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10話目 厳つい教官の真の目的は

「いいですか、チーム、つまり小隊は軍の実戦部隊の一番小さな戦闘単位でありますが、一番重要な戦闘単位でもあります。

個々の軍人は様々なスキルや特徴を持っていますよね。

それが数人集まって一つのチームとなりますから、チーム毎に特徴が出てきます。

その特徴による優位な点やあるいは欠点をチームの各人が良く把握したうえで、作戦や指令をどのように遂行するか考える必要がありますね。

通常は小隊の指揮は魔法術士が行います。

魔法術士は君たちに魔法を転写しながらどのように小隊として行動するか指示します。

皆さんはその指示に従って行動しますが、お互いのことを良く理解していないと、例えば防御担当の前面に攻撃担当が突出してしまい、攻撃する前に敵の攻撃に晒されて動けなくなるようなことが起きます。

小隊の指示を良く理解し、どのように自分が行動するかは個々人で考える必要があります。

もちろん、とっさの場合は指示がなくても自分の判断で小隊のために行動する必要も出てきます。

この一年でそのような様々な場面を想定した作戦や訓練を行う予定にしています。

基本的な動きは私たち教官の方から提示します。

しかし、実際に自分が、あるいは小隊がどのように行動するかはチームでよく話し合い確認する必要があります。

君たちは一年後、ここソンバトの聖戦士育成学校を終了し、教会本山にある聖戦士育成学校本校に進むことになります。

しかし、全員が本校に進めるわけではありません。

毎年半数が本校で聖戦士になるための訓練(意訳: 肉壁ちゃん養成特訓)を引き続き受けることになりますが、残りの半数はここで引き続き後方支援について学ぶ(意訳: 紙様養成講座)ことになります。

これは各個人の聖戦士としての適性(意訳: 肉壁ちゃん特性)をこの一年で学校側が見極めると言うことを意味しています。

学校としては全員が本校に行ってほしいのですが、適性のない者を魔族との戦いの最前線に出すわけにはいきません。

と言うことで、この一年は今日組んだチームでよく話し合いなら学んでほしいと思います。」


初めて組むチームのために2時間もホームルームの時間が割かれたのだ。

今はその後の授業中である。

凄く丁寧な説明だよな。

優しくて、優秀な良い教官なんだろうな。


見かけはともかく。


"見かけで判断しちゃいけないと思うの。

内面と言うか、その人の本質を理解しようとしないと正しい判断ができないって、教官も言ってるわよ。"


そうだな。

見かけはおさげのメカネっ子の可愛い女の子なのに、中身はゴロンと横になって煎餅をバリバリかじりながら雑誌を読むおばちゃんだもんな。


バコッ

辞書が頭にクリーンヒット。


"私は内面も可愛い女の子なの。"


えっ、辞書を俺の頭にヒットさせたり、鉄パイプで俺のどてっ腹を打ち抜くお前がか。

凶暴種のおばちゃんの間違いじゃないのか。


隣で鉄パイプを持って、プルプルしているのが目に入った。


「えぇと、リュウ君とジェンカさんどうしました。

リュウ君の頭に辞書を投げつけていましたが。

確か同じチームになるんでしたよね。

もしかして、リュウ君の頭の防御力を上げる訓練ですか。

今は座学で頭脳を鍛える時間ですので、そういう物理的な訓練は出来れば午後の訓練でみっちりやってくださいね。

決して、止めませんから。」


と、やさしく諭された。

うぁぁぁぁっ、怖い。

あの顔との言葉のギャップがすごすぎ。


"リュウ君、教官に失礼よ。"


何を一人だけ良い子ぶってんだよ。

おばちゃんだって、そう思っているだろ。


"そんなことないけど、あるけど。"


やっぱ、おばちゃんの自覚があるんだ。


その時、キラッと鉄パイプが光った。


"違うわよ、そっちを認めたんじゃなくて、顔とセリフのギャップよ。"


