8話目 魔族の援軍を叩け
結局はまた魔族退治なのかぁ。
"お隠れ様がいる限りしようがないと言うか、方面軍なんてのは常に魔族と戦っているんだから、特別に私たちだけが魔族と縁があると言うわけじゃないと思うけど。
方面軍のように固定した地域で戦うんじゃなく、参謀本部の都合であっちこっちの戦場をたらいまわしにされることだけが独立旅団と方面軍の違いね。"
配属された時に俺たちは激戦地ばかり行かされるかもって言ってたけど、それが現実になった訳だ。
"そういうことね。
今回はイリーナのような特殊な黒い霧を使うような敵じゃなければいいんだけど、"
「司令官、その風神と雷神は今回派遣されないんでしようか。」
「彼女らは君たちとは別のエルフ軍の手伝いに行く予定だ。
彼らは元々エルフ族だから手伝いと言うより元の所属に戻ったというところか。
君たちは人類領からエルフ領に少し入った比較的近い場所に行ってもらうつもりだ。
エルフ軍第2師団に行ってもらう。」
「第2師団・・・・・、確かエルフ軍は人類の約1/3の規模でしたね。」
司令官は軽くうなずいた。
「兵の数というか元々の人口が少ないからな、エルフ族は。
エルフ軍は軍団制を敷いておらず、軍の一番大きな単位は師団となっている。」
「逆に獣人族は人類軍の3倍の兵力を持っていると聞きました。
兵数だけを比較するとエルフ軍1 : 人類軍3 = 魔族軍3 : 獣人軍9となりますか。
エルフ族は自軍の約10倍の兵力を持つ獣人軍と互角の戦いをしてきたわけですね。」
「そうだな。
エルフ族は兵力の少なさを強力な風属性魔法で補ってきたと言えるだろう。
しかし、今回のように獣人軍に魔族部隊が加担することでエルフ軍は魔法の効力を制限されたため軍事力のバランスが崩れて、兵数に勝る獣人族が一気に有利になったと言う構図だな。
本来なら魔族軍は人類軍との戦いで手が一杯で、いくら同盟関係にあるとはいっても獣人軍の手伝いなどできないはずなのだが。」
司令官の言葉を引き継ぐようにおばちゃんが応える。
「特殊な黒い霧を操るイリーナが人類軍を追い込んだために、魔族軍に余裕が出来てしまった。
その余裕をもって獣人軍への援軍が可能になったと言うことでしょうか。」
おばちゃんの言葉に司令官は大きくうなずく。
「魔族が加担していると思われるのはエルフ軍3個師団に対峙する獣人族軍団だ。」
「えっ、司令官、と言うことはエルフ軍の30%が劣勢に立たされていると言うことですか。」
司令官の面前であるにもかかわらず、俺は思わず大きな声をあげてしまった。
そんなに負けているなんて思わなかったからだ。
人類軍は30個師団の内、明らかな劣勢に立たされていたのは昨年は第17師団、今年は第27師団。
負けている地域はあっても軍全体としてはやや劣勢であるものの概ね互角の戦いを繰り広げていたといってもいい。
しかし、軍全体の30%も劣勢に立たされているということは早晩、戦線全体の崩壊も懸念される事態だと言っても良いかもしれない。
「そういう事態となっている。
君たちの部隊が例の部隊を叩いてくれたおかげで、援軍に出ている魔族部隊も援助を打ち切り、魔族領に帰還する日も近いのではないかと思える。
そうなるとこれ以上はエルフ軍が劣勢に立たされるということは無いと思うのだが、勢いづいた獣人軍の前進を止められるかどうか。
出来れば一刻でも早く魔族の援軍部隊を叩いておきたいところなのだ。
エルフ軍の戦力が大きくダウンすれば人類軍は魔族軍と余裕が出来て援軍に来た獣人軍の相手をしなければならなくなることが一番懸念される展開だ。
というわけで、今回の作戦では風神・雷神の率いる部隊がエルフ軍1個師団の援助、君たち第104独立旅団がもう1個師団を担当し、エルフ軍の劣勢を跳ね返してくれればエルフ軍は危機的状況から脱せられ、人類軍の最悪な状況への展開も抑えられると考えている。」
「司令官、人類軍にはまだ雷属性魔法術士が残っていますよね。
その方もエルフ軍の残りの一個師団に派遣して一気に劣勢を跳ね返すと言う考えは如何でしょうか。」
