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51話目 最前線の向こう側にある荒野の弩真ん中にて、いざ初陣へ 三交点 その15

漸く覚悟が定まったか。

まっくヒヤヒヤさせやがって。

このままぐちぐち言って引き延ばされたらどうなるかとハラハラしたよ。


"リュウ君、彼女さん♂がこちらに来たらまずは背負っている背嚢を確保して。

そして、彼女さん♂をこちらに向かせたまま、イリーナ♂に突き付けているナイフじゃなくて腰の剣を彼女さん♂の首に突き付けて動きを封じて。

腰の剣には確かアイスシールドが転写されていなかったっけ。

イリーナ♂には代わりに私がばっちゃの形見を突きつけておくから。"


彼女さんの背嚢を何で確保するんだ。


"どうもあの背嚢の中に避雷針となるものがいっぱい入っているみたいなの。

イリーナ♂の持ってきたやつは確保したから彼女さん♂の持っている分を取り上げて。

あっ、ケリなんて不意打ちを食らうといけないから、付き出した剣からいつでもアイスシールドを発動できるようにしておいてね。"


わかった。

彼氏さんのはどうする。

あの背嚢が一番でかいような気がするけど。


"あれはほっといて。

降ろされる方がまずいから。"


んっ、そうなのか。

彼氏さんはここから撤退させたフリをして、腐女帝様たちが捕まえるんだよな。

その時に背嚢に入っている避雷針で雷属性の魔法が防御されて逃げられしまわないかな。


"彼氏さんは最悪逃げられても仕方ないわ。

それよりもこの二人を確実に確保する方を優先したいのよ。"


今一おばちゃんの考えが読めないけど、言う通りにするよ。

作戦変更があったらまた指示してくれるか。


おばちゃんは念話で返事するのではなく、静かに頷くことで同意を示してきた。


その間にも彼女さん♂は俺の方にゆっくりと近づいてくる。

もう少しで俺の剣がその喉元に届くかというところまで来た時に彼氏さんが大声を上げた。


「お嬢、待つんだ。

これは絶対に何か罠がある。

やはり、雷属性の魔法術士をこうもあっさりと手放すなんてことは考えられん。」


ギク~ッ。

このおっさん、余計なことを吹き込みやがって。


「彼氏さん、例えこれが罠だとしても彼女さん♂はこちらに来るしかないんじゃないの。

逃げるんだったら、そのタイミングはあったもの。」


俺の代わりにおばちゃんがイリーナ♂の喉元にばっちゃの形見ではなく懐剣を突き付けながら彼氏さんに言い返す。


「じいよ、良いのだ。

悔しいがアーラを人質に取られ、じいまで命の危険が及びそうな段階で私はこいつらに負けたのだ。

もう去年のように皆を犠牲にして、私だけがおめおめと自軍に帰ることなどできるわけがない。

とにかく、じいはアーラとそこの汚物を連れて本隊に戻ってくれ。」


彼女さん♂は俺の顔を睨みつつ、後ろで悲痛な声を出している彼氏さんに静かに告げた。

そして、俺の剣の届く範囲に彼女さん♂は入ってきた。


「そこで止まって、彼女さん♂。

まずは背嚢を地面にいったん降ろしてから、左の方に放り投げてくれ。」


俺は彼女さん♂の喉元に剣を突き付けて、おばちゃんの指示通り、避雷針の類が入っていると思われる背嚢の破棄を要求した。


"背嚢を外したら彼女さんにスタンを発動して動きを奪って。

自由に動けないようにして。"


彼女さんは手を頭から降ろして、背嚢を一度地面に降ろした。

そして、背嚢を軽くスイングさせて左方向に放り投げた。


「これでいいか。

さぁ、アーラを・・・・・・」


俺は彼女さん♂の動きを目で追いながら左足のブーツに刺してある一つの魔道具に魔力を流した。

スタン発動。


彼女さんたちがばら撒いた避雷針に邪魔されることなく、スタンが彼女さん♂にヒット。

最後まで言葉を続ける前に崩れるように彼女さん♂が倒れた。


"良し、これで彼女さん♂を確保ぉぉぉぉぉ。

やったね、リュウ君。"


