10話目 エレン教官のお悩み 前編
おばちゃんにお尻をつつかれて目を覚ました。
おばちゃんのエッチ。
"ムフッ♡。"
わざとケツを狙ったな。
"リュウ君、起きなよ。ヅラの無駄に長い話は終わたよ。
今日は2時間弱の過去最長の無駄話だったと思うわ。
もう、かつて自分が肉壁ちゃんだった頃の話を何度もリピートするんだもの。
お前は壊れた記憶玉かぁと、何度目かの「ところで、過去に私も聖戦士として・・・・」の下りで、あのヅラに突っ込んだわよ。
もうこれは訓話じゃなく、訓練よね。
魔族を待ち伏せて攻撃するためにじっとして身動きしない訓練よね。"
そうだったか。
でも、よく俺の第2スキルが発動したな。
校長の頭のブツが下を向いた勢いでズレた時はもうだめかと思ったよ。
"まぁ、頭を押さえて、ステージの袖に飛ぶような勢いで下がって、約4秒後に何食わぬ顔で戻って来たからね。
ブツも定位置に戻っていたし。
あれって、相当慣れているわね、あのシチュエーションに。"
そうだったな。
俺は校長が何気に再登場したあたりから記憶が飛んでいます。
ヅラ校長が下がった後は肉壁ちゃん3年生との対面式があったりしたが、それは本当に3年生の代表者が前に出て来て歓迎の言葉を述べただけだった。
2分、原稿用紙2枚分ぐらいの話だった。
おばちゃんが言うには一瞬で終わったように感じたそうだ。
まぁ、2時間弱のヅラの話の後だったらそう感じるのも当然か。
進級式も無事終了し、俺たちは教室に戻ってきた。
教室に入って、何気に前方を見たら、エレン教官が難しい顔をして教壇で書類を広げていた。
教官、こんなところで仕事の真っ最中と言うことは、ヅラ校長の話、いや、訓練をさぼっていましたね。
"リュウ君もさぼっていたよね。"
俺は第2スキルの発動の訓練中だったんだよ!!
クラスの肉壁ちゃんたちが次々と戻って来て、朝と同じ場所に座っている。
俺は全員が戻るのを待っているエレン教官に話しかけた。
「エレン教官、難しい顔をして書類を見てますが、何か問題でも起こったんですか。
エンの昨日までのスケベな挙動で魔法学校の方から抗議文が届いたとか。
その罪を償うためにエンのある一部分の毛根を消去し、礼拝堂に監禁・・・・、永久就職させろとか。
毛根の消去はここのおばちゃんに一任してもらえば良いですからね。
苦痛を与えることなく一瞬できれいさっぱりなくせます。
何の心配もいりませんぜ。」
それを聞いたエンは俺の後ろから抗議の声を挙げる。
お前、何で椅子に座ってんだ。
エレン教官が担任の間は後ろの床が定位置だろ。
すぐに土下座体勢になるくせに。
「リュウ、てめぇ、エレン教官になんて言うことを提案してるんだ。
毛根の一部を回復させるのにどんだけ費用が掛かったと思ってんだ。
朝、言ったよな。
うちの財力では2度目の回復は何年後になるか。
その間は礼拝堂で禁欲的に修行の日々になっちまうだろうが。
禁欲的という部分で俺は1日も耐えられん。」
"やっぱり毛根を絶つのが一番かぁ。
エン君が私たちチームの足を引っ張るようだったら、ばっちゃの形見の出番と言うことね。"
エンの毛根の将来と進路が決まった瞬間だった。
エレン教官は難しい顔とはち切れんばかりの笑顔・・・・、じゃなくて、小玉スイカを俺たちに向けた。
「エン君のことも有るんだけど。
まぁ、それは毛根を引っこ抜けば解決しそうだから大した問題ではないわよ。」
エンよ、エレン教官もお前を礼拝堂へ監禁、いや導くつもりだぞ。
「じゃぁ、それ以上の大問題が発生しているんですか。
ちょっと想像がつかないんですが。」
「そうなのよ。これからホームルームで話すことにも大いに関係あるんだけど。」
「俺たちに関係する困った事ということですか? 」
「弩阿呆の食費だろ。」
凶暴幼女よ、俺が毎食どんぶり飯を大盛り4杯食ったぐらいで傾く軍の財政って・・・。
「牛乳が足りない。」
おばちゃん、女生徒全員が牛乳をがぶ飲みしているわけじゃないと思うぞ。
むしろ、がぶ飲みしているのはおばちゃんだけじゃないのか。
だいたいエレン教官、お隠れ帝様、ミノタウルス♀様はもう必要ないだろ、十分すぎるほど熟れているんだし。
「制服がエロくない。スカートを膝上20cmに切ってくれ。」
エン、お前はもうしゃべるな。
大事な毛根が空前の灯だってことを自覚しろ。
「はぁ、どうしようかしら。」
ため息をつきながら頬杖する乳牛教官。
机の何割かは乳で隠れているように見えるのは、俺の錯覚か。
おばちゃんの歯ぎしりが後ろで聞こえる。
"今日から牛乳を1Lから2Lに増やしちゃる。"
お腹を壊すよ。
「でっ、何を悩んでいるんですか、肩こり?
