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29話目 シミが着いたかも

階段の途中まで下りてきたエレン教官と義足の教官はあきれた顔をして俺たちの方を見ていた。


「リュウ、ここに来るなとは言わないが、こっそりやれよ。

教官としてはこんなところに来る暇があったら、魔力を高めるとか剣を振れよ、一番は勉強しろと言いたいんだが。

それに肉壁ちゃん候補生であることがばれないように静かにしろよ。

それが、ひっそりどころか入り口で痴話げんかの挙句、刃傷ざたとはさすがに見逃せんぞ。」


エレン教官はそのまま階段を駆け下りて、おばちゃんの大刀を取り上げていた。

そして、大刀を片手に持ったまま、もう片手でおばちゃんを抱きしめ、優しく語り掛けた。


「ジェンカさんどうしたの。

まさか、他の女の子とリュウ君の取り合いになったの。

どっちがここに入るかで。」


「えっ。」


おばちゃんはこの展開についてこれないようで、茫然として、エレン教官のされるがままになっていた。

そのまま1分ぐらい経っただろうか。

漸くおばちゃんの念話が聞こえてきた。


"どいうこと? "


それは俺が聞きたいんですけど。

突然、なんで俺を殺っちまおうとしたんだよ。

第一、ここでやることは違うだろ。

目がマジだったよ。絶対にタマ取ってやるって。

俺を首チョンして、自分も後を追うからとか叫んで、マジ魂の危険を感じたんだけど。


"あっ、ああ、そうねぇ、そんなこともあったわね。"


ちょっとまったぁぁ。

それってどういうことよ。

おばちゃんが若かりし頃の美しい思い出、私も昔はブイブイ言わせたものよっていう装いになっているんだけど。

数分前のことだからね。

おばちゃん、まさか若年性認〇症になったのか。


"その前になんでリュウ君はここに入ろうとしていたの。"


入ろうとしていたんじゃなくて、義足の教官とエレン教官が仲良くここに入っていきそうなところを見かけたんで。

まぁ、なんだぁ、覗いてみようかなぁなんて、ねっ、おばちゃんもそういうの興味あるでしょ。


"まぁ、確かに、あるわね。

知り合いの、しかも異色の組み合わせがここに入ろうとしたら、興味はあるわね。"


なっ、おばちゃんとしては明日の井戸端会議のネタとしては絶対に詳しく知りたいはずだよな。


"そういうことなら、ちゃんと私に話してほしかったわよ。

いきなり手をつかんで、私をここに連れ込もうとしたから。"


急いでいたんだよ。

遠目だったから、見失うといけないと思って急いていたんだよ。


"そういうことなの。

てっきり私はリュウ君が突然と発情期に入って、本能のままに私とあんなことやそんなことをするつもりだったのかと思ったのよ。"


悪かったよ。

ちょっと、急いでいたのと中であの二人がどうなったかが気になって、説明するを忘れてたよ。


"まぁ、わかったからいいわよ。"


でも、なんで俺を首チョンにしようとしてんだ。

ここの中を覗くのが嫌だったのか。

中に連れ込まれると思ったからか。


"えっ、いや、まぁ・・・・・・・。

ごめん、忘れて。"


おまぁぁぁぁぁぁ、首チョンされかけて、ごめん忘れての一言ですますんかぁぁぁ。


"まじで、ごめんね。"


おばちゃんはエレン教官に抱き着かれたまま、俺にはにこっと笑顔を向けてきた。

なにか吹っ切れたようなかわいい笑顔だ。

ここでそれは反則だろ。

そんな顔されたら、その後は何も言えないじゃないか。

まぁ、どうして俺を首チョンにして、自分も後を追いかけようとしたかはわからないけど、おばちゃんが自分の命の灯を消すようなことがなくなったようだから良しとするか。


でも、俺の首チョン未遂については納得がいかんぞ。


"わかったわ。

せっかくこんな場所にいるんだし、私を好きにしていいわよ。

お詫びと言ってはなんだけど。

義足の教官もこっそりだったらここに出入りしても良いと言ってたしね"



えっ、好きにしていいって・・・・・・、ここで?


