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死神の従者【仮】  作者: さとり
試験
12/26

2-5

「おそらく、ミカエル先輩も来るだろうから一度退散しますか」


ルシファーは闇に溶けるようにその場を後にした。


「薫‼何かわからないけどすごく邪悪な気配がする。この前の公園、虎狼公園からだよ」


「邪悪な気配?いつもの奴らじゃないのか?」


「違う。もっとおぞまし気配だよ。私はこの気配に覚えがある気がする。とりあえず行ってみよう。たぶん、先生やヨシノも向かってると思うから」


エルが言う、嫌な予感が何なのか分からないけど、どこかいつもと違うエルの様子からただ事じゃないと思った。虎狼公園に急ぎ向かうことにした。


「エル、薫さん、貴方達も来たんですね」


「先生、よかった。あの…何が起きてるんですか?何かすごく嫌な予感がするんです。それにこの気配、どこかで感じたことがあるような気がして…」


「考えられる限りでは最悪の事態です。これは邪神の気配です」


まだ完全ではないですが…その言葉をミカエルは口にすることができなかった。


「邪神の気配…そうか、だから私は知ってたのか」


「あの~ミカエルさん、確か邪神に遭遇したら逃げたほうがよかったんじゃ?」


「薫さん、申し訳ありません。今この近辺には私達しか居らず二人にも協力していただかなければならないかもしれません。現場に着いた時の判断で二人には撤退してもらうかもしれませんが、今は付いて来てもらえませんか?」


「薫、ごめんね。危ないけど付いて来てほしいの。それに…邪神の気配ってだけじゃないんだ…この嫌な感じは、もっと大変な事なきがするの」


「エル…違うんだ、行きたくない訳じゃなくて、ただ俺たちが言っても足手まといになるだけなんじゃないかと思っただけなんだ」


「うん。それは、わかってる。先生がダメだって判断したら私たちは即時撤退するから」


エルの言葉に、俺は分かったと返事をして目的地に向かう。ほどなくして目的地の虎狼公園が見えてきた。

虎狼公園について周囲を見回していると、暗がりに人影を見つけた。


「ヨシノ…?」


エルが確認するかのようにその名前を呼ぶ。確かにその人影は先日会ったヨシノさんによく似ているような気がした。もう少し近くで確認しようと思いエルと共に近づこうとしたが、その行動はミカエルさんの声によって止められた。


「エル、薫さん、敵です。ユニゾンを、早く」


ミカエルさんの声に従って、エルは俺の手を握りユニゾンと唱えた。ここで一つ補足を入れるとユニゾンすることによって上がるのは身体能力だけではない。ユニゾンは感覚器官も飛躍的に鋭くなるのだ。鋭くなった感覚器官が捉えたその人影の姿に俺は唖然とした。まるでその部分だけ穴が開いたかのように見える、夜の暗がりよりもなお深い闇。それが人型に切り取られている…だけどその顔の部分だけは闇に覆われていなかった、そこには最近知り合いになった顔があった…そう…エルの友達で同じ試験に参加していたソメイヨシノの顔があった…


「なぁ、エル…俺の眼がおかしいのかな…あれってヨシノさんだよな…⁉」


「何言ってんの‼そんなはずないでしょ‼あれは…そう…敵がヨシノに化けてるんだよ‼そうですよね、先生‼」


エルが叫ぶ…だけど…ミカエルさんの言葉はエルの望む言葉じゃなかった。


「エル…貴方はもう分っているはずですよ。あれはヨシノです」


「何言ってるんですか‼私たちは神の卵です。なんでその神の卵が邪神になるんですか⁉」


「エル‼貴方達にはまだ伝えていない真実があります。ですが、今それを伝えている時間はありません。今は目の前の敵を排除するのが最優先です」


「排除…何言ってるんですか…先生…ヨシノですよ‼私と同じで先生の教え子のヨシノなんですよ‼排除なんて言わないでください」


「エル、よく聞いてください。あれは確かにヨシノです。ですが今は邪神になりかけている敵です。このまま放置すればいずれ邪神になるでしょう。そうなったら手遅れなんです。今なら私がとどめを刺せます。わかりますね?」


「わかりません‼わかるわけありません‼わかりたくありません‼ヨシノだってわかっているなら何でそんな簡単に排除なんて言うんですか⁉助けましょうよ‼」


「エル‼私たちの使命は何ですか‼邪神を…世界に災いを起こす者たちを殺すことです。今までもやってきたことです。元仲間というだけで見逃す理由にはならないはずです‼」


「でも…でも…助けることはできないんですか…私たちは神の卵です。普通とは違うはずです。だったら…助けることはできないんですか…⁉」


「できます」


ミカエルさんが肯定する。


「じゃあ…」


エルがすがるように声をあげた。だけどその後の言葉はミカエルさんにかき消される。


「ですが…今はできません。助けるためには退魔の力が必要です。私にはその力がありません。そして、貴方達はまだ能力すら使えません。使える人を待っている時間もありません。今はまだいいですが、ヨシノが力に慣れて使えるようになり、扉を開いて冥界に逃げられたらその時点で終わりです。ヨシノは完全な邪神になって私達じゃ殺せなくなります。もう時間がないんです…」


そう言ったミカエルさんの顔からは涙がこぼれていた。表情までは見えなかったが辛いということだけは分かった。エルもそれを見ていたのか、それ以上のことを言うことはなかった…ただ泣き声と微かにヨシノと名前を呼ぶ声だけが響いていた…


「薫さん、エルを頼みます。ユニゾンを解いてエルと一緒に逃げてください。今ならまだ私一人で対処できます」


ミカエルさんがヨシノに向かっていく。俺は何もできずに、ただミカエルさんの言う通りにユニゾンを解いた…


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