8話目 第104独立旅団の実態 指揮官は君だぁ
美人の受付嬢が先に入って、そして、奥にある扉をノックした。
「司令官、第104独立旅団の新兵の方々がお見えです。
中に通しますね。」
ドア越しに男の声が聞こえる。
「ああ、頼むよ。待っていたよ。」
受付嬢は中のドアを開けてドアの側に立ち、まだ廊下にいる俺たちに声を掛けた。
「皆さんどうぞお入りください。」
廊下から一つドアを抜けるとそこは横に長い部屋だった。
ざっと見ただけで10人以上が忙しいく働いていた。
どうもこの部屋は独立旅団事務局の様だ。
"その奥が司令官室と言うことかな。"
姉御の後に続いて、俺たちは奥の部屋に入った。
そこは先ほどの事務室の倍ほどもある広い部屋だった。
目立つのは大きなテーブルとそれを取り囲むような椅子。
大きな黒板には地図らしきものが張られている。
そのようなセットが少なくとも3つはあるようだ。
"んっ、司令官の部屋って言う感じじゃないわね。
作戦会議室って感じかな。"
手前のテーブルの周りにおじさんが数人立っていた。
あれは確か司令官級の制服のはずだ。
そして、真ん中のテーブルの周りには、あっ、マスクマンさんだ。
相変わらずマスク姿だ。
マスクの空いている目元を見ると、目を細めて嬉しそうにしているのが分かった。
そして、その隣にはグロいギャルさんが顔をほころばせながら、片手をぶんぶんと俺たちの方に振っている。
もう一方の手でゾンビさんの首根っこを掴んでいる。
ゾンビさんは相変わらず視点の定まらない表情をしていて、グロいギャルさんにされるがままになっている感じだ。
目の前の姉御、後ろでまだちょっと前かがみの小者隊長、そして、お淑やかな大男さんチーム、火力バカ共、土壁チームと去年第17師団の後方で戦った教育中隊メンバーがこの部屋に勢ぞろいしているといったところだ。
入ってきた部屋をキョロキョロ見回していると、姉御が一歩前に出て高級そうな軍の制服を着たおじさんに向かって敬礼し、報告を始めた。
「第104独立旅団の新兵を連れてきました。
予定より遅くなり申し訳ありません。」
そう言って敬礼を戻した後に、今度は俺たちの方に向かって口を開いた。
「まずは小隊長を先頭に、チーム毎に一列に整列しなさい。
中隊長は一番左ね。
整列が終わったら、中隊長の号令で司令官に敬礼。
わかったわね、ちゃっちゃとやる。
モーリツはドアを閉めて来て。」
命令口調の姉御に戸惑いながらも、ここに来たからにはもう学生ではなく今から軍人だという意識からか誰もが、あのエンでさえきびきび動いて、あっという間に整列を完了した。
それを確認したおばちゃんが声を張り上げた。
「司令官に敬礼。
第104独立旅団に計3個小隊、ただいま着任いたしました。
宜しくお願い致します。」
それを聞いた司令官は優雅に返礼をした。
「独立旅団の司令官を拝命しているジュラです。
申告通り計3個小隊の新兵の第104独立旅団への着任を承認します。
それでは楽にしてください。」
30代と思われる背の高い優男っぽいジュラ司令官の指示で俺たちは敬礼を解き、足を少し開いて楽な恰好をした。
「私の隣にいる方が独立旅団のTOPになりますベルタラン参謀総長です。
クリスさんから聞いているかもしれませんが、我々の所属先は方面軍ではなく参謀本部となります。
基本的に参謀本部の意向に沿った作戦行動となりますで、この点は覚えておいてください。
それでは参謀総長に敬礼。」
参謀総長と紹介されたオジサン以外の部屋にいた全員が姿勢を正して、参謀総長に敬礼をした。
参謀総長はそれに返礼をし、姿勢を戻して口を開いた。
参謀総長は50代ぐらいのごっついおっさんで、司令官とは対極にいるような雰囲気のまさに軍人という人だ。
参謀と言うより竹槍一本で魔族軍に突撃し、敵を一掃してしまうような荒々しい雰囲気を体にまとっていた。
「楽にしろ。
よし。
まずは着任、ご苦労。
これから旅団員としての活躍を期待する。」
司令官は参謀総長の言葉が終わるのを確認したかのように、今度は参謀総長の更に向こうにいるオジサンたちを見るようにして話を始めた。
