表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死神の従者【仮】  作者: さとり
第三章  ヨシノと桜
18/26

3-1

不幸にはいろいろな形があると思う…

親がいないとか、虐められてるとか、お金がないとかetc…etc…

私の場合は親が最悪だったこと。

父親は暴力をふるう人だった…母親は暴力に耐えかねて私が15歳になった時に出ていった…父親の暴力はいなくなった母親の代わりに私に向かってきた…殴る蹴るは日常化していった…そんな日々が二年近く続いたある日…私が寝ている時に父親は私の寝室に入ってきた…その気配で目を覚ました…この時に目を覚まさなかったらと思うと今でもゾッとする…

なにも身にまとわない姿の父親が私に覆いかぶさってきた…さすがにこの歳になった私にはわかる、この男が私に何をしようとしているのかが、私は必死に抵抗した…そんな私が煩わしくなったのか、男はいつものように私の顔を殴りつけると…


「テメーは誰のおかげで生活できると思ってんだ、俺がいなかったらどうなってるかぐらいわかんだろ…だったら父親である俺に奉仕するのが当然だろ‼」


わかっている…わかっていた…だからこそどれだけ殴られ、蹴られても我慢してきた…この男がいなければ自分は生きていけないと分かっていたから我慢してきた。

だけど…まさか…実の娘に手を出すほど腐っているとは思わなかった。

いや、違う…気づかないふりをしていただけだ、この男にとって妻や娘など物に過ぎないのだ、気に入らないことがあれば暴力を振るい、性欲が溜まれば犯す、この二年間にこんな事態にならなかっただけで、こうなる可能性は常にあったのだ…たとえどんなに殴られ蹴られようとも一線を超えることはないと思い込もうとしていた…そんな馬鹿みたいな考えはこの瞬間音を立てて崩れ去った…崩れ去った奥にあったのは、必死に気付かないふりをし続けていた殺意だけだった…

気づいていた…わかっていた…認めていた…この男が憎いと、殺したいと…だからこそ私のベッドの枕元には包丁が隠してあった。

いつかこんな日が来ると思っていたからこそ隠していた…せめてあと一年こんな日が来なければ…

包丁を握りしめて男を殺そうとする…不思議と心は軽かった、実の父親を殺そうとしている割には何も感じなかった、まるで虫でも殺すような感覚。


キンッ!振り下ろした包丁は高い金属音を立てて止められていた…私の持つ包丁よりも大きな刃によって。

それを見た時にパッと思いついたのは死神が使う鎌だった、刃の部分は父親だった男の首に掛かっていた…この場では聞いたことのない声…恐らく鎌の持ち主が口を開く。


「こんな男のために手を汚すなんてバカらしいですよ」


澄んだ声が響く、声の主を見る、凛とした雰囲気に長い黒髪がよく似合う女の子だった。

突然の事態に言葉を失って固まっていた男が声を出そうとした瞬間、彼女は勢いよく鎌を振り上げて何か言おうとしていた男の首を落とした。


「突然喋ろうとするからビックリして殺ってしまいました。自己紹介がまだでしたね、私の名前はソメイヨシノ。花咲桜さんあなたには私のパートナーになって欲しいんですがよろしいですか?」


父親の首を落として殺した彼女は突然にそんなことを言ってきた。


月の光が照らす部屋の中で私の日常は非日常へと変わりました…これが、花咲桜とソメイヨシノの最初の出会いでした。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