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23話目 実地訓練は順調だぞ

第6軍団に今回、実地訓練に来たのは2-8と2-7組だ。

2-7組は第16師団の最前線基地に行軍すると第6軍団の宿舎で一緒になった2-7の奴らから昨晩聞いた。

この様に肉壁の穴の2年生は定期的に行軍訓練が実施されるのだ。


これから何回かこのような行軍訓練が行われるが、今回は初めてだという以外に特別なものがある。

そう、2-7もしくは2-8からなる大隊はソンバトの肉壁の穴から一緒だった仲間なのだ。

今回の実地訓練が終了すれば、ソンバトの肉壁ちゃんだけで大隊を組んで行動するなんてことは2度と来ないだろう。


クラス替えになっても肉壁の本校へは一緒にまだ1年半以上は通うので、何時でも会えるし、集まって何かやることなどすぐにできるのだが、もう一緒に大隊を組んで訓練や演習をやることはないんだと思うと何か切ないような気分になった。

その感傷は俺だけでなく、クラスのみんなも2-7の奴らも同じ様で、この時間を惜しむかのように消灯時間ぎりぎりまで第6軍の宿舎で、旅行気分で騒いでしまった。

明日からは野営だから夜まで騒ぐなんてできないからな。

魔族軍はいないとは思うが危険な魔物はいるかもしれないからな。


第6軍団の関係者もその辺は慣れたもので、この時期に実地訓練にやってくる肉壁ちゃんたちが、多少うるさくても特に注意されることはなかった。

でも、そんな肉壁ちゃんの事情などに全く関係のない魔法術士候補生様様にはうるさいと怒られちゃったけどな。


一夜明け、旧ソンバトのチームからなる大隊はそれぞれの目的地、俺たちは第17師団の最前線基地に向けて、徒歩で出発だ。

街を抜けて、人々が暮らす地域を抜けるときは道を一列になって、道の端っこを進んだ。

この辺の地域では軍道と一般道の区別がまだない、兼用している形だ。

今回、俺たちは軍の常時任務に就くので、非常時とは違い、俺たちに道を使う優先権はないのだ。


日が暮れるころに漸く人が住む地域と緩衝地帯の境界まで到達した。

ここから先は戦場と言っても構わない場所に変わるのだ。

もうすぐ日が暮れるということで、俺たちの大隊はこの使い古された野営地で荷物を下ろして、一晩過ごすことになった。


戦場の入り口に到達したとはいっても、まだここは人々の居住地という認識が心のどこかにあるためか、この夜も昨日と同じようにどこか旅行気分で就寝時間まで騒いでいるチームが多かった。

ただ、昨日は建物の外に出て騒いだり、走り回っている奴などもいたが、今日はみんなテントの中で大声で話したり、馬鹿笑いする程度の騒ぎ方であった。

昨日は夜中の任務がなかったが、今日は交代で歩哨に立たなければならなかった。

そういった戦場下での任務に就かなければならないということが、ここは戦場の入り口だということを感じさせられて、エネルギーの余っている学生にありがちな夜のバカ騒ぎを無意識のうちにある程度は自粛したのかもしれない。


