やっちゃん先生
楽しく書きましたので、頑張って読んでください(笑)
「おらっ!とっとと喋りやがれっ」
そう言って八津教諭が田目教諭の足を蹴る
「痛っ!」
教諭があまりの痛さに悲鳴を上げる
「痛いのは子供だろ?、なに被害者ぶっているんだよテメエ、グズグズしているうちにもうテメエは加害者なんだよっ!、判っているのか、ああ?!」
そう言って田目教諭の足をまた蹴った
話は5分ほど前に戻る
田目教諭が先輩の八津教諭に
「うちのクラスの生徒が虐待されているようなんです」
と相談をしたのがすべての始まりだった
「ああ”」
教室の教卓でテストの採点をしている所を邪魔されたので不機嫌だ
ガシガシと頭を掻きながらめんどくさそうに振り返った
「とりあえず話をしてみろ」
そういうとYシャツのボタンの間に指を入れて胸元を掻いた
まったくもって傍若無人であるが、そんな人だと判っているため田目教諭は話始めた
一通り話を聞くと
「で?」
と、何言っているのか判りませんと言った態度で八津教諭が聞いてきた
どうしたらいいのか判らないので相談しているのだ
だから
「どうしましょう」
と田目教諭が言った
そう言った途端、八津教諭は急に立ち上がって田目教諭の足を蹴った
「てめえ、そんなことも判らんのかあ?なに勉強してきたんだよ」
そう言ってもう一度足を蹴ってきた
酷いようだが当然のことでもある
大学の教員免許課程でも、教師になってからの講習会と勉強会でも対処法を習ってきたのだ
それにもかかわらず「何をやっていいのか判りません」とか言っているのである
いくら温厚な人間でも怒るはずである
「おらっ、来いやっ!」
業を煮やした八津教諭は、田目教諭の耳をつまんで校長室まで引きずって行った
「痛いっ!いたい!、耳が千切れるっ!」
田目教諭が痛さのあまり叫んでいるが、それにかまわず引きずっていった
<トントントン>
同僚の教諭にやっていることは酷いが、それに反して、しっかりノックをしてから校長室に入った
「ああ、八津先生、何かありましたか」
入ってきた二人のうち一人が八津教諭であるのを確認した校長はのんびりと聞いてきた
なお耳を引っ張られていた田目教諭は挨拶をする機会を逃した
容赦なく引っ張られているのだ
大人だって痛いものは痛いのである
きちんとノックをして校長室に入る教諭二人
突然の来訪に驚きもせずに珍客を迎えた校長
八津教諭は田目教諭に説明をするように促すが
「え~っとですね、受け持ちの生徒にですね、体育の着替えの時になかなか着替えない子がいてですね、・・・」
と校長を目の前にして緊張していることもあり、考えつつ、そしてつっかえながら説明を始めた
ところが開始1分もしないうちに八津教諭が切れた
「とっとと話やがれっ!(ゲシッ!)」
蹴りまでついてきた
それが冒頭の話である
田目教諭は痛がりつつも、うまく喋ることができないため、チラチラと八津教諭の方を見る
早い話、『助けて』である
「なに人に丸投げしようとしやがるんだ?オラッ!(ガシッ!)」
逆に期限を損ねて蹴られていた
イイ歳して他人任せなのだ、怒られて当然である
その後も
「テメエの所の生徒だろうが!テメエがやらないで誰がやるんだよっ!(ゲシッ)」
「今まで何研修を受けていたんだよっ(ボコッ!)」
言いたい放題、蹴られ放題だった
虐待の可能性があるという簡単な説明をするだけで結構な時間が掛かった
・・・決して蹴ったせい(だけで)はない
「どうしますかね?」
校長が八津教諭に向かって問いかけた
「まずは自相(児童相談所)と警察ですね、その後、自宅に突撃ですかね」
そう言うと
「じゃあ、オレはココまでということで・・・」
といってソファーから立ちあがり、校長室から出て行こうとした
「「え?」」
田目教諭と校長が驚きの声を上げた
ココまできて、いや話の中心にいてまさかの離脱
驚くのも当然である
「オレはあいにくと担任でも学年主任でも校長でもない・・・でしたっけ?」
正論を吐く
明らかに厄介事なので逃げ出そうとしていた
逃がさないようする校長
・・・結局は折れた
泣く子と地頭には勝てない
最近の青年の主張よりも連綿と続く道理が勝った、というわけである
警官と児相が待ち合わせの場所 ~生徒の自宅前~ に到着した後、生徒の自宅に突撃した
正確には八津教諭一人が、である
判断力、決断力、行動力
すべてが一般的な平均を上回る高スペック
校長が信頼するのも肯ける
一人で生徒の自宅 ~アパートの1室~ に押し入り
そして生徒の服を捲り、アザを確認する
それを見ているだけのその他の面々
いるだけの空気状態である
しかし、あざが見つかった時点で証人に格上げとなった
要は、結構酷いあざが服に隠れていたことから顔を見合わせた、である
「いきなり入ってきて何をするんだっ!」
事態についていけていなかった父親が、なんかマズイことになったと気が付き抗議してきた
そうして子供を奪おうとする
それを止めようとする八津教諭
だらけた生活をして子供を虐待する父親
かたや、生徒と一緒に体育で走っている小学校教諭
勝負は明白である
自分の思い通りにならないことに業を煮やした父親が殴りかかってきた
見事な一発が八津教諭の顔に入った
「何しやがるんだ、おらっ!」
八津教諭がそう言って父親に殴った
まず鼻に一撃
鼻血が出た
あまりの痛さに蹲った所に、八津教諭が両手を組み合わせて首筋に振り下ろした
見事に決まり、父親は床に崩れ落ちた
そこにつま先蹴り ~通称ヤクザキック~ をかます八津教諭
「おらおらおらっ!」
次々に蹴りが決まった
いつのまにか被害者と加害者が完全に逆転していた
「・・お、おいっ!」
あまりのバイオレンスさに、児相の職員が止めに入った
校長と警官はなぜか黙ったままである
ココだけの話、過去に同じことがあったので『さわらぬ神に祟りなし』なのである
「リスクはオレ(こっち)持ちでやって、(子供を保護した)実績はあんたなんだ、ちょっとだけ黙っていよう、な?(ニコッ)」
笑顔で言ってるものの、目がしっかり笑っていなかった
邪魔をするとシメるぞ、おらあっ
副音声がビンビンに聞こえてきていた
あまりのことに返事をすることなく立ちすくみ児相職員
学校を出て役所に勤めているただの人間が、数多くの修羅場を経験している八津教諭に太刀打ちできるはずはないのである
父親から反抗の気配がなくなった
おまけに子供を虐待する阿呆を成敗したことで気が晴れたことから
「じゃあ、(子供も)保護したことだし、帰ろうか」
と八津教諭が切り出した
・・・他の面々は完全に空気だった
最初に相談を受けてから5時間
スピード解決である
【後日譚】
「お、お前たちっ!た、た、タダでは済まさないぞっ!訴えてやるっ!」
某所で顔を合わせた父親が叫んできた
「望む所だっ!テメエから殴ってきたんだうがっ!こちとら証人もいるから覚悟しておけや?」
八津教諭が凄んだ
どこからみてもゴロツキである
絶対に職業の選択を間違えたとしか思えなかった
そんな最悪なメンツによる楽しい御話合いが始まるのは別の話