13話目 第104独立旅団の初任務 残業の実態
俺は官舎の食堂で慌てて飯を、当然大盛りどんぶり飯5杯をかき込むと、会議室に直行してギリギリミーティングに間に合った。
4杯目は汁かけ、5杯目はテーブルに常備されているらしい塩をふり掛けておかずにしたんだ。
5杯目は汁気がないのでのどに詰まったというアクシデント処理に時間が掛かって、ミーテイングに遅れそうに・・・・・、じゃないだろうがぁぁぁぁぁぁ。
引っ越しに時間が掛かって初の官舎食堂飯をゆっくり味わえなかったんだぁ。
俺の引っ越しだけだったらあっという間に終わってしまったので慌てて飯をかき込むことなんてなかったのにな。
原因は一つはおばちゃんが俺の部屋に3回も自分の荷物を入れようとしたことだ。
その度に2階の野郎どもの巣窟にある俺の部屋から1階に降りて、そして、3階の御婦人用官舎にあるおばちゃんの部屋の前に荷物を返しに行って時間を食ったことだ。
何が独立旅団実戦部隊指揮官命令だぁ。
平時にはそんな肩書や命令なんざぁ通じないと姉御に独立旅団本部で釘をぐさぐさ刺された直後だろうがぁ。
"じゃぁ、リュウ君が私の部屋に居候する? "
出来るわけないだろうがぁ。
まぁ、これは良い。
ある程度予測されたことだ。想定範囲内だ。
おばちゃんが俺の部屋に居座るのも阻止できたし。
でっ、問題はこっちだ。
荷物を運んでほしいと腐女帝様がおっしゃるので従順な肉壁ちゃんである俺はご命令通りに女子寮の玄関で待っていたんだ。
腐女帝様が持てないと言い張る分、全体の8割を俺が持つ格好だぁ。
荷物多過ぎだろうが。
しかも、何やらずしりと重い段ボール箱がやたらと多い。
荷物の7割以上をこれが占める。
なにぃ、売れ残っただぁ。
いったい、何の副業をしてんだ。
一緒に引っ越すおばちゃんなんて自分で全部の荷物を持ってるぞ。
まぁ、おばちゃんパワー炸裂ということなので一般女性の参考にはならんか。
官舎までは寮からゆっくり歩いて20分。
浮遊の転写魔法で荷物を運んでいると、5分ほど歩いたところの道端でエンが待っていた。
奴は学校の女子寮の徒歩5分圏内に留まることを2年前から厳禁にされているからな。
寮から徒歩5分圏内では唯一、男子寮とそこと学校をつなぐ道の右端を歩くことだけは許可されていた。
エンを見つけると奴が言いやがった・・・・、いや、のたまわりました。
「もうだめぇ、誰がこの荷物をリュウ君と一緒に持ってぇぇ。
大事な物だからギュッと二人で両手を握り合って♥、その上に荷物をそっと置く様に運んでね。
何度も言うけど、大事な物だから3回に分けて運んで♥。」
おまえの魂胆なんて♥で丸わかりだぁ。
1回で運べていたのに何で3回に分ける必要があるんだぁ。
俺が一人でここまで持ってきた例のやたらとずっしりと重い段ボール箱を、何か本でも入ってるのか、何が面白くてエンと二人でぎゅっと手をつないで3回に分けて運ばなきゃあなんねぇんだ。
頼んだ割には自分の持ってきた荷物はそのまま運んでいたよな。
残り2回は手に例のメモ帳を持って、ニヤニヤしながら俺たちが荷物を運ぶのをガン見しながら付いて来ただけだよな。
しかも、官舎に荷物を運んだ後に残りの荷物を取りに手ぶらで戻る帰り道にもエンと手をつなげってしつこく求めてくるし。
もちろん丁寧にお断りさせていただきました。
これで40分もの余計な時間を食ったし、腐女帝様の荷物を運び終えて官舎に来てみれば、おばちゃんが自分の荷物を俺の部屋に押し込んで、荷ほどきどころか配置まで終わらせているし。
俺の引っ越し作業が終わったのは12時45分。
それから10分で大盛りどんぶり飯をかっ食らったわけだ。
その5杯目の卓上塩飯に苦戦して、のどに詰まってむせて飛ばした飯つぶの掃除をするのに3分かかったため、食堂の隣にある会議室に駆け込んだのは12時59分だった。
そして、ここに至る。
朝、軍の総司令部に出頭してからここに至るまでの半日が濃かったこと濃かったこと。
味噌汁が濃くて、大盛り飯のおかわりが進むこと進むこと。
あっ、俺ってなんか今、すごい幸せだ。
"今晩、私に夜這いを掛ければもっと幸せになれるわよ。
漸く同じ屋根の下で暮らせるわね。
もう一息で同居かなぁ、きゃ♡。"
おばちゃん、昼に腐ったものでも拾い食いしたのか。
あの官舎では確かに同じ屋根の下だけども、出入り口が全く別々。
安心してエンと同居できるってぐらい3階のセキュリティー(意訳: 姉御の監視等々)が高そうでした。
夜這いなんて無理、無理。
"じゃぁ、私が行くね、2階に。"
・・・・・・・エンがいるけど良い?
