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30話目 えっ、別れちゃったの

いかがわしい宿の中で男女の刃傷沙汰とのうわさを聞いたやじ馬がぽつぽつ集まり始めた。

昼間の歓楽街と言うことで、人通りがほとんどないことが幸いし、野次馬が店の前に溢れて二進も三進も行かなくなるようなことはなかった。


教官たちとの誤解が解けて、ここから離れることを許された俺とおばちゃんは野次馬から逃げるようにいかがわしい宿と歓楽街を後にしたのだった。


元の大通りに出たところにある角のお店の前まで一目散にとんずらし、そのお店の前で一旦立ち止まった。

わずかな距離しか走っていないにもかかわらず、二人ともこれ以上走れないぐらい息が上がった。

普段鍛えているのにおかしいな。


「いや~、参った。危うく大騒ぎになるところだったよ。」


俺がそう言うとおばちゃんは息を切らしながらもすまなそうな表情になって。


「ごめんね、リュウ君。

私がばっちゃの形見を抜いたばっかりに大騒ぎになって。」

「まぁ、良いんじゃないの。

教官たちが何であの店に入って行ったのかもわかったし、それに何のお咎めもなく帰っても良いとも言われたし。

ちょっと予定外の騒ぎになったけど、それはそれでなんか楽しかったよ。」

「ありがとう。そう言ってもらえると助かるわ。」


「それでこれからどうしようか。予定通りに駄菓子屋さんに行くか。

それとも、今の騒ぎでおなかが一杯になったから帰るか。」


なぜか急に悲しそうな顔になったおばちゃん。


「ごめん、私のせいで帰ることになって。」

「だから、俺は別に気にしてないよ。

おばちゃんが嫌でなければ予定通り駄菓子屋に行こうか。

それとも明日か来週に出直すか。

俺はどっちでもいいよ。」


それを聞いたおばちゃんは急にうれしそうな笑顔になった。


「このまま駄菓子屋さんに行こうよ。

そして、来週は今日の騒ぎのお詫びに私がおごってあげる。」

「えっ、おごってくれんのか。それは悪いな。

俺、パンが食べたい。たまには肉壁の穴購買印じゃないパンが食いたい。」

「良いわよ。

だったら、アンパンじゃない方が良いわね。

いつも購買で食べ慣れているんでしょ、別のにしようか。」

「あっ、ジャムパンとクリームパンも食べ慣れているから。」

「それじゃぁ、この町のおいしいパン屋さんを調べておくわね。」

「おおっ、頼むよ。楽しみにしているよ。」


それを聞いたおばちゃんは満面の笑顔になった。

俺におごるのがそんなにうれしいのか。

幾らでも貢ぐことを許そうじゃないか。


「任せておいて。

じゃぁ、今日はこのまま行こうか、駄菓子屋さんへ。

ちなみにおごってもらうのもすごくうれしいから。」


うぁぁぁ、それって倍返しでおごれってことかぁ。

流石、おばちゃんだ。ちゃっかりしているなぁ。


「リュウ君からもらえるなら何でも・・・・・。

今でなくても良いけど、一番欲しいのはリュウ君の子種・・・・・♡。

なんかさっきのところで刺激を受けちゃったかなぁ・・・・・。」


最後に俺がどうのと言っていたが、良く聞こえなかったぞ。

まぁ、おばちゃんの機嫌が良いのは良いことだ。

機嫌が悪いとザビエル君、最悪はさっきの様にばっちゃの形見で首チョンだからな。


おばちゃんは、さぁおごりだぁ、たらふく喰うぞうと言わんばかりに俺の手を引っ張って、駄菓子屋の方に急ぎ足で歩いて行く。

どんだけ駄菓子が好きなんだ。

いや、おごりと言う甘美な言葉がおばちゃんをイケイケにしてしまうのか。


歓楽街へ向かう角からさらに進んで二つ目の角を曲がって、そのまま路地を進む。

歓楽街の通りと違って、道幅が3/4になった。

この通りはおもちゃや子供服などの子供が使うものを専門に扱っている店が並んだ通りらしい。

こちらの通りは歓楽街の通りとは違って、親子連れや子供たちで大いににぎわっていた。


俺とおばちゃんはこの中を縫うように目的の駄菓子屋に急いだ。

学校が終わった子供たちが駄菓子屋に大勢集まって来て、駄菓子屋の前は凄いことになっていた。

大勢の子供たちが店で買った駄菓子をそのまま店の前で食べており、ここがこの通りで一番賑わっていた。

