23話目 ジェンカの秘めた思い 前編
本日は時間をずらして、3話の投稿となります。
まずは1話目。
私は今、寮の門の前で待っている。
誰を待っているかだって。
でへへへへへっ、リュウ君よ、リュウ君。
これからリュウ君と一緒に隣町に行って、喫茶店でお茶するの。
えっとぉ、これってデートっていうやつよね。
良いんだよね、デートで。
リュウ君とデート。
何か顔が熱くなってきた。
リュウ君とデート。
口元が緩んで、目じりが下がるわ。
でへへへへへぇぇぇぇっ。
うらやましいか、うらやましいだろぉ、ちくしょうめぇ。
おっと、まずい。私の心の中が駄々洩れだわ。
初めてのデートはちょっと顔を赤らめて、もじもじしていた方がかわいいって。
そうすることでオスどもの種族維持の本能を大いに揺さぶって、自分に夢中にさせるんだって。
夜な夜な女子寮で開かれているボルバーナ先生の恋愛講座でバッチリ学習したもんね。もう何度もシミュレーションしたもんね。
えっ、ちょっと待って、ボルバーナちゃんの恋愛講座・・・・・・、大丈夫だよね。
さも、恋愛上級者のように振舞ってたけど・・・・・・。
雑誌で読んだ他人の恋愛体験談を、さも自分の恋愛テクニックのように語っていたわけじゃないよね。
あっ、そうか。
お淑やかな大男さんとはそういう関係だったか。
いつも背中にくっ付いてるんで、お淑やかな大男さんはボルバーナちゃんの執事兼護衛役だと思っていたけど。
なるほどね。
あの感情をまったく表さないお淑やかな大男さんに恋愛感情を持たせるなんて、ボルバーナちゃん、恐るべき恋の戦士だわ。
よし、ボルバーナ教官の教えを守って、私もリュウ君を・・・・・・、でへへへへぇ。
まずい、口元が緩んで、よだれが。
ここでそんな顔を他人に見られたらオスに飢えている雌にゃんこと思われちゃうじゃない。
少なくともリュウ君がここに来るまでは恥じらうかわいい処女を演じる・・・・・、間違った、恥じらうかわいい少女に戻らなきぁ。
自分の心と向き合っていると顔がでへへへになるので、私は気晴らしに周りを見渡した。
何人もの生徒が相手が来るのを待っている。
そうなのだ。
土曜の午後一番にここに立っているのは、そう、私のような恋愛勝者。
これからデートの待ち合わせというヤツだ。
ううううっ、ついに私もこの時、この場所に立ちことができたかぁ。
私は人生の勝利者なのだぁぁぁ。
でへへへへへっ。
あっ、また、よだれが。
でも、私のように彼が出てくるのを待っている女子の中にはでへへへへっを隠さないでよだれがただ漏れしている子もいるわよ。
あぁ、なるほどね。これがガッツクという奴ね。
危ない、危ない。
あういうガッツキが相手に知られるとなかなかうまくいかないって、ボルバーナ恋愛教筆頭司祭様がおっしゃっていたじゃない。
やはり、ポッ、もじもじ作戦だわ。
私は周りにわからないように、口元をハンカチで抑えた。
そうだよ、さっき出た妄想のよだれを拭くためだよ、悪いか。
人生初デートなんだぞ。
よだれぐらい出させろやぁぁぁぁぁ。
あつ、まずい、いけないわ。
だんだん本心が隠せなくなってきた。
人生初デートか、リュウ君と。
素直にうれしい。
副業が強面の厳つい自由業の教官の言っていた通りになった。
教官、ありがとう。
私、教官にどこまでもついていきます・・・・・・、あっ、それはだめだめ。
あの教官を信じて付いて行くなんて、もっと自分を大事にしなきゃ。
いつ副業が、本業に変わらないとも限らないものね。
本業が強面の厳つい自由業になった副業で教官に付いて行ったら、知らない街のいかがわしい休憩所で年季奉公させられちゃうから。
絶対に信じてついてっちゃダメな奴だったわ。
危ない、危ない。
でも、教官たちには感謝。