だから胸を机に乗せているの? 」
「まぁ、それも悩みといえばそうなんだけど。」
さらに歯ぎしりが。
肩こりがなくて良かったじゃないか、おばちゃん。
"牛乳3Lにしてやるぅぅぅ。"
鼻から溢れ出ちゃうよ。
「じゃぁ、何を悩んでいるんですか。」
「実はねぇ、今年の肉壁ちゃんチームと魔法術士候補生のカップリングが不調なのよ。」
「カップリングですか。」
「そっ、魔法術士候補生の招待状を入学前に受諾する肉壁ちゃんチームが普通だと2~3割ぐらいはいるのにねぇ。
今年は1割を切っているの、5%よ。
30%でもお余り肉壁ちゃんたちのカップリングに苦労するのに、今年は5%よ。
残り95%のお余りちゃんたちのカップリングをしなきゃなんないと思うとうんざりだわ。
はぁ~っ。
リュウ君たちは受け取ってないの。
まぁ、少なくても魔法学校の女生徒からは招待状はないわね。
エン君がいるから。」
それを聞いたエンが驚愕の表情を浮かべ立ち上がった。
「えっ、何で俺がいると女の子から招待状が届かないんだ。
どういうこと、それ。」
"やっぱりこいつは自覚がなかったわね。
ここは一度、礼拝堂で数年間、禁欲的な生活を送った方がいいわね。
なんでも礼拝堂の後ろに女人禁制の修道院があるらしいわよ。
そこは世間と隔絶されていて、礼拝堂の中にも出入りができないということよ。"
エンの毛根を断ち切って、肉壁ちゃんから修道士に強制転職させることに賛成票を一票。
そうでないと俺たちの所に魔法術士が来てくんねぇ。
女生徒もそうだが、女子たちに避けられているチームになんて男子生徒だって来ないだろ。
「エレン教官、その肉壁ちゃんチームと魔法学校の生徒の進級前のカップリングの成立が今年だけ極端に悪い理由があるんか。」
「ボルバーナちゃん、取りあえずペーター君の背中から離れて、席に着こうか。
全員が戻ってきたらホームルーム第2部を始めるわよ。
席についてね。」
「へぇぃ。」
狂暴幼女は乳牛教官の言葉に素直にうなずいて、お淑やかな大男さんの背中から降りてその後ろの席に座った。
何か座った方が余計まずいような。
教官から完全に見えないだろ。
「リュウの弩阿呆、また、余計なことを考えているじゃねぇのか。
お前も礼拝堂の屋根に就職すっかぁ。
今から吊り下げてやんぜぇ。」
お淑やかな大男さんに隠れて何も見えません。
えらそうな口は見えるぐらいおっきくなってからにして下さい。
まぁ、もう無理だと思うけど。
「俺はこれからが成長期なんだぁ。
俺が弩阿呆よりも背が高くなってから謝っても、おせぇんだからな。」
はい、はい、おっきくなってから言おうね
「くっそう。」
"ボルバーナちゃんとリュウ君は念話ができるの?
何か悔しんだけど。"
狂暴幼女の頭が単純だから、そう見えんじゃねぇの。
「弩阿呆の考えることなんざぁ、単純すぎて、見え見えだぜ」
「で、狂暴幼女の質問なんですけど、どうして今年はカップリング率が極端に悪いんですか。」
「あいつらのせいよ。」
「あいつら、エン君だけじゃなくて。」
「ジェンカ、なんで俺の名前を出すんだ。」
「原因はバートリの肉壁の穴から来たイケメンチームとペーチの肉壁の穴から来た美女軍団、そして、3帝のせいね。」
「えっ、そいつら何かしでかしたんですか。」
「リュウ君、少なくてもミノタウルス♀は迷惑よね。」
「あっ、あのだんまりも超迷惑だぜ。」
ここまでの成果
魔力回復: 18%
次にスキルを発動するまでのクールタイム: 28時間58分
(どうしてカップリング率が悪いのがあいつらのせいなんだ。
早く教えてほしいと思ったらクールタイムが短くなったぜ。)
活動報告に次回のタイトルを記載しています。
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本作品は前作「聖戦士のため息」シリーズのパラレルワールドの位置付けとしています。
本「聖戦士のめまい」とともに「聖戦士のため息」シリーズも合わせてお楽しみいただけたら幸いです。
"聖戦士のため息シリーズ "
シュウとエリナ、イリーナ、輪廻の会合に集いし面々が活躍するサーガをお楽しみください。
・本編 : 聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます
・別伝1 : 死神さんが死を迎えるとき
・別伝2 : 優しさの陽だまり
・別伝3 : 陽だまりからの贈り物 優しさの陽だまりから
・外伝 : アラナの細腕繁盛記 越後屋の守銭奴教繁盛記
・別伝4 : 炎の誓い