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2話目 これでもう離れられないよな

おばちゃんはエンの頭のてっぺんの毛根を永久になきものとした返しの剣で、エンの後頭部を強打した。

一応はばっちゃの形見の刃のついていない方で討ったようで、血吹雪が舞い上がることは無かったが。

エンは頭のてっぺんに朝日を反射させるようにして崩れ落ちた。

あぁっ、汚物を官舎の前に捨ててはいけませんよ、おばちゃん。


なんて忠告をこのところ機嫌の悪すぎるおばちゃんに言えるはずもなく、俺はおばちゃんに首根っこを掴まれて連行されるような形で歩いている。

余りの機嫌の悪さに旅団の皆も敢えて近づく者はおらず、あの弩S腐女帝様でさえ必要最低限の事務的な話をするとそそくさと去っていく。

俺はその弩S腐女帝様より、嫁の機嫌は旦那が何とかするもんだと言われて、おばちゃんの世話係、不満のはけ口引き受けます係に任命されたのだ。


ちなみに、エンがおばちゃんに折檻された時にはエンのお世話もついでに頼むと腐女帝様には言われたが、おばちゃんの攻撃で今倒れているエンの面倒なんて見ている余裕は全くない。

あっ、余裕が有り余っていても間違いなく放置だけどな。


と言うことで、お淑やかな大男さんチームの魔法術士様様の直々のご命令により、俺はおばちゃんのご機嫌取り、太鼓持ちをする羽目になったと言うことだ。

まぁ、俺に掛かればそんなことは余裕にこなせる。

こう言っちゃなんだが、これまでと何ら変わらないからな。


"しっかりと面倒を見てもらうから、良いわねポチ。

まずはそうねぇ、今晩、腰にタオルすら巻かずに、素っ裸で私の布団に潜り込みなさい。

その後は何も考えず野生の本能に身を任せなさい。

いいわね。"


うぁぁぁ、強制"今晩"だぁ。


"う~ん、今晩なんて待てないわね。

このまま官舎に引き返して私の部屋に直行しようか。

服は途中で脱いでいけばいいわよね。"


朝から"今晩"ですか。


"あ~っ、そうしないと怒りとストレスが溜まって、このばっちゃの形見で周りのモノを見境なくぶった切るかもよ。

目に入るモノすべて。

「今晩」に参加しない御子息様なんていらないわよね。

この際、スパッと逝っちゃう? "


俺の御子息様がリストラ宣言されてるのぉ。

そして、俺は女の子(元)として門前町のおねぇ系の店に再就職ということにぃぃぃぃぃ。


まずい、かなりまずい。

手に持ったままのばっちゃの形見から黒いわかめが大きく立ち上っている。

おばちゃんは、本気だ、かなり本気だ。

本気で御子息様をリストラする気だ。

駄菓子屋開店資金が増えなかったから、マジでリストラを断行する気だ。


「いやぁ、これから仕事でどこかにに行くんでしょ。

直ぐ行かなきゃまずいんでしょ。

まずは用事を済まさないといけないんじゃないかなぁ。

サボると特別報奨金カットどころか、ボーナスまでも減額になっちまうぞ。」


"くくくくっ、それは痛い。

ボーナスカットは痛すぎる。

初のボーナスなんてただでさえ寸志と言われているのに。

これ以上、入ってくる予定の資金が少なくなると年季奉公が明けた時に駄菓子屋どころか新居すら用意できなくなるわね。

もしも不足分の資金を軍に借りたら、さらに年季が延びちゃう。"


そっ、そうだよ。

それが女衒の手なんだよ。

特別報奨金をカットしたのはそういう女衒の思考から、優秀な肉壁ちゃんを借金まみれにして軍から足抜けできないようにして、そして、しゃぶりつくした最後には真の肉壁ちゃんとしての役割、竹槍裸単騎特攻させようとしているためなんだよ。

おばちゃん、そんな軍のたくらみに乗っちゃだめだ。

冷静になるんだ。

特別報奨金を形だけの部下の汚物(意訳: エンのこと)の後始末のために取り上げられて悔しい気持ちはわかるけど、ここぐっとこらえて今日の仕事をきちんとこなそうよ。

女衒に踊らされててはダメなんだよ。


"わかったわ。

危うく女衒の手の平の上で転がされるところだったわ。

ありがとう、リュウ君。

目が覚めたわ。"


おぉっ、わかってくれたか。

さすが旅団の頭脳と言われたおばちゃんだ(よいしょっ。)


"目覚めさせてくれたお礼にリュウ君には今晩私を自由に弄ぶ権利と義務をあげるわね♡。"


今晩の義務って・・・・・・・・・・


「さてと、今晩のご褒美を楽しみにして、心を入れ替えてがんばりますかぁ。」


おばちゃんはそう言うとばっちゃの形見を鞘に戻して、俺の首根っこを放し、今度は手をつないできた。

いつの間におばちゃんのご褒美になったんだ、俺にご褒美をくれるんじゃ・・・・・・


「さっ、行くわよ。

少しでも"今晩"を長く楽しむためにとっとと仕事を終らせるわよ。」


漸くおばちゃんの全身から棘が取れていつもの調子が戻ってきたようだ。

あっ、俺の"今晩"の危機は相変わらず続いているんだけど。


"この先一生逃れられると思うなよ♡、ポチ。"