そして、夜が明けて。

朝食と出発の準備、野営の片づけを済ますと、俺たちは野営地の中心に集められた。

そこで今日の予定を教官より伝えられた。

いよいよ実地訓練である。


今日からは緩衝地帯での軍道の補修、魔族軍の索敵、危険な動物と魔物の討伐を行うことになる。

ここからは一般人はいないため、中隊ごとに広がって行軍することになる。

中央に大隊本部。

本部は荷物を積んだ馬車と、教官たち、そして、大隊本部所属の肉壁ちゃんチームで構成されている。

まぁ、大隊指揮のチームと言っても教官たちの小間使いという名誉ある迷惑な役目だけどな。


大隊本部の左右及び前方にそれぞれ1個中隊が本部から大体200m離れて行軍することになる。

距離的には1分で大体本部に戻ってこれる距離を執っている。

大隊本部の前方を第1中隊、左を第2中隊、そして、右は第3中隊とこの実地訓練では定められた。


中隊の編成と教官の小間使いは日替わりで変更される。

しかし、俺たちは中隊が固定編成のため、小間使いをする必要はなく、日替わりで第1~3のいずれかの部隊を命ぜられることになっている。

学校側はちゃんと3帝との約束を守っているようだ。


各中隊の一番の役目は索敵である。

そのため、第一中隊は前方3km、第2中隊は左側3km、第3中隊は右側3kmまでの偵察を担当するのだ。

それぞれの中隊は斥候職を筆頭にこの範囲の状況を索敵し、見つけ次第、大隊本部に報告する。

そして、次の行動の指示、討伐するのか、そのまま監視するのか等々の指示を大隊本部より受ける。


討伐の指示が出たら実際の戦闘は中隊に任せられる。

よって、中隊で対処できるかを大隊本部が判断できるような的確な敵索と報告が求められることになる。

魔族軍の部隊と遭遇しているのに、ゴブリンの群れと誤って報告したら、その中隊の運命は確実に全滅、大隊すら同じ運命をたどるかもしれないのだ。


俺たちの中隊は実地訓練1日目は第2中隊、2日目は第3中隊、3日目は第1中隊に割り当てられることになった。

俺たち中隊の索敵は当然エンの役割であり、行軍が始まると、お隠れ帝様から頼まれた魔牛♀爆乳帝様がエンのケツに向かって、ファイヤーアローをぶっ放して、中隊から1kmの距離まで強制的に移動させて索敵を命じていた。

エンは野営の準備が終わり、閉じ込めるテント(意訳: 檻)が完成するまでは中隊に戻ることを禁じられていた。


まぁ、おばちゃんの念話があるからいちいち中隊に戻って報告する必要がないからな。

おばちゃんのスキル、時々凄く便利だよな。

ずっと中隊本部から離れていても全く問題ないというか、離れていないとエンの首と胴体が離れ離れになりそうだからな。

お隠れ帝様が蜘蛛の糸ぐらいの細い水を高速で流して、岩を切断する練習をした後に、エンの後姿を睨んでニヤっと薄笑いしているのを俺は見たぞ。


あの目はばっちゃの形見でエンの毛根を狙っているおばちゃんのお茶目な目でも、礼拝堂に殉職者としてのオブジェにするためにエンの首にロープを巻き付けようとしている狂暴幼女のいたずらっ子な目でもない。

G様にフルスイングのスリッパをくらわしてやるという、違うな、汚物をこの世から消し去ってやると言う使命に燃えた、いや、その使命を達成した後の爽快感を思い起こしている目だ。

間違いなく蜘蛛の水糸でスパッと、誰にも気づかれずに一気にやり遂げる気だ。


ということで、中隊には近づくな、エン。

明るいうちには大隊にもだ。

すべての指示と報告はおばちゃんにやってもらえ。

危険な魔物を発見しても決して戻ってくるな。

魔族軍に襲われても、決してこっちに逃げてはいけない。


魔族軍の方が1万倍優しいぞ、きっと。


というエンへの励ましの伝言を、おばちゃんに頼んだ。

エンは泣いて喜んでいたらしい。

リュウの裏切り者ぉぉぉぉと叫んだいたらしい。


俺が裏切り者だと。

本当の裏切りとは、そっとお前の背後にお隠れ帝をご案内することだと思うぞ。

お前の気を俺が引いている間に。


ということで、お前の身を案じて隔離されることを勧めるなんて、なんてよくできた幼馴染なんだ。

感謝しろよ。


というような感じで、実地訓練第一日目は無事に予定していた野営地に到着したぞ。

幸いにも危険な敵にまみえることなく、戦闘と言えば春に数が増えて分家したゴブリンの群れに2回ほど遭遇し、全滅させたことぐらいだ。


火力バカ共チームが突撃して瞬殺してたな。

魔牛♀爆乳帝様も一緒に高笑いしながら突撃していた。

すっかり、火力バカ共になじんだようで、めでたしめでたし。


そんな感じで実地訓練は大きなトラブルもなく3日間が過ぎた。

第17師団の最前線基地に今日の午後には到着するという、実地訓練4日目の朝が来た。

俺たちは第2中隊、大隊本部の左翼面を今日は担当する予定だ。


ここまでの成果

魔力回復: 23%

次にスキルを発動するまでのクールタイム: 24時間11分

(順調に実地訓練をこなし、意気揚々として、スキルもUP。)


活動報告に次回のタイトルを記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


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よろしくお願い致します。


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