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18話目 発見 ここが逆転のターニングポイント

「それでは椅子に座ってもらえますか。」


並べた椅子の前方に立っている女衒の元締め様が笑顔を絶やすことなく、俺たちに着席を求めた。

これからオークションに関する説明か、それとも自分の足で歩いて戻ることが出来ない鉱山やいいかがわしい休憩所の説明、いや、まずはでっちあげられた借金の額の提示かな。


"私はリュウ君とどこまでも一緒だから、鉱山に行くから♡。"


おばちゃんはぶれないな。

戻る道のない鉱山労働に行かされるというのに、♡マークを飛ばす余裕があるなんて。


「皆さん、着席されましたね。

それでは皆さんの実戦訓練について詳細を説明致します。

通常は各師団の教育大隊の担当者が学校に事前に赴き、実戦訓練の説明を行うことにしています。

そして、その説明の内容に沿って、学校内で実戦訓練に向けて十分に準備を進めてもらう事になります。

しかし、今日ここに集まった皆さんの大隊には通常とは異なる実戦訓練、ぶっちゃけ、訓練ではなく実戦、作戦行動の一翼を担っていただくことになりました。

実際の作戦については事前に内容を通告するわけにもいかず、実戦訓練初日、今日の午前中に本作戦の説明、午後に具体的な作戦実行計画を練ってもらう事になったのです。」


そりゃぁ、事前に鉱山やいかがわしい休憩所に売り飛ばされると聞いたら、幾ら肉壁ちゃんでもここに来る前に逃げ出すわな。


「今回の実戦訓練は特殊なケースと言うことで戸惑いや疑問もあるでしょうが、まずは作戦内容について聞いてもらい、その後にまとめて質問を受けたいと思います。

尚、何でこんな作戦を立てたんだというような、軍の作戦の根本に対する意見は受け付けません。よろしいですね。」


俺たちが何で鉱山やいかがわしい宿に売られなきゃなんないんだという根本的な問題はもうあきらめろってことですね。


こんな俺の不満などはG様が台所の隅に静かに佇みたいという願いと同等だと言わんばかりに、女衒の元締め様は何の躊躇をすることなくスリッパを振り上げ、あっ、もとい、何のためらいもなく作戦の概要について笑顔のまま語り始めたのだった。


「これまでのところ直接敵対する魔族軍と人類軍はほぼ互角の戦いをしており、その戦線はここ数年停滞していると言っても過言ではありません。

最近は大きな戦いもなく、小競り合いでも勝つでもなく負けるでもなく、まぁ、ぶっちゃけ言うと軍全体に厭戦気分が蔓延っていると言っても良いような状態です。」


なるほど、それで暇を持て余した第17師団ではそのベースキャンプのあるエゲルの裏世界と組んでいろいろと、いつの間にか本業が軍人から女衒の元締めへと部下は下僕たちに変わったと言うことですね。


「ただ一点、人類軍の最近の戦況で憂慮すべきは第17師団だけはズルズルと後退を余儀なくされ、第16、18師団と形成している第6軍団の戦線がゆがんだ形になっています。

