11話目 息ができない
話は現在に戻って。
リュウが授業中の居眠りの罰として、皆の魔法を一人で受け切る実習の時間となりました。
「まぁ、俺ぐらいの魔力持ちだとお前らのちょろい魔法なんて横になりながら受け切ってやるよ。」
「リュウくん、調子に乗ってると痛い目に合うわよ。」
「ジェンカは心配性だなぁ、おばちゃんだからか。
幼年魔法術士育成学校の生徒の攻撃魔法なんて、レベルが知れてるからな。
お前らがそれを転写魔法にして発動するときに運よく魔法レベルを上げられたとしても、紙様のお前らごときの転写魔法なんてたかが知れているしな。」
「まぁね、幼年魔法学校の生徒だと、3年生でも使い慣れたファイヤーボールのレベルが4~5だろうしね。
それを転写してもらって、肉壁ちゃんが自分の魔力を使って転写魔法のレベルを上げたとしても1UPのレベル5~6、せいぜいリュウ君の体とおんなじぐらいの大きさのファイヤーボールだろうしね。」
「魔法防御系の魔法のレベル3を転写してもらえば俺の魔力でレベル6~7までは持って行けるからな。
レベル6のファイヤーボールだとレベル5の魔法防御で二人分の魔法障壁が作れるぞ。
余裕だね。」
「でも、今日は一人でみんなの分の攻撃魔法を受けるんでしょ。
一発一発は大したことなくても、ずっと受け続けるとなると魔力が持つの。
それに今日は2クラス一緒の演習だから、大体2時間は魔法を受けっぱなしよ。」
「レベル5の防御魔法だと2時間持たせるのは微妙なとこかな。
まぁ、全員がレベル6ということもないだろうから、グループによってレベル4の魔法防御に下げればいいか。
どうせいつものように魔力が低い者から順に転写魔法を発動すんだろ。
ジェンカがいつも一番だよな。」
「うっさい。人が気にしていることを口に出して言うな。
あっ、人によって魔法防御のレベルを変えるっていうけど、リュウ君にそんな器用なことができるの、その腐ったミカンが詰まった頭で。」
「だから、それを俺に指示してくれんだろ、隣で付きっ切りで。
ちゃんと2人分、防御シールドを展開するって言っただろ。」
「えっ、誰がリュウ君に指示するの。
阿呆の罰ゲームを誰が一緒に受けてくれるというの。」
「えっ、チームの指揮官はジャンカの役目でしょ。
演習で俺にちゃんと指示してくれなきゃ困るよ。
おばちゃんは掃除が副業で、チームの指揮官が本業でしょ。」
「何で私があんたの罰ゲームに付き合わなきゃなんないの。」
「だって、一番最初に転写魔法を使ったらあとは2時間ぽへぇぇぇとしているだけしょ。
体を動かさないと太るよ、おばちゃん。」
「誰がおばちゃんで太るってぇぇぇ。
わかった、阿呆を甘やかしたのが間違いだった。
お前の口から二度とそういう言葉が出ないようにしてやるわね、今すぐに。」
とのジェンカの不気味な叫びと同時に俺のどてっ腹にいつもの鉄パイプが食い込んだ。
グボベッ
確かに反吐しか出ない。
おい、コラッ、おばちゃん。
今日は物理攻撃の演習じゃないだろうが。
その鉄パイプ、どっかに置いて来いよ。
"い・や・だ。
これは天敵Gの撃退とリュウ君の調教用なの。
常に手元に置いていつでも使えるようにしてあるの。"
おまえ、いちいちG様を鉄パイプで殴ってんのか。
もう、部屋が穴ぼこだらけじゃないのか。
"私の部屋はいつもきれいに掃除しているの。
だから、黒い物体Gは出てこないの。"
さすがだ、掃除のおばちゃん。
「だから、おばちゃん言うなぁ~っ。
口から言葉が出ないようにしたけど、頭の中ではまだそんなことが考えられるんだ。
余裕なんだね。ふ~んっ。」
との意味ありげな言葉を吐いて、そして、ジェンカの口元が上った。
と同時に、俺の頭にフルスイングの鉄パイプが迫っていた。
本気だぁぁぁ。
マジでG様扱いだぁぁぁ。
「ジェンカ、もうリュウを許してやれよ。」
「い・や・だ。
でも、リュウ君の親友のスケベなエン君が代わりに鉄パイプ調教を受けるって言うならやめてもいいわ。
そのスケベな性根を叩きなおして見せるから。亅
「いくらかわいい女の子の一部と言っても鉄パイプのフルスイングを腹に受けるのはちょっとな。
ビンタなら何発でも。
その後、その赤くなった手を舐めて癒してあげるよ。」
