表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
160/215

41話目 最前線の向こう側にある荒野の弩真ん中にて、いざ初陣へ 三交点 その5

雷に打たれて崩れ落ちるアーラに私は駆け寄る。

避雷針をばら撒いたにも関わらず、大剣を真上に掲げてそれを振り下ろすのを躊躇ったばかりに落雷の直撃を受けてしまった。

私がこの汚物の言葉に惑わされて迂闊に言葉などを交わしていたため、アーラが汚物の首を狩るのを躊躇ったのだ。


うっ、こいつのせいで、この汚物のせいでまた私の大切な者たちを傷付けてしまった。


「アーラ、大丈夫か。

しっかりしろ。」


私はそう声を掛けて、彼女の下に駆け寄り、その頭を私の膝の上にのせて様子を探った。


「だっ、大丈夫か。俺の新たな愛人、アーラとやらは。

イリーナ、彼女の様子はどうなんだ、雷がその大剣に落ちたみたいだったが。

それにイリーナは雷属性魔法の影響を受けなかったのか。」


そう言う汚物の方を私は怒りを込めて振り向いた。

雷属性魔法を至近距離で放っておいて、大丈夫かとはどういう了見だ。

お前のせいでアーラが傷ついてしまったではないか。

私はアーラの様子が気になりながらも、余りに不条理なことを口走る汚物をさらにきつく睨んだ。


「おい、大丈夫なのかアーラは。

それに君も。」


同じことを繰り返して問う汚物の服は薄汚れてボロボロで、髪の毛はちりちり、ピカピカに光っていた頭の天辺も煤で汚れている。

そうか、こいつの両足に刺さっていた杭、避雷針にも雷が落ちたか、予定通りに。

いい気味だ、自分の足に雷が落ちるとも知らずに雷属性魔法をこんな至近距離で発動するとは。

惜しむらくは避雷針をばら撒いたおかけで、雷属性魔法の威力が分散して、汚物が生きていることか。

まぁ、それはこれから首をこの剣で刎ねればいいだけか。


「イリーナ、黙っていないでアーラの様子を教えてくれ。

それに君は大丈夫なのか。ゲガはしていないか。」


汚物が這いつくばりながらも手を伸ばしながら心配そうに再度訊ねてきた。


「お前がやらかしておいて、大丈夫かとはどういう了見だ。

アーラが逝ってしまったか、そんなに確認したいのか。

それに残念ながら私はほとんど影響を受けていないぞ。」

「俺がやらかした?

