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17話目 ちょっとぉ、狩る相手が違うんじゃねぇ

「まぁ、俺様の魔力量からすると魔力切れを起こす前には相手の2個小隊なんて粉砕できるけどな。」

「しいちゃん、予定変更。

リュウ君には魔法の転写は必要ないから。」


えっ、小さな盾とシートソードで突撃しろと。

マジですか。


その時、俺の心の女神様、よっちゃんが困った表情をしながら、手を上げて発言を求めた。


「ジェンカ先輩、さすがにそれは。

リュウ先輩がどうなろうが構いませんが、どうせG並みに生命力ですし。

ただ、魔法を転写しなかった私たちの演習の成績がダダ下がりじゃないかと思うんですけど。」

「あっ、確かに、そんなことになるかもしれないわね。

ごめん、この弩阿呆のせいで。

リュウ君はどこまで後輩に迷惑を掛ければ気が済むの。

やっぱり、今すぐここでミンチにしてしまった方が良いかしら。」


それって俺が迷惑を掛けていることになってんのか。


おばちゃんは顎に人差し指を当てて、ちょっと考え込んでいる。


「弩阿保のリュウ君のためによっちゃんたちの成績が下がるのはまずいわね。

もう、しょうがないわね。

しいちゃん、リュウ君にファイヤーボール"ミニ"・レベル1だけ掛けてあげて。

ファイヤーシールドはいらないから。

リュウ君はその転写魔法を心逝くまで相手に放出し続けて。」


また、ミニなの。

何でおれだけいつもミニが付いてくるの。

俺に着いてきて良いのはミニスカートの〇乳エリン教官だけだ。

ちなみに、おばちゃんと凶暴幼女が着ているミニスカートには興味がねぇ。

常にズボンでいろよ。

今日は特に野外演習なんだから・・・・・・


あっ、すいません。

そこの天使のような美幼女様。

首のロープは外してください。

これから敵に転写ファイヤーボール"ミニ"・レベル6を掲げて突撃するんで。

このままだと突撃できません。


「てめぇ、リュウ。

また、証拠にもなく何か余計なことを考えてたんだろ。

二度と失礼なことを考えなくても済むように、このままそこの森の木に吊るしてやる、逝けぇ。」


その時、しいちゃんが森の方を指差しながら叫んだ。


「相手が、敵がすぐそこに来てます。」


「「「「「えっ。」」」」


敵は森の淵まで来ていて、俺たちをすでに発見したようだ。

魔法術士は魔法を肉壁ちゃんたちに転写し始めている模様。

うぁぁぁぁ、やばい。

一方的に、狩られるのかぁ。


「ちょっと、弩スケベなエン君。

斥候職なんでしょ。

何で相手がここまで接近しているのに、今まで気が付かないの。

リュウ君より使えない奴。」


この事態でもボへェーっとこちらを見ていたエンが、おばちゃんに有りがちな強烈な嫌みを言われて、今度はなんで俺がという顔でおばちゃんに反論。


「俺のスキルはホークアイ・レベル1だから、直接見えるものしか見えないの。

森の木が邪魔で、森の向こう側なんて見えないんだよ。」

「そんなことわかってるわよ。

じゃぁ、何でとっとと森の中に斥候に行かなかったの。

初めにそう指示したわよね。」

「ジェンカ、まだ作戦の全てを伝えきってなかったよな。

リュウとじゃれ合ってて。

と言うことはだ、作戦開始がされていない状況だぞ、今は。」


そう言われたおばちゃんは顔を真っ赤にしながら、今度は俺の頭上に鉄パイプを振り上げた。

エンには嫌みで、俺には鉄拳対応ってこと?


「お前がそんなんだから、悪いんだぁぁぁぁぁ。」


降り上げられた鉄パイプは何のためらいもなく俺に頭上に落ちてくる。

やっべぇぇぇ、おばちゃんが切れた。

"怪獣おばゴン、悪いのは全部他人だぁ"に変身してしまったぁ。


俺が小さい頃に鬼籍に入ったというじいちゃんとばあちゃんとの再会を覚悟した。


ガッコーン、鉄パイプが弾かれた。

お淑やかな大男様が魔法防御をするための盾で怪獣おばゴンの渾身の鉄パイプ一撃を弾いたのだ。

そして、またしても、さわやかな笑顔でサムズアップ。

ナイスだ。

相変わらず、ここぞというところで良い仕事をするぜ。


"くううう、止めを刺せなかったぁぁぁ。

一生の不覚。"


おばちゃん、そうがっかりすんな。

その程度の失敗で一生の不覚とか言っちゃってると、己の存在していることすら後悔することになんぞ。


"私はそんなお前がのうのうと生きていることが世間様に申し訳ないと思っているの。"


