53話目 作戦の行方 尋問しました
えっ、俺が剣を突き付けているのがイリーナ♂で、おばちゃんがナイフを突き付けているのが彼女さん♂なのか?
「確認させてほしいんですけど。
俺が剣をさっきから突き付けているのがイリーナさんで、初めから気を失っているのがアーラさん、先ほどからそう呼んでいましたよね。
それで間違いないですか。」
彼氏さん、アドリアンさんは何とか頭を上げようともがいているが首まで麻痺があがってきているようで頭をわずかに動かすことしかできかった。
頭を上げることをあきらめたのか、そのまま話しかけてきた。
麻痺が徐々に顔まで広がってきたのか、言葉はか細く、聞き難くなっていた。
「その通りだ。
君が剣を突き付けているのがイリーナ様で我々の部隊の隊長だ。
そして、少女兵がナイフを突き付けて向こうで倒れているのがアーラだ。
アーラはイリーナの副官をしている。
儂は部隊の副隊長だ。
ちなみに我々を罠にはめて捕縛した君たちの名を聞いてもいいだろうか。」
おばちゃん、彼氏さんに逆に聞かれてんだけど。
素直に答えても良いものか。
"別にペーペーの名前を知られたからといってどうってことないじゃないの。
あぁ、私たちが新設された独立旅団と言うのは伏せておいて。
他所から応援に来た部隊と言うことで話をすれば良いわよ。"
「俺はリュウだ。まだ、人類軍ではペーペーの新人隊員だ。
こちらの娘はジェンカと言うんだ。
俺たちは同じ部隊に所属している。」
「そうか、名前を聞かせてくれてありがとう。
リュウ君が雷属性魔法術士なのか。」
その設定のままで良いか。
あまり、弩S腐女帝様のことは知られたくないしな。
「そうだ、俺が雷属性魔法を使ったんだ。」
「なるほどそうか。
我が軍団が目の前の人類軍を相当締め上げていたからな。
その対策として、人類軍の若きエースが出てきたというわけか。」
「俺がエースだとは思わないが、確かに俺たちの部隊は第27師団の後方を攪乱して、戦線を後退させられた原因であるあんたたちの部隊を殲滅すことを目的に派遣されてきたんですよ。
ところで、あなたやイリーナさんの部隊が人類軍第27師団、今戦っている人類軍の後方を荒らしていた部隊だと言うことで良いんですよね。」
少しの沈黙の後にアドリアンさんは答えた。
「まぁ、そういうことになるな。」
おばちゃんが話に割って入ってきた。
「第27師団の偵察部隊は散々あなた方を探しても見つけられなかった。
黒い霧でもない、何か特異な魔法を使う術士があなた方の部隊にはいるんだと思うんだけど。
それって、どんな魔法か教えてもらうわけにはいかないですかね。」
「それは答えられない質問だな。」
「そうですよねぇ。
でも、それを使う魔族兵はだいたいはわかっているけど。」
彼氏さんは黙ってしまった。
しかし、おばちゃんが沈黙されたぐらいで簡単に引き下がらないことはあの手この手でおれを"今晩"に引きこもうとするしつこさから明白だ。
「イリーナさんよね。
特殊な隠蔽魔法の使い手は。」
アドリアンさんは沈黙したままだ。
口を開きたくないのか、しびれが口に上がって来て話ができないのかはわからないが。
「隊長だから、公家のお嬢様だからという理由で、自分の身を犠牲にしてもイリーナさんを逃がしたいわけではなかったのでしょ。
そういえば、去年もイリーナさんを逃がす時間を稼ぐために中隊の全員が自爆した事案があると聞いたわ、そこに倒れているエン君に。」
「まさか、去年もお嬢の部隊に麻痺攻撃を仕掛けたのはそこのリュウ君か。
ここに倒れている汚物ではなく。」
「それに答える必要はないわね。
聞いているのは私たち。
聞きたいのはイリーナさんが持つ特殊な隠蔽魔法。
黒い霧のように水属性と風属性で低減できない魔法。
やっぱり、答えてもらえないかしら。」
少しの沈黙の後、もはや呟くようにしか聞こえない返答をする彼氏さん。
「それは出来んな。」