何をだ。

俺はマイ・ぶぶぶーとの再会を喜んで。

そして、新たな愛人のアーラとの出会いに胸をドキドキさせていただけだ。」

「何をぬかす。

無害そうにへらへらして近づいて来て、そして、裏で雷属性魔法を放ったんだろうが。

我々を亡き者にするために。

残念だったな、我々が雷属性魔法でやられると同時に、お前も両足に食い込んだ避雷針で同じように逝ってしまうんじゃないのか。

そこから再度雷属性魔法を発動すれば、今度一番影響を受けるのはお前だしな。

さぁ、それでも撃てるか。

私をヤルためにもう一度雷属性魔法を放ってみろ。」


私は散らばった避雷針からできるだけ離れている岩にアーラの背を預けて、転がっている剣を持った。

首を落とすなら剣を振りかぶらなければならないが、落雷の直撃を受けるので、汚物の腹を剣で横に薙ぐことにした。

動かなくなった後で首を刎ねれば良いし。

中身をぶちまけられたら気色悪いが、当初の目標通りにその方が多少は長く苦しんで逝かせることが出来るではないか。


私はそう思うと口元が緩んでくるのが分かった。


「あっ、マイ・ブブブーは大丈夫なようだな。

アーラの方も気を失っているだけなのかな、向こうに寝かせて来た後に君の顔が緩んだところを見ると。

あっ、俺は大丈夫だから。

さっきの雷で足の出血も何とか止まったみたいだから。

アーラの様子を見ていてよ。

もう直ぐ俺の仲間が来て、回復魔法を掛けてくれると思うし。

もう少しの辛抱だ。」


ちっ、足の血が止まったのか。

まぁ、それはそれで良いか、貧血で意識を飛ばされてはかなわないからな。

これから腹を切って苦しませようという時に出血多量で先に逝ってもらっては面白くないからな。


私は腹ばいになっている汚物に近づいて肩を軍靴で蹴り上げた。

何度も。

しかし、汚物はその度にうめくだけで腹を上にしない。

両足が避雷針で地面に固定されているせいだ。

無理に上を向けようとして避雷針が抜けても困るので、私は一旦剣を置き、奴の首根っこを引き摺って反対側に転がした。

奴の腹が上を向いた。

私は剣を両手で持ち、そして、横に構えた。

腹を薙ぎ払ってやる。


私が漸く汚物に昨年来の恨みを晴らすべく近づいたところに、後ろから何か足を引き摺ってくる音が聞こえてきた。


「お嬢、大丈夫か。

敵の雷属性魔法が発動して、その中でも大きな落雷が一つあったようだが。」


漆黒の闇が汚物の雷属性魔法により完全には消失していなかったが、薄まっていた。

その中からじいが出てきて私たちの方に近づいてきた。


「私は大丈夫だ。

ただ、アーラに雷が直撃して、気を失っている。

どの程度のダメージを受けたかは外から見たのではわからないところがあるからな。

じいはどうだ。」

「儂は何とか戦える、いや、逃げることが出来るというところか。

避雷針をばら撒いていなかったら危なかった。

おぉ、こいつか。お嬢の敵は。」

「じい、そうだ。

これからこいつの腹、今、腹をさらけ出させたところだが。

この汚物の腹を裂いてやろうとしていたところだ。

汚物の処理が終わったら、先に退避した仲間と合流し、本隊の待つ陣地に帰還しようか。

じいはアーラを背負えそうか。」

「やるなら急いだ方が良い。

それとさっきのファイヤーボールを従えた人類兵が先にここを離脱した仲間の後を追っているような格好になっている。

仲間と合流するよりも逆方向、来た道を戻るようにしてここを離れた方が良いぞ。

それと、アーラを背負って逃げることは難しいな。」

「では、アーラを二人で両脇から抱えるようにして退避するか。

流石に私も人ひとりを背負って敵の領域から逃げるのはな。」


私は後ろで休んでいるような格好のじいと言葉を交わして、アーラの様子をちらっと見てから、剣を構え直した。

そして、スリッパでひっぱたかれて気絶してしまったGのような恰好をしている汚物を再度見降ろした。


汚物は初めて怒りを込めた眼差しを私に向けてきた。


漸く己の命が消えかかっているのを悟ったか。

もうお前の雷属性魔法でもこの状況、命の灯が消える寸前である状況を変えることは出来まい。

いいぞ、いいぞ、その顔。

憎しみを湛えたその表情。

そうでなければな。

そんなお前をじっくりといたぶりながら地獄に送ってやることを1年間夢見てきたのだ。

そうだ、もっと、苦しめ。

そうだ、もっと、死の恐怖におびえろ。


そして、恐怖におびえて気が狂う寸前にお前の腹を傷付いたアーラのこの剣で薙ぎ払ってやる。


私は剣を構えたまま奴の死への恐怖が高まるのを待った。


「あいつがイリーナの間男か、マイ・ぶぶぶーを寝取ろうとしている奴か。

じいとか言ったな。

絶対に許さん。

叩き切ってやる。」


と、汚物がつぶやくと首を持ち上げて、じいを親の仇を見るような眼をして睨んでいた。


何を言っている。ぶぶぶーの方は相変わらず何を言っているのかわからないが、じいが私の間男・・・・・

こいつはさっきから何を言っているんだ。

じいは私を軍人に育ててくれた師匠で、戦場にあっては私を支えてくれる副隊長だ。

それが間男。

汚物は死への恐怖で頭がいかれたのか。

しまった。

そうなる前に、頭が少しでもましなうちに腹を薙いどくべきだったか。

まぁ、いい。

これで終わりにしよう。


そう決意し、私が剣を払おうとしたとき、氷の塊が天から降って来て、私と汚物の間に突き刺さった。


ここまでの成果

魔力回復: 15% + 20%(ボーナス♡) + 25%(ボーナス♥)

次にスキルを発動するまでのクールタイム: 17時間57分

(エンの腹が危ない。)

(たしかに、腹に溜まった汚物、スケベの塊がまき散らされようとしているわね。

それが第17師団本体の方に流れて行ったら大変な事に・・・・・、パンツの危機ね。(おばちゃんターン))

(でも、その半分が弩阿呆君へ寄せるバラ色の思いなのね、きっと♥。(腐女帝様ターン))


活動報告に次回のタイトルを記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


感想や評価、ブックマークをいただけると励みになります。

よろしくお願い致します。


本作品は前作「聖戦士のため息」シリーズのパラレルワールドの位置付けとしています。

本「聖戦士のめまい」とともに「聖戦士のため息」シリーズも合わせてお楽しみいただけたら幸いです。


"聖戦士のため息シリーズ "

シュウとエリナ、イリーナ、輪廻の会合に集いし面々が活躍するサーガをお楽しみください。


・本編 : 聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます

・別伝1 : 死神さんが死を迎えるとき

・別伝2 : 優しさの陽だまり

・別伝3 : 陽だまりからの贈り物 優しさの陽だまりから

・外伝 : アラナの細腕繁盛記 越後屋の守銭奴教繁盛記

・別伝4 : 炎の誓い


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