12話目 結局はいつもの通りなんじゃないの 中編
「今回の作戦ではいつもの人類軍と魔族軍の前哨戦と同じような仕事、黒い霧の攻防戦をやれば良いっていうことだよね。
そのいつもの前哨戦を制することでエルフ軍がニャンコ軍団と戦い易いように誘導するんだよな。」
おばちゃんはまたにっこり笑って答えた。
「そういうことよ。」
「なんだ、単純な事だったんだな。
俺たちの役割としては黒い霧を取っ払えばいいんだろ。
水属性魔法術士と風属性魔法術士を人類軍から一杯招集して、戦場に連れて行けばいいんだよな。
何時もだったら肉壁ちゃんもそいつらの護衛で連れて行くけど、今回は黒い霧をなくせばお役御免だから肉壁ちゃんや他の魔法術士は人類軍に留守番と言うことで。」
「リュウ君、そうもいかないわよ。」
「えつ、そうなのか。
どの辺がまずいんだ、おばちゃん。
使い慣れたお付きの肉壁ちゃんたちも連れて行かないとその風と水の魔法術士が寂しがるのか。」
おばちゃんはまた真剣な顔に戻り、口を開いた。
「さっきも言った通りに、旅団司令部しては出来るだけ第104旅団だけで解決してほしいようなのよ。」
「えっ、ニャンコ3軍団 + 闇魔族1個連隊を俺たち旅団だけで相手すんのか。
そんな無謀な指示がその書類の中に書いてあったのか。」
「私たちだけではないわよ。
一番働いてもらわなければならないのは、もちろんエルフ軍の第2師団ね。
私たちはあくまでも黒い霧を何とかするだけ。
旅団司令部からのはっきりとした指示としては出ていないけど、文面を読むにエルフ軍第2師団 + 第104独立旅団だけで事に当たってほしいような感じなの。
まぁ、旅団内でその線で今回のミッションをシミュレーションして、戦力的にどうしても足らないのなら他の人類軍を追加招集も致し方なしって感じかな。」
「そんなぎりぎりのリスクのある作戦や戦況が思わしくないから兵をちょっとづつ追加する戦力の逐次投入はあまりいい手ではないと思うけど。
もう相手の戦術も戦力もほとんどわかっているんだから、最初から多数の水と風属性魔法術士を、ついでに炎属性魔法術士も連れてって、一気にニャンコ軍と魔族部隊を叩かくのが定石じゃないのか。」
今度はおばちゃんが一つため息をついて、答えた。
「私もそうした方が良いと思うんだけどね。
今の人類軍の状況としては昨年と今年と魔族軍に押されていた戦線を元の状況に戻すことに戦力を回したいので、エルフ軍の援助のために大きな戦力を割けないと事情もあるのよ。
それにもう一つ、私たちの今回の作戦をより良い形で終わらせるためにも人類の方面軍は各担当地域で頑張ってほしいところもあるのよね。」
「今回の作戦をより良い形で終わらせる? 」
ニャンコ軍団を追い払えば良いんじゃないのか。
「さっき、勝利条件を確認した時のことを覚えているかな? 」
「それはだから派遣されている魔族部隊、闇魔族の黒い霧を無力化することだったよな。」
「それじゃなくて、その考えに至る前に話していた勝利条件の方よ。」
「黒い霧の無効化の前に考えていた勝利条件かぁ。
何だっけか。
腹が減ってきたな。
頭に血が巡らないよ。」
「もうしょうがないポチね。
ほら、これでも食べて考えなよ。」
と言うとおばちゃんは今日のお小遣い代わりの小さなアンパンをカバンから出してきた。
えっとぉ、それを今食べたら昼食後の楽しみのアンパンタイムがただの番茶タイムになっちゃうんですけど。
"だったら、空腹を我慢して私の質問を良く考えて。
それにもう直ぐお昼の時間だから、そんなに待たなくても良いはずよ。"
しょうがない。
ここでアンパンを食べる訳には行かないな。
ただでさえ、小さいのを1個しか食べらんないんだから。
勝利条件ねぇ。
あっ
「ニャンコ軍団に派遣されてきた魔族部隊を殲滅するか魔族領に帰ってもらうかだったような。」
「そうそう、ちゃんと覚えているじゃない。」
「えっとぉ、そのより難しい勝利条件を達成できた方がエルフ軍にとっては後の心配が少なくなるからより好ましい結果とはいえると思うけど。
