22話目 検証 作戦会議
マスクマン先輩はマイクの顎の部分に手を当てて少し考えている。
まさか、あっち側の世界の人にお友達でもいるんでしょうか。
"司祭様に知り合いがいるんじゃない。
もし、本当にあっち側の奴らが第17師団の邪魔をしているなら、司祭様の方が私たちよりもはるかに戦力になるものね。"
そうなったら、うちはエンの奴の頭を処置して磔に、それを前面に押し出して魔族軍に特攻をかけるということで良いんだよな。
"そうするとそのこの世の者でない偵察部隊は怖れを成して尻尾を巻いて逃げるから、後は第17師団が魔族軍を押し返すだけね。
まぁ、そう言う展開になったら前面に出されたエン君はそのままチ~ン。
在学中は代わりの斥候職を募集しないで、卒業後に直ちにマスクマンさんを斥候職として勧誘するというのはどうかな。"
おっ、それは良いな。
うちのチームの弱点というか汚点を排除して、逆にそこを強化するっていうことだな。
"それであればエリカちゃんとボルバーナちゃんも納得すると思うよ。"
お淑やかな大男さんも大丈夫だよね。
"彼はボルバーナちゃんが納得して、その上でチームの力が強くなるならば反対しないわよ、多分。"
俺はよだれを垂らして爆睡する魔牛乳帝様の胸が呼吸で上下するのを前かがみになりながらガン見しているエンの方をちらりと見た。
まぁ、そんな弩スケベな事をこの世でやれるのもあと数日だ。
好きにさせといてやるか。
「今回の作戦の目標である例の魔族の偵察隊が実在するかどうかですか。
まぁ、誰も姿を見たわけではないですからね、そういう疑問を持つのは当然のことですね。」
「私たちのチームも去年の実地訓練でそれを捉えたと思ったのですが、結局は虚を捉まされたんですよね。
ここに居るエン君はその姿を一度は見たんですけど、それが実体なのか幻影なのか、結局はわかっていないんです。」
腐女帝様はエンが初めに見た例の偵察部隊の者たちも幻影だと考えているのか。
「実態が魔族なのか、それに使役されている魔物の様な奴なのか、或いはこの世のものでないものを魔族が召喚したのか、その実態はわかりません。
しかし、実際に第17師団は後方を何者かにかく乱されているのは間違いありませんね。
そういう意味では偵察部隊と言うか別動隊の存在は明らかだと考えるべきですね。」
マスクマンさんは最後の方の"存在は明らかだ"という言葉を強くした。
「去年の実地演習でもあのクマさんと鬼さんたちの統制された動きは、誰かに操られていると考えられたものね。
マスクマンさんがいうその"存在"が第17師団に対峙している魔族の中にいるのは確かだと言うことね。」
おばちゃんもマスクマンさんと同意見か。
「今回の私たちの任務はその魔族の偵察隊を発見し、殲滅することだと大隊長がおしゃっていました。
それはこれまでと同じような偵察方法で発見できるものなのでしょうか。」
そう質問する腐女帝様の方にマスクマンさんは視線を移して、彼女の質問を吟味するように小首をかしげた。
「君はこれまでと同じ方法では発見できないと言いたいのかな。」
「できないとは言いませんが。
だだ、これまでもホークアイのスキルや風属性魔法の探索を使って、その魔族の偵察隊の発見に努めてきたのですよね。
それに先ほどもありましたが、私たちの去年の実戦演習で一度はエン君のホークアイで相手を捉えたかに見えましたが、それっきりその対象が見えていません。
それを考えるとホークアイでの索敵、そして、風属性魔法の索敵ではそのいると思われる敵の部隊を捉える事は難しいと思います。」
「私もエリカちゃんの意見に賛成です。
先輩方の第2小隊は我々第2中隊と一緒に魔族の偵察部隊を探すことになりますが、索敵要員がホークアイのスキル持ちが3人と風の魔法術士がクリスさんとエリカちゃんの2名となります。
通常であればかなり索敵に力を置いた部隊と言っても良いと思いますが。
先ほどのエリンちゃんの指摘通りだとすると、このままでは相手を見つけられない可能性が大だと思います。」
流石、俺たち中隊の指揮官のおばちゃん、駄目駄目作戦にはビシッと指摘するな。
あっ、小者隊長の顔が引きつって、目はキョドっている。
もしかして、とにかく索敵要員をかき集めただけの作戦を考えたのがこいつ、小者隊長か。
