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34話目 決戦 その4

「よしっ、エルフ中隊の黒い霧担当は風属性魔法を発動、黒い霧を吹き飛ばせ。

魔族部隊に近い方から、徐々に黒い霧を吹き飛ばしていけよ。」


おしめ幼女の指示に反応した担当のエルフ兵たちは立ち上がり、作戦通りに風属性魔法を発動し始めた。

もう、ここまで来れば俺たちの存在を隠匿しておく必要はない。

敵が反撃してきても黒い霧は無効化されているので、防御を担当する仲間が対応してくれるだろう。

それに右翼攻撃隊の本隊も黒い霧の無効化が確認できれば、攻撃に出でくれるはずだ。

そうすれば奴らが出ることになっている。

火力バカ共が役立たずの駄犬から凶暴な魔犬に変身し、なりふり構わず敵に噛み付くことだろう。


"駄犬はなりふり構わず近くにいる敵に噛み付くので、ニャンコ軍団のタゲがリュウ君たち黒い霧担当部隊から駄犬共に移るってことで安心して魔族部隊の殲滅に移れるんだよね。"


まさに噛ませ犬。


"本人たちは火力で戦力になっていると思っているところが悲しい所ね。

まぁ、飼い主が魔牛だってところで、飼われている駄犬の性能はお察知さんというところね。"


相変わらず魔牛乳帝様には容赦のないおばちゃん。


「よし、だいぶ薄まったな。

今度は弩阿呆の番だ。

水属性魔法ウォターアローを薄まった黒い霧にあてて、黒い霧を地面にたたき落とせぇ。」


と、下草の中からおしめ幼女の声がした。

声がするだけで姿が全く見えない。

幾ら幼女でもちっちゃすぎだろぉ。


「弩阿呆、てめぇ、また余計なことを考えていないだろうなぁ。

黒い霧が消えたら気をつけろよ。

特にその汚いケツに別の穴が開かないようにな。」


うっ、凶暴幼女の前に出てしまったじゃねぇか。

ケツが無防備だ。

ナイフが突き刺さるかもしれん。


俺は凶暴なおしめ幼女の脅し文句に負けて、ケツの穴をすぼめるように内股で立ち上がった。

そして、おとなしく腐女帝様に転写してもらったウォターアロー・レベル4をレベルアップせずにそのまま黒い霧が立ち込めている範囲にバラ撒いた。

黒い霧に当たったウォターアローは周りの黒い霧を巻き込むかのようにして一緒に消滅した。

黒い霧に当たらなかったウォターアローはそのまま、魔族兵とニャンコ兵に突き刺さっていた。


エルフ中隊の風属性魔法で黒い霧が薄まっても自然と発生した突風としか考えなかったのか、これまで騒ぎ出さなかったニャンコ上軍中央部も、普段のエルフ軍 - ニャンコ軍戦線では発動することなど考えられない水属性魔法が頭上から降って来て、味方が水の矢にぽつぽつとやられることを目のあたりするに及んで漸くニャンコ兵たちは大騒ぎになった。


早朝にエルフ軍第2師団本体の奇襲や進軍中に右翼(意訳: ニャンコたちから見て)からの奇襲を受けてもこれほど混乱はしてはいなかったと思う。

先ほどのエルフ軍の2度の奇襲はニャンコ上軍でもある程度予測していたためうまく対処できたのではあるが、水属性魔法に依る奇襲攻撃、黒い霧の消滅と水属性の魔法の矢による損害は全くの慮外だったためにこのような混乱に陥ったのだろう。


黒い霧担当部隊の奇襲に成功したことに気を良くしたおしめ幼女が立ち上がって、腰に手を当てて偉そうに口を開いた。

あぁ、そんな気がしただけで、実際は下草に姿が隠れて見えなかったがな。


「エルフ中隊の皆、どうやら作戦通りにうまくいったな。

風属性魔法と水属性魔法をこのように発動すれば黒い霧は無効化できるんだぜ。

この手順をよく心に刻み込んでおけよ。

今回の水属性魔法はうちの弩阿呆が一人で発動したけどよぉ、次回は人類軍から何人かの水属性魔法術士が派遣されてきてそいつらと共同で黒い霧の対処に当たることになるはずだよな。

でも、心配することはねぇ。

こんな弩阿呆でもちゃんと黒い霧に対応できたんだ。

次に来る人類軍の水属性魔法術士はこの弩阿呆よりもはるかに優秀なはずだからな。

次もちゃんと黒い霧を無効化出来るはずだ。

自信を持って良いぜ。」


とっ、抱えられて移動してきただけのオムツ幼女がない胸を思い切って張り出して威張っている。

あぁ、実際は下草で隠れて姿は見えずに偉そうな声が聞こえるだけだけどな。


ニャンコ上軍の中央部は黒い霧が消えたのとぽつぽつと降ってくる水の矢で大混乱に陥ったようだ。

ニャンコ兵が「黒い霧が消えたぁぁぁ」、「魔法の矢が振ってくるぅぅぅぅ、逃げろぉぉぉ」と叫びながら、逃げろといってもどこに逃げたらいいのかわからずに、ただただ叫びながらぐるぐる走り回っているようだ。