廊下であんなところを覗かれたり、こんなところを触られたり・・・・・
"汚物君は私のばっちゃの形見の恐ろしさが体に、主に頭髪の一部だけど、染みついているから私のことは基本スルーよ。"
今晩が怖い・・・・・
"じゅるり♡"
・・・・・ここは何とか別の話題に、出来ればおばちゃんだけが今晩仕事で忙しい状況を作らねばマジで夜中に襲撃されそうだ。
"リュウ君、思っていることは全部筒抜けなんだけど。
私は仕事を全部定時で終わらせてアフターファイブ(意訳: 毎晩、今晩でリュウ君をじゅるり♡)を堪能するタイプなの。
だらだら仕事は長引かせないの。
わかったかなぁ、リュウ君もそれに合わせるために自分の仕事はとっとと終わらせるのよ。
幾らでも手伝ってあげるからね、一緒に。
そうしてそのまま「今晩」に突入・・・・・、あっ、それが良いわね。」"
・・・・・そっかぁ、残業という手があったかぁ。
"食堂は19時で終了よ。
まぁ、食い損ねたら私がいつものように何か食べさせてあげるから。
ついでに私も食べて良いから。
なんなら、私がリュウ君を食べちゃおうかなぁ。
きっと残業なんてするのはリュウ君一人だから。
他に誰もいない部屋で思う存分、じゅるり出来るわね♡。
残業、最高ってね。"
残業やべぇぇぇ、やっぱり定時帰りが基本だよな。
そして、ゆっくりと夕飯を堪能。
"やだぁ、リュウ君のエッチぃぃぃぃぃぃぃ。
デザートに私をゆっくりと堪能するなんて。
もぅ、これは毎日勝負パンツにせねば♡。
今度の休みに門前町にパンツを買いに行くのに付き合って。
リュウ君も脱がせ易い方が良いでしょ♡、一緒に選んで。
でへへへへへへ、ついでにデートの約束しちゃったぁ、楽しみねぇ♡"
・・・・・・どこで約束したんだ・・・・・
その時に救世主が現れた。
俺をおばちゃんの残業蟻地獄から救ってくれるために一本の蜘蛛の糸を垂らしてくれたかのようだ。
「みんな揃ったようね。
それではミーティングを始めてよろしいでしようか、中隊長。」
"でへへへへへへっ。"
おばちゃん、副隊長の姉御に呼ばれてんぞ。
"だはははははははっ。"
「えっと、中隊長はただいま妄想界に引きずりこまれて、何か心地良い夢を悪魔に見せられているようです。
俺が何とか正気に戻します、少々お待ちください。」
俺は皆に一言の断りを入れて、隣に座っているおばちゃんの耳元でささやいた。
「独立旅団の特別報奨金で一番高価なのは、参謀本部内での駄菓子独占販売権らしいぞ。」
「よっしゃぁ、独占販売ルートゲットしたぜぇぇぇぇぇ。
売って売って、売りまくるぜぇ。
私たちの将来は明るいわね、リュウ君。」
でへへへへ顔をしながらだらしなく座っていたおばちゃんが一発でシャキーンだ。
立ち上がって他人には理解できないことを叫んでいる。
「ジェンカちゃん、独占販売って、まさか私の手作り本の・・・・・。
在庫が増えに増えて部屋がダンボーヘルで埋まっていたのよね。
それを独占販売してくれるなんて。
持ちべきものは頼りになる仲間よねぇ。」
腐女帝様、あの引っ越しで運んだ段ボールの山ってうっすい本の不良在庫でしたか。
あんなに溜まる前に無料で配布したら良いんじゃ。
あっ、一般人は誰も手にすら取りませんか。
「中隊長とエリカちゃん、独立旅団基地で怪しい商売を始める前に任務をしっかりとこなしてね。
さぁ、ミーティングを始めるわよ。
ちゃっちゃとしないと次の任務の説明だけで残業になっちゃうわ。」
うぁぁぁぁぁ、いきなり残業突入かよぉ。
まず過ぎる。
あっ、皆で残業する分にはまずくないか、腹は減るけど。
ここまでの成果
魔力回復: 8% + 25%(ボーナス♡) + 32%(ボーナス♥)
次にスキルを発動するまでのクールタイム: 19時間50分
(腐女帝様、例の本の販売ルートなんて存在しませんから。)
(ないから作るんだよね。そして、新たな読者の開拓♥。(腐女帝様ターン))。
(さすがにあの本を駄菓子屋の店先には置けないわよねぇ。(おばちゃんターン))
(じゃ、店の奥で希望者にだけ販売するというのは。
何なら旧刊はおまけで付けてあげて。(腐女帝様ターン))
(この世で一番迷惑なおまけが誕生した瞬間だった。)
活動報告に次回のタイトルを記載しています。
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