16話目 第104独立旅団の初任務 まじめに作戦会議だぁ
俺たち新兵の雷属性魔法対策の避雷針についての議論を聞いていた姉御が手を挙げて発言を求めてきた。
「ちょっといいかしら。
魔族の雷属性魔法対策が避雷針だけとは限らないじゃないの。
実際、今の議論でリュウ君の転写スタンであれば避雷針による対策があまり意味がないとのことだから、避雷針の話は一旦置いといて他の対策がなされていないか考えてみる必要もあるんじゃないの。」
「姉御の言う通りね。
敵の作戦の予測を一つに絞るのは良くないわよね。
外れた場合に頭の切り替えや対応が遅くなっちゃうから。」
「ジェンカちゃん、去年の実戦訓練において目標捕捉へのアプローチに何でスタンを使うことになったか、他に方策がなかったのかまで話を戻した方が良いと思うけど。
確かにスタンは今回の敵にも有効であるとは思うけど、さっきから話に出ているように敵もそれなりに対策は考えているでしょうし。
何とかスタンを効かせることを考えるだけでなく、もっと別の作戦がないのかしら。」
腐女帝様から例の魔族の偵察部隊の対策をもう一度見直そうという提案がなされた。
「そういえば何でスタンを使うことになったんだっけっか。」
「弩阿呆はそんなことも忘れたんか。
少しは血液を胃と腸だけでなく頭にも回せよな。」
「まぁまぁ、ボルバーナちゃん。
皆で去年スタンを使うことになった経緯をもう一度見直して、スタン以外の対策を考えて行こうよ。」
「ほんととジェンカちゃんは弩阿呆に大甘だよな。
まぁ、しょうがねぇけどもなぁ。」
凶暴幼女にそんなことを言われたおばちゃんは凄くニコニコしている。
「えっとぉ、目標が毎回第17師団の後方を攪乱してくるのに、師団の索敵では全くその目標を捉え切れていないと言うことから俺たちが対応することになったんだよな。」
「当時、第17師団の索敵以上のことは私たちにもできないということで別の方法で目標を発見することをいろいろ考えたわね。
その中で、雷属性魔法のスタンであれば目標が使用していると考えられる闇属性の遮蔽系の魔法に邪魔されずに目標をその場で麻痺させて動けなくできるということで、索敵しなくても簡単に目標を捉えられると考えたんだよね。
もうどこに目標が潜んでいるかわからないから、それまでの戦闘経験から、目標が潜んでいる可能性の高い場所に広範囲にスタンを展開するというかなり力技の作戦だったわね。
それでもだめだったら、より強力な魔法である雷属性フィールドをさらに広範囲に展開しようという、雷属性魔法術士のエリカちゃんと物凄い魔力持ちのリュウ君がいないと成立しないような作戦だったよね。」
「まぁ、そうするとまずは闇属性の遮蔽系魔法を使って隠れた魔族をどう炙り出すかってのが課題だよな。
前回は力技で一か八かって感じだったからな。」
「ボルバーナちゃんの言う通り、初めから目標の炙り出し方を見直した方が良いわよね。
去年の戦闘経験は相手だけでなく私たちにもあるわけだからね。」
「ジャンカちゃん、その一つが去年やった転写スタンをリュウ君が高密度、広範囲にばら撒くってことよね。
それを作戦の一案として、その他にもいくつ考えたいわね。」
「クリスの姉御、スタンじゃなくて初めから雷属性フィールドを展開するっていうのも悪くないと思うけどな。
雷属性魔法を広範囲に高密度にばら撒くって意味では。」
「グローさん、サンダーアローを放射状に撒くってのはどうだ。
密度は落ちるかもしれねぇけど、魔法の展開速度と威力はスタンや属性フィールドをはるかにしのぐぜ。
そこに目標が潜んでいれば逃げる暇もなく確実に捉えられるんじゃねぇのか。」
「ボルバーナちゃんたちが言うように雷属性魔法は有効な手段よね。
他の属性魔法はどうかしら。」
「2年前も魔族の偵察隊に遭遇してやり合ったことがあんだけどよぉ。
水属性、氷属性魔法はうまくかわされちまったよな。」