これはあれだな。

自分のシッポを猫じゃらしだと勘違いして追い回して、ぐるぐる回っているニャンコだな。


その中でも派遣されてきた魔族部隊は黒い霧が消えたり、水の矢が降ってくることに対しては人類軍 - 魔族軍の戦線で何度も経験しているためなのか慌てる様子はなく、消えた黒い霧の補充のためにさらに黒い霧を追加発動しようとしているように見える。


「証拠にもなくまた黒い霧を出そうとしてんぜ。

無駄だよ。

弩阿呆、仲間の阿呆な魔族兵共に教えてやんな。

もう、黒い霧は役に立たないとな。

ガハハハハハハッ。」


まぁ何だぁ、おチビにありがちなヒーローごっこのつもりか。

敵を圧倒する方に立つと威張り散らすよな。

しょうがない餓鬼だなとは思ったが、大人の俺はそれを口に出すことは無くため息を一つついてエルフ中隊の指揮官に話しかけた。


「えっとぉ、まだ魔族部隊は健在で次々と黒い霧を生み出そうとしています。

ある程度黒い霧が上空に溜まったところでまた、風属性魔法を発動してそれを薄めてもらえますか。

薄まったら先ほどと同じように俺がウォターアローで洗い流しますんで。

水の矢に当たった魔族兵は数を減らしていくんで、その内に有効な黒い霧を生み出すことが出来なくなりますよ。」


俺の話にエルフ中隊長は頷くと部下のエルフ兵に指示を出し始めた。


おばちゃん、こちらは順調に作戦が遂行しているぞ。


"こちらでも黒い霧の消滅が確認できたわ。

お疲れさん。

これで作戦の半分は終了ね。"


後半戦は魔族部隊の殲滅とニャンコ上軍への鉄槌か。


"その通り。

リュウ君たち黒い霧担当部隊は新たな黒い霧の発生を妨害しつつ魔族部隊を削って、最後は狩りきってくれるかな。"


あぁ、それは構わないけど。

このまま水属性魔法で黒い霧の無効化と水の矢で少しづつ魔族兵を削っていくことで良いのか。


"そうねぇ、エルフ軍に黒い霧の対応方法をもう少し練習してもらいたいわねぇ。

あと1~2回は水属性魔法で黒い霧の対応と魔族部隊を削って、その後は一気に殲滅しても良いわよ。"


一気に片付けるとなると雷属性魔法を使っても良いのか。


"この後、混乱したニャンコ軍にエルフ第2師団本隊の反攻と私たち右翼攻撃隊の挟撃、期待は薄いけど左翼囮部隊の反撃が始まるわ。

そうしたら、ニャンコ上軍は挟撃に恐怖して雪崩をうって逃亡すると思うのよ。

恐らく一番攻撃の薄い左翼から逃げることになると思うから、そこで待ち伏せて於いて雷属性魔法を広範囲に放って、魔法への抵抗手段を失ったニャンコ上軍を一網打尽というのも良いわよね。"


撤退してきたニャンコ軍を雷属性フィールドに追い込むような感じか。


"そんな感じね。

だから、包囲殲滅されることにビビったニャンコ上軍がいつトンヅラこくかかわからないから、早めに魔族部隊をやっちゃってニャンコ上軍の退却阻止に備えるってことに変更するのはどうかなぁ。"


わかった。

あと、雷属性魔法が使える者がいることをニャンコ軍に知られるのが嫌なら、氷属性フィールドという手もあるぞ。

一応、腐女帝様に転写してもらっているけど。

こんな暑い所じゃ氷属性フィールドの持続時間は短くなるけど雷属性フィールドより魔力は食わないから俺的にはどっちでもいいんだけど。


"う~ん。痺れて動けなくなる雷属性フィールドか。

凍って下手をすれば凍死する氷属性フィールドか。"


数が多いならトドメを刺す必要のない氷属性かな。


"盛りのついたニャンコの氷漬けかぁ。"


いや、パニックになったニャンコの氷漬けでしょ。


"どっちにせよ出来上がりは不気味だけど、無視して放置すれば問題ないわね。

発動時間が短いとはいってもリュウ君の魔法だから、そこに捕らわれたら凍死、或いは凍傷により今後は戦力としては使えなくなるわね。

わざわざ人類の切り札、雷属性魔法術士が来ていることを教えてやる状況でもないかぁ。

うんっ、じゃぁ、ニャンコの氷漬けオブジェ作成の方でお願い。"


了解。

今の作戦をおしめちゃんに伝えてくれるか。


"わかったわ。"


ここまでの成果

魔力回復: 25% + 20%(ボーナス♡) + 15%(ボーナス♥)

次にスキルを発動するまでのクールタイム: 14時間46分

(今のところ作戦は順調だよな。)

(こんなあっさりと黒い霧を無効化できるとはね。(おばちゃんターン))

(これまで絶対的な優位の中で戦ってきた油断よね。

それが一転、暑い草原が氷のオブジェで埋め尽くされることになるとはね。(腐女帝様ターン))



突然ですが、本作品は8/27日公開 第215部分で終了となります.

1年半もの間、お付き合いくださりありがとうございます。


続けて、9/3より次回作、「精霊と魔物、そして人が渦巻く世界 聖戦士の憂い 」が始まります。

引き続き、宜しくお願い致します.


9/3日は1~8話を一挙に公開予定です。


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