王女殿下とご対面
緊張しますね!
いよいよガンドレア帝国でのラブランカ王女殿下とコスデスタ公国のミーツベランテット第二公子殿下の婚姻式です。
前乗りで一日早くガンドレア入りした私達(ヴェル君、私、ダヴルッティ様、リア姉様)はヴェル君のご実家で打合せ中です。
はい、同じく前乗りしたナッシュルアン皇子殿下と殿下のお付きとしてルル君とジャックス君の二人もご一緒です。
きゃあ、男の子の軍服も初々しくっていいですね!あれ?私、制服フェチでしたっけ?
「ナッシュ様、供が子供達だけって不用心じゃありませんこと?」
リア姉様がルル君達に少し微笑んでから、ナッシュルアン皇子殿下を見ました。
殿下は今日はまだ例の軍服は着用しておりません。萌えは明日に持ち越しです。
「供を多くつけていると却って危険と思いまして。万が一メイドの女性が人質にでもされたらね。その点ルル達はまだ戦えるので安心かと」
ナッシュルアン殿下も一応は外交上の為に婚姻式には参加ですが、ガンドレア上層部には強く不信感を抱かれているようです。勿論私達もですが。
「甘いですわよ、殿下」
リア姉様は扇子をパチンと手に打ち付けました。
リア姉様は本日からすでに一部の隙も無い完璧メイク&お衣装でございます。鶯色と濃紺のコントラストの生地に鈍色のベールが縫い付けられた美しいドレスです。流石モデル!(体型)
そうそう本職の護衛もラヴァ様、サバテューニ様、メイドはアネロゼとシエラの二人に来て貰っています。
「私、ヴェルヘイム様のお母様のオリアナ様にお聞きしましたの。ヴェルヘイム様は今でこそ大きくおなりになられましたが、十五、六才の頃までは、細身の溜め息の出るほどの美少年だったと」
まああ!ヴェル君そうなの?すんごい勢いでヴェル君の顔を覗き込みます。
ヴェル君は、そうかな?とか呟きながら首を傾げています。おぃーい!そうかな?じゃありませんよ、この無自覚君め!
「それにフィリペラント殿下も細身の美少年ですよ?つまりヴェルヘイム様とフィリペ殿下の十五~六才頃のご容姿から察するに、ラブランカ王女殿下の趣味は一貫しております。そこの二人は危険です!」
リア姉様は扇子で、ビシーッとルル君とジャックス君を指示しました。
そ、そうかっ!十三才と1十四才頃なんて初々しい、正に美少年真っ盛りじゃありませんか。それにナッシュルアン皇子殿下もがっしりというよりは細マッチョだし、それになんとなく雰囲気が可愛いもの!ナジャガルの三人は貞操の危機ではないでしょうか!
「しかしここで謎が一つ、ルーブに色目を使ったのはどういうことでしょうね」
「だから~リア、ルーイやフィリペもここに来る前に言ってただろ?そりゃ好物は十代の美少年だろうけど、男と見れば顔の美醜だけで選んでいるのさ」
こ、好物……生々しいですね。ルル君もジャックス君も顔を引きつらせています。
「婚姻式の場で、そういうことをされるのですか?」
ナッシュルアン皇子殿下はリア姉様の話に、半信半疑のようです。
「まあ、殿下、ご心配頂かなくても大丈夫ですわよ。私の傍仕えがお守りして差し上げますから」
姉様はまたも私とヴェル君を、扇子でビシーっと指示しました。
はいはい、本日はメイドと護衛でございますよ。
「まあさ、単独行動は危険ってことで最低限二人一組で行動厳守で」
ダヴルッティ様の号令?命令に皆様、御意!と叫んでいます。
軍法会議でしたっけ?
「でも意外に楽しみなのよね〜ラブランカ王女殿下にお会いするのって。皆様がざわつくくらい、こう個性の強い王女殿下なのでしょう?」
リア姉様は本当に楽しみなようです。止めておいたほうがいいと思いますよ?本当にインパクトありますから。
ヴェル君は渋い顔をしていますし、ダヴルッティ様は、悪趣味だよぉ~と、ぼやいています。
その日の夜、ナッシュルアン皇子殿下に籐籠一杯の焼き菓子をプレゼントしました。『萌えをありがとう&うちのヴェル君が害虫駆除剤扱いしてすみません』のお礼とお詫びクッキーです。
「うわわ!この焼き菓子頂けるのですか!?ありがとうございます!」
おおっ嬉しいのか魔力圧がすごいです!
横にいるヴェル君も思わずたじろいでいます。
クッキーお好きなんですね~すごく魔力波形が薔薇色に輝いています。正直で宜しい!