「貴様らぁぁぁぁ、お嬢に何をしたぁぁぁぁぁ。」


鬼の形相で叫ぶ彼氏さんにおばちゃんがさも当然のように言い返す。


「捕虜の行動の自由を奪うのは定石じゃないの。

さぁ、あなたは約束通り見逃してあげるわ。

とっとと、去りなさい。

当然、わかっているとは思うけどあなた一人でね。

エン君も置いて行ってもらうわよ。

彼女さん♂を置いてここを去れないのならそれでもかまわないわよ。

その場合はあなたも背嚢を降ろして。

スタンで拘束するから。」


彼氏さんは鬼の形相から悔しそうな顔をして答えた。


「やはりそうか。

俺がケガをしていて背嚢を降ろさないとこの汚物を背負って逃げられないことをわかっていたようだな。」

「それだけじゃないわよ。

エン君の両足は杭で地面に固定されているわね。

それを抜かないと連れて行けない。

でも、今、連れて行く価値のないことも悟った。」


「あぁ、その通りだ。

これは儂たちの致命的なミスだ。

まさかこの汚物が雷属性魔法術士ではなかったなんてな。

お前たちのどちらかが実はそうだったんだな。」


おばちゃんは無表情を装って答えた。


「それはご想像に任せるわ。

でっ、どうしますか。

背嚢だけを背負って、逃げますか。

それとも背嚢を降ろして、大事な彼女さん♂共々我々の下に下りますか。

もう、そこのエン君には用はないわよね。

ちなみに私たちを襲って、彼女さん♂とイリーナ♂を助けるっていうのはお勧めできないわ。

さっ、時間がないわよ。

もうすぐ、私たちの仲間がここに援助に来るわ。

そうしたら、彼女さん♂との約束を守れなくなるわよ。」


"リュウ君、アイスシールドの発動を用意。

彼女さん♂を含めた私たちを半円状に囲って。

彼氏さん、自爆するかも。

去年のように。"


えっ、そうなのか。


"愛する彼女さん♂を巻き込み、傷付けるような大爆発にはしないと思うけど。

敵の雷属性魔法術士を葬ることができるなら軍人としてはそういう決断もありだと思うの。"


わかった。

もうアイスシールドを発動して、その手をあきらめさせた方が良いんじゃないか。


"そうね。

じゃぁ、お願い。"


俺は手に持った剣に魔力を流し、スタンでマヒした彼女さん♂の前に高さ3mぐらいのアイスシールドを生成し、コの字状に一番後ろのおばちゃんとイリーナ♂の所まで囲った。

透明感を出すためにアイスシールドをゆっくりと生成したため通常よりも多くの魔力を消費したが、魔力タンクの俺には何のことはない。


"向こう側が見えるようにアイスシールドを張るなんて、さすが私の愛するリュウ君だわ。

ご褒美に一晩中、私をしゃぶりつくす義務をあげるわ♡。"


それって、ご褒美なのか。

使役じゃないのか。


"お黙り、ポチ。"


「彼氏さん、自爆しようなんて無駄死には止めなさいよ。

一緒に逝くのが、地獄への道連れが汚物のエン君だけだなんてシャレにならないと思うわよ。

私たちは彼女さん♂との約束は守るわ。

さぁ、早くここを去って。」

「お嬢との契約は儂がこの汚物とアーラを連れて帰ることだったはずだが。」


おばちゃんはあきれた顔をして、続けた。


「まだわからないの。

そのケガと背嚢を背負ったままじゃぁ、一人で逃げるのが精一杯じゃない。

背嚢を下ろせば一人ぐらい担げるけれど、今度は雷属性魔法を防げなくなるんじゃないの。

私たちは彼女さん♂との約束であなたがこの場を逃げることは見逃すけど、後を追いかけて攻撃しないとは言ってないからね。

まぁ、15分間は"私たち"はこの場を動かないことを約束するわ。

その時間を使って彼女さん♂とイリーナ♂をきちんと拘束し、そして、エン君の救助に当たるから。

その後にあなたを追いかけることにするわ。

わかっているでしょうけど私たちに黒い霧は通用しないから。

隠れてやり過ごすことなんて無理よ。

さぁ、本当に時間がないわ。

今直ぐ逃げて頂戴。

でなかったら、投降の意思有りとして拘束させてもらうわよ。」


おばちゃんが彼氏さんに最後通告をつきつけた。


ここまでの成果

魔力回復: 25% + 30%(ボーナス♡) + 5%(ボーナス♥)

次にスキルを発動するまでのクールタイム: 14時間39分

(彼氏さんどうするかね。)

(どちらでも良いわよ。いずれにせよ、姉御たちに捕まっちゃうでしょ。(おばちゃんターン))

(私は彼氏さんをこの場で縛り上げてニヤニヤする弩阿呆君に1票♥。(腐女帝様ターン))


活動報告に次回のタイトルを記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


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本作品は前作「聖戦士のため息」シリーズのパラレルワールドの位置付けとしています。

本「聖戦士のめまい」とともに「聖戦士のため息」シリーズも合わせてお楽しみいただけたら幸いです。


"聖戦士のため息シリーズ "

シュウとエリナ、イリーナ、輪廻の会合に集いし面々が活躍するサーガをお楽しみください。


・本編 : 聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます

・別伝1 : 死神さんが死を迎えるとき

・別伝2 : 優しさの陽だまり

・別伝3 : 陽だまりからの贈り物 優しさの陽だまりから

・外伝 : アラナの細腕繁盛記 越後屋の守銭奴教繁盛記

・別伝4 : 炎の誓い


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