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王女をおびき寄せる…アレ

そして3刻半後…


「終わったーーーーー」


「…疲れた」


ヴェル君と二人で控室のソファの上で伸びています。いや~これだけでこんなに疲れて…明後日のリア姉様の式に出られるのでしょうか。そう…何故か、ダヴルッティ様とリア姉様も婚姻式をされるのです。こんな急いでする理由は只一つ…


「どうして、7日後のガンドレアの、あの厚塗…ラブランカ王女殿下の婚姻式に私まで参加なのでしょうか?」


「それは…ダヴルッティ隊長がごねたから…」


「だからっていい大人がごねて、何故私やもっとも行きたくないであろう、ヴェル君まで巻き込むのですか?」


ヴェル君は嫌そうな顔をしつつも、ソファから立ち上がると腰に手を当てて…何故だか威張っているようなポーズをしています、どうしたの?


「その点に関しては心配はいらない…」


「どの点?」


「ラブランカ王女殿下と直接、顔を合わせなきゃいけない…という心配は…回避された」


「回避?でもヴェル君、一応近衛の仕事のダヴルッティ様の護衛としてついて行くのよね?ラブランカ王女殿下とはまともに会っちゃうだろうし、傍に居るし見つかってしまうのではない?」


ヴェル君はニヤッとポカリ様風の悪人笑いをした後に、何やら口の中でブツブツ呟いています。


「ああっ!」


私は思わず叫びました。何故ならヴェル君の顔が…普通の地味ーーなお兄さんの顔…所謂フツメンフェイスになっていたからです。ソファから飛び上がってヴェル君の顔に近づいてガン見します。


「幻視魔術じゃない?どういう事?」


「すごいだろ?これ…父上に教えてもらった…魔神の技…らしい。俺にも出来るからって…これで王女にもばれない」


声はヴェル君で体格もヴェル君で、勿論、魔力波形もヴェル君のままですが…これは特殊メイク!?変装ですよっ!これはすごいですね。あ!これですねっポカリ様のイケオジ顔と同じ技ですね。


「これなら…ラブランカ王女の前に出ても大丈夫…」


「まあ、見た目は誤魔化せますけど…中身はヴェル君でしょう?本当に大丈夫ですか?厚塗…王女殿下の前で狼狽えたりしませんか?」


ヴェル君はコクコク…と頷いています。まあ、ヴェル君がOKなら構いませんが。私も興味…というかリア姉様が心配だし是非ともついて行ってお世話したいしね。


ヴェル君はお顔を元の美フェイスに戻されました。うん、すっぴんがいいですよ!え?違う?


「でもカデちゃんは…なんでリア姉の御付きのメイドのフリ…なんだ?」


「当然っ一番自然だからですよ!」


ヴェル君は私が付いて行くことに際して『メイドの変装でお供します!』と言い切ると、非常に不安げな顔でずっと見詰めてきていました。今もまだ不安げに見ています。


「だって従姉妹です…と言ってついて行くと不自然じゃないですか?お供の方のフリが一番、姉様の御側に寄れますしね」


色々言い訳していますが…ええ、ええ、認めてしまいましょう、ただの野次馬です。このようなスキャンダラスな場面を間近で観察したいのです。この面白い厚塗…いえ、ラブランカ劇場(ダヴルッティ様特別出演!)を見逃すことなんて出来ません!


「俺もカデちゃんと一緒なら楽しいし…有難いけど…」


そうそう、楽しみましょう!色々ムカつく王女様ですが。


コンコン…


その時、控室にノックの音が響きました。あ、この魔力波形は…扉の向こうにいたシュテイントハラルのメイドの上擦った声が聞こえます。はいはい、カッコいいですもんね!今日はぶっちゃけ、ヴェル君の次に私的にも祭りでした、何故なら…控室の扉がゆっくりと開けられて本日の眼福様がご来訪されました。


「ヴェルヘイム様、カデリーナ姫。本日はおめでとうございます。今日はこれでお暇させて頂きます」


ナッシュルアン=ゾーデ=ナジャガル皇子殿下様。


何故…何故…今日…あなたは…そんな世の中(異世界を含む)の女子を萌え転がらせるような…


超絶カッコいい軍服をお召になっておられるのですかーーっ!ブルーブラックの髪色と同系色の濃紺の詰襟タイプの軍服で銀色のマントがかっこよすぎですーー!


何ですかっソレ!心のスクショをまたも連写しましたよ!永久保存版ですよっ!