翌日……
更にフル装備で美武装?したリア姉様達と、ガンドレア城の前に立ちました。当たり前ですがもう、ヴェル君はフツメンフェイスに変装しています。
「その技すごいですね。特殊能力ですか?」
「父上の遺伝能力と申しましょうか」
ナッシュルアン皇子殿下とヴェル君は余裕でお喋りしております。
今日もナッシュルアン皇子殿下はカッコいい軍服姿です。おまけに髪を後ろに掻きあげた状態でヘアーアレンジしているようでして、精悍さが加わって先程から城門前の令嬢方の視線が恐ろしいです。ここだけで美形存在率が跳ね上がっております。
「ささ、皆様ここで立ち止まられては目立ちますゆえ、中へ」
本日はメイド(仮)ですので、腰を低く案内させて頂きます。勿論地味な紺色のメイドのお仕着せを着用しております。ヴェル君も溢れ出る魔力は如何ともし難いですが、茶色のジミーな護衛服を着用しております。髪の色までブラウンでフツメンへの擬態率が半端ないでございます。
「カデリーナ、あなたメイドの真似上手いわね。暗部の潜入調査班に入れるんじゃない?」
ホホホ……元メイド、元忍びですからお手のものです。それはそうと……
「リアね、じゃなかった。フォリアリーナ様。お姉様の婚姻はいつから、偽装ではなくなったのでしょうか?」
そう……先程からダヴルッティ様はリア姉様の腰を抱いて姉様にベッタリなんですが、お芝居だとしてそれはいいのですが、姉様とダヴルッティ様の魔力波形が混じり合ってお互いの体を包んでいる、所謂恋人状態の方の魔力波形にそっくりなんですよね。
「あ、分かる?そうなのよね~こう付き合っていくと、いい感じなのよね」
姉様マジで?横でダヴルッティ様が姉様の頬に何度もキスしています。
ちょっと!?ピンク色の魔力波形が二人の周りを乱舞してますよ!
「と言う訳で、カデリーナには感謝しているよ~リアを紹介してくれてありがとう!」
ダウルッティ様めっちゃ嬉しそう。
はあ……まあ、二人が上手く行ったのならお目出度いことですが。
「何だか、物語の運命の出会いみたいですね!」
そう言うと何故かダヴルッティ様がギクンとしました。
どうしたの?いいじゃない?正にラブロマンスですよ。
婚姻式の会場内に入りました。
なんだかどよーんとした空気感ですね。ああ分かった、警備が物々しいのですね。
我が母国シュテイントハラルからは国王陛下夫妻、つまり私の父母が参加しています。
色々揉めましたが、何かあった場合レミィ兄様、王太子夫妻が無事の方が良いとの親族会議の結果、国王陛下夫妻ということです。
「おお、お仕着せ似合っておるなぁ~」
ガウンドリーダお父様、なんかテンション高いなあ。ルフゥランテお母様はいそいそと近づいて来ました。
「何か、起こりそうなの?」
お母様、ワクワクしていませんか?
こういう時、自分と血の繋がりを感じるなぁと思います。私もワクワクしているのです。決して悪い事件への期待感ではありませんよ?リア姉様とラブランカ王女殿下のバトルが楽しみなだけです。
「ラブランカ王女殿下並びにミーツベランテット第二公子殿下ご入場致します」
おおっ!とうとう……
ヴェル君と部屋の隅に移動します。同じくルル君とジャックス君もいます。
王女殿下と入場と共に……
あぁぁぁ……白粉と香水の匂いがぁぁ!
思わず消臭の逆バージョン障壁を張ってルル君とジャックス君も招き入れます。
ヴェル君は苦笑してこちらを見ています。良く見るとリア姉様もダヴルッティ様と一緒に障壁に入っています。
ナッシュルアン皇子殿下もちゃっかり張ってます。
そしてチラチラこちらを見て、吹き出すのを堪えています。
当の匂いの発生元、ラブランカ王女殿下は今日も相変わらずの厚塗り化粧です。そして歩きながら結構キョロキョロしていますね。
ああ!ダヴルッティ様に気が付いた!そしてリア姉様の存在に気が付いた模様です。目を見張るラブランカ王女殿下どうする、ラブランカッ!
実況中継みたいになってしまいました。
ラブランカ王女殿下は何とか表情を元に戻すと司祭?のような方の前に、ミーツベランテット第二公子殿下と共に立って婚姻書に署名をされているようです。
「臭かった」
ルル君、びっくりしたね。ジャックス君は咳き込んでいます。取り敢えず消音の魔法も使いながらヴェル君達と廊下へ出ました。
そして、式が終わったのか、人々が雪崩れ込むように廊下に出て来られました。ハンカチで口許を抑えている人が多数です。感涙しているように見せかけて、実は匂いを嗅がないように我慢していると見ましたよ。
「カデリーナ、大丈夫なの?」
ダヴルッティ様と一緒に廊下に出て来たリア姉様に声をかけられました。姉様の後ろにいるナッシュルアン皇子殿下はまた吹き出しそうな顔をしています。
だって逃げたくなるほど臭かったのですよっ!
