楽しみいただけたら幸いです。
"聖戦士のため息シリーズ "
シュウとエリナ、イリーナ、輪廻の会合に集いし面々が活躍するサーガをお楽しみください。
・本編 : 聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます
・別伝1 : 死神さんが死を迎えるとき
・別伝2 : 優しさの陽だまり
・別伝3 : 陽だまりからの贈り物 優しさの陽だまりから
・外伝 : アラナの細腕繁盛記 越後屋の守銭奴教繁盛記
・別伝4 : 炎の誓い