11話目 第104独立旅団の実態 彼に求められていること
「参謀総長、旅団司令官、我々第104独立旅団の戦い方、在り方をご教授いただきありがとうございます。
申し訳ありませんが、もう一つ確認させてください。」
おばちゃんは先ほどの旅団司令官の指示を従順に守るようなふりをして真剣なまなざしを彼に向けたまま、さらに質問をするようだ。
「何でしょうか。」
相変わらず微笑みながら質問を受ける独立旅団司令官。
「私たちの配属先である第104独立旅団のメンバーはこれまで一緒に中隊として活動してきた3個小隊と元第17師団教育大隊第2中隊再編第2小隊の皆さんですよね。」
「んっ、その通りです。
先ほど言いましたけど、このメンバーに必要に応じて方面軍などから人員を招集し、作戦を立案、実行をしてもらうことになります。」
「それでこの中隊の中での小隊やそのメンバーの役割というものは決まっているのでしょうか。
それとも作戦に合わせて我々で相談して決めるとか。」
んっ、俺たち3チームの役割は大体決まっているよな。
おばちゃんはこれまでの役割を司令官に認めさせようというのか。
或いは、部隊編成に対する自由度がどの程度認められるかを聞きたいのだろうか。
腐女帝様もおばちゃんの質問の意図がつかめないようでわずかに首を傾げていた。
「この点も後ほど旅団のミーティングでクリスティーナさんから話してもらおうと思っていた案件ですが、まぁ、良いでしょう。
どうするかはやはり旅団内で話し合ってもらうとして、これも独立旅団司令部の要望という形で話させてもらいます。」
「要望ということは強制的ではなく、私たちの旅団内の役割は自分たちで決めろということですか。」
司令官の回答に対して、今度は腐女帝様が聞き返した。
「そうです。
独立旅団司令部では目標を設定して指示を出しますが、それをどのように解決するかは第104独立旅団内でその方針を決めてください。
もちろん、作戦立案、実行に当たっては司令部も相談には乗ります。
また、立案された作戦に対しては確認し、最終的には独立旅団司令部の承認が必要になります。
これは先ほども話しましたが、方面軍等々の外の部隊を招集、借りてくる訳ですから独立旅団司令部の承認下で作戦が実行されるという建前が必要となるからです。
というわけで、どのような作戦を立案するかによって、必要な部隊の構成、もちろんあなた方の第104独立旅団のコアメンバーの役割も変わってくるのではないかと思います。
その上で、コアメンバーだけで部隊を構成する場合は次のような役割構成はどうかと独立旅団司令部は思っています。
多分、これまでの君たちの考えと大きく違わないと思いますよ。」
なんだ、これまで通りってことか。
"リュウ君、ちょっと待って。
これまでの中隊には小者小隊が入っていないのよ。"
あっ、そっかぁ。
去年の第17旅団に実戦訓練に行った時には、たまたま学生部隊の教育係として小者小隊が中隊の中に編入されたんだもんな。
これから一緒に戦う場合はどういう役割になるんだろう。
"まぁ、考えがなくはないけど。
一つ確認することが増えたわねぇ。"
えっ、そうなの。
「司令官、独立旅団司令部の第104独立旅団のコアメンバーの役割についてご意見をうかがう前にもう一つ確認させていただきたいのですが、よろしいですか。」
話をぶった切ったおばちゃんの発言に対しても気を悪くした様子もなくにこやかに応じる独立旅団司令官。
「何でしょうか。質問を許可します。」
「ありがとうございます。
私たち3チームは同じ中隊でずっとやってきましたからそのまま第104独立旅団に配属されるのはわかるのですが、第17師団の教育大隊のモーリツ小隊が第104独立旅団に編入されてきたのは何か理由があるのでしょうか。
確かに去年の実戦訓練では私たちの中隊と彼らの小隊の連携が良く取れていたと思いますが。」
「そうですね。
かの小隊を第104独立旅団に編入したのは、当然新兵だけで一つの部隊を構成させるわけにはいかないからです。
自ら考え、実行し、成長してほしいとは言いましたが、やはり部隊の中には導く者は必要でしょう。
それを新兵の指導に慣れた教育隊の方々にお願いしようというのが理由の一つです。
それともう一つ。
これは旅団司令部が考える第104独立師団のコアメンバーの役割構成を聞いてもらった方が分かりやすいのではないかと思います。
話を元に戻していいですか、ジェンカ中隊長。」
「わかりました。よろしくお願いします。」
もう一つの理由ってなんだ。
