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19話目 発見 こいつも愛読者だったぁ

本業が女衒の元締めさんから実戦訓練の概要が説明された後に昼食となった。

昼食会場は外に出て、基地の中心部に位置する建物だった。


まぁ、そこで出された昼食の豪華なこと。

肉壁の穴の食堂の一週間分の食費をこの昼食で使い切ったような贅沢な食い物だった。


"リュウ君、来たかいがあったね。

美味しいものが食べられて。

まぁ、私の手料理よりも数段味が落ちるのは許してあげてね。"


こんな豪華な料理は食べたことがねぇ。

お盆と正月が10年分一緒に来ちゃったという感じだよな。

もう、思い残すことはねぇ。

俺は話す時間も惜しいと、テーブルに山盛りに盛られた唐揚げを次々と頬張っている。

念話は食べるのに邪魔にならないからOKだ。


"そんなに慌てなくても、まだいっぱいあるから。

それにそんなに食べたらおやつに私の超美味しい、ほっぺたがとろけて落ちそうなクッキーが食べらんなくなるわよ。

リュウ君、あれ大好きでしょ。"


あれはあれれ、これはこれ。

こんな豪勢なものは次はいつ食べられるかわからんから、食えるだけ食う、いや、腹が破れるまで喰ってやる。

これでこの世に思い残すことはねぇ。


"まぁ、これが軍の作戦よね。

私たちを本当の実戦に駆り出すための。

この世に悔いが残らないように。

心残りを食欲で満たして、満足感で打ち消すのよ。"


確かに、悔いなんてもう何もない。

予は満足じゃ。


"ないとは思うけど、実戦訓練に出たら何が起こるかは保証できないし。

万が一ってことが起こらないとも言えないから。

食欲だけでもしっかりと満たしてやって、この世に悔いを残さないように。

ゾンビとなって基地に舞い戻ってこないようにという配慮ね。"


俺はそうなったら戻ってくるぞ。

ここにまたこれを食べにな。


"じゃぁ、今回の実戦訓練でも生き残らないとね。

また、次の実戦訓練の前に食べられるかもよ。

ゾンビごときにこんな豪華な料理を提供するわけないじゃないの。

餌付けされて毎日基地内を徘徊されても困るし。

精々、聖水を頭からじゃぶじゃぶ掛けられるのが落ちよ。"


まさかこの食事って最後の晩餐的なもんなのか。

これから形ばかりのオークションにかけられてそのまま鉱山に放り込まれるんだ。

もう、ゾンビじゃないとここに戻ってこれないんだ。

でも俺は意地でも、例えゾンビになってもここに戻ってくるぞ。

そして、俺たちを鉱山に放り込んだ、本業が女衒の元締めは借金が多すぎて足抜けできねぇ、やっぱり大隊長は副業だの奴に憑りついてやるんだ。

一生涯、唐揚げをおごらせてやる。

ドンドン借金を膨らませてやる。

そして、最後は借金が返せなくなり鉱山行きにしてやるんだ。


"じゃぁ、鉱山に放り込まれたらゾンビになってここに出戻り、憑りついて良いわよ。

実戦訓練に放り込まれたらなんとしてでも生き残って次回にまたおごらせてやれば良いわね、女衒の元締めさんに。"