"そう、ここで。"


おばちゃんどうした。ここで好きにしていいってことは・・・・・。

マジでぇぇぇぇ。


"命の危険にさらしたんだもの、それぐらいのお詫びは必要かなぁなんてね・・・・・

良いわよ。私を好きにして。

リュウ君も男の子なんだからここで女の子を好きにするっていう意味はわかるわよね。"


ばっちゃの形見を振りかぶられるなんてしょっちゅうなんだけど。

鉄パイプのフルスイングなんて日常茶飯事なんだけど。

日々、サバイバルなんですけど、日々命の危険にさらされているんですけど、すべておばちゃんのせいで。

今日に限ってどうしたんだ、しおらしく、反省するだなんて。


おばちゃんは手を握りしめて、顔を真っ赤にして少し震えたように見えた。


「ジェンカさん。どうしたの。リュウ君に何かされそうになったの。

こんなところに無理やり引きずり込まれそうになって、必死に抵抗していたというのね。」

「リュウ、無理やりジェンカをこんなところに引きずり込んだのか。

それはかなり問題だなぁ。」


えっ、おばちゃんを俺が引きずり込んだ、ここに? なんでそういう展開になってんだぁ。

確かに、店の前までは強引に引っ張ってきて、中を一緒にのぞいたけどな。

中に引きずり込んだのはどちらかというとおばちゃんだよな。

ばっちゃの形見を振りかざして、俺を店の中に追い込んだ・・・・・・。


そう思ったら、ますますおばちゃんは真っ赤になって震え出した。

そして、涙がポロリと。


"確かに私がリュウ君をここに追い込んだのかも。

私がこのいかがわしい宿にリュウ君を無理やり引きずり込んだ。

うぁぁぁぁぁ、恥ずかしいぃぃぃぃ。

もう、だめぇぇぇぇぇ。

恥ずかしくて、死んじゃいそう。"


「ちょっと、リュウ君、ジェンカさんが泣いているわよ。

ボーっとしていないでまずは謝罪しなさい。」


えっ、俺が悪いのかぁ。

刃傷沙汰はおばちゃんの暴走だよね。

覗いたきっかけは教官二人がこんなところに仲良く入っていくからだよね。


「リュウ、せっかく前期試験に合格したのになぁ。

羽目を外し過ぎて、結局、退学だな。

その後は強〇未遂で鉱山で20年は強制労働かぁ。

残念だよ。

ちなみに鉱山での平均寿命は3年だということだ。

乙。」


うぁぁぁぁ、いつの間にかエロ犯罪者にされているよ。

その上、寿命が残り3年になりそうだぁぁぁ。

おばちゃん助けて。


俺の必死の心の叫びが聞こえないのか、おばちゃんはまだ、エリナ教官に抱きかかえられて涙を流しながら震えていた。


あぁ、俺の人生ち~んだな。


*

*

*

*

*


その後、漸く自分の世界から戻ってきたおばちゃんが見たのは、俺が義足の教官に首根っこを引っ掴まれて店の外に引きずり出される最中だった。

それに気が付いたおばちゃんは、教官たちに俺が無理やり引きずり込んだんじゃないことを必死に説明していた。

でもねぇ、なんでばっちゃの形見を抜いたのとエレン教官に尋ねられるとまた真っ赤になってぷるぷる震え出してしまった。

だ・か・ら、俺に疑惑の目を向けるのは止めてください、教官様たち。

俺は店の中を覗いただけで、おばちゃんを引きずり込んじゃぁいませんって。


ちなみに、教官たちは生徒がいかがわしい宿に入っていないか密かに確認しに来たんだそうだ。

えぇぇ、そうなの。


"確認するだけだったら、エレン教官じゃなくて、義足の教官とここでの本業は厳つい自由業の強面の教官が二人で仲良く来れば良いのにね。"


などと呑気なことをおばちゃんは言っていたが、その二人があの店に仲良く手を繋いで入っていくところを想像して、それがあまりの驚愕なシーンのため、恥ずかしながらちょっとちびったぞ。

おばちゃん、パンツどうしよう。


ここまでの成果

魔力回復: 2%

次にスキルを発動するまでのクールタイム: 37時間58分

(最後に今日一番の恐怖にちびっちゃって、スキルがさらに後退しちゃったよ。

おばちゃん、パンツ買ってぇ。)

(この店先で勝負パンツがほしいって言うの。リュウ君はとことんエッチね。)




活動報告に次回のタイトルを記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


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よろしくお願い致します。


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