23話目 こいつらときたら 前編
「人類軍の黒い霧対策ですか。
雷属性魔法を放つことで闇属性魔法の黒い霧を払うか、でなければ黒い霧の発生源である闇属性魔法術士をその魔法が使われる前に叩くかのいずれかと聞いていますが。
まぁ、事前に魔族軍に紛れている闇属性魔法術士の多くを暗殺や無力化することは不可能なため、実質的な黒い霧の対策としては雷属性魔法を放つのが唯一の手段だと聞いているのですが、違うのですか。」
俺たち旅団側の戸惑い、長く人類軍とエルフ軍は協働してきたのに人類軍の戦闘の帰趨を握る黒い霧の対策を知らないとはという驚きに対して、副連隊長が改めて俺たちに黒い霧対策を聞いてきた。
「なぜ、我々人類軍の黒い霧対策がエルフ軍に伝わらなかったのかと言うことをここで突き詰めることは無意味かと思います。
この場では改めて人類軍の黒い霧対策を理解してもらい、そして今回の作戦についての我々旅団のプランを聞いてもらいたいと思います。」
おばちゃんは何でエルフ軍が人類軍の黒い霧の対策をエルフ軍が知らないかと言うことは今更どうでもいいから、作戦に必要な情報の提示と作戦行動のプランを提示させてほしいと再度要請した。
「わかりました。
人類軍の黒い霧の対策を知ることでその後に提示される作戦プランがより理解できると言うことでしょうか。
我々エルフ軍側としては有効な黒い霧の対策を持っているわけではないので、ジェンカ隊長にこの作戦会議を主導してもらう事に異論はないです。
よろしいですね、クルト連隊長。」
「ひゃ、ひゃい。」
すっかり会議の主導権をパキト副連隊長に引き渡してお客様になったつもりだったのか、突然に自分の名前を呼ばれて同意を求められたことで返事を噛んだ上に、どこに焦点が合っているか定かでないほど目がキョドっている真小者連隊長。
「連隊長の同意も得られましたので、それではジェンカさん、説明をお願いしてもよろしいでしょうか。」
あのキョドった表情とかんだ返事だけで真小者連隊長が同意したことが汲み取れるとは、やはりこの副連隊長はただもんじゃねぇな。
"副連隊長は真小者連隊長の同意を得ようとした訳では無くて、同意したよねと言う問いに返事をしたと言う事実が欲しかっただけ。
何か問題が出てきたら真小者連隊長に責任を取らせるつもりだということじゃないの。"
真小者連隊長の部下は腹黒副連隊長だったかぁ。
「それではエルフ軍側の了解も得られましたので、具体的な今回の作戦提案の前に人類軍の一般的な黒い霧対策をまずは話をさせてもらいます。
この方法を理解してもらえないとその後に話すつもりの今回の作戦案について合理性が判断できませんので、よろしくお願いします。」
おばちゃんの念押しに、さっきの動揺から抜け切れていない真小者連隊長を除くエルフ軍幹部が一斉に軽くうなずいた。
「何度も繰り返しますが、人類軍が魔族軍に対するときに最もキーになるのが黒い霧への対処です。
黒い霧に覆われると視界が悪くなるのはもちろん、一切の4属性魔法が使えなくなります。
これは人類軍だけでなくエルフ軍もそうであることはこれまでの戦いから経験されていることだと思います。」
おばちゃんの問いかけにエルフ側は同意の頷きで答えた。
あぁ、ただ一人を除くのはもう言及しなくても良いよな。
「ところが非常に厄介なことに黒い霧の中では人類兵とエルフ兵の魔法は使えないのですが、魔族兵は問題なくその中でも魔法を発動することができます。」
おばちゃんの今の発言でエルフ側が一様に驚きの表情を張り付けている。
流石、幹部なだけあってその驚きを声に出すことはなかったが。
一名、「ひぇぇぇぇぇっ」と叫んだ奴についてはもう人の数に入れてはいけないだろう。
「それと人類兵の多数を占める非魔法術士はスキルと言う4属性魔法とは別系統の魔法のようなものを使えるのですが、これも黒い霧の中でも問題なく使えることが分かっています。
エルフ族のほとんどは風属性魔法が使えるため、人類のように4属性魔法が使えない代わりに4属性魔法とは別系統にあるスキルを使えるものはいないと聞いています。」
