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魔将軍の奥様になりました  作者: 浦 かすみ


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2/22

女豹の標的にされました

誤字報告ありがとうございます。




 どうやら私の尾行は、ヴェル君にばれていたようです。忍び失格ですね。イヤ、今は忍びではありませんが……


 そして、ヴェル君には非常に申し訳ないですが、噂のラブランカ王女殿下が見たいのです。すみません、好奇心には勝てないのです。


 という言い訳を心の中で叫びつつ、ヴェル君を押しのけるように前へ身を乗り出しました。


 豪奢な馬車から降りてきた真っ赤なドレスを着た女性は、小走りにカステカート側に居る馬車に近づいて来ます。


 近づくにつれて、真っ赤なドレスの方の全貌が見えてまいりました。


 え~と確かにヴェル君よりはお姉様っぽい御年齢の方ですね。しかし真っ赤なドレスです。お顔はお洋服に負けず劣らずな派手メイクでかなり目立ってますね、うん。メイクって言うより白塗り舞台メイクに近いものを感じます。


 確か、ラブランカ王女様って御年二十八才でしたよね?


 今、結構至近距離で王女様の全身を見ているのですが、大きいドデカイリボンがドレスにいっぱい付いていて、見ていて何だか辛くなりますね。


二十八才……アラサーにはちょっときついデザインかなぁ、あははは……


「ああ、ヴェルヘイムッ!心配しておったのだぞ!ん?あれ?ヴェルヘイムは?」


 ラブランカ王女殿下は偽物ヴェル君こと、カーク=ライナイズさんがいるのに周りをキョロキョロと見て探しております。


 これはっヴェル君を探してる?


ふと、こちらを見たラブランカ王女殿下と目が合いそうになりました。


 げげっ!と思って、慌てて四重魔物理防御障壁を張りました。


 カステカート側の近衛のお兄様方がチラチラとこちらを見て来られます。


 あまり見ないで下さいましっ!


 ダヴルッティ様とサヴテューニ様、ラヴァ様もおかしそうにこちらを見て来ます。


 こっち見んなっ!ここに本物ヴェル君が居るのバレるでしょ!


「どうやら、ラブランカ王女殿下は偽物ヴェル君の幻視が解けたら、誰だか分からないみたいですね?」


「そのようだな」


 ヴェル君はまだ緊張しておられます。すごく強いはずのヴェル君を、ここまで怯えさせるラブランカ王女殿下って何者でしょうか。


 ラブランカ王女殿下はものすごい恨みの籠った目で周りを見回して、ピカンと目を見開きました。


 ああ、もしかして?と、思った時はもう遅かったようです。


「これは!カステカートにはこんな素敵な殿方がおるのか!」


 ああ!?ラブランカ王女殿下が見つめる先には、ダヴルッティ様がぁっ!


 上手く後ろに下がっていたルーイドリヒト殿下は無事で、逃げ遅れていた?ダヴルッティ様が女豹ラブランカ王女殿下に見つかってしまいました。


 しかし、ダヴルッティ様はラブランカ王女殿下よりも一枚も二枚も上手でございました。


ダヴルッティ様は満面の笑みを浮かべています。


「これはお初に御目通りいたします。ルーブルリヒト=ダヴルッティと申します。いや~ラブランカ王女殿下を拝見出来たこと、家に帰って妻に自慢できますよ!」


 ええ!?ダヴルッティ様ってご婚姻されていたのっ!?


 いや、それよりも……今のダヴルッティ様の威嚇攻撃?で、女豹ラブランカ王女殿下の牙が捥がれたのは確かでした。そして止めの一発を最後に入れました。


「息子と娘にも自慢出来るなぁ~」


 ひゃあ!まさかの子持ち?


 しかしこれで、ラブランカ王女殿下の出鼻をくじきました。流石、ダヴルッティ様。


 その後は無事引取りの手続きをして、カステカートで保護と言う名目でご滞在頂いていたお二人は、帰国されることになりました。


「今度、私の婚姻が行われるのだ。是非お越し頂いて祝って欲しいのぉ」


 ラブランカ王女殿下は、威嚇攻撃如きでは堪えていなかったようです。ダヴルッティ様に近づいてきました。


 しかしダヴルッティ様は只の近衛騎士団の隊長様じゃありませんでしたよ!何と言ってもあの腹黒三兄弟のご長兄ですからね!


「あ~それは是非是非っ!うちの妻にも伝えておきますよ~いや~家族旅行にすら行けてないから、子供達も喜ぶかな~」


うわっといきなりダヴルッティ家族、総出で婚姻式にお邪魔する意向を示されましたよっ!


