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26話目 実地訓練でじっと待機するのも大事な訓練です

大隊左翼のあらかじめ定められた位置に展開し終えて、索敵を開始した俺たちにおばちゃんは戦闘準備を命じた。

具体的に準備するには、まずはどのような戦況になってるかを知らせてもらう必要があるが、おばちゃんはまずは戦闘入るための心の準備を求めたのだろう。


「今、大隊左翼に先行して展開して、索敵を開始ししている(意訳: 汚物君は見えないところにしっ、しっ)エン君より連絡があった。

大隊より10時方向に魔物の集団を発見。

大隊より距離約2km。

魔物の種はオーガ。

数は20体ほど。

オーガの集団はそのまま前進をしているため、エン君を含め、大隊は発見されてないと思われる、とのこと。

我が中隊はこのままの陣形で待機。

エリカちゃんとリンダちゃんは自分の小隊の防御魔法担当に物理防御魔法だけ転写しておいて。

オーガだから魔法攻撃はないでしょ。

それと魔法の発動及び物理防御魔法以外の魔法の転写はちょっと控えて。

魔力の発動を出来るだけオーガに探知されたくないからね。

まずは、大隊本部の指示を請うから。」


そう取り敢えずの指示を中隊メンバーに出すと、おばちゃんは難しい顔になった。

恐らく大隊本部の誰かと念話をしているのだろう。

おばちゃんのスキルを受け入れてくれる人が本部に居るんだ。

エレン教官かなぁ。


取り敢えず、俺たちの中隊はその場にとどまって待機することにした。

右側に居る大隊本部は草木の間からかろうじて馬車だけが目視できたが、本部も行軍を停止しているようだ。


普段であれば、俺がこんなことを考えているとおばちゃんからの念話の返答があるはずなのに、何もないな。

今はエンと大隊本部の誰かと念話でやり取りしているのだろうか。

おばちゃんの念話のレベルは2だったはずだ。

2名同時にしか念話ができないはずだ。


これまでの実地訓練の行軍中に遭遇したのはゴブリンの集団で、4回ほど討伐することになった。

ゴブリンはこの季節、増えた家族を減らすために分家するようだ。

その分家したゴブリン一家が新しい住処を探して、緩衝地帯をうろうろしているのに出会ったのだと、ゴブリンの討伐の顛末を大隊本部に報告しに行ったときに教官が教えてくれた。


オーガも増えすぎて分家したのにたまたまぶち当たってしまったのか。


"オーガはゴブリンほど繁殖力がないから、分家の放浪に当たっちゃったと言うことではないと思うんだけど。

はぐれオーガ1匹にぶち当たったというならまだしも。"


じゃぁ、本家の集団じゃないのか。


"オーガの家族って精々5,6匹よ。

20匹なんてのは何か特別なことで集まった集団のような気がするわ。"


そうなんだ。

でっ、おばちゃん、これからどうすんだ。


「今、発見したオーガをどうするか大大隊本部で対応を検討しているところなので、皆、このまま待機してもらえるかな。」

「ジェンカちゃん、オーガ20体だったら、私たち中隊、それじゃ過剰戦力かぁ。

火力場バカ共小隊でも余裕で狩れちゃうと思うんだけど。

オーガは危険な魔物だと思うからどうするか考えるまでもなくて、ちゃっちゃと狩っちゃう方が良いんじゃないのかな。」


おばちゃんのこのまま待機の指示に、首を傾げたお隠れ帝様が攻撃するように進言してきた。


「戦力的には問題なく狩れちゃうんだけどね。

ただ、釈然としないところがあって。

何でオーガが20体もの数で集団行動しているのかよ。

ゴブリンじゃあるまいし。」

「確かに変だよな。

オーガは単体、もしくは家族単位でしか動かないはずだよな。」


お淑やかな大男さんと手を繋いだ凶暴幼女が、おばちゃんに相槌を打った。

ちなみに、親子で幼稚園の砂場に遊びに行くんですか。


「てめぇリュウ、また余計なことを考えているんじゃねぇのか。

吊るすぞ。」


"くやしぃぃぃ、また、ボルバーナちゃんとリュウ君が二人だけで念話が通じてるぅぅ。"


