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12話目 新たな女神様

タマ(意訳: 魂)を取るか取られるかの関係を仲が良いとの一言で済ませんのか、こいつらは。

教官なんだから掃除の狂暴おばちゃんとやんちゃな幼女を止めてくれよ。

俺は一言、教官に意見を上申しようと、まなじりを上げてはっきりと言ってやった。


「はい、とても仲がいいんですよ。愛しています、家族のようなものです。」


あの教官に意見を具申するなんて気の小さい俺が言えるわけがないだろうがぁぁ。

義足のちゃらんぽらんな教官にならまだしも、あのスキンヘッドの顔に真一文字の傷がある大男、副業で厳つい自由業を営んでいるという強面の教官様には。

意見は笑って聞いてくれるだろうけどな。

しかし、授業が終わって教室に戻ろうして教官に背中を向けた瞬間、ズドンと頭にファイヤーアローを打ち込まれるに違いない。

ちなみに誰がファイヤーアローを打ったかはわからないほどの早業のはずだ。

裏の世界のプロが証拠を残すはずがない。


「それでは転写魔法の発動の実習を始めます。

今日はリュウ君が一人で皆さんの転写攻撃魔法を受けてくれるそうですね。

リュウ君、大変でしょうが魔法防御発動も聖戦士になるためには大切なスキルです。

頑張ってください。」


その時、狂暴な幼女がエンの首に巻いたロープをぐいぐい引っ張りながら質問をするために、淑やかな大男さんの背中から降りて教官の前に進み出た。


「教官、今日はいつも私たちに魔法を転写してくれる幼年魔法学校の2、3年生は校外に演習に行っていると聞いたのですが。

今日は誰が魔法を転写してくれるんでしょうか。」


おおっ、やんちゃな幼女は丁寧な言葉も使えたんだな。

似合わないけど、全くと言っていいほど。


「あぁ、今日はこのシャラモン教官が攻撃魔法を転写してくれることになっている。」


あっ、副業が厳つい自由業の強面の教官はシャラモン様と言うんだ。


「炎属性魔法術士のシャラモン教官が全員がレベル6のファイヤーボールを使えるように転写するファイヤーボールのレベルを調整してくれることになっている。

お前たちは転写魔法を使う段階でレベル6のファイヤーボールになるように魔法のレベルを上げてから、リュウに目掛けてファイヤーボールを発動するようにな。

この転写魔法のレベルを調整することも今日の訓練の目的の一つだ。

まぁ、お前らでは転写魔法のレベルを上げられても1、まれに2の奴もいるぐらいか。」


掃除のおばちゃんは上げらんないけどな。


"リュウ君、これで私の指揮は必要ないわね。

レベル6のファイヤーボールで固定だって。

どんな阿呆でもそれぐらいは理解できたわよね。"


あぁ、わかったよ。

もともと俺には掃除のおばちゃんは必要ねぇんだ。

やっぱり、俺に必要なのは食堂のおばちゃんだ。

とっとと、しょっぱい魔法を受け切って、食堂に突撃するぞう。

丁度、おばちゃんたちのおやつの時間のはずだ。

せんべい1枚ぐらいは期待できる。


"リュウ君、餌付けされてるんだ。おばちゃんに。"


何とでも言え。

餌もくれない、指示もしてくれない甲斐性の無い掃除のおばちゃんは俺には必要ないぜ。


"あっ、そっ。

まぁ、精々頑張んなさい。"


その時、鉄パイプを片手で引きずりながら狂暴種のおばちゃんが前に出て、やんちゃな幼女の隣に並んだ。

うぁぁぁぁ、副業が強面の厳つい自由業のお方に二人でメンチ切って、襲撃かぁ。


「私にとってはどうでも良いことですが、リュウ君に防御系の魔法を転写してくれる方はどなたですか。」


そんなの決まってんだろ。

お前らには一生不可能な胸で俺を窒息死させてくれるエレン教官だよな。

エン、悪いな。先に胸で逝かせてもらうぜ。


「当然、エレン先生ですよね。アースシールドのレベル5、窒息付きですよね。

今日の演習がここに入学して一番楽しみな授業となりました。」

「リュウ君、窒息付きという意味が分からないのだけど。

残念ながら、今日はエレオノーラ教官は不在です。」


えっ、そんなぁ。

俺の窒息付きがぁ。


「エレン先生は幼年魔法術士育成学校の演習に付き添っています。」


えっ、そうなの。

じゃぁ。誰が俺に防御系の魔法を転写してくれるんだ。


"あははははっ、当然、その身一つで受けるのよ。

防御系の魔法を転写してもらったら魔法耐性の体を作る訓練にならないでしょ。

まぁ、2クラスの生徒全員にタマを狙われるんだから、訓練どころの騒ぎじゃなくなるんじゃないの。"