おばちゃんは一つ小さくため息をつく。
「まぁ、しょうがないわね。
私たちの役割は情報を探る事でなく、イリーナさんの部隊、第27師団の後方をさんざん攪乱してくれちゃった魔族の偵察部隊を叩くこと。」
「部隊全員は叩くことはできなかったけど、部隊の隊長、副隊長、そして、副官と言う主要メンバーを捕らえたということで作戦は成功と言うことで良いんだよな。」
おばちゃんは声を弾ませて言う。
「そうね。
味方の被害はエン君が足に怪我を負ったくらいなんで、今回の作戦は私たちのほぼ完勝と言っても良いわね。」
"リュウ君、これは金一封、二封、三封は第27師団と旅団本部に期待しても良いよね。"
えっと、確か去年は目標の魔族兵を捉まえたら、師団には内緒で、魔族軍から身代金を分捕る計画もあったと思うけど。
"しまったぁ。
最重要人物のイリーナは別として、彼氏さんとイリーナ♂改め新・彼女さん♂のアーラさんだけでも魔族軍に売っぱらえば良かったわぁ。
一人で1億バートぐらいにはなったんじゃないの。
何せ敵のエース部隊の副隊長と副官だもんね。
軍の年季奉公が明けたら速攻でお弁当屋さん開店、いえ、駄菓子屋チェーン店経営が出来たのにね。"
副隊長はまだしも副官何てのは高く引き取ってくれるのか。
"アーラさん♂は魔族軍のエースのイリーナ♂の秘書よ。
イリーナの秘密を、実は男の娘と言うことを含めて、一杯握っているのよ。
人類軍で捕虜になっている間にいろいろな秘密をペラペラしゃべる前に高値で引き取ってくれるはずたわ。
何ならおまけでエン君も付けてあげるわよ。
そうすればもっと値が上がるはずよ。"
いつの間にかせっかく助けたエンが魔族に売られる話になったんだ。
"去年、エン君は第17師団の女衒の教育大隊長から鉱山経営者に二束三文で売られる話があったじゃない。
それよりはエン君も人類の情報を持って魔族軍に売られた方が高くつくわよ。
それにアーラさん♂のことは新しい愛人で、出来ればずっと一緒に居たいと本人も言ってたしね。
きっと魔族軍に行ってもたのしくやれるわよ、エン君も。"
本音は?
"汚物を旅団から追い出せて清々・・・・・
・・・・・・・
あっ、エン君が魔族に行っちゃったら旅団のことも、雷属性魔法術士のお隠れ様のことも、それに使役されるリュウ君のこともみんなバレちゃうわね。
もう、そうなったらこれまで何とか秘匿してきたことが台無しね。"
やっぱり、エンを魔族軍にやらなくて良かったよな。
"やはり、今後の情報秘匿の為にもエン君の首をチョン・・・・・"
あっ、いや、チョンするのはせめて頭の毛根にしてあげて。
教会本山の礼拝堂の裏の修道院で一生涯修行に明け暮れるということで勘弁してあげて。
せっかくこうして一応、助けたんだから。
"リュウ君がそういうのなら仕方ないわね。
我慢してやるか。
なんか魔族軍に売っぱらっても鉱山に売っぱらってもエン君は二束三文にしかならないような気がしてきたから。"
エン、良かったな、汚物で。
今日のおばちゃんのノリでは資産価値がある奴だったら魔族軍に売っぱらわれていたところだぞ。
ここまでの成果
魔力回復: 10% + 15%(ボーナス♡) + 35%(ボーナス♥)
次にスキルを発動するまでのクールタイム: 15時間29分
(彼氏さんの尋問に行き詰っちゃったな。)
(情報が取れなくて更なる金一封が望めないなら身代金で稼ぐしかないのに。エン君が売れないなんて・・・・・(おばちゃんターン))
(弩スケベ君だけを魔族軍に売っちゃダメでしょ。
売るなら弩阿呆君もセットにしてあげて。
そして、二人は一生離れなれない主従の関係に♥♥(腐女帝様ターン))
(おばちゃん、エンだけは魔族軍にただで引き取ってもらおうか。)
活動報告に次回のタイトルを記載しています。
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