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37話目 決戦 その7

俺の放った転写雷属性魔法フィールドが600m後方のある地点を起点に展開する。

その雷属性魔法フィールドの中は荒れ狂う夏の嵐の様だ。

先に発動した氷属性魔法フィールドは冬の朝のように静けさを持って魔法発動の起点からその範囲を広げていく。

忍び寄る罠のように。


雷属性魔法フィールドが発動している中では金属片や尖った木などがあればそこを目がけて雷が走る。

雷属性魔法フィールドが地面伝いに広がっていくとそれに合わせて雷が横に走り始める。

まるで光の筋が延びるように見える。

それは陽の光のように生きるものを優しく包むようなものではなく、暴力的なエネルギーの塊が進むべき道の途中にあるすべてのものを破壊するように横に走るのだ。

暴力的な光が走ったその先では光の持つ膨大な力が解放され、大きな衝撃と焦げた臭い、白や黒の煙と土煙が乱舞するように舞うのだ。

そんな暴力的な光の筋が一本でも当たれば種族など関係なく一個部隊など軽く殲滅してしまうだろう。


その後方では数えきれないほどのその光の筋が爆音といろいろなものが混じり合った煙り、焼き爛れた臭いを伴いながらエルフ族と獣人族が古くから争ってきた地を疾走している。

この光りの乱舞はまだ始まったばかりであるが、その舞が終焉した後には火山が噴火した後のような不毛の地がただただ広がることになるだろう。

それはまさに地獄絵。

光りの筋の乱舞という地獄に引き込まれて囲まれた者は無事でいられるわけがない。

その命どころか恐らくその生前の姿を保つことすら許されないだろう。


そう、そこはもう地獄そのものなのだ。

氷属性魔法フィールドが静かな死者の眠りの地だとすれば、雷属性魔法フィールドは地獄そのもの。

俺たち右翼攻撃部隊の前後にはそんな死地が広がっているのだ。


俺の前方からは敵兵士の悲鳴が聞こえてくるが、その声は遠い。

近くにいる者はすでに氷の罠にからめとられ、口を動かすことも呻き声すら上げることができない氷の彫刻となったのかもしれない。

一方、俺の後方では敵の悲鳴と怒号、雷が落ちる轟音、木が裂け燃え上がる音、噴煙、焼き爛れた臭いが走って来て、そこが瞬時に地獄に変わったことをいやでも認識させられた。


静かな死地か地獄か。

いずれにせよ敵はそんな生きることが許されない罠の中に囚われて行く。


俺は自分でやった事ながらそんな死地を他人事のようにただただ眺めていた。

今回の任務も終わったかなという死地の中に捕らわれた者たちとかけ離れた思いを持ちながら。

イリーナのような隠匿に優れた敵部隊の存在は今回の作戦では確認されていない。

広範囲に張られた氷の罠に捕らわれて少なくともニャンコ上軍の取りこぼしはほとんどないはずだ。

秘かにこの死地を逃れられた者はもう敵とは呼べない、俺たちに敵対する行為は取れないからだ。



"リュウ君、まだ気を抜かないで。

ニャンコ上軍の右翼はこれまでの戦闘で大きな損害を受けていないわ。

氷の罠を迂回して撤退してきたら厄介な敵になるわよ。

死地から逃れて生地に戻ろうとする者の執念を見くびると痛い目に会うわよ。"


わかった、引き続き敵の動きに注意を払っておくよ。

あっ、敵の動きはある程度止めたけど味方の損害はどうなんだ。


"少なくともリュウ君の発動した両転写魔法フィールドに巻き込まれた味方はいないわ。

ニャンコ中軍の先頭が私たち右翼攻撃部隊本隊の手前100mぐらいの所まで進軍したところで、リュウ君の転写雷属性魔法フィールドに巻き込まれたわ。

私たち右翼攻撃隊の本隊は目の前で阿鼻叫喚の地獄絵図を見せられたようになっているわ。

ニャンコ中軍の先頭集団が雷の光の池に引き込まれて地獄の中に引き込まれたのを見た後続部隊は引き返そうとしたみたいだけど、雷の罠が走る方が早くて逃げられず、ニャンコ中軍の多くが痺れて、そして手に持った、腰に下げた武器等々に落雷の直撃を受けて丸焦げみたいよ。

さすがに最後尾の部隊は撤退できたと思うけど、ニャンコ中軍は戦闘集団としてはもう機能しないわよ。

恐らく逃げた中軍最後尾から雷地獄の情報を得た下軍も安易に戦場に進軍してこないと思うわ。

なにせニャンコ中軍のほぼ一個軍団が瞬時に殲滅されたんだから。"