「いや~臭かったものね、ルルもジャックスもよく耐えた!」
褒めるのソコなの?ナッシュルアン皇子殿下。
その時、私達に近づく嫌〜な、本当に嫌〜な魔力波形を感じました。
側には皆様が居るとしても子供達もいるしコレはいけない!ヴェル君も気づいているようです。二人に目配せしてルル君達を背後に庇います。
「ダヴルッティ様~お越し頂いて嬉しゅう御座いますわ~」
ひえぇぇラブランカ王女殿下と、ミーツベランテット第二公子殿下ですか!
来たー!ラブランカ劇場の始まりですね!
いつの間にかお母様もお父様もルル君達と同じく、私達、主にヴェル君の背後に隠れています、おいっ!
先程はスメルハラスメント攻撃を受けて、ハッキリと見ていませんでしたが改めて、ミーツベランテット第二公子殿下の魔力波形を観察します。
因みにメイド(仮)ですのでお顔は直視致しません。
年の頃はラブランカ王女殿下と同じくらいでしょうか、嫌な魔力波形ではありますが、それほど魔力量は多くありません。しかしそれよりも前に気になる点があって、そこから目が離せません。
あの髪型……え~とどこかで見たことがある形、なんだっけ?最近は見ていないけど……あ、ああ!
「茄子のヘタ」
「ん?どうした?」
思わず呟いた私の言葉にヴェル君が返事をくれます。小さく、いえ何でもと、返して再びミーツ茄子のヘタ公子殿下を見詰めます。
茄子のヘタ公子殿下は顔も茄子みたいで面長ですね。そして茄子の横に立つ、先程気になった、とても嫌な魔力波形の主の二十代くらいの男を、上目遣いで観察します。
この男は茄子のヘタの従者だろうけど、すごい術者だと思います。
暗黒とか呪術系が得意な術士かな、怖いなぁ。
「ラブランカ王女殿下、ミーツベランテット第二公子殿下おめでとうございます。本日はお招き頂きまして有難う御座います」
この空気感でも動じない男、ダヴルッティ様が挨拶を切り出しました。この場の雰囲気を切り替えるタイミング、流石元王子様ですね。
「申し遅れました、此方が私の妻のフォリアリーナで御座います」
リア姉様は淑女の礼を取られた後、ご挨拶されました。
「フォリアリーナで御座います、本日はおめでたき席にお招き頂き有難う御座います」
姉様からの魔力圧すごいね。リア姉様本気だね!
すると、茄子のヘタ公子殿下の横に居た従者の男から呪術っぽい黒い魔力が、リア姉様の方に伸びて来ました!
あ、危ないっ!
ピシャッ……と何か音がした訳ではないのですが、そういう音が聞こえそうなほどの魔力圧のぶつかり合いがありました。
その従者から伸びて来た嫌な魔力がリア姉様の放った神力で霧散しました。
すごいリア姉様!横でヴェル君も、すごいと呟いています。
前、ナッシュルアン皇子殿下が魔力を垂れ流ししそうになった時も、姉様が神力をぶつけてましたけど、リア姉様は神力を攻撃魔法として使えるのですね。カッコよすぎです。
「そなたが、ダヴルッティ殿の細君か」
一人、この魔力バトルに気づいていないラブランカ王女殿下が、ジトリとした目でリア姉様をねめつけました。
「おかしいのう?最近までダヴルッティ殿は未婚者だとお聞きしておったが」
「あら?オホホ、その情報古いのではないでしょうか?私達もう婚姻も済ませておりますのよ?」
カーーン!
ゴングが鳴りました!ラブランカVSフィリアリーナの戦いの火ぶたが切って落とされましたぁ!
「それこそ、婚姻を済まされたとはいえ、本当にご夫婦かの?ダヴルッティ殿ほどの美丈夫がそなたの夫君に納まっているとは思えんがの?」
うわーっ感情の逆撫で発言来たー!