君たち今、戦闘中だから。

緊張感を持ってね、ねっ。


"私はリュウ君との将来が最も大事にことなの。

一緒に、子供向けの道場と駄菓子屋をやることが人生の目標なの。

そして、リュウ君との間に出来た子供と一緒に家族で幸せに暮らすのが人生最大の目的なの。

その障害になりそうな事には敏感なの。

あっ、待ってくれる、リュウ君。

こんな大事なことは、訓練中じゃなくて、後でじっくりと話し合おうね。

第17師団の基地の食堂の裏で、二人っきりでね♡。"


「今、大隊本部から連絡が入った。

もう少し当該オーガの動き、特に、オーガの周りの状況をエン君に探らせろという指示だわ。

その間は各中隊と大隊本部はその場で待機しろと言う指示よ。」


そして、おばちゃんはまた難しい顔をして、黙ってしまった。

今度はエンに大隊本部の指示と敵索の最新情報を確認しているのかもしれない。


「う~ん、なんだろう・・・・。」


おばちゃんどうした、便秘か。


"そうなのよ、リュウ君のために習慣にしている毎朝の牛乳摂取が訓練期間中はできなくてあれになっちゃったの。

野外演習に来ているため、牛乳が調達できないのよ。

あっ、後で魔牛♀の乳でも搾ってみっか。

ドバドバ出るかも、真っ黒な魔乳が。

いゃぁぁぁぁ、絶対に飲めねぇ。

ということで、お腹が動くように、今晩はリュウ君にお尻をなでなでしてほしいの♡。"


えっとぉ、魔牛♀爆乳帝の乳を触ったら、便秘が悪化するんじゃないのか。

劣等感にさいなまれて、腸管運動も鈍くなるって。


"ぽちぃぃぃぃ、言ってはならんことを。"


「どうしたんだ、ジェンカ、怖い顔をして。

腹でも痛いのか。」

「くっ。おっほん。

シュリちゃん、違うの。

エン君の話ではオーガはそのまま通り過ぎたんだけど、続いて、マウントベアーがまた20匹ほど現れたらしいの。

一応、大隊には気づいていないようだって。」


「こんな緩衝地帯の原っぱにマウントベアーがいるのか。

ありゃぁ、山にいる魔物だよな。

それに20匹って。

あいつらが集団でいるっていうことは絶対にないぞ。

同族を見たら必ずケンカになるからな。

どちらかが命を落とすまで戦い続けることも珍しくないぞ。」


「ボルバーナちゃんはマウントベアーに詳しいんだ。」

「あぁ、俺とペーターは山の麓の町で育ったからな。

山の方に行けば熊や魔物のクマと遭遇することも珍しくなかったからな。

まぁ、俺のようなか弱い女の子はクマに襲われないようにと、大人たちからクマたちの生態については叩き込まれたからな。」


んっ、狂暴幼女がクマに襲われる?

か弱い?

こんな狂暴な奴がかぁ・・・・・、ありえねぇぇ。

クマを襲うためにその生態を勉強したんじゃねぇのか。


その時、俺の首に例のロープが回ってきた。


「てめぇ、弩阿呆。

言いたいことがあるなら、口に出して言え。」


"また二人だけで楽しそうに念話をしてるぅぅぅ。

念話は私だけとするって、あの熱い夜に約束したわよね。"


念話なんてしてねぇよ。

それにあの熱い夜ってのはなんだ。

去年の夏のことか。

確かにあの夏の晩の野外演習は地獄だったよな。

砂袋担いで一晩中の行軍。

悠長に話なんてできる状態じゃなかったろうが。


"もう、リュウ君のいずぅ。少しは察してよ。"


俺は何を察すればいいんだよぉ。

それよりもこのロープを外してほしいことを察してよ、おばちゃん。


「ジェンカちゃん、弩阿呆に腹芸は無理だぞ。」


"絶対に二人でこっそり念話しているわよね。怒"



ここまでの成果

魔力回復: 21%

次にスキルを発動するまでのクールタイム: 27時間26分

(待機が長くて、飽きたぞ。

クールタイムも伸びちまったぁ。)


活動報告に次回のタイトルを記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


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