と言うことは、もう後方からの敵の脅威はないということで良いんだよな。


"その通りよ。

後方の憂いがなくなった今、私たち右翼攻撃部隊本隊もこんな後方にいても仕方ないからこれからリュウ君たち黒い霧担当部隊と合流するわね。"


わかったよ。

俺たちはニャンコ上軍をこのまま監視して、もし氷の罠から逃げ出すことが出来たニャンコ兵を見つけたら即時殲滅するでいいんだよな。


"そうよ。

まぁ、お互いそんなに離れていないから10分もすれば合流できると思うから待ってて。"


了解、おばちゃんわかったよ。


前方からは悲鳴が時々上がるが氷の罠がニャンコ上軍の先頭の方に広がっているらしく、悲鳴の大きさは弱々しいものであった。

後方から聞こえてくる爆音がうるさいせいもあり、前方は戦場とは思えないような静まり方だった。

一方、その後方はまさに果てしない消耗戦のような地獄絵が描がかれていた。


俺はその間に挟まれた地、安寧が支配しているような地に立っている。

雷の地獄と静かな死地の間に奇しくも出来上がった安寧の地にたたずみ、俺は前方の死地を見つめていた。


草むらから凶暴な幼女が突然、顔を出してきた。

あっ、心静かに安寧の地にいる幸せをかみしめていたのに、この地にも血の雨を降らせようとするかのような凶暴な顔をしていた。


「てめぇ、リュウ、余計なことを考えていないだろうな。

ここは戦場だぞ。

今は何とか優位な状況に立っているけどなぁ。

いつ戦況が変るかも知んねぇんだぞ。

ぼけぇとしてんじゃねぇ、弩阿呆が。

ところで、おめえんとこにジェンカちゃんから次の指示は来てねぇか。

予定外のニャンコ中軍の参戦で作戦がぐちゃぐちゃだ。」


おしめ幼女は草むらから顔を出して困ったような眉毛になった。


「おばちゃんがいうにはこれから右翼攻撃部隊本隊をまとめて俺たちと合流するためにここに向かっているから、それまでは前方のニャンコ上軍の監視をしてろって言ってたぞ。

特に右翼は損害が少ないはずだから氷の罠を迂回して撤退してくるニャンコ兵がいるかもって言ってたぞ。」

「そうか。

もし、氷の罠から抜け出てくるラッキーなニャンコ兵がいたらスナイパーさんに狙撃して地獄に送ってもらえばいいよな、仲間が地獄で待っているって。

よし、わかった、本隊と合流するまで警戒待機。

敵影を捉えたら狙撃するって、皆に伝えてくるぜ。」

「ちょっと待て、凶暴幼女。

標的の魔族部隊はどうなった。」

「あぁ、そいつらなら氷の罠で固まったところを念を入れてスナイパーさんに狙撃してもらったぞ。

全員を狙撃できたかまではわかんねぇけど、弩阿呆の氷の罠に摑まっちまえばいずれにせよ生きてはいねぇんじゃないか。」


そういうとまた草の中に潜って言った。


「はぁ~。」


俺はおしめ幼女のそんな姿を後ろからみてため息をついた。

あいつも黙っていれば草むらに隠れる小さな兎みたいでかわいいのにな。

しゃべったら凶暴性が露わになって、台無しだ。


バコッ。


また、こぶし大の石が俺の頭を直撃した。

それで頭を揺さぶられたのか俺はゆっくりと膝から崩れや落ちた。


ここまでの成果

魔力回復: 10% + 30%(ボーナス♡) + 20%(ボーナス♥)

次にスキルを発動するまでのクールタイム: 16時間30分

(スナイパーさんじゃなく、凶暴な幼女に狙撃された。)

(いつもは平気なのにね、大規模転写魔法の連射で疲れたんじゃないの。

まぁ、監視と撤退してくるニャンコ兵の処理はボルバーナちゃんとスナイパーさんたちに任せて、そのまま草むらで寝転んで休んでいたら良いんじゃない。

今日は十分に働いたんだし。

そのまま草むらの中で、そのまま周りからは見えない背の高い草むらの中でね。

じゅるり♡。(おばちゃんターン))

(弩スケベ君、弩阿呆君が倒れたわよ。早く看病してあげてぇ。(腐女帝様ターン))



突然ですが、本作品は8/27日公開 第215部分で終了となります。

1年半もの間、お付き合いくださりありがとうございます。


続けて、9/3より次回作、「精霊と魔物、そして人が渦巻く世界 聖戦士の憂い 」が始まります。

引き続き、宜しくお願い致します。


9/3日は1~8話を一挙に公開予定です。


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