今度は無言でエンのどてっ腹にフルスイングの鉄パイプがさく裂。
あっ、いつの間にか有刺鉄線なるものが巻かれていた。
マジだ。
おばちゃんがマジに切れた。
「さぁ、スケベな奴の調教が終わったわよ。そのまま黙ってて。
次はリュウ君ね。
阿呆は口で言ってもわかんないのよね。
スケベと一緒で体に刻み込まないと。」
ゆらぁ~っと、鉄パイプを引きずって、俺の方に近づいて来る掃除のおばちゃん。
おばちゃん持ち物が違うよ、箒でしょ、箒。
ちょっと待ってくれ、止まってくれ。もう一回話し合おう。
おばちゃんはエンのスケベを祓った勢いのまま、俺まで掃ってしまおうというのか。
鉄パイプという名の箒を掃除のおばちゃんが振りかぶろうとして瞬間にスケベが復活した。
有刺鉄線巻き鉄パイプのフルスイングを腹に食らった程度ではエンのスケベは治るはずもなかったのだ。
「ジェンカがドSなことをしなくても、この後の演習で十分にリュウのお仕置きが見られるぞ。」
「はっ、エン、何を言ってんだ。
お前らのちょろちょろ魔法なんて俺が食後の昼寝をしながらでもすべて受けきってやるぜ。」
「ほっほう、それは楽しみのことだな。是非すべてを受けきってくれ。」
「任せろ。」
その時、訓練場の端から幼女とお淑やかな大男が歩いてこちらの方に向かってきた。
幼女は大男の背中に引っ付いているらしく、小さな手だけが肩からのぞいていた。
相変わらずホラーな小学生低学年だな。
「お~いっ、リュウ。
幼年魔法学校の2年と3年は校外実習らしいぞ。
いつもお前にウォーターシールドを転写してくれるよっちゃんは今日はいねぇぞ。
良かったな、素手でみんなの魔法を受けられてよ。
がはははははっ、ファイヤーボールレベル1で逝けちゃうなんて、幸せな奴だな、お前。
ぶはははははっ。」
えっ、よっちゃんが居ないの。
ちょっとう、じゃぁ誰が俺に防御系の魔法を転写してくれんだ。
あっ、エレン教官か。
あの色っぽい声で「エイッ♡」っとアースシールドを転写してくれるんだな。
それはそれで楽しみだな。
できれば、あのでっかい胸に俺の頭を抱えながら転写してほしいものだ。
もう、窒息しても良いぜ。
「阿呆な上にどうしようもない、このエロ男がぁぁぁ。」
「だって、おばちゃんのそれじゃ、窒息なんて無理だよね。
まったく、鼻はともかく口まで塞ぐなんて絶対に無理だよね。
もしかして、鼻もダメ? 」
何かブチっという音が誰もいない空から聞こえてきた。
"そんなに私で窒息したいならこの鉄パイプを口に、鼻には有刺鉄線を入れてあげるわよ。
さっ、こっちにいらっしゃぁ~い。"
「俺はジェンカの胸でも窒息できるぞ。
幼女じゃ無理だけどな。」
スケベが言ってはならないことを言ってしまった。
あぁぁぁ、幼女が髪の毛を伸ばして、エンの首に巻いたぁ。
締め上げてる。
座敷童のお怒りだぁ。
「ほんとお前らチームは仲がいいな。
うらやましいよ。」義足の教官
「仲がいいのは結構なことですが、もう、授業を始めますよ。」副業が強面の厳つい自由業の教官
俺は口に鉄パイプを押し込まれたまま、エンは首にロープを巻き付けたまま、慌てて教官たちの前に整列した。
ここまでの成果
魔力回復: 1%
次にスキルを発動するまでのクールタイム: 49時間34分
(息苦しくてクールタイムが伸びました。)
活動報告に次回のタイトルを記載しています。
お話に興味がある方はお読みくださいね。
感想や評価、ブックマークをいただけると励みになります。
よろしくお願い致します。
本作品は前作「聖戦士のため息」シリーズのパラレルワールドの位置付けとしています。
本「聖戦士のめまい」とともに「聖戦士のため息」シリーズも合わせてお楽しみいただけたら幸いです。
"聖戦士のため息シリーズ "
シュウとエリナ、イリーナ、輪廻の会合に集いし面々が活躍するサーガをお楽しみください。
・本編 : 聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます
・別伝1 : 死神さんが死を迎えるとき
・別伝2 : 優しさの陽だまり
・別伝3 : 陽だまりからの贈り物 優しさの陽だまりから
・外伝 : アラナの細腕繁盛記 越後屋の守銭奴教繁盛記
・別伝4 : 炎の誓い