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最終話 肉壁ちゃんの神スキル

いよいよ最終話となりました。

1年半もの間、お付き合いくださりありがとうございます。


次回作の方でまた、お会い致しましょう。


「おっちゃ~ん、これいくら。」

「10バート。」

「こっちのくじは。」

「それも10バート。」

「何が当たるんだ。」

「くじの箱の横に置いてあるものだな。

ほしいものが残っているかの確認しな。」

「しけたものしか残ってねぇなぁ。

おっちゃん、良い賞品を隠してねぇか。」

「そんなことしてねぇよ。」


店の番台の机に顔を伏せながら、クソガキ共のしつこい質問に答える。


どうしてこうなった。


「ふぎゃぁ、ふぎゃぁ、ふぎゃぁ」

「お父さん、ミズキのおしめかえてよ。」

「ふぎゃぁ、ふぎゃぁ、ふぎゃぁ」

「ほらぁ、早くしないと可愛いお尻がかぶれるよ。」


番台の奥の母屋からまだ赤子のミズキの鳴き声と俺を呼ぶ母さんの声が聞こえる。


どうしてこうなった。


「いま、客のガキどもが駄菓子を選んでいるからここから離れなんねぇ。」


「ふぎゃぁ、ふぎゃぁ、ふぎゃぁ」

「お父さん、お客さんは選ぶのに時間が掛かるから、そんなにベッタリ付いている必要はないよ。

それよりもミズキのおしめが濡れて、泣いているよ。

とっとと代えてやって。」


どうして俺が・・・・・


「母さんは手が空いてないのかぁ。」

「今、子供たちのおやつを焼いているところ。

手が離せないのよぉ。」


はぁ~っ。


まぁ、いつまでもミズキを泣かせては於けないな。

どぉれ。

俺は客のガキどもを一瞥してから、母屋の方に行く。

母屋と言っても店の番台の後ろの壁一つ挟んでいるだけだが。


もう直ぐ生まれて1年になるミズキは籐で編んだ大きなゆりかごに寝かせている。

開店準備と近所のガキどもが群がってくる午後はいつもそうしている。

午前中はずっと俺の背中だ。

母さんのおなかは随分とふくらんでいる上に、ミズキの上の二人の悪ガキのケツを追い駆け回ったり、家事でなかなかミズキの世話までは手が回らないのだ。


そうなると当然ミズキのオムツ担当は俺だ。

今から思えば自分でオムツが代えられる凶暴幼女は偉かったんだな。

愚痴っててもしょうがねぇ、オムツを代えてやるか。


はぁ~っ、どうしてこうなった。

軍の年季が明けてからずっとこんな日常だ。


俺と母さん、そして、俺たちの子のソシオとイザトラは2年前にここに越してきた。

軍の年季の3年が明けたのだ。


本当は俺だけでも軍に残って安定な収入を確保したかったが、母さんが三人目を身ごもったこと、たまたま門前町の下町で駄菓子屋を営む老夫婦が店をたたむという情報をお淑やかな大男さんと凶暴幼女、座敷童帝様のトリオが聞きつけて俺たちに教えてくれたのだ。

いいかげんにソシオとイザトラを託児所に預けて軍で働くのも、身重で戦地で旅団の指揮を執るのも辛かろうと、母さんの将来の夢を知っていた彼らが教えてくれたのだ。

あぁっ、あの日以来、ソシオが母さんのおなかにいることが分かって以来、小遣い代わりのアンパンの支給もなくなり、休みの日の駄菓子屋やお弁当屋さんでの買い食いも控えて、爪に火を灯す思いで貯めた資金を頭金にして店舗を買い取ったのだ。