"まぁ、取りあえず司令官の考えを聞いてみようよ。"
「第104独立旅団のコアメンバーは4個小隊規模で構成されています。
各小隊は2~3年間は固定のメンバーでやってきましたが、これを役割別に少し崩したチームを編成することが理想ではないかと独立旅団司令部では考えています。
先ほども言いましたがそうしろというのではなく、司令部の意見を参考に役割やチーム編成を考えてみたらどうだという提言と考えてもらえばと思います。」
んっ、新たにチームを編成し直すのか。
"そうしろとは言わないけど、同然そうするよなってことじゃないの。"
「まずは攻撃を担当する火力部隊。
これは火力バカ共チームというんですか、シュリさんを小隊長とするこれまでのチームでいいのではないでしょうか。」
まぁ、あいつらは下手にいじると統制が取れなくて、逆に戦力にならないからな。
いじらないのは正解だよ。
「次に偵察部隊。
これは編成し直した方が良いでしょう。
マスクマンさんを小隊長として、エン君とフェレブ君。」
"汚物君がすっごいブーたれたそうにしているわよ。
さすがに司令官の前でそれを口にはしていないけど。
「野郎しかいねぇじゃねぇか」って。
私に念話で愚痴るのは止めてほしいわ。"
さすが独立旅団司令部だ。
俺たち、お淑やかな大男さんチームの弱点を良くわかっているじゃないか。
エンを女の子のいるチームから外すのは正解だよな、いろんな意味で。
「次に独立旅団本隊の構成ですが。
まずは防衛小隊としては土壁チームがそのまま就くが良いでしょう。
そして、指揮小隊。
中隊長のジェンカさん。
それを補佐する副長のクリスティーナさん。
参謀として、グローリアさん。」
んっ、これって。
"そうよねぇ。"
「最後に遊撃隊というか、第104独立旅団の切り札。
エリカさんを小隊長に火力のリュウ君、二人を守る防衛担当のボルバーナさんとペーター君。
以上が我々独立旅団司令部の考える第104独立旅団のコアメンバーの編成です。」
これってやっぱり、去年の第17師団の実戦訓練で戦った再編第2中隊と同じメンバーだよな、
"やはりあの形が私たちの理想の編成だったのね。
私たち学生3チームに、クリスの姉御のチームを加えて、再編したのが。"
さすがおばちゃんだ。
一年前に既に理想の中隊を編成し終えていたとは。
"そんなに褒めても何も・・・・、あっ、お礼に今晩、私を食べつくしても良いわよ。
でへへへへっ、それも新居でだって。きゃぁぁぁぁぁぁ。"
褒めた俺が間違ってた。
その時、俺たちの後方から声が上がった。
「あのぉ、俺はどこに入れば良いんだ。」
あっ、小者隊長。
"確かに司令官の編成の中に名前が挙がってなかったわよね。"
小者過ぎているのが分からなかったとか。
「あっ、君はモーリツ君だったか。」
小者隊長、 この1箇月間ここに通って第104独立旅団の設立準備をしていたんだよな。
それが"あっ"扱いだよ。
"実際、彼がどのような役割を果たすのが理想だと司令部では考えているのかしら。"
「モーリツ君は、そうだなぁ、料理長? でいいんじゃないのか。」
ここまでの成果
魔力回復: 20% + 25%(ボーナス♡) + 20%(ボーナス♥)
次にスキルを発動するまでのクールタイム: 19時間26分
(長をつけてもらって良かったよな、小者隊長。)
(それって、軍人として役に立たないから、旅団の雑用でもやってろってことだよね。(おばちゃんターン))
(残念な小者隊長の肩を両手で優しく抱きしめて、なだめてあげて♥、弩阿呆君。(腐女帝様ターン))
(腐女帝様がなぜか活性化して俺のスキルがダウンしたじゃねぇか。)
活動報告に次回のタイトルを記載しています。
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本作品は前作「聖戦士のため息」シリーズのパラレルワールドの位置付けとしています。
本「聖戦士のめまい」とともに「聖戦士のため息」シリーズも合わせてお楽しみいただけたら幸いです。
"聖戦士のため息シリーズ "
シュウとエリナ、イリーナ、輪廻の会合に集いし面々が活躍するサーガをお楽しみください。
・本編 : 聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます
・別伝1 : 死神さんが死を迎えるとき
・別伝2 : 優しさの陽だまり
・別伝3 : 陽だまりからの贈り物 優しさの陽だまりから
・外伝 : アラナの細腕繁盛記 越後屋の守銭奴教繁盛記
・別伝4 : 炎の誓い