おぉっ、そうだよな。

それだったら、どっちに転んでもまた唐揚げ喰い放題だな、奴らの奢りで。


そんな次回への奢りの豪華な食事に夢を膨らませつつ、俺たちは用意された食事をくらいつくしてから元の建物に戻ってきた。

先ほどのホールのような大きな会議室に戻るのではなく、教室ほどの少し狭い会議室に案内された。

これから中隊ごとに分かれて実戦訓練の打ち合わせを行うとのことだ。

俺たち第2中隊には第17師団の教育大隊第2中隊所属の1個小隊が実戦訓練の指導係として配置されるようだ。


しかし、何かがおかしい。

小隊長らしき男の、女衒の元締めさんと同じような満面の笑顔が俺の違和感を正しいものだと証明している。

これは指導の為じゃない、監視のために張り付いているんだ。

鉱山やいかかわしい宿泊所に放り込まれるのを悟った学生たちが秘かに逃げ出さないように監視するために違いない。

警戒せねば。


俺は心の警戒度をmaxに上げようとしたのだが。

うっ、なぜか瞼が下がって視界の半分を覆ってきた。

朝の集合時間が早かったこと、昼食で腹が一杯なこと、この建物と離れたところにある食堂を往復した適度な疲労感。

やられたぁ、豪華な食事と適度な運動は俺たちの警戒心を奪い取るための奴らの作戦だったんだ。

その上、背中が体の動きに合わせて倒れる座り心地の良い椅子が用意されている会議室も罠だった。

この安心感に抵抗できない。

俺の意識を低下させて従順にさせ、さらに十分な栄養と休養を取らせて体調を整えた上でオークションにかけるつもりだな。


うっ、こんなことなら唐揚げだけで8皿もおかわりしなければ良かった。

焼肉のたれにはもっとおろしニンニクをたっぷりかけとけばよかった。

白ご飯の上にはネギたっぷりの納豆をかけておけばよかった。

今更遅い。

全て奴らの思う壺・・・・・・。

座り心地の良い椅子に掛けて5秒で俺の意識は30%まで低下した。

辛うじて誰かが話をしているのを感じるレベルだ。


「こらぁぁぁ、弩阿呆、何で寝たんだ。

実戦訓練のミーティングだぞ。

遊びに来たんじゃねぇぞ。

魔族と実際に戦うんだぞ。

死にたくなかったらシャキッとしろぉ。」


遠いところで凶暴幼女が叫んでいるのが分かった。

俺だって、女衒の元締めさんの罠だってのはわかっているんだ。

でも、もうだめなんだ。

この心地よさに逆らうなんて無理だ。

どうせこの世の未練をさっきの食事で断ち切ったんだ。

もう、鉱山だろうが、魔族軍の本隊に竹槍一本で特攻しようが構わないんだ。


ちょっと待て。

そんな俺にもまだこの世に未練があった。

このまましばらく寝かせてくれぇ、たった1時間で良いんだ。

俺の未練に身を任せて、俺の意識はさらに低下して10%以下になって行くのを自覚した。


"リュウ君、第17師団の最前線基地で、今晩は夕食を兼ねての歓迎会だって。

今日の昼以上に豪華になるかもね。

あっ、寝ていても良いけど、寝ていた人はここ第6軍団のベースキャンプで居残りだって。

食事は当然、キャンプ飯の残り。

冷や飯に冷えたままのカレーとぬるい水だって。"


「さぁ、ミーティングを始めましょうか皆さん。」


俺は一瞬で覚醒した。

心身共に非常に充実しているぞ。


「なんだ、やればできるじゃない。

まぁ、私としては惰眠を貪る弩阿呆のリュウ君を優しく抱きしめて見守る弩スケベのエン君という図を是非に見たかったけどね。」


・・・・・・・

"・・・・・・・・"


腐女帝様の描く地獄絵図が頭に浮かんだ。


「皆さん仲が良いですね。

そういう仲間を大切に思う気持ちが不測の事態に陥った場合でも魔族と戦う勇気を与えてくれるんですよ。」


何だぁこの女衒の下僕は他人事だと思ってへらへらしやがって。

腐女帝様の期待する仲間を思いやる気持ちってのは、うっすい本の中でしかありえないもんだぞ。

それを敵前で実際に示せってのかぁ。


「それでも、一番大切なことはしっかりと作戦を把握し、まずはそれに合わせて動くことですね。

それでは具体的な作戦行動を確認していきましょうか。」


不気味なほどの笑顔を向けてくる女衒の下僕さんだった。


ここまでの成果

魔力回復: 30+15%

次にスキルを発動するまでのクールタイム: 22時間11分

(女衒の下僕が俺に戦う勇気を与えるのはエンだと言うんだけど。

エンを思って戦えって強要してくるんですけど。)

(もしかしてこいつはエリカちゃんの発行するうっすい本の愛読者なのかな。(おばちゃんターン))

(なにぃぃぃぃ、愛読者って、こいつもそうなのか。)

(女衒の元締めにそういう思いを向けていてもあり得ない事じゃないと思うけど。

下僕だし。(おばちゃんターン)。)

(うぁぁぁぁぁ、そういう個人的な思いを俺まで押し付けないでほしいんですけど。)

(いずれにせよ、新たに警戒すべき対象が増えたわね。

今夜から警戒した方が良いわね、寝込みを襲われないように。(おばちゃんターン))

(おおぉぉぉ、おばちゃん、今晩、こいつが俺のシュラフに入り込んできたらどうしよう。)

(その点は大丈夫よ。だって、私が真っ先にリュウ君のシュラフに潜り込んでいるからね♡。)

(・・・・・・・)


やはり今晩の呪縛から解き放たれないのか。

今晩の呪縛でブルって来て、スキルダウン。

でも、おばちゃんが舌なめずりしてボーナスがUP。


活動報告に次回のタイトルを記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


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よろしくお願い致します。


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