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ユニゾンと唱えた彼女たちを光が包む。大きな力を感じる、今までの彼女たちとは違う大きな力を感じる。光が収まっていく。最初に眼にしたときに明らかに違う点がある。エルさんが唱えたユニゾンは当然エルさんが表に出ている。だけど決定的に違うところが二つ、長い黒い髪は銀髪に、黒い瞳の色は銀色に、その姿はあの人にあまりにも似ていた。
「やっぱり想像通りでした。よかった…これでまたあの人に会える。こちらの準備が整うまではあなたたち二人には死んでもらっては困るので彼女を止めといてあげましょう。次に会う時が楽しみですね」
その言葉は誰に向けたものでもなく…言葉の主は現れた時とは対照的に闇に消えていくように溶けていなくなった。
「これじゃダメだ。ヨシノたちを助けられない」
力に目覚めて、これからヨシノさんを助けようと思った矢先のエルの第一声がこれだった。
「ダメだって…この力ならヨシノさんの呪いってのを消せるってのは何となくわかるんだけど…何がダメなんだ?」
「確かにこれは退魔の力なんだと思うよ。でもヨシノの呪いを消したとしてもヨシノは闇にのまれたままだと思うの。だから呪いと闇の両方を消さないといけないんだけど…今の私達の力じゃどちらか一方を消したら次が続かないと思うの…だからって扱いなれてない力じゃ力を抑えることも難しいし…」
「それは…」
エルの言っていることはわかる。今の俺たちだと一回力を使ったらその一回ですべてを使い切ってしまう気がする。かといって力の調節もできる気がしない、仮に加減ができたとしてもヨシノさんの呪いを解いて闇を払えるだけの力の配分ができるかはかなり怪しところだ…
「せめて二手に分かれて分担できればいけそうな気もするんだけどな…」
「分担…そっか、それだよ、薫。ユニゾンを解こう。そうすれば私と薫の二人で分かれて戦える。これならヨシノを助けられるよ」
「いや無理じゃないか…桜ちゃんがユニゾンしてない状態で能力を使ってたから、俺はこの力を使えるだろうけど、エルが使えないとなるとどちらにしても呪いか闇の片方しか消せないだろ」
そうなのだ、結局はユニゾンを解いたところで俺だけしか力を使えないのならば意味がない…せめてエルが力を使えれば、お互いが全力で力を使うことで呪いと闇の両方を消すことも可能かもしれないが…そう考えていたら声が聞こえた…
「可能ですよ。薫さんの力をエルが使えるようになることは可能です。ユニゾンとは別の戦闘スタイル…シンクロなら可能です」
「先生‼大丈夫なんですか⁉」
「心配かけましたね、もう大丈夫ですよ。それよりも先ほどの薫さんの話…エルが薫さんの力を使えるようになることは可能です。シンクロはユニゾンの上の戦闘スタイルだと思ってください。シンクロに必要なのはお互いに対する信頼です。そして、この信頼というのは目に見える形で判断することができます。それがパートナーの力の覚醒です。体は動きませんでしたが先ほどの悪魔…の話は聞こえていました。先ほどの話にはもう一つ足りない要素があります。パートナーの力を覚醒させるには、しかるべき時、強い意志、そしてお互いの信頼関係、これがそろって初めてパートナーは覚醒します。覚醒したことにより使えるのがシンクロです」
ミカエルさんがシンクロについて説明してくれた。シンクロとは、主の力をパートナーに、パートナーの力を主に流して共有できることらしい。つまり、ユニゾンしなくてもユニゾンと同じ状態になれるということらしい…
出来過ぎた展開と言われてもおかしくないぐらいに俺たちにとって都合のいい展開に思わず…苦笑が漏れる…それでもこれはラッキーだ、たとえご都合主義だとしても…ヨシノさんたちを救える…エルの望みをかなえられるならば最高の展開じゃないか。
「薫!今度こそやろう。都合のいい展開?ご都合主義?何と言われても構わないよ。私達の物語は私達が主役なんだから、私達に都合がいいなら結構なことじゃない。私のこれからにはヨシノが必要なんだ。だからこれは私のわがまま…それでも薫には私に付き合ってほしい…」
「大丈夫。エルだけのわがままじゃないさ…せっかく知り合ったんだから俺だってヨシノさんとはもっと仲良くなりたいと思ってるよ。それに…エルに付き合うのは嫌いじゃないしな。大丈夫、二人でならやれるさ」
「うん!うん‼」
そうして、二人声をそろえてその言葉を唱えた…
『シンクロ』