おばちゃんの質問に司令官は一転してわずかにだが目元を厳しくした。
「短時間でエルフ軍の劣勢を跳ね返すことができるというのなら構わないがな。
実際はどれだけ雷属性魔法術士が所属している部隊をエルフ軍に派遣しておかなければならないかは見通しが建てれらないな。
もし、すべての雷属性魔法術士をエルフ軍に派遣させて、人類軍に彼らがいないことが魔族軍に察知されれば今度は人類軍が魔族軍に攻勢をかけられ、一部の戦線が再び劣勢に陥るかもしれない。
そういった点から、人類軍に雷属性魔法術士が残っている、いつでも劣性を跳ね返せると魔族軍に思わせておくことが必要と考えているんだよ。
これは予想だが雷属性魔法術士が派遣されるエルフ軍2個師団が劣勢を跳ね返せば、残りの1師団に対峙持している魔族部隊は引き上げるのではないかと考えている。」
「その理由をお聞きしても良いですか。」
「一個軍団だけ突出しても結局は周りをエルフ軍に囲まれて窮地に陥るだけじゃないのかな。
これが人類軍と魔族軍の戦線のように突出した魔族軍の後ろには別の魔族軍が控えていていつでも増強できる状況を作れるのならいざ知らず、エルフ軍と獣人軍の戦線では孤立した魔族部隊をフォローしてくれる後ろ盾が期待できないと読んでいる。
多少時間が掛かるかもしれないが結局は突出した魔族部隊を含む獣人軍は周りのエルフ軍に叩かれ、戦線を後退させ、元の戦線に戻るだけだったらいいが、最悪獣人軍の部隊もろとも全滅ということにもなりかねん。
エルフ軍全体が攻勢に出たとなれば突出したその獣人軍に援軍を送ることもままなるまい。
私は3軍の内2軍が叩かれたらもう一軍は戦略的撤退を選ぶと思うが。」
おばちゃんは司令官の言葉にちょっと首を傾げた。
「魔族の部隊だけでしたらそういう考えも出来ますが。
突出した部隊のほとんどは獣人兵なんですよね。
勝っているのに戦略的撤退なんて高等な戦術を良しとして選ぶでしょうか。」
まぁ、そうだよな。
わんこのようにリードを着けられたうちの火力バカどもだったら勢いのまま突撃の一手だな。
「まぁ、その時は遠慮なく袋叩きにすれば良いのではないか。
一個軍団を壊滅させたとあればエルフ軍の士気もこれまで以上に上がり、エルフ軍全体の戦線を押し上げられるだろうし、同盟を組む人類軍の士気も盛り上がるというものだ。
それに2個軍団を叩かれたとあれば残りの1個軍団に派遣されている魔族部隊はおそらく前進を主張する獣人軍団と袂をわけて魔族軍に引き上げるだろうしな。」
「確かにそうですね。
そうするためにも我々第104独立旅団がエルフ軍第2師団を苦しめている魔族部隊を確実に叩く必要があると言うことですね。」
「そういうことだ。
行ってくれるかエルフ領に。」
真剣な表情の司令官の問いかけにおばちゃんは同じく居住まいを正して答える。
「わかりました。
第104独立旅団はエルフ軍第2師団の下に向かい、対峙する魔族部隊を排除して戦線を押し返します。」
おばちゃんが俺たちの部隊の次の作戦を受諾した。
「よろしく頼む。
詳しい資料は外の秘書官に渡してあるからそれを旅団内で検討し、作戦を立案してくれるか。」
「作戦立案の期限はいつですか。」
「遅くとも一週間後までに。
その後の一週間で準備と連れて行く部隊の編制。
2週間後には現地に転移してくれるか。」
おばちゃんは力強くうなずいたのだ。
ここまでの成果
魔力回復: 15% + 30%(ボーナス♡) + 15%(ボーナス♥)
次にスキルを発動するまでのクールタイム: 15時間27分
(さっ、とっとと帰って作戦会議ね。
まずは皆で資料確認からかな。(おばちゃんターン))
(あっ、昼飯の後に文章を読み聞かせられるなんて絶対俺の第2スキルが発動するな。)
(弩阿呆君、寝てもいいけど弩スケベ君の膝枕でね♥。(腐女帝様ターン))
活動報告に次回のタイトルを記載しています。
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