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14話目 それで良いんだよな

土属性魔法のアースシールドは地面を土属性魔法で再構築し、土壁のような盾を作ることにある。

土壁を盾にして魔法攻撃と物理攻撃を同時に防ぐことが出来る。

土壁と言う性質上、炎、水、風、土属性攻撃魔法のいずれにも強いという、アースシールドはまさに防御魔法の要と位置付けるができるだろう。

但し、地面を張ってくる雷属性魔法と実態がない闇魔法には強い防御力を発揮できないというのが欠点とされている。

アースシールドの発動レベルが上昇するとともに土壁の大きさ、強度、魔法防御力が上昇することになる。

そのため、土壁の大きさを見れば、アースシールドのレベルとその防御力を予測できるのだ。


みっちゃんのアースシールドのレベルが3ということで、俺の魔力で転写アースシールドはレベル4~6までアップさせることができるはずだ。

レベル5のアースシールドであれば土壁の大きさは縦横2m、厚さは1mほどになり、みっちゃんと俺の二人を守るに十分な防御壁となるはずだ。


十分な大きさのはずなのに?


しかし、俺の転写魔法の発動後に目の前にできた土壁は縦横50cm、厚さは25cm程度のものであった。


この程度の大きさはアースシールド・レベル1~2ぐらいではないのか。

できた土壁の予想外の小ささに皆は驚いたのだ。


驚きの気持ちを目元に残しつつ、ジャンカが話を始めた。


「えっと、このぐらいの大きさの土壁だと、魔法レベル1~2ぐらいだと思うのだけど。

ははぁん、リュウ君、さぼったわね。

めんどくさくて、転写魔法の発動時に魔法レベルを上げなかったわね。」


「えっ、俺はちゃんと魔法レベルが2上がるように魔力を込めたぞ。」

「嘘を言っちゃダメ。

今なら、まっとうな道に戻れるから。正直におっしゃい。

嘘つきは犯罪者の始まり。

この小さなうそをきっかけにどんどん大きな悪事に手を染めて行って、そして、1年後には捕まって首チョンの刑ね。

或いは、万が一の幸運を得るために、司法取引して、魔族軍の駐屯地に腹に爆弾を括り付けて裸単騎特攻ね。」


えっ、俺は一年後に首チョンほぼ確定なの。


"そうよ、首チョンもしくは魔族の陣地に裸単騎特攻よ。"


しかし、掃除のおばちゃんは俺をどうしても裸にしたいのか。

スケベ、エッチ、エロおばば。


"誰がエロババァだってぇ。

よくも何度も何度もこんなうら若い乙女を捕まえておばちゃん扱いしたわね。

わたかった、裸単騎特攻はなし、今すぐにやってやるわ。

私をおばちゃん扱いした罪で首チョン確定です。

さっ、首をそこに差し出しなさい。"


その時、訓練場の脇の大きな木のたもとで一仕事終えたやんちゃな幼女が、俺が作った土壁に自分の杖で何か刻み込み始めた。

強度でも確認しているのか、こいつ。


「ジェンカちゃん、これでいいかなあ。

ド阿呆、ここに眠る。

ぷぷぷっ。

自分の墓標を自分で作るなんて。

まさに、ど・あ・ほ・う。」


えっ、俺と真の女神様の初の共同作業である土壁様にこの狂暴幼女はなんていうことをしてくれるんだ。


「んっ、狂暴種の幼女の力で削れる土壁ってどんだけ防御力が低いんだこの土壁。」


エンはそう言うと首に巻かれたロープを持ちあげてべしべし土壁を叩き始めた。

エェェェェン、お前まで俺と女神様の初の共同作業になんということをしてくれんだ。

というか、お前は狂暴種の幼女に木に吊るされて、先に逝っちゃっていたんじゃないのか。


「う~ん、これはアースシールド・レベル5ではありませんね。

ジェンカさんの言う通りで精々レベル2ぐらいでしょうか。

リュウ君、転写魔法をレベルアップさせることなく発動してしまったのではないですか。」


やべぇ、副業が厳つい自由業の強面の教官にサボリを疑われちまったよ。

これは何とか誤解を解かねば。


「教官様、聞いてくだせぇませませ。

儂は転写された魔法のレベルが2上がるように魔力を流してから転写魔法を発動しましただ。」


「そうなると、みっちゃんが緊張のあまりレベル1に満たない状態で魔法を転写してしまったかですね。」


そう言って、副業が厳つい自由業の強面の教官は優しく微笑みながらみっちゃんの方を見た。


うぁぁぁ、俺の真の女神様があわあわしている。

強面の厳つい自由業の方ににっこりされながらそんな言われ方すると"意訳: 俺の言ったことがこなせねぇ使えない奴は遠い町の花街にうっばらうぞ。その乳だったらさぞかし高く売れんだろうなぁ "としか聞こえないからな。

