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20話目 前門の虎と肛門の狼だぁ

俺たちは蚕棚仕様の三段ベッドに荷物を置いた。

一休みした後にニャンコ軍団 + 魔族部隊と戦うためのミーティングが行われることになった。


ちなみに俺たちが提供された蚕棚3段ベッドはエルフ第2師団では士官用の寝床らしい。

これが一般兵になるとわらを床に敷いただけか、ハンモックらしい。

ベッドがあるだけ贅沢な仕様となっているようだ。


真残念系連隊長にどこのエルフ軍でもこのような宿舎を使っているのですかと尋ねたら。

・・・・・また、泣かれてしまった。

このところの連戦連敗の撤退続きで、まともな宿舎を作れないとのこと。

人類のようにもっと土属性魔法術士が居れば撤退しても直ぐに頑丈な施設が作れるのだが。

骨組みが木で屋根と壁は葉っぱの宿舎を用意するのが最前線では精一杯なんだとか。

南方だからこんな粗末な宿舎でも熱い陽の光を避けられるので十分ではあるのだけどね。

むしろ葉っぱの家の方が風通しが良くてここでは快適かもしれない。


それに、もし外側は立派に作れたとしても、撤退時に内装の家具なんかは移動させられなかったので、結局は寝床はハンモックになりそうだな。

まぁ、俺的には3段ベッドよりはハンモックの方がまだ、プライベートスペースが大きくなりそうな気がする。

3段ベッドの中段と下段じゃ、起き上がることも容易じゃないぞ。

と言うことで、ガタイのでかいお淑やかな大男さん、土壁のリーダー、マスクマンさんらがベッドの上段を使うことになった。

ちなみに俺は下段のエンとお淑やかな大男さんに挟まれた中段になった。


しっかし、狭いよな。


俺は士官なんていう偉そうなもんじゃなくて、所詮は肉壁ちゃんでその上にぺーぺーの新兵なんだから、エルフの一般兵のようにハンモックにしてください。

何ならエルフの新兵さんとベッドとハンモックを交換しても良いです。


え゛っ、エルフ軍の新兵は宿舎ではなく、その周りに生えている木の上で寝るんですか。

流石に木の上で寝たら夜中に落っこちそうなので・・・・・・


"お手間を取らせては申し訳ないので、「今晩」は藪の中でリュウ君と二人で寝ます♡。"


いつの間に湧いたんだぁ、おばちゃん。

俺はここで寝る。

夜に静かに寝られるなんて、何と素晴らしいんだぁ。

流石は士官用の3段ベッド。


"ちっ。"


おばちゃんが舌打ちをして去っていく。


下段にいるエンと暑い暑い、狭い狭いと愚痴を言いながら会議の時間まで蚕棚でゴロゴロしていると、突然に何か刺すような鋭い、燃えるような視線を感じた。

それも一つだけでなく二つだ。

俺は寝返りをする振りをして視線の方向、そう、さっき俺が壊した草の扉の方を見た。

入り口の両側から目から上だけが覗いていた。


一つはねっとりと絡み付くような恨めしい視線。

もう一つは、完全に腐った視線だ。


"くぅぅぅ、こんな狭いところに押しやられていたんじゃぁ、夜這いをかけづらいわね。

やっぱり、「今晩」は夕飯の後に森に引き摺り込むしかないわね。"


腐った視線の方は俺とエンに交互に送られてくる。


そんなギラギラした陽の光の下で何をやっているのやら、おばちゃんとお腐れ様は。


風通しの良い、特に俺が扉を破壊したせいかもしれないが、葉っぱと木で作られた宿舎でのんびりと旅の疲れを癒そうと思ったのだが。

熱く燃えるような、腐った粘り付くような視線にさらされて非常に居心地が悪い。

でも、相手をするととんでもないことになりそうなので、糞熱いのにねっとりとした視線に気が付かないフリをしながら、いつ絡まれるかとびくびくとして脂汗をかいていると漸く待ちに待った会議の時間が来たようだ。


その時だ、熱く粘り付く視線をくれた奴は壊れた扉からサッと侵入してきた。

そいつに寝ている腕を掴まれて俺は蚕棚から引きずり出されてしまった。


それを見た粘りつく腐った視線のお方は、部屋にいるだれもが気付くほどの大きな舌打ちをしたのだ。


「ちぇっ、甲斐性のない奴。

ベッドの上下で一緒に仲良くゴロゴロしているのに何もしないなんて、信じられない。」


いや、甲斐性があってもなくても、腐った本に載るようなことをする気はないから。


"じゃぁ、裏の森で「今晩」に決定ね。

汗をかくからきれいな川の側が良いかなぁ。"


