③一生
③炎の中へ私は投げ込まれた。
私は今までの思い出に泣いた、最後、袋づめにされて変な機械に入れられ、音をたてて炎の中へ堕ちて行った。
昔は良かった、工場で私は紙として、それまでしがない木の皮の一部分に過ぎなかった私が、独立し成り上がれたのも全て幸せだったそして店に集団で置かれた、そしてやがて、買う人があらわれた、その人は私の入った袋を手に下げ帰って行く、あの時は本当に浮き浮きしたものだ、そして何枚もの紙が使われては捨てられて行く、そして私の番が来た、おおー一文字書かれるというのは何て幸せな事なのだ、恐ろしい程の甘美じゃないか、もう生臭いほど気持ちのいい、最高の瞬間もまたたく間に終り、【駄作を書いた紙】として捨てられた瞬間に全てがシラけた。
下らない事だ、私は思い出すのを止めた。
「俺何も書かれずに終ったよー。」ふいに上質処紙が叫んだ、しかし私は何も言えなかった、というより言わなかったのだ。彼には私の幻滅という悲哀を解る訳が無いのである。
そう字を書かれる幸せというのは人間世界のセックスと同様の事柄なので、終ったあとは全てに幻滅してしまうのである。
あぁしかし良い日々だった、いい仲間に巡り逢えた、しかし私は燃えていく、しかし私は幸せだ、生まれそして死んで行く事ができた、そして全て経験し幸せも感じれた。
おぉ私の体が燃えていく燃え尽きるまで私は紙だった。もう何もいらない、炎よ私の体を焼き尽くしてくれ。
第一章
「紙Hen」終り