 ラブランカ王女殿下は、顔を引きつらせて自国へと帰って行かれました。


 ふぅ~っグッジョブ!ダヴルッティ様。


「白粉と香水が臭かったな~」


 ラブランカ王女殿下御一行がいなくなってから、ダヴルッティ様がそう言っています。


 特にはダメージ受けてなさそうです、流石ダヴルッティ様。


 ヴェル君はその言葉で、やっと防御壁の中から外へと出て行きました。


 男性陣、皆様の視線がヴェル君に集まります。


「隊長すみません」


「ああ、いいよ~いいよ~ヴェルみたいな口の回らない男があれの相手をしていたら、あれの剣幕に押されて要らない判子を押したり、物品を買わされたりするのがオチだもん」


 相手は王女殿下なのに、押し売りか何かと同列な扱いをされているようです。


 さすが腹黒国所属、公用語は嫌味の、三兄弟の長兄様です。


「ゲホッ、ゴホッ!臭かったのぉ!息を止めておったわっ。うっかり風下に立ってしまったわ」


 息を止めて……なるほど道理で静かだと思っていましたよ、腹黒次兄のルーイドリヒト王太子殿下。


「フィリペが嫌うのも分かるな~あれに、直接的な誘い文句を言われたらしいな」


 ここにはいない腹黒兄弟の末弟、フィリペラント殿下の話を聞いて、ヴェル君は何度も頷いています。


 ヴェル君も同じようなことを、言われたことがあるのでしょうか。


 あの香水を嗅がされながら、近づかれたら辛いですよ、今も残り香でこの辺りむせ返っていますもの。


 ラブランカ王女殿下を無事に見送り、せっかく来たのだから砦の護衛任務中の兵士の方々に、声かけをして帰ろうかと皆で話をしている所へ、慌てた様子の兵士の方が駆け込んできました。


「た、大変にございます!先程ガンドレアに引き渡した捕虜二名が脱走したとの知らせがありました!その、捜索に……その……」


「先を早う言え!」


 ルーイドリヒト殿下が先を促しても尚、兵士様は言い淀みます。どうされたのでしょう?


「ダヴルッティ隊長のみにお越し頂いて、捜索を手伝って欲しいと」


「そう来たか~」


 ダヴルッティ様は笑いながら顎を摩ってます。なんて怖い指名ですよ、これは。


「だったら目に見えるカタチで俺一人が行けばいいよな~ヴェルは隠れて宜しく」


 ヴェルと言いながらダヴルッティ様は、何故か私を見ながらそう言いました。


 ちょっと待て!


「宜しくね!よしっ~行ってみるかぁ~」


 押し切ってきました。


 ヴェル君と顔を見合わせて苦笑いをしました。


 取り敢えず私とヴェル君の魔法で十人くらいの人数なら気配も悟られることなく、ダヴルッティ様の後をつけられるという事で、サバテューニ様とラヴァ様を含む近衛と暗部所属のお兄様達の混合チームで、ダヴルッティ様の後をつけることになりました。


 あのえっと、ルーイドリヒト殿下は待機で結構なのですよ?付いて来なくても大丈夫ですよ?


「こんな面白……コホン、面妖な事態を見ないで何とする!」


「別に、何ともしなくても宜しいと思いますけど?」


 私がそう言うと、ルーイドリヒト殿下は目を逸らしながら、早うせんとあ奴らを見失うな~と呟いています。


 はいはい、もう良いですよ!さっさと行きましょうかねー!


 そんな訳でダヴルッティ様以外の皆様は、透明人間作戦でコソコソしつつ、しっかりついて行くという不思議な動きをしながら、ガンドレア入りを果たしました。


 寂れている……


 ガンドレア帝国に入国の第一印象はそれです。


 国境の砦を挟んで僅か数メートル、ガンドレアに入っただけなのに、何でしょうか……匂いまで違う気がします。


 ガンドレアの道は整備が行き届いてないようで、石や泥で汚れた街道がずっと北を目指して続いているのが見えます。


「この道の先はどこに繋がっているのでしょうか?」


「この先はレポレントスだな。そこをまっすぐ行けば帝国の首都、ギーガロッタに着く」


 元ガンドレア民のヴェル君の解説に頷き返しました。


 しかし街道の整備はちゃんとしておいて欲しいですね。


 おっ?街道に入る手前にあの豪奢な馬車が停まっているのが見えます。


 あら……扉が開かれてラブランカ王女殿下が馬車の中から手招きしていらっしゃいますね。


 ちょっとお待ち下さいよ?もしかして馬車の中にダヴルッティ様を直接、お連れするつもりなのでしょうか?


「兄上、貞操の危機ですよ!」


「ルーイ、お前面白がっているな?まあ、あの香水姫の対処の仕方も分かってきたし、まあ見ていろ」


おおぅルーイドリヒト殿下完全に面白がってますね。


 何やらダヴルッティ様は自信がありそうです、どのような対処をされるのでしょうか?


 ダヴルッティ様はラブランカ王女殿下の馬車の少し手前で足を止めると声をあげました。


「ではこの辺りを捜索してまいりますね~」


 ラブランカ王女殿下が身を乗り出すようにして、何か話そうとした瞬間、ダヴルッティ様は更に声を張り上げました。


「数刻捜しまして見つからない場合は、カステカートに帰国させていただきます!」


 ラブランカ王女殿下はもうすでに走りかけていた、ダヴルッティ様に向かって叫んでいます。


「待たれよぉ!捜索ならっこの馬車にぃ!」


「ご心配及ばずとも、馬車よりは早く走れますから~」


 ダヴルッティ様は始終満面の笑みを浮かべて、一目散に走って逃げました。


 勿論、私達も後を追い掛けました。


 ふ~っヤレヤレと、思ったらっ!?