「えっと、ところで俺はどこに連れて行かれるんだ。

一応は仕事なんだよな、おばちゃん。

また、独立旅団司令部に呼び出されて、イリーナを捕虜にした経緯やエンが第27師団の最前線基地の内装や備品を破壊した経緯を聞かれんのか。」


このまま"今晩"に連れ込まれそうだったので俺は何とかおばちゃんの意識を仕事に向けさせるために聞いた。


「あの騒動について、もう思い出したくもないけどね、既に報告は済んでいると思うわよ。

今日は別件で呼ばれたのよ。」

「俺とおばちゃんだけが関係することなのか。

新たな任務であれば旅団員すべてを独立旅団司令部の会議室に集めてまとめて説明するはずだろうし。

二人だけに関係ることかぁ。」

「二人だけに関係することね♡。

二人だけと言うと、あっ、私とポチの愛の巣(意訳: 新婚さん用の官舎)を何処にするかとか、お仲人さんを旅団司令官か参謀総長のどちらにするかという相談だよね、きっと。」


そんな個人的な話を勤務中にするために呼び出すとは思えないけどな。


「あっ、ところでどこに呼び出されるんだ。」

「旅団司令官の部屋に出頭せよと言う指示が昨日届いたのよ。」

「何でおばちゃんと俺だけが呼び出されたんだろうな。」

「だ・か・らぁ、二人の愛の巣やお仲人さんの件だって♡。」


俺たちは官舎から軍の総司令部を目指してよく整備された石畳の道を歩いている。もうすぐ夏だな。

初夏の強い日差しがエンのもう二度と生えてこないつるつるの頭のてっぺんに反射して俺の目をくらましていたもんな。

エンはきっと夏のボーナスでヅラを買うのだろう。

寸志程度だと言うので、一番安いくっさいゴブリンの毛のヅラしか買えないと思うけど。


"えっ、あんな臭いブツで作ったヅラをつけるの。

幾ら洗っても臭いが取れないわよ。

着けない方がましじゃない。

周りの目線が気になるなら素直に修道院に永久就職すればいいのに。

周りがみんなそう言う頭だと思うからそのうちに違和感を覚えなくなるのにね。

あっ、地獄に行ったら髪の毛なんて気にしている余裕はないほど忙しいらしいから、初めから首チョンしてあげてそっちに永久移住させてあげるのが真の親切ってものよねぇ。"


エン、お前は物凄くまずい状況だぞ。

抜刀術免許皆伝のおばちゃんがこの世の物とは思えない妖艶な切れ味のばっちゃの形見でお前の首を狙っているぞ。


「えぇ、で、何で旅団司令官に呼び出されたんだろうな、二人だけ。

でも、新しい官舎や仲人の話じゃ絶対にないと思うぞ、俺は。」


俺は眩しい朝の日の光に目を細めながらなんとか今日の仕事の方に話を持って行く。


「そうかなぁ。こっそり呼び出されるなんてそれぐらいしか思いつかないんだけど。

仕事の話だったら、少なくても副隊長のクリスの姉御も呼び出されるはずだよね。

今朝食堂で姉御に聞いたら、やっぱり私だけが呼び出されているみたいだし。」

「姉御は今日は確か、残った皆で野戦訓練場で奇襲作戦のための潜伏、移動の訓練をするとか言ってたな。

あの訓練はこの暑さの下じゃぁ辛いからな。

俺も旅団司令部に呼び出された良かったよ、訓練に行かずに済んで。

んっ、ちょっと待って。

私だけって、呼び出されたのはおばちゃんだけってこと? 」

「そうよ、私だけ。

ポチは私のペット枠で連れて行くの。

良かったでしょ、訓練サボれて。

感謝しなさい。

感謝は行動で示してね。

ポチは今晩、まっパで私の布団を温めておくことを命ずる。」


ここまでの成果

魔力回復: 10% + 40%(ボーナス♡) + 10%(ボーナス♥)

次にスキルを発動するまでのクールタイム: 20時間49分

(もうみんなは訓練に出かけたと思うから、ここで逃げて官舎に戻ったら本当のさぼりになるわよ。

もう、ポチは私の側(意訳: ペット枠)から逃れられないのよ♡。(おばちゃんターン))

(ハメられたぁ。)

(弩阿呆君。ここは官舎の門で倒れたままで同じように訓練をさぼった弩スケベ君と愛の逃避行♥という手も残されているわよ。(腐女帝様ターン))

(あぁ、あいつと一緒の逃避行ならポチ枠で良いです。)

(漸く自分の置かれている立場が分かったみたいね、ポチ。

今日は、特に今晩はたっぷりとかわいがってあげるわね♡。(おばちゃんターン))


活動報告に次回のタイトルを記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


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