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34話目 最前線の向こう側 虫唾

奴の顔が驚愕に染まるのが私の目でも捉えることができた。

あぁっ、この顔が、奴のこんな顔がずっと見たかった。

漸くこの日が来たか。

心をずたずたに刻まれるような日々からやっと解放されたか。

私は奴が苦しんでいるのを見たためか、念願の日が訪れたことに安堵したためか口元がすこし緩むのを感じた。


もっと奴を苦しめてやらねばならない。

何が起こっているのかしっかりと目で確認させねばならない。

そういう思いで私は奴に私の姿を見せることにした。

"私"が命を狩りに来たことをしっかりとわからせるために、じいとアーラはそのままに、私だけを漆黒の霧から外し、姿を露わにした。


さぁ、もっと、顔を歪めろ。

驚いているだけでは足りない。

両足に刺さった杭で激痛に苛まれる顔を見せろ。

いいぞ、いいぞ。

その顔が私の心の茨を、去年、しっかりと心に撒き付いた棘だらけの茨の鞭を少し緩めてくれ。


お前がどんなに逃げ隠れがうまかろうとも地面に深く食い込んだ杭が邪魔をして、もう走っては逃げられないぞ。

そうだ、お前にはあれが残されているだろう。

一発で形成を逆転できる秘匿の技が。


さぁ、最後の望みをかけて雷属性魔法を発動しろ。

今のお前に残された唯一のできることだろ。

雷属性魔法を発動して、我々を倒し、仲間の助けを待てよ。

優しく杭を抜いてくれると同時に治癒魔法を使ってくれるんじゃないのか。


さぁ、もたもたしていると血と共に、抗う気持ち、生き残ろうとする気力が体から抜け落ちるぞ。

そうなったら、お前が生き抜こうという気持ちを失ったら、今のお前のような醜く歪んだ顔を見られなくなるじゃないか。

私は言ったよな、昨年の戦場で分かれる際に。

この世に生まれてきたことを、この世に存在したことを延々と後悔させてやると。


生きることをあきらめられては、そんな後悔をさせてられないのだよ。

だから、抗え、わたしに。

時間はないぞ、足元が真っ赤に染まって、どす黒い水たまりになって来たじゃないか。

さぁ、もう時間がないぞ。

生かさず殺さずして、足に杭がぶっ刺さったまま延々と激痛を味いさせてやりたいが、生憎と私は治癒魔法は使えないんだよ。

足から流れ続ける、血飛沫を止めてやれんのだよ。


今だぞ、最後の望み、天の上から垂らされた蜘蛛の糸を掴むために、生き残るために、必殺の雷属性魔法を放つなら。

さぁ、放ってみろ。

この状況をひっくり返して見せろ。

最後のあがきを見せてみろ。


そうだ、そうだ、そんな風に私の方に手を伸ばして、さぁ、雷属性魔法を放て。


あははははははっ。


そして、貴様の足に刺さった杭と周りにばらまいた避雷針にお前の雷属性魔法が散っていくのを見るがいい。

雷属性魔法が全く効いていない私が微笑みながらお前の側に行き、この剣、去年逝ってしまった仲間の形見の剣がお前の首に振られるのをその目でしっかりと見るが良い。


雷属性魔法を止められて、剣が振り上げられて、絶望に歪む顔を私に見せろ。

その表情のままでお前の首を狩ってやる。

そして、その首を、絶望に打ちひしがれるお前の首を我が部隊の屯所の門に飾ってやろうではないか。


やがて干乾びてその歪んだ表情が分からなくなったら、皮の袋に入れて、去年逝ってしまった仲間の遺族に好きなだけ蹴らせるのも悪くないな。

まぁ、皆は気味悪がってやらないだろうが。私は形が崩れるまでやるかもしれない。

そうなったら最後には去年のあれで跡継ぎの息子を失ったじいに灰も残らないぐらい業火で焼いてもらっても良いな。


さぁ、早く。

雷属性魔法を放てよ。

お前はもうそれしかないのだろ。

じらしているつもりなのか。

痛みで歪んだ顔なんて、面白くもなんともないぞ。

雷属性魔法を私に向けて放ち、そして、絶望に歪む顔を私に見せてみろ。


