1/110
終焉
終わりだった。
ただ、それだけだった。
神が消え。大地が枯れ。人が死ぬ。
全ては、終わったことだった。
「 」
彼が、呟いた。
舞い散る火の粉の中で、焼け焦げた地表に手をついて。
今にも霧散してしまいそうな意識を決して手放すまいと、彼は歯を食いしばる。
地面の感覚が遠のいていた。自分の意識が薄らいでいるからではない。
物理的に自らの手から、その地表が離れているのだと気づいた。
体の芯が焼け焦げるように熱く、凍るように冷たい。
痛みはない。浮遊感が、むしろ心地良い。
飲み込まれてしまうその前に。
消えてしまう、その前に。
動け――、体。
「――――――――――――――――!!!!!!」
* * *
来るはずがなかった。来るべきではなかった。
終わりだった。ただ、それだけのはずだった。
白んだ視界の先に、朝日が見えた。
朝日に照らされた、『魔女』が見えた。