14話目 第104独立旅団の初任務 また出たの? あっちの世界の方が
「このまま中隊長の復活を待っていると確実に残業になりそうなので、副隊長の私が話を進めますね。」
そうだ、それでいいのだ。残業何ていやだ。
俺はゆっくりと官舎飯が食べたいんだ。
はっきり言って、学生寮の飯よりおかずが2倍はあるな。
"給料から天引きらしいわよ。
学生寮のご飯は軍の支給だけど、就職したからには自腹ね。
食べないなら前日までに断りを入れないといけないみたい。"
断り忘れた奴がいたら俺に言ってくれ。
俺が食ってやる。
ちゃんと料金も払う。
余りもんだから通常価格の1/50でもいいよな。
「官舎の決まりとかは備え付けの官舎マニュアルを食後に読んでくれればい良いわよ。
給料の振込先は申告済みよね。
おろしたいときには独立旅団司令部の経理係、今日、旅団の入隊式があった会議室の手前の部屋で経理係が誰かを聞けば教えてくれるわよ。
制服などの支給品は備品係、同じようにあの手前の部屋で聞けばわかるわよ。」
もう、これから軍人として生活するためのガイダンスが始まったのか。
いろいろ言われても覚えきれないぞ。
"リュウ君は何も覚えなくていいから。
特に給料の引き出し方なんて。
私がきちんと管理してあげるから。
心配しないで、ちゃんと毎日アンパン2個を買い食いするためのお小遣いは渡すからね。"
なんと!、アンパンを2個も毎日買い食いができるのか。
そんな贅沢が許されるのか。
そうかぁ、俺もついに社会人だなぁ。
そんなにお小遣いが使えるんだ。
"・・・・・まぁ、就職したんだしね、ポチにアンパン2個の買い食いぐらいは許してやるか。
給料の大部分は駄菓子屋開店資金のために貯金させるんだしね。
あっ、リュウ君の実家にもちょこっとだけ仕送りもしておこうかなぁ。
私の名義で。
ご挨拶に伺った時に私の心象も段違いだろうしね。
こんな出来た嫁はいない、是非、婿にもらってくれって、きぁっ♡。"
おばちゃんがさっきよりも一層のデへへへ顔で何かつぶやきながらうなずいている。
隣に座っていると怖いんですけど。
"いいの、いいの。
リュウ君は何にも心配しないで特別報奨金ために魔族をバッタバッタと殲滅することだけを考えていれば。"
「まぁ、新兵としてどう生活するかはおいおいわかってくるとして。
ぶっちゃけ、官舎で食事と寝床を確保すれば生きていけるわよね。
あっ、風呂と洗濯はマニュアルで確認してね。
さってと、新兵のガイダンスはこれで十分でしょ。
今からは初任務について説明します。
そして、明日までに作戦の立案、明後日に必要な部隊編成案を出すための打ち合わせを行います。
これらの作業は全員で行います。
中隊長や指揮小隊、各小隊長に任せずに各自が考えて意見を述べるようにしてね。
これも君たち第104独立旅団の新兵さんに課された訓練の一つなのよ。
良いわね。」
えっ、頭を使うの。
就職してまで頭を悩ませるなんて聞いてないよう。
"私が念話でこっそりアドバイスをあげるから。
それをおうむ返しに言えばリュウ君がちゃんと考えていることを皆にアピールできるからね。"
おばちゃんの悪巧みの念話が聞こえてきているときに、姉御が俺たちの方をじっと睨むように見ていた。
「ジェンカちゃん、念話による不正はないしね。
リュウ君にちゃんと考えて行動するように日ごろから訓練をしておかないとね。
旅団員がバラバラになった時に何をしたらいいかわからずにぼ~っと突っ立いてると、魔族軍の格好の餌食になっちゃうからね。」
「あっ、それなら火力バカ共のリードが外れちゃったときの方が心配だな。
自由になったとたんに敵にただひたすら突撃しそうだぜ。」
「あっ、ボルバーナちゃん、それはそれでいいの。」
「姉御、それってどういうことなんだ。」
「魔族軍がそいつらに気を奪われている間に他は逃げられるから。」
「ちょっと待て姉御。
それって火力バカ共と弩阿呆の扱いにとんでもない差があるんじゃねぇか。」
狂暴幼女の追及に姉御は何をいまさらって顔をして答えた。
