12話目 さぁ、この証文にサインしろやぁ
「ジェンカちゃん、それって本当なの。
2帝から招待状が来ていたって話。」
クラス全体がざわつく中、皆が聞きたいことをエリン教官が代表するような形で質問してきた。
「そうみたいなんです。
私たちもその招待状の件については今朝知ったんですけど。」
「えっ、今朝、招待状が届いたの? 」
もう何が何だかわからないと言った様子で、エレン教官とクラスの皆は今度は静まり返ってしまった。
「実は・・・・・」
おばちゃんがこれ以上はこの話をしたくはないんだけど言った表情をしながら、今朝起ったことを説明しだした。
まぁ、事情を話さないと収まりがつかないだろうし、しょうがないよな。
おばちゃんの話が終わって、少しの間、そのまま沈黙が続いた。
話を頭の中で消化しているのだろうか。
「ざっくりまとめると、2帝からの招待状は間違って土壁の不落城チームに届けられて、それを今朝、お淑やかな大男さんチームに転送されたってことね。
そして、確認なんだけど2帝からの招待状をお淑やかな大男さんチームはお断りしたと言うことしら。」
その時、エンが立ち上がった。
「何を言っているんだ、断るなんて認めねぇぞ。
俺は爆帝からの招待に応じるつもりだ。
チームリーダーの俺が言うんだから間違いない。」
その時、俺の脇から黒い影が後ろに飛んで行った。
エンの頭にばっちゃの形見が当てられていた。
「お前がリーダー?
今から毛根を取って、礼拝堂の裏の修道院に永久就職するんだよな。
肉壁ちゃんチームのリーダーじゃなくて、お前は修道士!! 」
うぁぁぁ、おばちゃんの目が絶対零度になっている。
「エン君、短いようで本当に短い付き合いだったな、その再生された毛根とは。
まぁ、修道院で修道士のチームリーダーをやればいいんじゃねぇ。」
「ジャンカ、話せばわかる。
話せばわかるから、それを鞘にしまえ。」
おばちゃんの目がさらに冷たさを増して。
絶対零度よりさらに下がるなんて、何ということだ。
「お前が私に命令できる立場だと? 」
ばっちゃの形見が髪の毛から首の方にゆっくりと下がって行って、そして、エンの首に軽く2回トントンと刃が当てられた。
「エン、おばちゃんがマジだぁ。
今すぐに謝れ。そして、大人しく後ろの隅で土下座していろ。
少なくても明日の昼まではそのままで動くな。」
俺の言葉に反応して、エンは教室の一番後ろに飛んで行って、おばちゃんの方を見てジャンピング土下座。
「すいまんでしたぁぁぁぁ、調子乗ってましたぁぁぁぁ。」
マジで命の危機を悟ったな。
凶暴幼女にはない、本気をその冷気から感じたようだった。
「ふん、わかればいいのよ。」
おばちゃんはそう言い残すと俺の隣にすっと座った。
"うちのチームに牛を買う余裕はないからね。
リュウ君はわかっているわよねぇ。"
イエス、マム。
俺は脊髄反射で、直立不動になり、心の中で絶対服従を誓った。
今のおばちゃんに逆らってはいけない。
俺の魂がそう叫んでいた。
"それでいいのよ。でどうしても牛乳を飲みたいのなら、私をしゃぶりなさい。"
えっ、おばちゃん、出るの。
"リュウ君が出るようにしてくれればいいんじゃねぇ♡。"
うぁぁぁ、また18禁の金♡だぁぁぁぁぁぁぁ。
「うむむむむ、これは無理ね、招待を受けるのは。
で、お淑やかな大男さんチームはお気に入りの魔法術士が決まっているのかしら。」
流石、エレン教官。
歴戦の強者だ。
エンの首が飛びそうになったのに、何もなかったかのように話を進め始めたぞ。
"乳にエネルギーが行き過ぎて、頭は低血糖なのよ。"
おばちゃん、爆乳にはとことん毒を吐きまくるよね。
"リュウ君が私だけに18禁♡をしてくれれば毒を吐く必要がなくなるんだけどなぁ。"
・・・・・・・
「まだ、決っちゃいねぇな。
これから探すんだよな、ジェンカちゃん。」
「そうなんです。私たちは貧乳の魔法術士♀の獲得を目指しているんです。」
おばちゃん、チーム内で貧乳同盟を結成するつもりだな。
"ふっ、何を言っているのリュウ君。
私はこの一年で進化して、白桃になったのよ。"
うぁぁぁぁ、マウンティングするつもりだぁ。
「そうなのね。
でも、まだその当てはないようね。
困ったわねぇ。」
そういうとエレン教官は今度は机にうつぶせになってしまった。
あっ、何が邪魔して、おでこが机に届いていないぞ。
「ギリッ。」
またまた、おばちゃんの歯ぎしりが。
「エレン教官、何が困ったんですか。」
顔だけ持ち上げて、呆れた顔を俺に向けてきた。
「リュウ君はお気楽で、羨ましいわ。
君たちのチームの魔法術士が決まらないと2帝もあきらめないでしょ。
2帝が決まんないとバートリのイケメンチームが決まらない。
イケメンチームが決まんないと多くの女子魔法術士候補生のチームが決まんない。
例年になく肉壁ちゃんと魔法術士のマッチングが進まない。
マッチングを促進させるために教官の残業と休日出勤が半端なく増える。
仕事が増えると・・・・・・、デートもままならない。
と言うことよ。」
なるほど風が吹くと桶屋が・・・・というヤツだな。
