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38話目 演習 中編

「でっ、おばちゃん、相手に俺たちのチームがいることを知られると結局は何がまずいんだ。」


おばちゃんは、占いとパンツが突撃して森の中に消えるのを見送りながら答えた。


「この演習の終了時間は知っているよね。」

「確か1時間だよな。」狂暴幼女がそれに答えた。


「こう言っちゃなんだけど私たち"お淑やかな大男さん"チームは非常に堅い防御と超高火力を持つことが肉壁の穴で知れ渡ってきたのよね。

それで近頃対戦相手にマークされていて、私たちが相手だと逃げに徹して時間切れ引き分けやわずかな差の勝利を狙ってくるチームが多いのよ。

気が付かなかった、リュウ君。」


俺は首を傾げて聞く。


「おばちゃん、そのわずかな差の勝利ってのはどういうことだ。」


「例えば、突撃してきた火力バカチームの2、3人を罠にかけてつぶして、その後は防御に徹し、自分たちは戦力の損失0を維持し時間切れまで粘る。

そうするとわずかな差で相手の勝利になるわよね。」

「そんなわずかの差や引き分けを狙うなんてなんか卑怯じゃねぇか。

成績もあんまり上がんねぇんじゃないのか。」


狂暴幼女もおばちゃんの説明に疑問を持ったようで、お淑やかな大男さんの背中で首を傾げている。


「実戦では、もし、かなり不利な戦況に追い込まれたら、まずは生き残ることが大事だよね。

作戦は失敗しても、戦力が大きく減らなければ次がある。

闇雲に作戦をごり押しして全滅なんてことになったら、次がなくなるどころか、今度は敵に逆に攻め込まれて抵抗する戦力もなく、より大きな敗戦に繋がるわ。

局所的な敗戦による戦力低下は戦略上の失敗に繋がりかねないわ。

そういう意味では、演習で私たち相手に損害をできるだけ小さくすることは大きな成果と言えるようなのよ。」

「それじゃ、俺たちもこのまま時間切れを狙えばいいんじゃないか。」


俺の言葉におばちゃんは後ろを振り返った。

眉間にしわを寄せて、困ったような、あきれたような表情を向けてきた。


「私たちチームよりも強いチームは今、肉壁の穴にはないはず。

他のチームと比較すると戦力的には圧倒していると言ってもいいわ。

そんなチームを用する中隊が引き分け、或いはわずかな差で敗戦なんてことになったら、大きく成績を下げるでしょうね。

私たちの中隊は最低でも勝利しないと、成績を上げるには教官を納得させるだけの戦果を求められているのよ。」

「ジェンカちゃん、なんか俺たちだけ求められている戦果のハードルが高くて、教官は厳しすぎないか。」


おばちゃんの説明に納得できない顔の狂暴幼女。


「そうなのよ、ちょっと理不尽よね。

でも、それは期待の裏返し。

教官たち、いえ、肉壁の穴に居る生徒は私たちのことを認めてくれているということじゃないかと思うの。」


「先輩方、そうなんですよ。

幼年魔法学校の生徒の間でも"お淑やかな大男さん"のことはすごいチームだと噂されています。

自分の可能性を高めてくれることを期待して、多くの生徒がこのチームに入って訓練することを望んでいんです。

私は良くこのチームに入れてもらっています。

確かに要求されていることが大きいのでプレッシャーは半端ないですが、自分は今日こんなことができたと訓練後は大きな自信を持つことができます。

えっと、エン先輩は斥候に出でいるか気絶していることを出来れば望みます。」


よっちゃんは目を輝かせていた。

でも、最後はG様を見るような目を向けていた。


「そっかぁ、これも訓練かぁ。逃げに入った相手をどう追い詰めて勝利するかかぁ。

で、ジェンカちゃん、どうしようか。

今のところ、敵の斥候職を1体つぶしたから、俺たちが有利だよな。」

「おそらく突撃した火力バカ2体は簡単にやられてしまうから、すぐに私たちが不利になるわ。」


うぁぁぁ、こうなるとやみくもに突っ込むだけの火力バカ共ってただのお荷物だな。

イケイケの戦況では勢いがついて良いんだけど。


"さて、どうやって巣穴に逃げ込んだウサギを追い立てようかな。"