このおばちゃんの言葉に反応して、テーブルに着いたエルフ軍幹部、腹黒副隊長ではない者が割り込むように発言してきた。
「なるほど。
そのスキルというものを発動することで黒い霧の中でも魔族軍と戦うことができると言うことですか。
人類兵の多くが非4属性魔法術士と言うことでしたので、黒い霧で囲まれても人類軍の戦力に大きな影響はなく戦えると言うことですな。」
そのエルフ軍幹部の発言にテーブルについているエルフ軍幹部たち、その後ろに座っているエルフ兵は一様に安堵の表情を浮かべて納得したようにうなずいていた。
中には早くもこれでニャンコ軍団に勝ったかのように興奮して顔を赤くする者もいた。
それに対して、逆によりいっそう厳しい表情になったおばちゃんが説明を続けた。
「確かに黒い霧の中でもスキルは使えますが、攻撃系のスキルはほとんどない、少なくとも私の知っている範囲では攻撃スキルを持っている人類兵は一人しか知りません。
黒い霧の中で有効なスキルと言えば防御系スキルですけど、これを所持する人類兵も多くは有りません。
総じて、黒い霧に囲まれた場合には人類軍は多くの犠牲を出してしまいます。」
安堵の表情を浮かべていたエルフ軍側がおばちゃんの応答に今度は顔を青くした。
赤くなったり、青くなったり忙しい奴らだな。
"もう、最後まで人の話を聞きなさいって。
他人の一語一句に反応するなんてね。"
もしかして、エルフ族ってそういう人たちなのか。
理性より感情が優先される。
"要するに乳女のように血流が御子息様や乳にばっかりに行って、肝心の頭に回って行かないと。"
そんな気がしてきた。
エンの仲間だ。
"魔牛♀の仲間だ。"
あっ、そういえばエルフ女子って概ねスレンダーで、乳女じゃないよな。
おばちゃんは俺の言葉をスルーして、エルフ兵たちに呆れた視線を送りつつも、淡々と説明を続けるようだ。
「ええと、人類軍の黒い霧の対処法について説明を続けますね。
最後まで話を聞いてもらってから質問等を受け付けます。
良いですね。
先ほどから述べているように黒い霧に囲まれると部隊としては崩壊する可能性が非常に高くなります。
これはエルフ軍でも同様だと思います。
黒い霧で人類部隊が覆われる過程についてですが、まずは魔族の闇属性魔法術士が自分の周りで黒い霧を発生させて、それを人類軍に目がけて高速で押し流してくるような格好になります。
よって、黒い霧の発生からそれに我々が取り囲まれるまでに若干のラグタイムがあります。」
黒い霧の発生からそれに取り囲まれるまでの経緯を自身の戦闘経験に照らし合わせていたようで、おばちゃんの今の説明に納得したのかエルフ軍側は皆、深くうなずいた。
「このラグタイムを利用して人類軍は黒い霧の排除を試みます。
その排除の方法ですが、風属性魔法により急接近する黒い霧の勢いを緩め、そして、吹き飛ばす様に黒い霧を薄めます。
当然、エルフ軍もこのぐらいは試みているものと思いますが。」
えっ、おばちゃんの問い掛けに何でエルク軍側は全員が下を向いてモジモジしているの。
まさか、風属性魔法で黒い霧に対抗しようとしたことがないの。
"まぁ、あの腹黒い副連隊長ですら目をキョドらせているから抵抗なんてしてないんでしょ。"
うぁ、何だこのやる気のなさ。
大丈夫なのか。
ここまでの成果
魔力回復: 10% + 10%(ボーナス♡) + 40%(ボーナス♥)
次にスキルを発動するまでのクールタイム: 17時間34分
(こんなのと共同作戦なんて成功するのか。)
((´・ω・`)。(おばちゃんターン))
(こいつらに自主性を期待しても無駄よ。
鞭で言うことを聞かせないと。
と言うことで、リュウ君はあの腹黒副連隊長を鞭打ってね♥。(腐女帝様ターン))
活動報告に次回のタイトルを記載しています。
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