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27話目 隣町の駄菓子屋にGO


行先に若干の狂いは生じたが、おばちゃんが駄菓子屋でも良いよと言ってくれたので、俺の希望通りに駄菓子屋に行くことになった。

ただ、さすがに梅昆布はちょっとぉ、酸っぱいものが欲しいのはもっと先かなと顔を赤くしてくねくねしながら言っていたので、俺が頼む予定のソース煎餅と海老煎の二つを食べることにした。

う~ん、足りないならおしゃぶり昆布も追加してあげよう。


学校の購買以外で唯一、学校が発行する軍票が使えるのは隣町の店だけだ。

生徒が隣町の店で使った軍票は週に一度、学校の事務室で店主が現金に戻すことができるそうだ。

そういうことで、隣町でも俺たちは普通に買い物をすることができるのだ。

俺たちはお金の代わりとして軍票を使っているが、買い物で困ることはおつりが出ないことだ。

1枚の軍票は100バートの価値があり、週に一度25枚渡される。

例えば75バートの物を買って、軍票を1枚出してもおつりをもらうことができない。

その店主は75バートの物を売って、軍票一枚を換金すると100バートをもらえることになる。25バートの追加のもうけが出るのだ。


まぁ、店側もできるだけおつりが必要な半端な値段設定にならないように工夫しているとのことだ。

食べ物であれば大きさや数、他の品物と組み合わせるとか。

さらに、半端な値段になってしまったら、半端分をまけてもらうように交渉することもしょっちゅうだ。

半端分で儲けるような阿漕な店はあっという間に寮でうわさが広がって、誰もその店に行かないようになるだろうし。

また、そのような寮のうわさが町の人に伝わったら、住民でさえその店に行くことしないだろう。


ソース煎餅と海老煎は一枚50バートだ。

梅昆布とおしゃぶり昆布は1箱、これも50バート。

これらを組み合わせて偶数で買うのがセオリーだな。


まだ、夏の真っ盛り。

日差しがきついため、街道沿いに植えられた木々の木陰を渡り歩くようにして、俺とおばちゃんは隣町へと歩いて行く。

くだらない話をしながらゆっくりと。

隣町の駄菓子屋に行くことよりも、むしろこのダラダラとした時間を楽しむことが目的のように二人で歩いて行く。


やがて、目の前には土壁で囲まれた町の門が見えてきた。

土壁は魔物が直接に侵入しないように、町や学校の土壁は大人の身長よりも高く作られいた。

しかし、定期的に魔物の討伐を町の武人たちが行っているため、町や主要な街道で魔物に襲われることはめったにない。


学校の周囲には全くって言っていいほど魔物はいない。

魔物を狩ると定期試験に点数が加算されるため、暇な生徒が、もちろん幼年魔法術士育成学校の生徒も、魔物狩りに出ていくためだ。

ゴブリンが1点、コボルトが2点、オークが5点、オーガが20点、アラクネが17点が一体倒すごとに加算されることになる。

この辺ではオーク以上の高得点の魔物なんて出ないけどな。

筆記試験が赤点でも魔物狩りで赤点を免れることも可能な場合があるのだ。


ということで、先週も5体のゴブリンが学校の周辺に現れた。

俺もそれを聞いてショートソードを片手に発見現場に駆け付けた。

が、発見から5分も掛からずにゴブリンのなます切り、ゴブリンの黒焼きができ上ったとさ。

俺も後期の試験に向けて1体でいいから倒したかったなぁ。


腕に自信のある猛者は隣町に出かけて行って、魔物狩りをしているとのうわさだ。

もう、そういう奴らは肉壁ちゃんじゃなくて町の武人や冒険者を目指せばいいのに。


門から町の様子を覗くと、町の大通りの両脇にずらっと並んだ様々な商店には人が群がって大混雑、大通りは荷物を運ぶ荷車や大きなかごを背負った人などで人通りが多かった。

ほとんど歩いている人がいなかった学校と隣町を繋ぐ街道とは違って、町の中は大いに賑わっているようだ。


門の両脇で話をしている人たちや待ち合わせをしている人たちの脇を通り過ぎて、俺とおばちゃんは町の中に入った。

街道の夏の自然が作り出す青々しい匂いとは違って、町の中は生活の匂いがした。

両脇の食べ物屋から良い匂いがしてくる。

肉を焼くにおい、魚を焼くにおい、トウモロコシを焼く甘い匂い。


「おばちゃん、俺は肉が食いてぇ。」


おばちゃんはう~んという表情をして、返してきた。


「そんなにお肉が食べたいの。

そういえば今日の夕飯は何だっけぇ。

焼肉だったらいいね。」

「今日の夕飯は豚汁定食だよ。

肉ちょろっと、なぜがジャガイモが我が物顔でどんぶりを占拠している奴だ。」