"小者に学生とはいえ3帝を使役したり、師団の部隊を再編成するような頭と実権ははないわよ。
きっと女衒の元締の大隊長当りが考えたんじゃないかしら。"
なるほど。
ボスが考えた作戦を否定されて、そのあとはどうしたらいいかわかんなくてキョッドっているのか。
「君には他に良い考えがあるのかな。
既に今回の作戦は開始されているため人員の変更はきびしいな。
このまま作戦通りにホークアイ持ちと風魔法術士で敵の偵察部隊の発見に努めるか、或いはこの人員を使って別の作戦を実行するかだが。」
キョドったままの小者隊長の代わりに、マスクマンさんがおばちゃんに尋ねる。
もう、この人が第2小隊の隊長で良いんじゃねぇ。
「私は学生3-8組大隊第2中隊の指揮官を務める、ジェンカです。
宜しくお願いします。
早速ですか、中隊の指揮官として作戦の改定を提案いたします。」
おばちゃんがまじめな顔をして、マスクマンさんとクリスの姉御の方を交互に見やった。
小者隊長他2名については今のところは無視するつもりのようだ。
もちろん俺たち第2中隊の方はおばちゃんの作戦を基本として動くことに異存がある者はいないだろう。
まぁ、火力バカ共のチームは食後の昼寝で話すら聞いていないがな。
「まず、敵の偵察部隊は実態のある、この世の者として仮定いたします。
これがあっちの世界の奴らだと我々に今ここで対抗する手立てはありませんので。」
そこでおばちゃんの視線がエンの頭のてっぺんに注がれた。
これまで大人しく我慢していた凶暴幼女がロープと十字架をエンの後ろに置いた。
おいっ、それってどっから出した。
「まぁ、その可能性もなくはないので、一応の対策は取ってありますけど。」
凶暴幼女が出した十字架を見た小者隊長が引きつった声で聞いた来た。
「えっ、君たちはあっちの世界の者と戦う術も持っているのか。」
おばちゃんは真剣な顔から相手を脅すような凶悪な顔になって、テーブルの丁度正面に座る小者もう直ぐ元隊長に小声で言った。
「いいえ、あれは生贄です。
我々はこの世の者でないものと戦うすべなどは持ち合わせていません。
彼、エン君の尊い犠牲の精神を無駄にしないように、相手が彼の頭に反射する光にひるんでいる隙にとんずらするんです。
もちろん、エン君を一人にしませんよ。
尊い義性が多いほど私たちの逃げるチャンスも広がると言うものですよね。
さぁ、ここぞというときにはあなたも十字架を背負ってくださいね。
小隊長ですし、壁役ですもんね。モーリツ先輩は。
うへへへへへへっ。」
「ひぇぇぇぇぇっ。」
一言、雄叫び上げると小者元隊長はテーブルの下に隠れてブルブル震え出した。
テーブルの下からは悪〇退散とか、俺はおいしくないだの呟いている声が聞こえてきた。
さっきまで小者元隊長が座っていた席に、凶暴幼女がお淑やかな大男さんの力添えを得て、エンの2倍以上ありそうな巨大な十字架をおったてていた。
"皆なせっかちねぇ。
立てるなら第17師団の後方、この世の者でないものが活動する場所じゃないとね。"
うぁぁぁぁ、おばちゃんの作戦って、餌(意訳: エンと小者元隊長)に敵、この世の者でないものを憑依させて、そのまま磔にして火あぶりにすることだったのかぁ
ここまでの成果
魔力回復: 21+19%
次にスキルを発動するまでのクールタイム: 23時間59分
(おばちゃんの作戦って辛辣だな、味方の犠牲を踏み越えて勝利を目指すんだな。)
(味方? 仲間を犠牲にしてまで勝利なんて欲しくないわよ。(おばちゃんターン))
(でも、エンと小者元隊長を餌にこの世の者でない敵偵察部隊を狩るんだろ。)
(だから、味方を犠牲になんてしないってばぁ。
粗大ごみを餌に使うだけでしょ。
ゴミが片付く上に、敵を狩れるのよ。
何て素晴らしい作戦なの。(おばちゃんターン))
(粗大ごみって・・・・・・・)
あまりの大胆な作戦にブルッときて、スキルdown。
魔族狩りのついでに粗大ごみを始末し、代わりにマスクマンさんをチームに引き込むなんて、何て素晴らしい作戦なの。ボーナス大幅UP。
活動報告に次回のタイトルを記載しています。
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