9話目 第104独立旅団の実態 困った事態になったなぁぁ
「旅団司令官、さらに追加の質問をよろしいですか。」
おばちゃんはまさかという驚きの表情を浮かべながら司令官に詰めるように質問をした。
それに対してジュラ司令官はさもありなんというような、追加の質問が当然出てくるのがわかっていたかのようにうなずきながら質問を許可した。
「私がこれまで通り中隊指揮官、それも実戦部隊の指揮官ということは第104独立旅団の戦力って、ここに居る新兵3個小隊と古参の1個小隊と言うことですか。」
「中隊長の考えている通りです。」
司令官は当然と言わんばかりに、にこやかに答えた。
「それでは私たちは1個中隊でやり遂げるような任務に就かされると言うことですか。」
腐女帝様はいったいどういうことだと、質問することの許可を取ることも忘れて、詰め寄るように質問した。
一個中隊の戦力なんて独自に行動するのであれば偵察・索敵・破壊工作、兵站部隊の護衛ってところか。
「君たち中隊がどのようなことを期待されているかはこの一か月間で第104独立旅団設立の準備を進めてきたクリスティーナ君に後ほど説明してもらおうと思ったが、ある程度の概要は私から説明した方が良いようだな。」
黙って俺たちと独立旅団司令官のやり取りを聞いていた参謀総長が割り込むように口を挟んできた。
「参謀総長、よろしくお願いします。」
「わかった。
第104独立旅団は将来において人類軍の切り札となってもらうことを期待している。」
俺たちが人類の切り札?
"その割にしょぼい戦力よね。
魔族軍団を殲滅するなら一個師団ぐらいは預けてほしいわ。"
少数で魔族軍に多大なダメージを与えることを期待するって言うことは、俺たちを密かに魔族の親征軍に特攻させるつもりなんじゃないだろうな。
「切り札となるのは将来で、今はまだその力は当然不足している。
これからいくつもの作戦を経てそうなってほしいと思っているのだよ。」
参謀総長は俺たちの質問に答えるというより、遠い将来に思いをはせるようにして話を続けた。
「最終的に君たちがどのような部隊の編成であれば存分にその持てる力を発揮できるかはまだ想像もつかない。
従って、固定した部隊編成中で実戦経験を積むと君たちの運用幅が狭まってしまい、本来持っている君たちの力が十分に発揮できないことを参謀本部では懸念している。」
参謀総長が何を言いたいのか俺には良くわかんないんだけど。
"私もよ。
話はまだ終わってないようなので余計な口は挟まずにここは続けてもらおうよ。"
「そこでだ。
当面はここに居る1個中隊を第104独立旅団の中核として、任務に応じて他の部隊を招集し、必要な戦力を整えてから作戦行動に移るいう形を取りたいのだ。」
腐女帝様が今度は一歩前に出て質問の許可をもらって口を開いた。
「それは第104独立旅団に第101~103独立旅団の部隊を必要に応じて招集すると言うことでしょうか。」
腐女帝様は各独立旅団部隊の柔軟な運用を考えているのですかと言いたいのだろうか。
それに対して参謀総長は全く違う答えを口にした。
「君たちの任務遂行に当たっての部隊編成には基本的に制限を設けないつもりだ。
他の独立旅団の部隊を招集することも考えられるし、方面軍はもちろんエルフ軍とも、これは協働と言うことになるが、部隊編成をすることも想定している。
そのために独立旅団は各方面軍ではなく参謀本部旗下なのだし、君たち第104独立旅団の直接の司令官にジュラ独立旅団司令官を任じているのだ。」
その答えに驚いたような顔をしたおばちゃんがたまらずにすぐに質問を返した。
「それって、私たちが人類軍のある部隊を自由に招集して編成し、自由に運用できるっていうことですか。
さすがにそこまでの権限は与えてもらえないですよね。」
おばちゃんの質問に参謀総長は少し表情を崩して答えた。
「さすがに中隊長の君が考えたままには部隊を編成し運用することは許可できない。
しかし、君の考えを上申してジュラ司令官が必要だと思ったら自由な部隊編成が可能となる。
まぁ、一個師団以上を動員する必要があると考えるならば私の許可も必要となるがな。」
おばちゃんそれって、係長が課長とその上の部長の許可をもらえば新たな事業を始めても良いってことかぁ。
そのための予算も人員も補強してもらえると。
"そうなるわよね、参謀総長の話だと。
