⑨
気がつくとオレと明は河原で寝そべっていた。もう空は夕暮れどころか星が輝き始めていた。
「アンパン濡れちゃったね。」
しょんぼりとした明がしなしなになってしまったアンパンを指でつんつんとつついていた。
こいつはどこまで自分のやっていることに自覚があるのだろうか。
「落ち込むなよ。また新しいの作ってやるから。」
そう言ってやると明はぱあっと笑顔になってうん、と頷いた。
『でも…こいつはやっぱり笑顔が一番だ。』
「よーし、早く家に帰って新しいアンパン作ろう!」
明が家に走り出す。オレも笑おう。未来のあいつにも笑っていてほしいから。
次の日、オレは玄関の扉の前に立っていた。「思い出したの?自分の進む道」
玄関先でお母さんが笑ってた。ここから帰ってしまったらもう二度とお母さんには会えないだろう。でも、もう大丈夫。
「うん。オレ、頑張るよ」
「そう。」
「じゃあ、行くね。」
ゆっくりと取っ手を押す。キーっと鈍い音がしてドアが開いた。眼前に広がる風景はもう何千回と見てきたはずなのに全く新しい別の世界に見えた。殺風景だと思っていたこの街並みが、朝日に照らされるとこんなにも鮮やかな輝きを放つなんて知らなかった。力強く一歩足を踏み出した。閉まっていくドアの向こう側から温かい声が聞こえた。
「明、行ってらっしゃい」
無事完結することができました。処女作で不安なことばかりでしたが、アドバイスを下さる方や、更新するたびに読んでくださる方の温かい応援があり、ゴールテープを切ることができました。ここまで読んでくださりありがとうございました( ^∀^)感謝しています。
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絶対ハーレム聖遷〜異世界転生出来ないのなら現実世界の限界チートで頂点を掴み取れ〜
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