そこで、現在、後退した地域を奪回すべく戦力を増強して新たな作戦行動に移っているところです。」


なるほど、それでこいつらも現在の本業の女衒と副業の軍人という立ち位置を元に戻して、本業を軍人としなければならなくなったわけだ。

これまで本業としてきた女衒の顔役を廃業するに当たり、最後の一稼ぎとして俺らをオークションにかけるべくここに集めたんだな。


「しかし、戦力を増大して反抗を試みてはいるのですが、とある問題、まぁ、これが第17師団の戦線を後退せざる負えなかった理由なんですけどね。

このとある問題を解決しないと戦線を元に戻すことが出来そうにないという現状にあるわけです。」


んっ、女衒を一端は廃業したいんだけれども、人集めやお上への賄賂に使った運転資金が借金としてまだまだ残っており、そう簡単には止められないってことか。

下手すりゃ、この女衒の顔役とその下僕の精鋭部隊が鉱山に売っぱらわれる危険があると言うことなのか。

だんだん、読めてきた。

女衒を廃業するための清算金を集めるため、俺たちをいかがわしい休憩所の店長や鉱山経営者にご紹介するというのが今日、俺たちをここに引き込んだ目的だったんだ。


「実は昨年より第17師団の後方がかく乱される事態が頻発しています。

第17師団が前面に展開した魔族軍と交戦を開始すると、決まって後方が騒がしくなるんですよ。

まぁ、後から確認すると大した損害は出ていないのですが、戦闘時には正面と背後の挟み撃ちのような格好になるので、第17師団の将兵が浮足立って士気の低下、そして、戦線を維持できずに後退。

これを何度か繰り返した結果、第17師団の担当地域だけが人類側に凹んだ戦線になってしまったというわけです。」


"その後方をかく乱しているのが、去年私たちが初めての実地訓練で遭遇した例の偵察部隊ってことよね。"


んっ、そいつらのせいで女衒の元締め様とその下僕の精鋭部隊が本業の軍人に戻らざる負えなくなり、これまでの借金を清算するために俺たちが鉱山に派遣されることになったのか。


"まぁ、大方間違ってないかもね。"


「我々第17師団も戦力を増強し正面の魔族軍との交戦を有利に進め、その間に後方で揺さぶりをかけてくる例の魔族の偵察部隊の索敵と殲滅を何度も試みました。

しかし、残念ながら魔族の偵察部隊の実態を全く捉えることが出来ずに今までと同じように後方をかく乱され、有利に進めていたはずの魔族軍本体との戦いも徐々に戦線が維持できなくなり、やはり後退する羽目となりました。」


"それって、第17師団本体の増員よりも魔族の偵察部隊を索敵する部隊を増員した方が良いんじゃないのかな。"


増員しても手が足りないから、本業で女衒、副業で軍の教育部隊をしている者まで、本業で魔族の索敵部隊としなきゃならなくなったんじゃないの。


「我々も索敵を増員したのですがそれでも魔族の例の偵察部隊を捉えることはできず、あれよあれよという間に第17師団の戦線はさらに後退という憂き目にあってしまったのです。」


"本業の女衒じゃ借金だらけ、副業の教育部隊としてはまともな索敵部隊を育成できなかったと言うことなね。"


おばちゃん、それって、まとめると。


"こいつら使えない奴ってことね。"


その尻拭いで俺たちが鉱山行きってのは納得できないんだけど。

この使えない本業は女衒の元締めとその下僕の精鋭?部隊を、一週間だけになるけど本業は鉱山囚人にすべだと思うよ。


「という事情から、唯一その魔族の偵察部隊の実態を捉えたことのある皆さんの大隊に協力を願いたい。

我々第17師団教育大隊第2中隊と皆さんが協力して、魔族の偵察部隊の索敵と殲滅を行いたいのです。

これが今回の皆さんの実戦訓練の概要となります。」


は~ぁ、鉱山行きの前に仕えない女衒共の尻拭いをしろっていうことですか。


ここまでの成果

魔力回復: 35+5%

次にスキルを発動するまでのクールタイム: 20時間36分

(使えない上司を持つと部下はその尻拭いで翻弄されるという典型例だよな。)

(その上で作戦が成功したらめでたくこいつらは本業の女衒に復帰と言うことね。(おばちゃんターン))

(そして、勝利に貢献した俺たちの功績を横取りするためにめでたく俺たちは鉱山行きだよな。)

(ここは何とか立場を逆にしないとね。まぁ、するけどね。(おばちゃんターン)。)

(どういうこと?)

(無能な女衒共を鉱山送り、誰も果たせなかった任務を達成した私たちは金一封、二封、三封・・・・。(おばちゃんターン))

(おおぉぉぉ、おばちゃんが守銭奴の本領発揮だぁ)


女衒共との戦いに備えてスキルが大幅UPだぁ。

んっ、戦う相手が違う? 微妙な違和感でボーナスはdown。



活動報告に次回のタイトルを記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


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よろしくお願い致します。


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