・・・・・・・

・・・・・・・


奴の絶望の顔を期待して奴に突撃していた私はその足を止めた。


なぜだ。

お前は、なぜ、雷属性魔法を放たない。

苦痛に顔を歪めながらも、私の方に懸命に手を伸ばして何か語り掛けてくる。


なぜだ。

お前は私にその命を狩られようと、それも絶望という生きていることを後悔させられながら命を狩られようとしているのだぞ。


命乞いか。

いや、その目は媚びる目ではない。

苦痛に顔は歪んでいるが、その目は何かを訴える目。

そして、くそぉ、なんで希望を含んだ目を私に向ける。


私はお前の命を狩ろうとしているのだぞ。

そんな私に何を訴える、どんな希望を持つ。

死神の化身となった私にどんな希望を持つというのだ。

早く命を絶って、苦痛を終わらせてくれというのか。


私はそんな目を向けてくる奴のことが理解できずに、突撃する勢いを緩めてしまった。


なぜだ。

なぜ、その目にさらに歓喜を宿す。

死神の化身の私に会えたからか。

いくつもの人類兵の命を狩ってきた私を漸く捉え、逆に私を打ち取るチャンスが到来したことを喜んでいるのか。


そうか、そうだな。

漸く私の姿を捉えたのだったな。

良いだろう、私の命を狩ってみろ。

そうだ、お前の持つ圧倒的な力、雷属性魔法を発動してみろ。

さぁ、早く。

早くしないと逆にお前の首を狩ってしまうぞ。


さぁ、早く、雷属性魔法を使え。

そして、希望と歓喜の眼差しから、一瞬にして絶望に変わるお前の顔を見せてくれ。


私は奴の歓喜の理由に思い当ると、覚悟を決めて腰から剣を抜き放って、再度奴に迫った。


もう少しで奴の首を狩れる位置まで近づいた。

これをやつに叩き付ければ死神の役目は終わる。

お前はそれでも雷属性魔法を放たないのだな。

なるほど、これまでの戦いで魔力を使い切ったか。

必殺の一撃も放てないほど疲労していたのか。


いいだろう。


絶望に歪んだ顔を見たかったが、雷属性魔法を放てないのなら致し方ないな。

非常に不本意ではあるがこれで終わらせてやるよ。

その分このひと振りに私の恨み、去年お前のために逝ってしまった仲間の無念を込めさせてもらう。


覚悟しろ。


奴はもう私の恨みの剣の届く範囲にいる。

私は抜いた剣を振りかぶり、奴の首を目がけて振り下ろす動作に入った。


さようなら。

私の恨みと仲間の無念をお前と共に地獄におくってやろう。


いざ、さらば。


その時、奴の右手は私の左足の足首をぐっと握ってきて、貧血で焦点がいまいち合っていない目を向けて来て、苦痛で歪む口を開いた。

そして、しっかりとした口調で言い放った。


「マイ・ハニー、漸く会えたね♡。

ずっと君に会いたかった♡。

もう離さない♡。」


うぎぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。


奴の言葉を聞いた私はこの背中に何千匹もの地獄の百足が虫酸を吐き出すのを感じていた。


ここまでの成果

魔力回復: 20% + 10%(ボーナス♡) + 30%(ボーナス♥)

次にスキルを発動するまでのクールタイム: 20時間00分

(何千匹もの百足に虫酸をひっかけられたような感覚を覚えたって、どんだけの破壊力を秘めているんだ、エンの♡は。)

(しかも地獄に居る百足だって。そんなのが一匹でも背中に入り込んで這いまわるだけで狂い死にするわよ、普通は。(おばちゃんターン))

(弩阿呆君は弩スケベ君の♥をしっかりと受け止めてやってね。(腐女帝様ターン))

(腐女帝様の今の言葉だけで俺は狂い死にしました、アーメン♰。)


活動報告に次回のタイトルを記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


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