アンパンの支給が止まってからは母さんが旅団の食堂で握ってくれた塩おにぎりがお小遣いの代わりだ。

そして今は賞味期限の切れた駄菓子が俺の小遣いだ。

市販のアンパンなんて贅沢品は盆暮正月ぐらいしか口に入らなくなった。

あっ、今年の盆はなかったな。

4人目が発覚して。


どうしてこうなった。


ソシオがお腹にいることが隠し切れなくなったところで俺とおばちゃんは旅団司令官に呼ばれた。

こことここにサインしろと2枚の紙を渡されて。

中身を読むことも許されず3秒でサインさせられた。


婚姻届けと家族官舎の申し込み書。


サインした紙を秘書官がニコニコ、しかし、汚物を見るような視線を俺に投げつけてからそれを取り上げ、有無を言わさず手続き開始。

代わりに封筒を二つわたされた。

軍からの結婚祝いと軍の互助会からの手当てだと。


ありがたく頂戴しようとしたら、さっと、トンビが油揚げをかっさらうようにおばちゃんに持っていかれた。

あ~ぁ、現金を最後に見たのはいつだったか。

あっ、駄菓子の代金の小銭以外でだぞ。


どうしてこうなった。


家族官舎で暮らすこと2年。

エレン教官と軍総司令部の玄関ホールで別れてから3年。

家族も4人、うっ、既にお腹にいたから4+1/2人か。

遂に年季が明けた。

俺は年季が明けて即日に今の駄菓子屋兼住居に連行された。

いつの間にか軍を退役していた。

もちろん、退職金なんてものは目にしていない。

そもそもそんなものがあったかも知らんがな。


どうしてこうなった。


午前中は子供の世話。

午後からは開店準備と近所のガキの相手とおしめ換え。

夜は・・・・・・・、まぁ、わかるよな。

5年で子供3人と1/2だもんな。

俺が日中の用事で疲労困憊していても空が暗くなると決まって元気になる御子息様。

俺の意思に関係なくハッスルしすぎだ。


どうしてこう節操がないんだ、お前は。


「おっちゃん、これ買うぞ。」

「おれもこれ。あっ、こっちは妹に持って帰るから包んでくれよ。」


漸く何を買うか決まったか、クソガキ共。

俺は急いでミズキのおしめを換えて、店の番台に戻る。


「これを包めばいいのか、どれ。」


俺は鼻たれクソガキが持っているソース煎餅に手を向ける。


「おっちゃん、これは妹への土産なんだぞ。

おしめを換えた手を洗ったんか。

そんなバッチい手でさわったものを妹に食べさせられるか。」


偉そうに何を言っているんだ、クソガキ。

おまえも少し前まではそのバッチいのにまみれていたくせに。

しかし、こんなクソガキでも一応はお得意様なので反論するわけにもいかずに黙って手を洗いに台所に。


どうしてこうなった。


「父さん、こんなところで油を売ってないで早く店に行って。

これからお客さんが一杯来るんでしょ。

お客さんの回転を上げていっぱい稼いで。

ローンの支払い日がもう直ぐなんだから。

間に合いそうになければ夜は工事現場でアルバイトよ。」


俺の心と御子息様が折れた瞬間だった。


どうしてこうなった。

俺の充実したアンパンライフをかえせぇぇぇぇぇ。


"そんなの決まっているじゃない。

あの日、紙スキルの魔力回復量を読み間違ったからでしょ。

まぁ、私にとっては神スキルだったけど♡。"


俺の神スキルがまさにゴミ屑と化したあの日。


"そうあの日、二人で大人の階段を登ったのよね。

御子息様がハッスルし過ぎて、一発でソシオが降臨。

そして、幸せな日々が始まったのよね。"


どうしてこうなったぁ。


あっ、おれのゴミスキルのせいだやっぱり。


ここまでの成果

魔力回復: 0% + 0%(ボーナス♡) + 0%(ボーナス♥)

次にスキルを発動するまでのクールタイム: 無限大

(あっ、魔力回復が無くなった。)

(ゴミスキル、あるあるってことかぁ。

まぁね、私にとっては幸せを運ん出来た神スキルだったわね♡。

あっ、赤ちゃんがお腹蹴った。(おばちゃんターン))

(一年半の長きに渡り御愛読ありがとうございました。

この物語はここで終わりますが、私のうっすい本は新刊絶賛発売中です♥。(腐女帝様ターン))





9/3より次回作、「精霊と魔物、そして人が渦巻く世界 聖戦士の憂い 」が始まります。

引き続き、宜しくお願い致します。


9/3日は1~8話を一挙に公開予定です。


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