やっばぁ、おばちゃんが演習じゃなくて狩りモードだよ。

素直に降参した方がいいよ、相手の中隊は。


"リュウ君が楽しくウサギ狩りするにはどうしたらいいかな。"


俺は別に何もしなくていいなら、それでいいから。

うさぎ狩りなんて望んでないから。


「よし、ウサギ狩りは猟犬が必要ね。

こいつらに敵をうまく追い込んでもらうのが良いわね。

まだ、3匹残っているし。」


猟犬て言うけど、パンツ占いのように、ただ突撃しかしない狂犬なんだけど、こいつら。

こうやって、作戦を考えている間も突撃させろとリードを引っ張り続けているぞ、駄犬どもが。

おばちゃんの作戦通りになんて動けるんか。


"わかっているわよ、こいつらに小難しい指示なんて出さないわよ。

「待て」もできない駄犬だもんね。"


「リュウ君、魔力回復は使えるわよね。」

「今日はまだ何もしていないから6%はすぐに回復するぞ。」

「リュウ君にはウサギを狩ってもらう役割をしてもらうつもりだったけど、おびき出す役割もお願いするね。」

「それは別にいいけど、俺もあまり小難しいことはできないぞ。

まぁ、駄犬どもよりはましだけどな。」


おばちゃんはにやっと笑った。

何かとんでもないことを考えているんじゃないだろうな。

森を焼き払って、相手の姿を丸裸にするとか。

さすがにこの森を焼き払うほどの魔力は・・・・・・、

あっ、ファイヤーボール・レベル7をいっぱい作って横一線に並べて森の方に転がせばできなくはないな。

しいちゃんにファイヤーボール・レベル4をもらえばできちゃうな。

それを3回も繰り返せば森は綺麗にまる焼けだ。


それをやったら勝つには勝ったけど、演習場を一つつぶした責任を問われそうだ。

軍法会議で有罪、犯罪奴隷として最も過酷と噂の鉱山で一生ただ働きだ。

その一生が一週間だという話だし。

まさか、おばちゃんそれを俺にやらせるつもりじゃ。

この一戦に勝つために俺を生贄にするつもりなんじゃぁ。


"心配しないで。森を焼き払うなんてことはしないから。

まぁ、それに近いことはしようと思うけどね。

絶対にリュウ君を鉱山送りになんてさせないから。

大丈夫、いざとなったら、目撃者諸共証拠隠滅・・・・。"


ちょっとぉ、超心配なんですけど。

待って、おばちゃん。

目撃者諸共証拠隠滅するって、どんだけ非人道的なことをやらせるつもりなんだぁ。

まぁ、エンと火力バカ共はどうなってもいいけどな。


"ポチは黙って言われたとおりにすればいいの。

返事は「はい、喜んで。」以外認めないから。"


うぁぁぁぁ、おばちゃん、やる気だ、マジで非人道的なことをやらせる気だ。

演習場の森を焼き払うなんて生ぬるい事じゃないんだ。

きっと、俺の魔力全部と魔力回復分の魔力を召喚魔方陣につぎ込んで、大悪魔を召喚するつもりだぁ。

大悪魔の力で森どころか、すべての演習場と学校、隣町もすべて焼き尽くすつもりだぁ。

唯一悪魔に対抗できる聖人ザビエル弟(意訳: 性人エン)の聖人力(意訳: 性人力、いわゆる精力だな)なんて大悪魔の前じゃ、あっという間に枯渇して、空が黄色く見えるんだぁ。


"エン君に何を期待しているの。

私はリュウ君にやってほしいの。

さっ、始めるわよ。"


俺に大悪魔を超える性人力を期待されても。

あっという間に血しか出せなくなりますぜ。

そして、鉱山にたどり着く前に、干からびて逝っちゃいますね。


ここまでの成果

魔力回復: 4%

次にスキルを発動するまでのクールタイム: 42時間44分

(性人力が失われそうで大幅なスキルdownに見舞われました。

あっ、これで大悪魔様じゃなくて悪魔様しか召喚できなくなったということだな。)


活動報告に次回のタイトルを記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


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よろしくお願い致します。


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