3話目 世の中は肉壁ちゃんで溢れているの
どうだと言わんばかりに俺は唯一の聴衆である隣のジェンカの方をチラ見した。
授業中だからな、ほんとにチラッとだ。
ジェンカと目が合ったが、それはそれはかの有名人、G様を見るようなこいつ絶対にその内にスリッパの塵にしてやるというような決意と蔑みが混じり合ったような眼をしていた。
我が愛しのジェンカ君、俺のスキルの凄さに改めて感動したようだな。
"確かにG様クラスのくそスキルだわよね。"
麗しい女の子がクソなんて言ってはいけません。
"これ以上ないピッタリな表現だと思うけど、リュウ君のそのスキルに。
魔力回復が1%しかなくて、それも2日に1回しか使えないなんて、クソが嫌なら便秘スキルと言ってやるわ。
どんだけ発動しないのよ。出が悪すぎでしょ。
一晩寝たら魔力なんて100%回復するのよ。
意味ないからそのスキル、何の役にも立たないから。"
まぁ、そうだね。
そんなのわかっているよ、ちくしょう。
それでも、戦っている時に魔力を使い切って、それでも敵に攻められたならば最後の抵抗ぐらいできるかもしんないだろ。
くらえ便秘スキルゥゥゥゥゥ。
"ちなみに魔力が1%回復して、何がしたいのよ。"
防御魔法1回。それで愛しのジェンカを守る・・・・・・、無理だな。
足止めにもなんないな。
攻撃が1発で終わるはずないもんな。
"まぁ、私を守りたいというその心意気だけは買ってあげるわ。
精々元々の基礎魔力と便秘スキルのレベルを上げて、攻撃法に3回耐えるだけの魔力回復にしてよね。
ところで、リュウ君の便秘スキルのレベルはいくつなの。
私の念話はレベル1よ。だから、まだ同時に複数の人とやり取りができないのよ。"
その貴重な一人が俺か。どんだけ俺のことを愛しているんだ。
それならそうと初めから言ってくれれば。
痛たたたたたっ。
俺はかろうじて突然腕に走った痛みを口に出すことなく我慢した。
これ以上、悪目立ちをしたくないからな。
あれ、腕にペンが生えているんだけど。
俺、ペンを生んじゃったよ。今の痛みは陣痛?
"あんた、どんだけアホなの。取り敢えず私のペン返して。"
なぜ俺の体からジェンカのペンが生えてくるんだ。
まぁ、いいだろう。そんなことも有るよな。
人生は謎に満ちている。
腕からペンが生えることも有るよな。
"あんたはどんだけおめでたい脳みそをしてんの。
あっ、脳みそじゃなく詰まってんのは麹みそね。"
それって、何か鼻から白い粒が出てきそうなんですが。
鼻くそか。
でっ、俺のスキルレベルだったけか。
そうだな、何と言ったらいいか。
"自分のスキルレベルもわかんないの。どんだけ脳が白みそに置き換わっているの。"
分かんないというより、レベルがない。
大体スキルにレベル何てあんのか。
スキル名: 魔力回復
スキルの強さ: 1%
クールタイム: 48時間
としか情報が分からないんだけど。
"それ何度聞いても赤みそにふさわしいスキルね。
しかもレベルがないなんて。
それって、
スキル名: 魔力回復
スキルの強さ: 回復しねぇぜ
クールタイム: 死ぬまで
というように凋落することも有り得るってことじゃないの。
紙様の唯一の贈り物がやっぱり紙様らしいヘタレっぷりってことなのね。"
いや、逆を考えるんだ。
スキル名: 魔力回復
スキルの強さ: 100%
クールタイム: 一瞬
というように突然夢のようなスキルに変化するって可能性もあるってことだよな。
転写してもらったファイヤーアローの乱れ打ち、俺つえぇぇぇぇ、紙様、ありがとう、一生崇め奉りますだ。
"紙様にそこまで期待できる君は・・・・・・、アホの代名詞。"
お褒めに与り、恐縮です。
"・・・・・・・・・"
突然、念話が切れた。
俺の最強スキルに怖れをなしたな、ジェンカ。
そんな最強な俺とチームを組んで幸せだな、お前。
そう、俺とジェンカ、エン、ペーテル、ボルバーナで肉壁チームを組んでいるんだ。
通常、ここにもう一人、魔法術士が加わることで一個小隊を形成するのが軍の一般的な最小単位となる。
一人の魔法術士が数人の肉壁ちゃんたちに魔法を転写して戦うんだよ。