「火力バカ共は突っ込んで行って魔力が切れたらその時点でただの肉壁に成り下がり。
一方、リュウ君は保持魔力が膨大で、その上に魔力回復のスキルがあるしょ。
回収できれば反撃のチャンスもあるってもんでしょ。
使い捨てにするにはちょっとねぇ。」
「なるほどな。使いっきりと再生品の機能の違いが取り扱いの差ってことだな。
まぁ、弩阿呆は何にも考えていないから、生かさず殺さずにずっと働かせ続けてもどんぶり飯さえ食わしとけば尻尾を振って喜んでいるだろうけどな。」
失礼な。
俺はそんなに安くないぞ。
大盛どんぶり飯だけで好き勝手に使役できる奴だと思うなよ。
アンパン、それも一個じゃなくて二個の買い食いもさせてくれないご主人様には絶対に懐かないぞ。
"やっぱり、それで満足なのよね、リュウ君は。
出来れば性欲も満たされないと(注釈: 私に対してだけね)働けないって仕様になってほしいもんだわ。"
「まぁ、兎に角、リュウ君は回収してこき使い続けることがデホなんだから、しっかり自分の足で陣地に帰れるぐらいには賢くなってね。」
自分の匂いを覚えろってか。
"私の匂いを覚えろってことよ。"
しっかし、火力バカ共は鼻くそほじって我関せずって態度で良いのか。
おまえらを使い捨てにするぞっていう話をしてんだけどな。
「もう、話しが進まないわねぇ。
このままだとマジで残業になるわよ。
1週間後の初任務について説明をするわよ。
説明が終わるまで一切の質問はなしでお願い。
初任務は、独立旅団司令官から午前中も話があったように、第9軍団の第27師団の最前線での仕事になります。」
第9軍団というと、確か。
"ソンバトよ。あぁ、よりによって初任務が実家の近くかぁ。"
実家の近くと言っても行くのは第27師団の最前線基地なんだろ。
戦場なんだから関係ないんじゃないのか。
"まぁ、ねぇ。
直ぐに最前線基地に転移すれば良いんだけどね。"
あっ、今朝わかれたばかりのエレン教官とまた逢うかも。
"リュウ君、なんかうれしそうねぇ。怒
乳牛教官は赴任したばっかりで忙しくって、私たちを懐かしんで再会しになんて来ないわよ。ふんっ。"
「第27師団の最前線での任務なんだけどね。
また出たらしいのよ。」
また出たって、何が。
"きっとあれよ。"
またあれなのか。もう何度も何度も。
"今度はゾンビかしら、スケルトンかしら、それともお化け。"
この世の者でないものなら出来ればスケルトンで。
叩けは崩れそうだし。
"ゾンビは同類のゾンビさんにご対応願うとして、厄介なのはお化けが出てきた場合ね。
どうすりゃいいのかしら。"
エンの毛根を一部断ち切って礼拝堂に一緒に引き籠ってもらい、浄化じゃねぇか。
"まぁ、それで何とかなるか。
よし、対策はばっちりね。
でっ、何が出たんだろね。"
「第27師団の後方が魔族の偵察部隊に荒らされて、昨年の第17師団の様になっているとのことよ。
おそらく、去年殲滅した偵察部隊を再編成したんだと思うけど。
と言うことで、初任務は魔族の偵察部隊殲滅戦リターンズとなったのよ。」
ここまでの成果
魔力回復: 10% + 30%(ボーナス♡) + 22%(ボーナス♥)
次にスキルを発動するまでのクールタイム: 18時間29分
(また、出たのかあの厄介な偵察部隊が。)
(ちゃんと浄化しないからゾンビかお化けになって人類軍に復讐戦を挑んでいるんじゃないの。(おばちゃんターン))
(またこの世の者でない者と戦うの、いい加減にして。(腐女帝様ターン))。
(今度からは戦死者の鎮魂のために汚物君の毛根を一部断ち切って、次の作戦まで修道院に引き籠ってもらうしかないわね。(おばちゃんターン))
(それは良いわね。皆が幸せに暮らせるわよ。
リュウ君は寂しそうだけどね♥。(腐女帝様ターン))
(なんで最後に俺に振るんだ。)
活動報告に次回のタイトルを記載しています。
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