おばゴンと哲学的な心のやり取りをしているとまた、バッコーンと何かを盾で弾く音が聞こえた。


「先輩方、夫婦どつき漫才はこの演習を生き残ってからゆっくりと一晩中、隣町のいかがわしい宿の玄関ホールでやってください。

副業がいかがわしい宿の客引きの強面教官のプロデュースで。

それよりも、相手チームの攻撃が始まりました。」


よっちゃんがこめかみに青筋を立てる勢いでまくし立ててきた。

そんなに怒るとここにいるおばちゃんのようにおでこにしわが出来ちゃうよ。

可愛い顔にしわができるなんて、それは人類の大きな損失だよ。


"お前に明朝という言葉がない事だけは確定した。"


「ジェンカ先輩、どうしますか。

先ほどの斥侯と突撃の作戦は失敗です。

次の指示をお願いします。

きぁっ、」


ファイヤーボールがしいちゃんの足元に着弾。

お淑やかな大男さんが相手の魔法攻撃を防ぎきれなかったらしい。


「おいっ、そこの凶暴な幼女、お前も壁職だろ。

お淑やかな大男さんを見習って、魔法攻撃を防げ。

ちっこいからって戦場ではそんな甘えは許されないぞ。」


「弩阿呆、俺のスキルは物理防御だ。ファイヤーボールは魔法防御を転写してもらわねぇと防げねぇことはわかってんだろ。」


その言葉を聞いたおばちゃんがついに立った。

二本足で?


あっ、自らファイヤーボールの標的になって、凶暴な幼女を守るのか。

これがおばちゃん、いやおばゴンという怪獣の母性と言うものか。


"今から皆に指示を出すの。

取り敢えず役立たずのリュウ君はその腰にさげたショートソードを体の前に付き出して、森の淵にいすわる敵に突撃して。

とにかく早く森に行って、早く森で逝って。

鬼籍に入ったじいちゃんでも、ばあちゃんでも良いから一緒にお茶でもしてて。"


「よっちゃんはウォターシールド・レベル3をボルバーナちゃんに転写。

ボルバーナちゃんとペーター君は私たちの前に出で敵の魔法を防いで。

転写魔法発動のレベルはリュウ君と弩スケベがはみ出すぐらいの大きさで良いわよ。

小さくていいから厚くしてね。」


エン、お前はどんだけおばゴンに嫌がられてんだ。

名前すら忘れられているぞ。

俺の様にスケベではなく、エッチと言われる程度にしておけ。


"・・・・・・・・"


僅かな沈黙の後に、何かを振り切ったようにおばちゃんはキリリとした表情になって、作戦の続きを話し始めた。

漸くやる気になったか。

戦場ではゴロンとして煎餅をだらだら食べている暇はないのだよ、おばちゃん。


「しいちゃんは火力バカ5人衆にファイヤーボール・レベル3を転写。

火力バカ共は魔力が尽きるまでここから転写ファイヤーボールを打ちまくれ。」


しいちゃんは矢継ぎ早に魔法を転写した。


「よっしゃぁ、漸く、俺たちの出番だぁ、華々しくやるぜぇ。

全員突撃だぁ。」

「「「「おぉっ。」」」」


火力バカ共が"ここで"というおばちゃんの言いつけも守らずに、ファイヤーホールを連射しながら魔法防御が張られている範囲から出て突撃を敢行してしまった。


「戻れぇぇぇ、死ぬぞう。」


火力バカ共に攻撃魔法を転写したのが運の尽き。

どんな命令も聞く耳なんてないよ。

やるか、やられるか、その決着がつくまで止まることはないだろう。


「火力バカバカ共がァぁぁぁ、くっそぉぉぉぉ。

しょうがない。

よっちゃん、ウォターニードル・レベル2をこの弩スケベに転写。

弩スケベは相手の肉壁が転写魔法を使う前に転写ウォターニードルを当てて邪魔して。」

「わかった。俺のスキル、ホークアイは精密射撃に適しているからな。

低レベルのウォターニードルであれば長時間の連射も可能だし。

止めを刺す威力はないけどな。」


おおっ、スケベがダダのスケベでない事をアピールしている。


「最後は弩阿呆の仕事。

さっ、リュウ君、勝ちに行くよ。」


獲物を前にした虎の様に、おばちゃんは舌なめずりをして、俺を睨んだ。


うぁぁぁぁ、狩られるぅぅぅ。

敵の前におばゴンに狩られるぅぅぅ

ちょとぉ、狩る相手が違うんじゃねぇ。


ここまでの成果

魔力回復: 3%

次にスキルを発動するまでのクールタイム: 44時間24分

(おばゴンに狩られそうになり、後退しました。)


活動報告に次回のタイトルを記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


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