あ~っ、属性の違う魔法術士を二人り小隊に入れれば魔法のバリエーションが増えんじゃねぇと思った、そこの常識人。
つまんないよ、そんなのわかっているよ。
でも、魔法術士がいないんだからしょうがねぇだろ。
世の中には肉壁ちゃんで溢れているの。わかったかなぁ。
わかんないの。ごめん、もう少し詳しく話すよ。
人類で肉壁候補になれるのは10人に1人だ。
肉壁に適性のある中学3年生は卒業するとだいたいここ、肉壁の穴に入ってくる。
なぜか入りたがる。
肉壁ちゃんにもなれない紙様になるかもしれないのにだ。
他の一般の方々は中学を卒業すると自分の将来就きたい職業の訓練学校に入ることになる。
つまりだ、俺たちは肉壁ちゃんにあこがれてここに入って来たということになっているのだ。
ここに俺が入ることが決まると、お上から親が良くここまで肉壁君を育ててくれましたと慰謝料としての契約金をもらえるらしい。
その上、肉壁の穴では衣食住が無料上、給料まで出るんだぞ。
ちょっと待て、なぜか給料の3割は親への強制仕送り、残りは壊した備品の修理代という名目で何も壊していないのに天引きされている。
と言うことで、現金はもらえない。
全くなくはないが、肉壁の穴の購買部と隣町でしか使えないビラビラの軍幣が配られる。
えっと、これって年季奉公と言うことでLAでしょうか?
通りで肉壁適性が分かった時点で親が小躍りしているわけだな。
その日の夕飯は寿司だった。
当然回ってなんていないぞ、桶に入ったちゃんとした奴だぞ。
どうだ羨ましいか・・・・・・・、何か心の汗が目から出てきたんですけど。
まぁ、それは過去の美しい思い出としてだ、俺はそんな話をしていたわけじゃないよな。
10人に1人が肉壁適性があり、その内で正規の肉壁ちゃんに昇格できるのは半分だ。
残りは紙様だ。
紙様は軍の後方支援に回ることになるため、肉壁ちゃん純粋培養コースから、文官コースへ変更だ。
んっ、こっちの方がまともな人生を歩める気がするのは気のせいか。
まぁ、いいか、細かいことを気にすると薄くなるというかな。
ここを卒業する記念に何が欲しいと言われて、「ヅラ」とは言いたくないからな。
おっほん、良い子の皆はもうわかったかと思うが、肉壁ちゃんになれるのは全人類の5%、20人に1人の訳だ。
えっ、俺って、超エリートじゃん。
そして、自ら魔法を使える魔法術士様様は何と100人に一人なわけだなこれが。
どうだ、どんだけ魔法術士が希少動物かわかったか。
大事に育てないと絶滅するぞ。
何でも軍の全魔法術士の名簿の表紙は赤いらしいぞ。見たことないけどな。
別名、赤本だ。
と言うことで、肉壁ちゃん5人に魔法術士1人が適正配置となるのだ。
俺らは肉壁の穴1年生だから、まだ、紙様も共に学んでいる状態なので、肉壁ちゃん候補生と紙様候補生10人に一人の魔法術士候補生となるわけなんだよ。
おわかりいただけましたでしょうか。
と言うことで、俺たちは5人は肉壁ちゃん(仮)チームを肉壁の穴に入学後に結成したのだった。
その経緯を知りたいか・・・・・・、いや、是非に聞いてほしい。
聞いてもらわないと更新できずに、"〇この部分で完結します"をポチる羽目になるからな。
だから聞いて頂戴、おねげぇしますだ。
それはまだ、雪深い春がまだ遠き頃だったぁ。
"ちょっと、リュウ君。何の話をしようとしているの。
私たちが出合ったのは入学式、桜が満開なのに春の嵐で土砂降りの最悪な日だったよね。
それ以来私の心は土砂降りなんだけど。"
どうした、ジェンカ。悪い物でも拾い食いしたか。
俺は満足しているぞ。
毎日腹一杯食えるし、腹一杯食えるし、飯だけは腹一杯食えるし‥‥、肉くいてぇよな。
ここまでの成果
魔力回復: 1%
次にスキルを発動するまでのクールタイム: 48時間11分
(クールタイムがまたまた伸びてんぞぉ。
まぁ、授業を全く聞いていないからしょうがねぇか。)
活動報告に次回のタイトルを記載しています。
お話に興味がある方はお読みくださいね。
感想や評価、ブックマークをいただけると励みになります。
よろしくお願い致します。