熱いねっとりとした視線で俺を舐め回しながら腕を掴んでいる奴、何でそうなる。

それに夏の夜に藪の中に入ったら、蚊に刺されまくって大変なことになるだろうがぁ。

こんな熱帯にいる蚊なんて変な病気を持っているかも知んないんだぞ。


"虫よけをたっぷり、塗りっこしようね。

当然、素肌に。素肌同士を擦り付けて。

でへへへへっ。"


あぁぁっ、これはまずい流れだ。

夜になる前にこのまま藪の中に引き摺り込まれそうな流れだ。

そして、いけないところに変なものを塗られたら。

がぁぁぁぁ、やばいじゃないですかぁ。


「えっとぉ、おばちゃん、会議室って何処にあるんだ。

今から会議だよね。

さっさと行かないと。

遅れたら、"俺がちゃんと案内をしないからだぁ、腹を切ってお詫びします"と真残念系連隊長が変な騒ぎを起こすかもよ。」


"ぽち、新雑用主任を出汁にして誤魔化そうとしたって、そうは問屋が卸さないわよ。"


えっ、会議よりも藪突入のいけないところに虫よけ塗りっこの方が大事だと言うのか、おばちゃんは。


"当然よ♡。"


その時、俺の救世主が現れた。


「お待たせしました。会議の準備が出来ましたので、会場にご案内しますよ。

手ぶらで構わないので私に付いて来てもらえますか。

中隊長、すみませんが女性の方を外に集めてもらえますか。」


そう、颯爽と現れたのは復活した真残念系雑用主任の連隊長。

案内が板についていますよね。


"ちっ。

どうして、今来るかなぁ。

ほんとに真残念系隊長は気が利かないんだから。

この状況を見ればわかるでしょ。

これから私とリュウ君が藪子作りツアーに行くのが分からないの。"


誰が分かるかぁ。

今から会議だというのがわかっているのに、それをさぼって藪ツアーに行くだなんて。

まして、真残念系雑用主任なんだぞ、そんな気遣いを期待するだけ無駄だろ。

目の前の雑用(意訳: 会議へのご案内)をこなすのに必死で、余計なところまで気が回りませんよ。


"ちぇっ。"


おばちゃんは俺にだけ舌打ちをすると、俺の腕を放して出て行った。

隣の女性用宿舎に入って旅団のメンバーを集めてくるんだろう。


その時、ふたたび粘りつくような腐った視線が俺を捕らえた。


まだそこに居たんですか、腐女帝様。

これから会議ですよ。

絶対にあなた様が期待しているようなことは起きませんって。


というつもりで目に力を込めて、ねばねば視線を放ってくる彼女を見返した。


俺の決意を込めた視線に対して、にやぁ~と何か悪だくみを思いついた越後屋さん?

(意訳: 誰だそいつ)のような表情を俺に向けてきた。


俺はこのままこの宿舎にエンと一緒にいると非常にまずいことが起きそうな気がして、おばちゃんの後を追いかけるようにそそくさと壊れた扉から外に出た。

そして、邪悪な顔をした腐女帝様とすれ違いざまに、奴はとんでもないことを独り言、いや俺に聞かせるように小声でつぶやいていたのだ。


「・・・・・甲斐性なしに自発的な事を期待してもだめよね。

無ければ作れば良いのよね。

幸いにして、奴らはベッドの上下で横たわっている。

上の戸板を外せば・・・・・・

くくくくくくっ、何のことは無いじゃないの。

あっという間に理想のシチュエーション出来上がり。

後は私の想像力の出番だわ。

来月号は鼻血なしでは見らんねぇなぁぁぁぁ。」


これが前門の虎、後門の狼と言うことか。

ぶるっ。

今日は夕飯食ったら新兵らしく、高い木の上で人知れず就寝だな。


ここまでの成果

魔力回復: 10% + 25%(ボーナス♡) + 25%(ボーナス♥)

次にスキルを発動するまでのクールタイム: 19時間11分

(なんだかんだ言って、今日の夜はお外で寝るんだよね♡。(おばちゃんターン))

(俺一人でな。)

(弩スケベ君も同じ木の上に追い込んであげるね♥。(腐女帝様ターン))

(余計なことをすんじゃねぇ。)


活動報告に次回のタイトルを記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


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