 ラブランカ王女殿下が馬車でダブルッティ様を追い掛けて来るぅぅ!こわーーいっ!


「凄いっ!」


「執念深い王女殿下だなぁ~」


 ルーイドリヒト殿下は喋りながら、余裕で走っておられますよ。私なんてヴェル君に屈辱のおんぶ状態ですのにぃ。


 ダヴルッティ様はすぐ脇の茂みに入られました、そして透過の魔法を使われて気配も遮断しておられます。


 私達もダヴルッティ様に近づいて消音、消臭と三重魔物理防御魔法の障壁の中にダヴルッティ様をお入れします。


「や~馬車で追いかけて来るなんて怖いなぁ~もうっ!」


 ダヴルッティ様……何だか面白がってワザとラブランカ王女殿下を煽ってませんか?いや、気のせいなら良いのですが。


 私達は透明人間状態のまま、ゆっくりと街道に戻りました。


 ダヴルッティ様が消えた茂みの辺りで、獲物を狙う女豹のような顔してダヴルッティ様を捜し回っている、ラブランカ王女殿下を眺めつつ……しばらく立ち話をしました。


「でも、確かにロブロバリントとライナイズ両名の魔力の気配は感じないな」


 ダヴルッティ様のお言葉に、私は周りの魔力波形を読む為に意識を遠くに広げました。


 あ、いますよ。遠くですが、感じます。


「ダヴルッティ隊長、かなり北の方に二人の魔力を感じる」


 ヴェル君の言葉にハッとして遠くを見ていた意識を戻しました。


 ルーイドリヒト殿下が私を見ました。私も深く頷き返します。


「いずれにせよ、北の方はガンドレアだ。そちらの方へ逃げているならば、我々だけでこれ以上深追いは出来ない」


 ルーイドリヒト殿下の御言葉に皆様は頷かれました。


 私達はまだダヴルッティ様を捜しているらしい、ラブランカ王女殿下の後ろをコソコソと歩き、草むらに身を隠しました。



そ更に充分に王女殿下から距離を取ってから、ダヴルッティ様は別方向の草むらに移動してから、勢いよく飛び出しました。


「どうやら二人はガンドレアの北の方へ逃げたようですよ!では見つかったので私は失礼しますね!」


と、叫んでからものすっごい速度で走り去られました。


 慌てた王女殿下は何かを叫びながら、馬車に戻ろうとしていますが、もうダヴルッティ様のお姿はどこにも見えません。


 やりますな!ダヴルッティ様!


「なんだっ!あの男はぁ!私が○○○して×××っ!△△△!」


 ひょえええっ!?な、なんですかアレ?


 ラブランカ王女殿下は王女様とは思えないほどの、卑猥な言葉を連発されています。


 あの、すみません……


 透明人間化しておりますが、ここに私もヴェル君もルーイドリヒト王太子殿下、サバテューニ様やラヴァ様や、え~と妙齢のお兄様方が近くに潜んでいるのですよ。


 皆様、基本良いとこのお坊ちゃまですので普段、こんな明け透けな女性とは付き合いが無いのだろうと思います。


 淑女から聞いたことのない卑猥発言を聞いて、お坊ちゃま達は固まっていらっしゃいます。


 そりゃ怖いわ、転生のプロの私だからこそ、ああ痛い女だな~で済んでいますが。


 ああ、しかしこういう時はどのような言葉を男性にかければよいのでしょう。


 あまりの気まずさに顔を伏せてしまいます。


 ラブランカ王女殿下は益々暴言を吐き、なんと罵りながらダヴルッティ様やおまけに、ヴェル君の名前も出して卑猥なことを言っています。


 私は思わずカッとなりまして……


「この厚塗りめっ!」


 と、負けじと暴言を吐いてしまいました。


 あら、いけない……元王女殿下なのに〜


「失礼しました、このままでは耳が腐りそうなので退散しましょうか?」


「う、うん」


 ヴェル君も皆様もギクシャクしております。


 何となく小走りになりながら皆様無言で、ラブランカ王女殿下の元を去りました。


「恐ろしい王女だったっすねぇ~ありゃ、偽物ヴェルが手を出したんじゃなくて、逆に襲われたんじゃないんですかね?」


「かもしれんな、昏倒させられて暗がりにでも連れ込まれたのかもしれんな」


ちょ!ラヴァ様もルーイお義兄様もっ!


 冗談でも恐ろしいことを!いえ冗談ではないかもしれませんが、兎に角、色々想像してしまいそうな状況を語らないで下さいませ。



 そうして、私達は逃げるようにカステカートに帰りました。


 翌日……お城を尋ねた際にうっかりフィリペラント第二王子殿下にラブランカ王女殿下暴言事件のことを伝えてしまい、皆のアイドルのフィリー殿下に過去のトラウマを思い出させ、恐怖のどん底に落としてしまうという大失態を犯してしまうのでした。


ごめんね、皆のアイドル。








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