えっ、マジでタマを取られて、逝っちゃうってこと。

俺、初めて人生最後の川を渡っちゃうよ。


"普通は最初で最後だと思うけど。"


ちょっとう、マジで逝っちゃいそうなんだけど。

何とかしてよ、元女神様現掃除のおばちゃん。


"今更、私を頼ろうとしても無駄ね。

散々ひとを掃除のおばちゃん扱いにして。

勝手に逝ってて。"


そんなぁ。


"あっ、私にやってあげられる事があったわ。"


えっ、一緒に逝ってくれんの。

それともエレン教官を呼んできてくれるの。


"阿呆、そんなわけあるかぁ。

なんで私がリュウ君のためにそんな事をしなくっちゃいけないの。

冗談はその腐った頭だけにして、リュウ君。"


じゃぁ、何をしてくれるんだ。


"ふふっ、聞きたいの♡。

明日の朝、便所草を摘んで、君の机に飾ること。

ぷぷぷっ。"


いやだぁ、明日の朝までに逝っちゃってるってことぉぉぉぉ、それ。


その時、俺の肩を叩く者がいた。

この影は。

俺は後ろを振り向いた。


お淑やかな大男さんが自分の盾を俺に差し出してきた。

これを使えっていうのか。

お淑やかな大男さんが初めてニヤッと笑って、サムズアップして後ろの列に戻っていった。


ありがとう。さすが、お淑やかな大男さんだ。

持つべきものは便所掃除のおばちゃんじゃなくて、お淑やかな大男様だ。


"その盾って、彼が物理系の防御魔法を転写してもらうためのものよね。

今はただの盾よね。

それでファイヤーボールのレベル6を受けても、炎が簡単に盾の縁を回ってきて、盾の後ろに居る阿呆は丸焦げになるだけよ。

私がこの演習の最初だと思うから、私がリュウ君の人生最後に渡る川の渡し守ってことよね。

さぁ、ちゃっちゃとやっちゃおうか、リュウ君。

チームメイトとしてしっかり役割を果たさせてもらうね。"


まずい、掃除のおばちゃんの目がマジだ。

マジでタマが狩られそうだ。


その時、奴が動いた。

俺の話を聞けとばかりに、杖をどんどんと地面に打ち付けた。

なお、副業があれな方はニコニコ微笑んでいるだけだ。


「今日、リュウの奴に防御系魔法を転写してくれるのは幼年魔法学校1年生のみっちゃんだ。」


みっちゃん? 一年生か、知らないなぁ。

大丈夫なのか。

ファイヤーボールのレベル6だから防御系魔法レベル2はほしいな。

俺の魔力で転写魔法をレベル5に引き上げられるからな。


"えぇっ、裸単騎特攻じゃないのぉ。

確実にタマが取れると思ったのに。"


相変わらず掃除のおばちゃんはスケベだな。

メスの本能丸出しじゃないか。

俺を裸にして、タマを取るなんて。


"お前がお天道様を拝む最後の日にしてやる。絶対にだ。

まぁ、幼年魔法学校の一年生なんて絶対、防御魔法レベル1よね。

リュウ君の魔力でレベル4に挙げても必要なレベルに1足りないわ。

ということは私のファイヤーボールが上回るってことよね。

やった、タマ捕ったどぉぉぉぉぉぉ♡ "


ふんっ、わざわざ副業が強面の厳つい自由業の教官がご指名あそばされたんだぞ。

"魔法防御レベル1なんです、テヘッ。"で済まされるわけがないだろう、そのみっちゃんとしても。


それに、お淑やかな大男様に拝借した盾という心強いお守りもあるんだ。

絶対に乗り切れるはずだ。

俺は新たな女神様、みっちゃんの登場をじっと待つことにした。


ここまでの成果

魔力回復: 2%

次にスキルを発動するまでのクールタイム: 45時間52分

(みっちゃんとお淑やかな大男様の御援助により、スキルの大幅向上に成功かも。)


活動報告に次回のタイトルを記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


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よろしくお願い致します。


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