でも困ったな。"
どうしたおばちゃん。
許可があれば好き勝手に魔族軍と戦えるぞ。
あっ、まさか特別報奨金をもらう立場から出す立場になったことを気にしているのか。
まぁ、大きな戦果を挙げれば財布のデカそうな参謀本部から特別報奨金がもらえんじゃないのか。
それの一部を招集した部隊に分けてやるにしても、俺たち手元にもかなりの額が残るんじゃないのか。
"特別報奨金のことだけを考えれば確かにリュウ君の言う通りね。
皆で分けても戦果によってはかなりの額が手に入るわね。
それこそ1回の戦闘で二人合わせて駄菓子屋が開けるほどの額になるかもしれないわ。
でもねぇ。"
だったらいいじゃないか。
軍に入る最大の目的を短期間で達成できるチャンスじゃないか。
何をためらっているんだよ。
"う~ん。
第104独立旅団が作戦を立案し、部隊を編成し、作戦行動に移る。
実戦では招集し編成した部隊の指揮も執ることになるわよね。
大隊規模な作戦だと指揮を執る私たちの中隊も直接戦闘のど真ん中につっこむことになるわ。
しかし、連隊や師団規模になるとそうもいかないわよね。"
んっ、まぁ、1個師団の全部隊の一斉突撃なんてのはまずないよな。
作戦の役割分担がはっきりしていて、偵察、戦闘、支援等々に分かれてそれぞれの役割を果たすことで勝利を掴む感じだよな。
"作戦立案と部隊編成、前線指揮・・・・・・。"
おばちゃん、何を懸念しているんだ。
俺にはよくわかんないんだけど。
"自分たちのは後方で罠を仕掛けて待機している間に他の部隊には囮として魔族軍に突撃を命じなければならないこともあるだろうし。
撤退戦で殿を命じなければならないこともあるだろうし。"
そういうことかぁ。
自分が死地に飛び込むのは良いけど、他人にそれを命じて自分は生き延びることを優先するのが引っかかるんだな。
"そういうこと。
参謀総長の話では、私たち第104独立旅団の当面の目標は任務をこなすことで力を蓄えて、将来は人類軍の中心となる実力を養うこと。
裏を返すと、ここにいる第104独立旅団メンバーの損失はできるだけ抑えることも重要な目標の一つとなるわね。
危機に陥ったら招集した部隊を犠牲にしても私たちは生き延びることが必要となるわ。
そのときに招集した者たちに死地に行けと命じることがどうもね。"
なるほど。
そういうことか。
死んで来いと他人に命じられるかということか。
実戦訓練で実際に何度か魔族と戦闘になったけど、おばちゃんは常に最前線で指揮を執っていたもんな。
後方にいて味方を戦わせるようなことはなかったからな。
しかし、旅団で他の部隊も召喚し戦わせることになったらそういう場面が何度も出てくるだろうな。
"う~ん、改めてそういう場面もあると言われると、その覚悟がまだ定まっていなかったみたい。"
そうだよな。
わかるよ。
死地に行って来いと言われる立場でしばらくは戦うことになると思っていたからな。
逆にそれを命じる立場に押し込められるとは思いもしなかったから。
"う~ん。"
おばちゃんはそう言ったきり参謀総長を睨むように見つめたままだった。
その時、腐女帝様が質問の許可をもらって口を開いた。
「参謀総長、私たちのような新兵が古兵の部隊を招聘しても指示に従ってくれるでしょうか。
参謀本部の作戦だと言えば従ってくれるかもしれませんが、いざというとき、特に撤退戦になってしまった混乱時にはとても私たちの指示に従ってくれるとは思えませんが。」
そっかぁ、このままじゃぁ最前線で指示を出す方も指示を出される方も覚悟が定まんないということだな。
ここまでの成果
魔力回復: 25% + 20%(ボーナス♡) + 20%(ボーナス♥)
次にスキルを発動するまでのクールタイム: 18時間58分
(まぁ、俺はおばちゃんの指揮を全面的に支持しているからな。)
(ありがと、リュウ君。
でも、気が重いわぁ、独立旅団の実戦指揮官なんて。(おばちゃんターン))
(ごっついおっさん兵が私たちのような小娘の指揮に従うかしら。
その時はジェンカちゃんのばっちゃの形見で見せしめに・・・・・(腐女帝様ターン))
(クビチョンかぁ。
まずいぞ、おっさんたち、おばちゃんたちがマジ切れしたら。)
活動報告に次回のタイトルを記載しています。
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