結構大きな駄菓子屋のはずなのに、店に入るための行列が出来ていた。

俺たちは列の一番後ろに並んだ。

おばちゃんは、覚悟はしていたようだが、あまりの混雑に霹靂したようにため息をついていた。


「は~っ、相変わらずここは凄い人気ね。」

「他の店と比べて安いからな。」

「この店舗の大きさからすると駄菓子の卸も兼ねているのかしら。

店も町の中心地の商店街にあるし。」

「確かにな。卸値に近い値段で売っているのから安いのかもね。

住宅地からはちょっと離れているけど、小学校の高学年になれば自分の足で来れるしね。」

「確かに、ちっちゃな子はあまりいないわね。」


と、おばちゃんが言った後にふと列の前方、もうすぐ店に入れるというところに、そのちっちゃな子がいましたよ。

おばちゃんもそれに気づいたようで。


「ちっちゃな子はお父さんか兄ちゃん、もしくは執事か護衛の方と一緒にくるようねぇ。」

「ちっちゃいから護衛の人の背中にくっついていないと踏みつぶされるからな。」


チームメイトの凶暴幼女とお付きのお淑やかな大男さんだった。

良かったな凶暴幼女、駄菓子屋に連れて来てもらって。

迷子になるから背中から離れんなよ。


「うっさぁぁぁい。幼女言うなぁぁぁぁぁ。弩阿保が。」


えっ、この距離で聞こえたのか。

てが、俺は口に出してないぞ。


「リュウ、てめぇの考えてることぐらい100m以上離れてたってわかるんだからなぁ。」


あいつも念話が使えるんか。


"使えないと思うけど。"


凶暴幼女は何か俺に怒鳴り散らしながらお淑やかな大男さんに担がれて店の中に入って行った。


お菓子を買ってほしくて店先で暴れている幼児だなありゃ。

お父さん(意訳: お淑やかな大男さん)がしょうがなく、お店に連れて行った図。


"なんかかわいいね。"


あの凶暴な幼女を可愛いと思えるとはさすがおばちゃんだ。


しかし、長い行列だなぁ。

いつ入れるんだろ。


"まぁ、気長に待とうよ。

一時間も並べば入れるでしょ。"


おばちゃん、気が長いなぁ。


"話でもしてればあっという間よ。

でも、今日はびっくりしたよね。

まさか教官があんなところを巡回しているなんてね。"


あんなところに入る生徒なんているのか。


"過去にいて、何かトラブルに巻き込まれたから巡回を始めたんじゃないの。

実は、それを教官たちがあそこに入る理由にしてたりしてね。"


えっ、まさか、義足の教官とエレン教官が・・・・・、そんなことはないはず。

俺は信じないぞ。


「なんだリュウ、今度はこんなところでデートかぁ。

駄菓子屋の前でジェンカと見つめ合って。」


義足の教官が俺の肩を叩いて話しかけてきた。


こんなところまで巡回してんのか。

暇だなぁ。

俺たちのことより、エンたちの補習組を心配しろよ。


「教官は一人ですか。エレン教官とは別れたんですか。

例のいかがわしい宿の前で。」


ぽつりぽつりと周りにいた肉壁の穴と幼年魔法学校の生徒がざわつく。


「ちょっ、変な言い方をすんじゃねぇ。

エレン教官はひとつ前の洋品店通りの方の巡回だぁ。

大通りの角で別れたんだ。」

「やっぱり分かれたんですね。

女性に服の人も買ってやれない男なんて振られますよね。」


わかれた、振られたと聞いた生徒たちはますますざわざわしてきた。


「リュウ君は私にこれからおごってくれるんですよ。

先生も甲斐性を見せないとね。」

「ジャンカまでぇ、何を言い出すんだ。」


土日にざわざわしたものが幼年魔法学校、肉壁の穴、そして、寮を駆け巡ったぞ。


ここまでの成果

魔力回復: 3%

次にスキルを発動するまでのクールタイム: 35時間37分

(駄菓子屋のソース煎餅とえびせんで少しスキルが回復。)


活動報告に次回のタイトルを記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


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よろしくお願い致します。


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