「そうねぇ、あの時はウォターニードルを広範囲にばら撒いて相手がずぶ濡れになったところに氷属性魔法フィールドを発動。
氷柱にするって作戦もやったわね。」
今の作戦に興味を持ったのか、グロいギャルさんが一緒に座っているゾンビさんの首根っこを押さえたまま前のめりになって腐女帝様の方に身を乗り出した。
「でっ、どうなったの。」
「凍ったと思ったのは幻影。
アイスフィールドもあっさりと消し去られたわ。」
「エリカちゃん、その時に魔族の姿は見えたの。」
「全く捉えていないと思うわ。
捉えたのは幻影のみよ。」
「そっかぁ。
んっ、でもその時の魔族部隊は水属性魔法を受け切って反撃して来たわけではなく、見方を変えれば水魔法のフィールドから逃避したんじゃないの。」
「アイスフィールドは消失させられたから水属性、氷属性魔法の対策が目標側に全くないって訳ではないと思うけど。
それに人類軍は魔族軍との戦闘で必ず水属性魔法を使うわけだしね。」
「闇属性の魔族は水属性魔法はあまり得意じゃないのよ。
黒い霧を洗い流されたり、薄められたりするから。
まぁ、雷属性魔法の様に決定的にダメって言うわけじゃないでしょうけど。」
凶暴幼女が何か閃いたような表情をしてお淑やかな大男さんの背中から上半身を乗り出すような格好をして口を開いた。
相変わらず生首に体が生えたように見えんぞ。
「だったら、水魔法を広範囲にバラ撒いてある特定の場所に魔族を誘導、そこに雷属性魔法を打ち込むのはどうだ。
初めから雷属性魔法で行くとなると去年叩かれた俺たちの部隊がきたと目標に警戒されるから、まずはいつものように水属性魔法から打ち出してだな。
当然、目標は闇魔族のようだから、奴らは水属性魔法を警戒して逃げ出すというより避ける感じになるよな。
これを四方八方から行って徐々にある範囲に移動するように仕向けるわけだ。
そこにド~ンと。」
「ボルバーナちゃん、それは良い作戦だと思うわ。
そうすると私たち以外にもある程度の水属性魔法部隊を招集しておく必要があるわね。
その各部隊の攻撃に紛れて最後はエリカちゃんとリュウ君でドンね。」
「今のボルバーナちゃんの提言も一案として取り上げましょうか。
どのような部隊を招集するかについてはまた後で話しましょう。
他にはどんな作戦が考えられるかしら。
女子隊員だけでなく、男共もちゃんと考えてよね。」
クリスの姉御が笑みを湛えながら俺たちを再度見渡した。
えっ、俺も考えるのか。
「リュウ君、そのえっ、俺もなの、なんでぇという顔は止めてくんない。
多様な意見を出し合うのがこの会議の目的なんだから。
貴方もこの部隊の隊員なんだからね。
俺は言われた通りにしていれば良いんだろぉ、なんてのは通用しないわよ、ここ第104独立旅団では。
まぁ、シュリちゃんにリードでコントロールされている火力バカ共には全く期待していないけど。
それとグローちゃんに首根っこを押さえられているフェレブ君はこの際、寝ててもいいや。
マスクマンさんは斥候チームの頭として何か思いついたことは話してね。
あと、エン君は、あっ、君は何も話さなくていい。
こっちを見なくてもいい。
もう隅っこで寝てても良いから。
出来れば廊下でバケツを持って立ってて。」
エン、おまえ配属初日から隔離宣言だぞ。
姉御に何かしたのか。
ここまでの成果
魔力回復: 7% + 25%(ボーナス♡) + 30%(ボーナス♥)
次にスキルを発動するまでのクールタイム: 18時間59分
(エンの奴は姉御に何かしたのか。)
(さぁ、何だろう。
姉御もパンツの色を聞かれたぐらいで動揺するほどの子供じゃないと思うし。(おばちゃんターン))
(さぁ、リュウ君。会議室を追い出されたエン君を抱きしめてあげて♥。
もっと親密になるチャンスよぉぉぉぉぉぉぉぉ♥。(腐女帝様ターン))。
活動報告に次回のタイトルを記載しています。
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