やっぱ、おばちゃんもそう思っていたんだ。


その時、鉄パイプが俺の腹に食い込んだ。


"だって、お淑やかな大男さんよりもさらに大きなガタイをしていて、スキンヘッドよ。

そして、顔に真一文字の大きな傷よ。

戦場じゃなきゃ、厳つい強面の自由業の方にしか見えないじゃない。

それであの丁寧で優しい言葉遣い。

ギャップがありすぎでしょ。"


あっ、そういえば俺に肉壁ちゃんの適性があることが分かった翌々日に、家に手土産を持って肉壁の穴に勧誘しに来た人もあんな感じだったなぁ。

もしかして、あのギャップ顔の教官も授業じゃなく勧誘してんじゃないのか、今ここで。


"肉壁の穴の生徒をどこに勧誘するっていうの。"


肉壁に。


"ここって肉壁ちゃん養成所でしょ、リュウ君の言ってることはおかしいわよ。

もともと阿呆だけど、さらに醜態をさらしているわよ。"


おばちゃん、わかってないなぁ。

肉壁ちゃんじゃなくて、真の肉壁様に勧誘してんだよ。


"真の肉壁様? 肉壁ちゃんとは違うの。"


肉壁ちゃんは聖戦士の成れの果て、まぁ、軍人の一種だけど、真の肉壁様は本当の肉壁なんだよ。

敵の前面に武器も魔法転写もなく並ばされて、敵に魔法を打ち込ませるための肉壁。

真の肉壁様が尊い犠牲になっている隙に味方が攻撃の準備をするんだよ。


"確かにその方が本来の肉壁に近いわね。

それをあの教官が勧誘しているっていうの。"


あぁ、あれは真の肉壁様を集めるように軍の参謀本部から委託を受けた厳つい強面の自由業の方なんだよ。


"それって、人買いってことなの。"


そうだよきっと。その内に本性が出るよ。

頭が悪すぎて紙様にすらなれない奴をこの学校から合法的に追い出すことにも一役買っているのかもね。


"なんて狡猾な。それで厳つい強面の自由業の方が教官のふりをして講義モドキをしている理由がわかったわね。

そうなると、すでに名前を憶えられているリュウ君が第一ターゲットと言うことよね。"


何言ってんだ、おばちゃんもしっかり覚えられていたでしょ。

それにさっき決まったばかりの、俺たちが同じチームだということまですでに把握しているし。

どんだけ執着してんだ、おばちゃんに。


突然、おばちゃんが立ち上がって、素で話し始めてしまった。


「こうなったのもすべてリュウ君のせいじゃない。

この優しくて優秀な私が厳つい強面の自由業の狡猾な人買いに目を付けられて真の肉壁様に勧誘されているなんて。

どうしてくれんの。

ちょっと離れなさいよ。しっ、しっ。

近寄るな。」


おばちゃんが叫んだあと、教室は静寂に包まれた。

春だというのにここだけは極寒の冬の夜の静けさがあった。

一拍置いて、ついに厳つい強面の自由業の狡猾な人買い様様が動いた。


「どうしました、突然、人買いだの肉壁様だの不穏な言葉を出していましたね。

ちょっと、落ち着くため教室から出ましょうか。

さっ、一緒に行きましょう。」


とっ、厳つい強面の自由業の狡猾な人買い様様はおばちゃんの手を取って、教室の外に連れ出そうとした。


「ぎぁぁぁぁぁぁ、放してぇぇぇぇぇ。まだ死にたくないぃぃぃぃぃ。

私よりもこいつ、リュウ君の方が何倍もおいしいわよぉぉぉぉぉ。」


と、叫ぶと興奮のあまりか、恐怖のあまりか、おばちゃんはばたっと倒れてしまった。


あっ、俺はまずいです、はい。

食べるとお腹を下しますよ。


後に、エンとこの場面のことを話す機会があった。

可愛い少女が厳つい強面の自由業の方に親の借金のかたとして、町のいかがわしい店に売られていくようなシーンに見えたという。


ここまでの成果

魔力回復: 1%

次にスキルを発動するまでのクールタイム: 46時間54分

(厳つい強面の自由業の狡猾な人買い様からタゲが外れてラッキーと言うことでクールタイムが短縮です。)


活動報告に次回のタイトルを記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


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よろしくお願い致します。


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