んっ、最後に気になる発言があったな。
その時、教室の一番後ろを占拠している土下座童が頭を床に着けたまま何か言い始めた。
「エレン教官、デートする彼氏がいるんですか。
まぁ、いいお年だから、居ない方がまずいですよね。」
そして、俺の脇を突風が駆け抜けた。
何故かブルンブルンという音が一番大きく聞こえてきた。
「こいつは突っ込んではなんねぇことを・・・・」
バシッ、バシッ、バシッ、バシッ・・・・・
パンプスで10連発、土下座したエンの後頭部に炸裂。
エンがついにザビエル弟からG様に進化した瞬間だった。
教室の隅が似合い過ぎていて怖いんだけど。
"やっぱり強面の厳つい自由業が本業の副業で教官と付き合っていたわけじゃないんだ。"
おばちゃん、この話題を口にすると俺までG様に進化するからノーコメントで。
何事もなかったように、ある意味少しスッキリした表情で教壇に戻ってきたエレン教官。
「とっ、言うことで、私の仕事を減らすにはお淑やかな大男さんチームを最優先でマッチングする必要がある事だけは悟ったわ。
それではすこし遅くなっちゃったけど、ホームルーム第2部を開幕します。」
何がとっ、言うことなんだ。
"乳牛の気まぐれ。
2分前ことなんて何て覚えていられるわけないでしょ。
エネルギーの99%が胸に行って、脳には1/1000しか行かないのよ。"
おばちゃん、だんだん辛辣になって来たね。
持たざる者の嫉妬?
"お黙り、ポチ。
白桃の方がみずみずしさが長持ちして、張りも良いのよ。
一度じっくりと〇んだり、●ゃぶったりしてみればわかるわよ。
遠慮なく、サッ、サッ。"
おばちゃんが机ごと俺の方に寄ってきた。
その後に続く逃れられない責任を取らされるのが怖いからいい。
"大したことないわよ。
高々一生涯、駄菓子屋の店長をするだけでしょ。"
それって、一生涯かけて責任をまっとうしろと言うことだよね。
"てへへへへへっ、ばれたかぁ。"
「肉壁の穴の本校に進級してきた全肉壁ちゃんたちが一番初めにやることは、進級時の説明会でもお話したように、自分たちのチームに魔法術士候補生を招き入れることです。
招待状を受託し、既に新チームを結成している肉壁ちゃん以外は、明日からの訓練を通じてマッチングをします。
まずはどんな魔法術士と組みたいか、今から配る用紙に希望を書いてください。」
「その要望に合う魔法術士候補生をエレン教官が連れてきて、一緒に訓練をして、相性を見ると言うことですか。」
火力バカ1号が手を挙げで発言した。
それに対してエレン教官は、何を言ってんだこいつと、さっきエンをパンプスで殴打した時の様にG様を見る蔑んだ目で火力バカ1号を見下げていた。
「だから火力バカって言われんだよ、てめぇは。
肉壁ちゃんの希望なんて聞くわけがないだろ。
全ては魔法術士候補生様様の要望に合わせて、それに合う肉壁共を提供すんのが我ら肉壁の穴の教官の仕事なんだよ。」
「えっ、でも・・・・、じゃ何で俺たちの希望を聞くんですか。」
良いこと聞いた、火力バカ2号。
クラスの皆が頷いている。
生まれて初めて良い仕事をしたな、火力バカ2号。
「そんことすらもわかんないのかなぁ。
後でチーム内で肉壁ちゃんのバカ共と魔法術士様様がもめた時に、すべて肉壁ちゃんが悪いという証拠にするためだよ。
ちゃんと肉壁ちゃんの希望も聞いてマッチングしたのに、肉壁ちゃんのバカ共が我儘を言って揉めて、魔法術士様様には大変ご迷惑をおかけしました。
肉壁ちゃんのバカ共は裸で竹槍1本持たせて、魔族軍に特攻させますので許してくださいって。
その時に使用する証文なんだよ。
わかったか、肉壁Gちゃん共。
あっ、お前らに拒否権はないから。
今すぐに証文に書かないと軍機違反で、軍法会議。
やっぱり、裸で竹槍1本持たして、魔族軍に特攻だから。」
そんなぁ。
"だから、乳牛の言うことに期待しちゃダメだって、何度言ったら。"
ここまでの成果
魔力回復: 15%
次にスキルを発動するまでのクールタイム: 47時間12分
(エレン教官の罠にはまりそうになって、ショックでスキルdown。)
活動報告に次回のタイトルを記載しています。
お話に興味がある方はお読みくださいね。
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本作品は前作「聖戦士のため息」シリーズのパラレルワールドの位置付けとしています。
本「聖戦士のめまい」とともに「聖戦士のため息」シリーズも合わせてお楽しみいただけたら幸いです。
"聖戦士のため息シリーズ "
シュウとエリナ、イリーナ、輪廻の会合に集いし面々が活躍するサーガをお楽しみください。
・本編 : 聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます
・別伝1 : 死神さんが死を迎えるとき
・別伝2 : 優しさの陽だまり
・別伝3 : 陽だまりからの贈り物 優しさの陽だまりから
・外伝 : アラナの細腕繁盛記 越後屋の守銭奴教繁盛記
・別伝4 : 炎の誓い