例の演習事件が勃発する前の日に私は義足の教官といつまで副業にしていられるかわからない厳つい自由業の強面の教官、それと私の密かなライバル、エレン教官に面談室に呼び出されたのだ。
「ええと、ジェンカは3週間後の前期試験に向けて準備していると思うが。」
義足の教官は何が言いたいのかしら。
「はい、少しづつですが試験対策を進めています。」
「まぁ、君のことは心配していないのですけど。
我々にはちょっと気になる生徒がいるんですよ。」
私の話じゃないのか。気になる子? 誰だろ。
「そうだ、リュウの野郎だ。あいつの試験結果を考えると胃が痛くて。」
まぁ、彼は全く勉強と縁がないからね。
でっ、リュウ君の話をなんで私にするのかなぁ。
「試験で赤点を取れば2週間の補習後、再試験だ。
赤点を取った奴でもたいていは補習の効果で、再試験を落ちることはないんだ。
全く同じ問題だからな。
まぁ、試験問題の70%は絶対に肉壁ちゃんとしては覚えておかなければならない内容だからな。
確実に身に着けてほしい知識だから同じ問題にしているわけだ。」
へぇ、そうなんだ。
試験を通じて確実に必要な知識を植え付けるということね。
私たちの学校は私たちの学年しかいないから、試験と再試が同じ問題だなんて言うことが先輩から伝わってこないということね。
「というわけで、今まで再試で落ちる奴なんていなかったんだが。
わかるだろ、ねっ。
ちなみに、再試すら落ちる奴は学校に置いとけない。
学校と行っても、ここは軍の教育施設だからな。
生徒と言いつつ身分は既に軍人なわけだ。
再試に落ちた奴は一年後に別の職校に入りなおすか、軍属としてどこかの軍の施設に就職するかだな。
まぁ、いずれにせよこれからの人生での大きな汚点になることは間違いない。」
「えっ、再試に落ちた奴って、肉壁として魔族軍に竹やり一本で突撃、一発でち~んするんじゃないんですか。」
「まぁ、そんなうわさも流れて、いや生徒にはっぱをかける意味ではそのように言うこともあるけど、実際はそんなことはさせない。
再試に落ちるような奴を軍人としては扱わないんだ。
規律が守れないからね。
魔族との戦闘は厳しいものだ。
規律を守れない者が一人でもいると小隊、或いは中隊規模の崩壊が懸念されるからね。」
「ということで、相談なんだが。
君自身の勉学もあるが、できればリュウの奴の勉強を見てやってくれないと言うお願いをしたいわけだ、教官としては。
赤点をとっても補習を受ければ、まずは再試に落ちるわけがないんだが、リュウの場合は補習もろくに聞いていないだろ。
我々教官としてもリュウの奴だけを見ているわけにはいかないから、どうしても奴を野放しにしてしまいがちになる。
みっちり、奴の勉強を見てやる者が必要と考えている。」
「再試に落ちるぐらい勉強しないやつは退学になっても自業自得と言われればそうなんですけどね。
私たちは彼の聖戦士としての能力、あのスバ抜けた魔力量を惜しんでいるですよ。
それと彼の能力を十分に引き出すことができる優秀な指揮官候補の貴方とのコンビは将来の人類軍の大きな力となるんじゃないかと思っているわけです。」
リュウ君が退学させられる・・・・・・・。
彼と離れ離れになる。
嫌だ、絶対に嫌だ。
私のスキルを知っても、なお、私に心を開き続けてくれる彼がここからいなくなるなんて、絶対に嫌だぁ。
ここまでの成果
魔力回復: 3%
次にスキルを発動するまでのクールタイム: 41時間17分
(おばちゃんの妄想回なので俺のスキルに影響なし。)
活動報告に次回のタイトルを記載しています。
お話に興味がある方はお読みくださいね。
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