「さすがリュウ君、午前中の講義の内容は昼食ですべてきれいさっぱり頭から流れ出しても、夕飯の献立はすべて暗記しいるんだ。」

「そんなの当然だろ。俺は飯のために生きているんだ。

生きるために仕方なく食べるなんて、食堂のおばちゃんに失礼じゃないか。

食事を楽しんでこそ肉壁の穴の寮生というもんだ。」

「まぁ、あの中じゃ、碌な楽しみもないからね。

夕飯が豚汁だったら、ここで焼き肉食べってっても良いんじゃない。

かぶらないし。

私がおごってあげようか。」


えっ、マジで。

いや、おばちゃんが何の見返りもなく、そんなことをするはずがない。

今度は5週間の補習に付き合わされるかもしれない。

うかつに肉を2本なんて食ったら、それこそ一生私的囚人となっちゃうかも。


"あんたは何を言ってんの、補習に付き合ってあげたのは私でしょ。

まぁ、あの串焼き2本でリュウ君が私に一生涯年季奉公というのは悪くないかも。"


ぎぁぁぁぁ、俺の人生、800バートなんですけど。

400バートの肉の串焼き2本分の価値しかない人生って、いったいどんだけなの。


"うふふふふっ、リュウ君に串焼き2本買ってあげようかなぁ。

牛と豚どっちが良い? "


出来れば鳥で。

まじで、俺の人生を買い取るつもりかよ。


"あっ、あっちで焼き鳥が3本200バートだって。

あっちにしようか。2本じゃなくて3本だよ。

リュウ君の人生の価値が上ったんじゃない。"


800バートから200バートまで駄々下がりなんですが。


"あははははっ、そうだね。

いずれにせよ、私のお小遣いで買える程度ね。

リュウ君の人生って。"


やっぱり肉の串焼きは我慢します。

たった三本の焼き鳥につられて私的囚人になったら、もう二度と焼き肉を与えてもらえそうにないんで。


"えぇぇぇっ、残念。

でも、ちゃんとお肉は食べさせてあげるわよ。

その分は当然、働いてもらうけど。"


働いて自分で買いまする。


そんなやり取りをしながら町の商店街を奥に進んでいく。

目的の駄菓子屋はここから3個目の角を曲がって、さらに奥にある。

俺たちは1個目の角を通り過ぎ・・・・・・。

ちょっと、あれはなんだぁ。


"どうしたの、リュウ君。突然、心の叫びをあげて。"


一つ目の角の奥には、うわさの大人の歓楽街が広がっているのだ。

例の副業の人がこの通りに入ると本業に大変身するといういわく付きの場所だ。

俺はその通りのたまたま奥の方に視線が行ったときに見てしまったのだ。


この一角に鎮座しているとあるいかがわしい宿か休憩所に入っていくのを。

キラキラした温泉マークの看板が掲げてあったから、大人たちの休憩所であることは間違いないはずだ。

じいちゃん、ばあちゃんがメインの客層だったら、あんなキラキラした看板は必要ないでしょ。


"ここはそういう一角で有名なところだもんね。

私は通りに入ったことすらないけど。

でっ、リュウ君は何を見たっていうの。"


俺はその場所を忘れないようにガン見しながら、おばちゃんの手を取って通りにずいずいと入っていった。


"ちょっと、リュウ君、どうしたの。

どこに行くの。"


あの中に入んなきゃ。見失っちまう。


ここまでの成果

魔力回復: 7%

次にスキルを発動するまでのクールタイム: 32時間09分

(ついに大人の階段を上るのかぁ、リュウ。

どきどきする展開に期待して、スキルを大幅UPさせました。(著者談))


活動報告に次回のタイトルを記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


感想や評価、ブックマークをいただけると励みになります。

よろしくお願い致します。


本作品は前作「聖戦士のため息」シリーズのパラレルワールドの位置付けとしています。

本「聖戦士のめまい」とともに「聖戦士のため息」シリーズも合わせてお楽しみいただけたら幸いです。


"聖戦士のため息シリーズ "

シュウとエリナ、イリーナ、輪廻の会合に集いし面々が活躍するサーガをお楽しみください。


・本編 : 聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます

・別伝1 : 死神さんが死を迎えるとき

・別伝2 : 優しさの陽だまり

・別伝3 : 陽だまりからの贈り物 優しさの陽だまりから

・外伝 : アラナの細腕繁盛記 越後屋の守銭奴教繁盛記

・別伝4 : 炎の誓い


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