ここは初めての共同作業者である俺が何とかしなければ。


「教官様様のおっしゃる通り、みっちゃんも緊張していたと思われるのであります。

ここはもう一度、やってみるであります。

よろしくお願いしますです、みっちゃん。」


俺がそういうと、みっちゃん半泣きになりながらも、もう一度魔法を俺に転写する準備を始めた。

俺は右手に装備した防御用の金属性アームレストを指さして、ここに魔法を転写するように促した。

あっ、言い忘れたが一度転写された魔法は同じ魔法の、しかも同レベルでないと上書きすることはできない。

したがって、同じ魔法でもレベルが違う場合は別の転写用の魔道具に魔法を転写してもらう必要があるのだ。

ちなみに、転写された魔法はある程度の時間がたてば自然と消滅する。


俺はアースシールドを転写したアームレストに魔力を流し込み、今度はレベル3に上げて、先ほど作った土壁の隣に魔法を発動した。


「「「えっ。」」」

「ぐすん。」


今度は縦横60cm、幅が30cmの土壁ができていた。


「あっ、また墓標ができた。

ちょっど良かったぜ。

スケベ野郎の墓標がなかったんだよなぁ。」


と言うと、狂暴な幼女が持っている杖の先で新たな土壁に何か刻み始めた。

エンの墓標?

俺の後ろでへらへら笑っているエンは何なんだ。

まさかもう化けて出てきたのか。

本体は訓練場の脇の木にぶら下がったままということか。

まぁ、真にスケベなエンの奴のことだから、大人の階段を上らないまま逝っちゃうなんて、悔やんでも悔やみきれないだろうからな。

やっぱ、化けて出てきちゃったか。


「ちょっとは大きくなったが、やっぱり、アースシールド・レベル1強だなこれでも。

リュウ、てめえ、転写してもらった魔法の魔力を吸ったんじゃねぇのか。

おやつ代わりに。」義足の教官

「教官、魔力を食っても腹は膨れませんって。

霞を食ってるようなもんじゃないですか。

霞も食ったことないけど。」


「ところで、このエンの墓標の後ろに腹ばいになれば頭だけは守れんじゃねぇのか。」

「教官、それ以外の場所はどうなるんですか。」

「まぁ、土壁にぶつかったファイヤーボールの炎がシールドを回って、ジュッだな。」

「ジュッ? 」

「焼肉だ。

良かったな、リュウ。

焼肉が食えんぞ、ガハハハハハッ。」


それて、俺が焼けるってことか。

まずい、首チョンを回避してもジュッか。

ちょっとぉ、いずれにせよ授業が終わった後はこの小さい方の墓標にお世話になるってことか。


そのやり取りを半泣きになりながら聞いていたみっちゃんがついに大声で泣きだした。


「うあぁぁぁぁんっ、私の魔法が弱いばっかりに先輩が生焼けのカルビになっちゃったぁ。」


ちょっとぉ、真の女神様、俺まだ焼けてないから。

できれば女神様のお力で俺の窮地を救ってほしいんですが。


ジャンカが大泣きするみっちゃんの頭をなでながらやさしい声で尋ねた。

さすがだ、おばちゃん。

子供の扱いがうまい、すでに子育てのベテランの域に達している。

3人の子持ちっていうこと?


"ド阿呆、私はまだ純潔の乙女よ。

大人の階段すら登ってないの。

ちょっと、黙ってて。

みっちゃんにどうして泣いているか聞いてるんだから。"


えっ、しゃべってませんが。


"もう、お前の存在が邪魔。

早く墓穴に入れ。"


「落ち着いて、みっちゃん。

そんなに大泣きしてどうしたの。」

「だって、うぅっ、あれだけ私の、うぅっ、アースシールドひっくひっく、レベルが3だって、うぅっ、言ったのにぃ。

それでも、うぅっ、良いとひっくひっく、言ったのにぃ。」


んっ、アースシールドのレベルが3だから良いんだよな?



ここまでの成果

魔力回復: 2%

次にスキルを発動するまでのクールタイム: 49時間51分

(何も問題が解決しないのでクールタイムが伸びちゃった。)


活動報告に次回のタイトルを記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


感想や評価、ブックマークをいただけると励みになります。

よろしくお願い致します。


本作品は前作「聖戦士のため息」シリーズのパラレルワールドの位置付けとしています。

本「聖戦士のめまい」とともに「聖戦士のため息」シリーズも合わせてお楽しみいただけたら幸いです。


"聖戦士のため息シリーズ "

シュウとエリナ、イリーナ、輪廻の会合に集いし面々が活躍するサーガをお楽しみください。


・本編 : 聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます

・別伝1 : 死神さんが死を迎えるとき

・別伝2 : 優しさの陽だまり

・別伝3 : 陽だまりからの贈り物 優しさの陽だまりから

・外伝 : アラナの細腕繁盛記 越後屋の守銭奴教繁盛記

・別伝4 : 炎の誓い


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