「参謀総長の隣にいるのが、第101独立旅団の指揮官です。
第101独立旅団は6大隊、2個連隊規模の戦力、独立旅団最大数の戦力となります。
その隣の者が第102独立旅団の指揮官です。
第102独立旅団は3大隊、1個連隊規模の戦力を持っています。
一番端にいるのが第103独立旅団の司令官です。
第103独立旅団は諜報、工作部隊になります。
どの程度の人員を有しているかは、まぁ、秘密ですね。
参謀本部付の諜報と工作部隊になりますから、部隊の規模は察してください。
これからよろしく頼みますね。
詳しいことはクリスさんに後で説明してもらうとして、今ここで何か聞いておきたいことはありますか。」
司令官はその外見と同じように、柔らかい口調で独立旅団の概要を説明してくれた。
おばちゃんが手を挙げて司令官の方に進み出た。
「私から一つよろしいでしょうか。」
「君は中隊長の確か・・・・。」
「ジェンカです。
肉壁の穴では中隊長をしていましたが、ここではただの新兵です。
質問してもよろしいでしょうか。」
司令官はどうぞと言って、微笑んだ。
あぁ、この微笑で何人もの女性隊員をだましてきたんだなきっと。
これで独身だったら人類軍全男性兵の敵だなこりゃ。
"あっ、私はリュウ君一筋だから。
絶対に余所見なんてしないから。
安心して。"
別の意味で安心できない。
"それってどういうことかなぁ、怒"
司令官がおばちゃんの質問を待ってんぞ。
"逃げたなぁ。
まぁ、後でじっくり体に体で聞くからいいけど♡。"
ガクガク、ブルブル。
「ただいま独立旅団の司令官と第101~103独立旅団の指揮官をご紹介いただきました。
それで、私たちの所属する第104独立旅団の指揮官は何方でしょうか。
今日は出張ですか? 」
おばちゃんの質問を聞いた司令官の表情がさらに緩んだ。
そして、あのごつい参謀総長も微笑んでいるが、司令官のさわやかな笑顔と違い、かなり不気味さというかあの女衒の大隊長並みのあやしさが滲み出ている。
「大雑把に言うとですね、第104独立旅団の司令官は私となりますが・・・・・・」
独立旅団司令官が直接の俺たちの指揮官かぁ。
参謀本部直下の旅団司令官が指揮するとなると、こりゃぁ、第104独立旅団の規模は2個連隊、いや、1個師団かなぁ。
"でも、司令官は独立旅団の最大部隊は第101の2個連隊だって言ってなかったかしら。"
あっ、そうかぁ。
「・・・・・・・実戦部隊の指揮官は今まで通り、ジェンカ中隊長にお願いすることになっています。」
へっ。
"えっ。"
「えぇぇぇぇっ。」
これまで黙ってやり取りを聞いていた、腐女帝様が突然変な声を挙げた。
俺も心の中でそう思ったからその反応は良くわかるぞ。
でも本人以上に驚くとはな。
"私は司令官の答えにびっくりして、声も出なかったのが本当のところよ。
私が実戦部隊の指揮官って、どういうこと。
今日配属されたばかりの新兵に中隊規模の部隊の指揮を任せるなんて。"
えっとぉ、つまり、第104独立旅団のメンバーって、いつもの中隊 + 小者小隊しかいないってことなんじゃないのか。
"えぇぇっ。ここに居る人たちで一個旅団を形成するってことなのぉ。
それって、旅団詐称じゃないの。"
ここまでの成果
魔力回復: 15% + 25%(ボーナス♡) + 27%(ボーナス♥)
次にスキルを発動するまでのクールタイム: 19時間42分
(まぁ、方面軍じゃなくて参謀本部旗下の部隊って所から怪しい感じがしてたよな。)
(あ~ぁっ、旅団指揮官なんてものになったら、年季が明けてとっとと退職し難くなるかも。もう、やる気が駄々下がりよ。(おばちゃんターン))
(そうなったら、こんな弩阿呆はエン君に譲って♥、あの司令官と新しい道を踏み出せば良いんじゃないの。(腐女帝様ターン))
活動報告に次回のタイトルを記載しています。
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