すると姉様がオホホ……と、あくまで上品に笑いながら切り返しました。
「死んでも離れないし離さない、と言われて婚姻しましたのよ?女性としてこんな風に思われて婚姻を望まれるなんて幸せではありませんこと?どうせならこんなに愛し愛されて恋愛婚姻したいものですわね~私は本当に恵まれておりますわ」
来たー!異世界の恋愛マウンティングですよ!愛され私いいでしょ?のこれ、最上級のマウントですよっ!リア姉様はラブランカ王女殿下を完全に敵認定しましたね。
ラブランカ王女殿下は顔色を変えました。きっと今まで王女で在らせられるから、こんなマウントなんて受けた事ないのでしょう。ええ、ええ。これが本物の貴族令嬢の正しいマウントの仕方でございます。
「今回のお式の為にルーブがドレスを沢山新調して下さいましたのよ?普段お仕事で忙しくってなかなか遠出もかないませんけれど、このような素敵なお式にお招き頂いてルーブとも一緒に居られるし、とても嬉しく思っております」
さり気なく愛称呼びを入れつつ、またも愛され妻のステータス、旦那からの高価な贈り物をちらつかせる姉様、恐るべしっ!
ラブランカ王女殿下は真っ青です。何か言い返そうとしていますが、リア姉様の気高き魔圧に無意識に押されて何も言い返すことが出来ません。
そう言えば、何故か男性陣が無言です。この女性のバトルに参加しようとしませんね。
すると……
「ラブランカ、この後の夜会の準備があるのではないかな?そろそろ移動しよう」
茄子のヘタがゆったりと口を挟んで来ました。
ワザとなのか、それとも何も考えていないのか。謎な公子殿下ですね。ラブランカ王女殿下は見事、リア姉様に撃退されました。
茄子のヘタと厚塗りは退場して行きました。思わずガッツポーズをしてしまいます。
「姉様、やりましたね!」
「あんなものなの?もう少し反撃してくるかと思っていたのに」
男性陣は更に押し黙っています。そうですよ、姉様に敵認定されたらもう立ち上がれなくなるまで叩きのめされるのですから。
取り敢えず……
リア姉様が威嚇射撃?を行ってくれたお蔭で、ルル君達とナッシュルアン皇子殿下に魔の手が伸びなかったのは良かったです。
私達は一塊になって夜会が始まるまでの間、待機する控えの間に移動しました。
「あの後ろに控えていた従者、恐らく国の魔術師だと思うがかなりやばかったな」
ヴェル君が控えの間に入るなり、そう言いました。
部屋にナッシュルアン皇子殿下が、三重魔物理防御障壁と消音魔法を使ってくれています。
「コスデスタ公国か、どういう国なのかあまり表だっては聞かないな。確かガンドレアに隣接した西側の国だな」
ダヴルッティ様でも詳しくはご存じないのですね。
「魔術士が多く輩出されている国なのは確かよ。ただ冒険者ギルドに登録されている魔術士の評判は芳しくないわね。依頼の成功率が高い割には依頼者から後々苦情が多いのよ」
苦情……リア姉様のお話に皆様しばし考え込んでおられるようです。思わずヴェル君を見ました。ヴェル君は私の視線に気が付いたのか、手を伸ばして頭を撫でてくれました。
「とにかくさ、リア姉がラブランカ王女殿下に勝ってくれたのが俺は嬉しい」
「そうだよ~リア、フィリペの敵討ちをしてくれてありがとう!」
すると抱き付こうとしたダヴルッティ様をヒラリとかわして、姉様はダヴルッティ様とヴェル君に胡乱な目を向けると、低ーい声でお二人に聞かれました。
「いつの間に勝ち負けが目的になっているの?」
すみません……私もラブランカ劇場とか言って煽ってました。心の中で謝っておきましょう。
「でも、私達の事は眼中に無いみたいだし、そこは良かったな?ルル、ジャックス!」
「まだ夜会が残ってますわよ、油断は禁物ですわよ!」
このリア姉様に発言が呪い?か言霊?になったかどうかは分かりませんが、夜会では思いっきりナッシュルアン皇子殿下達がラブランカ王女殿下に、狙われておりました。
夜会会場の中を逃げ回っていたナッシュルアン皇子殿下は、暫くすると姿が見えなくなりました。
おかしいな?と思ってヴェル君に聞いてみると……
「いや、まだ居るよ、そこの窓際の所に三人で。三重魔物理防御で消音消臭と透過魔法で、姿を消しているだけ」
対魔人対策の魔術防御ですか!あな恐ろしや、ラブランカ王女。もはや人外の扱いですね。
とりあえず、ラブランカ王女殿下との場外乱闘は避けられたようです。ヴェル君に至ってはラブランカ王女殿下から見つからなかったことで、大分ストレスから解放されたのでしょう、いつになく上機嫌でした。
もうそろそろ春ですね~
もうすぐヴェル君は第三騎士団の副官になられます。
ダヴルッティ様とリア姉様にも春が来て、ヴェル君はお兄様になられるし、今年は良い事が続きますね~
後はそこで隠れているナッシュルアン皇子殿下ですか。数年の辛抱か、春はいつなんでしょうかね。