そのより難しい勝利条件と俺たちだけで派遣されている魔族部隊を無効化するのとどんな関係があるんだ。」
「大いにあるわよ。
人類軍がこれから魔族軍に反攻に出ることで、これまで余裕のあった魔族軍はどうなるでしょうか。」
だから今は次々と質問されても腹が減って頭が回らないと何度言ったら・・・・
"ちゃんと考えて、ポチ。
正しく答えられたら普通サイズのアンパン一個分のお小遣いを上げても良いかなぁなんて気になるかもよ。"
えっ、マジで。
ちょっと待って、真剣に考えるぞ。
人類軍が反攻に出ることで、それを受ける魔族軍は局地的にではあったけど連戦連勝の楽観ムードから再び厳しい戦いになるということを感じるよな。
"もう一歩ね。
魔族部隊は魔族軍がどういう状況にあったから派遣出来たのでしようか。"
それは敵である人類軍に連戦連勝で大いに士気が上がり、戦力に余裕があったから派遣されて・・・・・
「そっかぁ。
人類軍が反攻に出ることで余裕のなくなった魔族軍はニャンコ軍団に魔族部隊を派遣させておく余裕がなくなるのかぁ。」
「よくできました。
それにニャンコ軍団の手伝いに来たのに私たちに黒い霧を無効化された魔族部隊は役立たず。
魔族軍本体の人類軍との戦況への危機感もあって、おそらく、ニャンコ軍団に派遣されている魔族部隊は本国に引き上げとなるんじゃないかしら。」
「魔族部隊の撤退は勝利条件のより難しい方かぁ。」
「それを達成したとなると、わかるわよね。」
「えっ、なんか良いことがあるのか。」
「前の作戦でイリーナをとっ捉まえたのに手に入らなかった特別報奨金がガッポガッポと。
それに今回は旅団司令部だけでなくエルフ軍からもガッポガッポと。
手の打ちようがなくてズルズル戦線を後退させられてきた原因の魔族部隊を排除するんだから当然よね。」
流石だ。
守銭奴教の主席司祭様、司教昇進間近と言われた、おばちゃんだ。
困難なミッションを達成するにはそれなりのモノをよこすのが筋ってもんだろうがぁぁぁぁぁ、ってことですね。
"当然じゃないの。
まして、今回はエルフ軍の手伝いなのよ。
それも一個中隊規模でニャンコ兵とはいえニャンコ上軍の1個軍団の壁を越えて、1個連隊の闇魔族を無力化せよというとんでもない無理難題を押し付けられたのよ。
今回の作戦をより良い形で終わらせたら、駄菓子屋開店資金並みのボーナスが出ても罰が当たらないと思うのよ。
いえ、出なかったら守銭奴の神様に旅団司令部、参謀本部、エルフ軍第2師団に罰を与えてもらうから。"
守銭奴の神様の罰かぁ。
御親戚の貧乏神様を一体、いや、貧乏神一族を擦り付けるとか、とんでもない罰になりそうだな、ブル。
1ヶ月も経たずに全兵員が破産、手元に残ったのは残ったのはパンツとヅラぐらいだな。
"まぁ、それぐらいは当然よね。
そのぐらい困難なミッションと言うことよ。
たった1個中隊にエルフ軍の将来を掛けると言っているんだからね。
あっ、守銭奴の神様の怒りに触れたらヅラなんて残んないから。
まぁ、武士の情けとしてキッタないパンツだけは勘弁してあげよう。"
マジか。
ヅラまで取り上げられるのか。
ここまでの成果
魔力回復: 10% + 35%(ボーナス♡) + 10%(ボーナス♥)
次にスキルを発動するまでのクールタイム: 18時間31分
(ヅラなんて取り上げてどうすんだ。)
(二つ分を合わせて加工して、あの話の長いヅラ校長に売りつけるのよ。
だって、いつ見てもズレていて頭のサイズに会っていないんだもの。
そろそろ替え時じゃない。(おばちゃんターン))
(私は弩阿呆君がパンツを貧乏神様に取り上げられて、弩スケベ君と共用しているところが見たいわ♥。
今回の作戦がうまくいったら良しなに取り計らってくださいませ、守銭奴の神様・・・・・(腐女帝様ターン))
(守銭奴の紙様って、そんな細かいお願いにも答えてくれるのか。
侮れないな。)
活動報告に次回のタイトルを記載しています。
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