世の中には制服萌えという嗜好ジャンルがございまして、私は決してその嗜好は無かったはずなのですが…


本日、シュテイントハラルの王宮にお越し頂いたナッシュルアン皇子殿下の軍服姿を見て…思わず歓声を上げて拍手してしまいましたよ!そんな私の奇行に、同じく参列されていた自国の貴族のお嬢様方がナッシュルアン皇子殿下を見た途端、目の色を変えて皇子殿下に走り寄り、皇子殿下が揉みくちゃになる…という大惨事が起こってしまいました。皇子殿下…スミマセン。


「本日は申し訳ありませんでした。私がついうっかり騒いだせいで、ナッシュルアン殿下が女子に襲われるなんて…ヴェル君の恐怖の再来のようです」


「いえいえっヴェルヘイム様とは比べようにも…と、私の方こそ不用意に驚いて皆様に魔力酔いを…」


そうなのです…黄色い悲鳴を上げて襲い掛かろうとした(としか思えない迫力でした)貴族のお嬢様方を見て心乱されてしまったナッシュルアン皇子殿下は、魔力を大量放出してしまい会場全体に魔力酔いを誘発してしまいまして、婚姻式が一時中断になったのです。本当に申し訳ありません…


そして気絶させられたのに…令嬢達は小一時間で復活してきて、意地でもナッシュルアン皇子殿下の御傍に寄ろうとするその根性は見習いたい!と思いました。天晴れ、貴族令嬢達。


「しかし、ただの正装用の軍服ですが女性ってこういう装束が好きなのですかね?知りませんでした。でしたら、ヴェルヘイム様もカステカートの婚姻式の際には軍の正装をされては?」


なんだとっ!?ヴェル君っあなたっ正装なんてものを持っているの?初耳よっ!


「正装…軍の詰所に置きっぱなしだ…」


「早急に手元に持ってくるように!」


「…了解」


こんな一応新婚夫婦?のやり取りを見ていたナッシュルアン皇子殿下は嬉しそうにしながら


「ああいいな~私も婚姻したくなりました」


とおっしゃいました。


…ていうか、いつでも…何なら後ろを振り向けば廊下の隅に屯ってハンターのような目であなたを狙っている、うちの国の貴族のご令嬢達なら今、この瞬間でも婚姻ぐらい出来るんじゃありません?皇子殿下のスパダリなら引く手数多でしょう?


「殿下は…お優しいし…カッコいい…モテる」


おおっヴェル君分かってる!同性から見てもそうですよね?


ナッシュルアン皇子殿下はお美しい哀愁を漂わせた表情をされました。


「私も一応はいいな…と思うような女性はいましたよ?勿論、身分や、価値観の合いそうな方と出会いもありました。でも私の魔質は、その方々とは(ことごと)く合いませんでした。私の魔力にあてられて…魔力酔いを起こされてしまいました。もう、諦めています」


諦めて…そ、そんな…


「爺が言っていた…諦める必要はないです」


「ああ!そうよねっヴェル君っ!後、数年の辛抱だってっ!未来は明るいって…」


ナッシュルアン皇子殿下はその言葉を思い出したのでしょうか…嬉しそうに微笑まれました。


「そ…そうでしたね。未来は明るい…か」


そうして、本日の眼福様はミントの香りを残されながら…颯爽と帰られました。去り際に…


「次はガンドレアの婚姻式で会いましょう」


というお言葉を残されて……ガンドレア?…ああ!しまった!


「いけないっ!殿下にお伝えしておくのを忘れていました!」


と、私が言うとヴェル君がキョトンとして私を見ました。


「何か…伝言あったっけ?」


「ありましたよぅ!今日、発覚しました…というか前から分かっていましたが、すぐの危険性は無いと判断して先延ばしにしていたことです!」


ヴェル君は私の言葉に鋭い目をして緊張感を漂わせました。


「危険…なことなのか…?」


「はいっ命の危険…もありますが、一番重要なのは…貞操の危機です!」


「て…貞操…?」


「はいっ殿下がっラブランカ王女に狙われるやもしれませんっ!」


貞操…と聞いて若干緊張感が霧散したヴェル君でしたが、ラブランカ王女の名を出すとまた緊張感を醸し出してきました。


「そうだ…な…失念していた。ダヴルッティ隊長の危機の方ばかりに意識が向いていて…ナッシュルアン殿下の方が…今一番危いのを完全に見誤っていたっ!」


何やら軍法会議で発言しているような物々しい言い回しですが、ようは女豹に狙われそうだ、という事です。


「そうです!今日のような軍服でガンドレアに登場されましたら、まず間違いなく女ひ…ラブランカ王女殿下に目を付けられます!」


私がそう力説していましたら、ヴェル君がフト…表情を変えられました。


「ちょっと待て、カデちゃん…いや…そうだな。多分大丈夫だ…」


「何が大丈夫なのですかっ!あんなにかっこいいのにぃ!」


ヴェル君はジトッとした目で私を見ながらボソボソと呟きました。


「ラブランカ王女は魔力量が少ない…ナッシュルアン皇子殿下が王女に近寄って来られて…恐怖を感じたら…簡単に魔力酔いにして撃退出来る…」


げ…撃退…もうすでに害獣や黒いヤツと同じレベルの扱いですね。


「逆に…殿下が魅力的に見えれば見えるほど…近寄ってきて殿下に撃退される…王女が気を失ってくれていれば…皆の安寧を得ることができる…」


いや…ちょっと待って?それではまるで、ナッシュルアン皇子殿下は○○○○ホイホイじゃありませんか!?口が裂けても言えませんが…ちょっと~それ不敬じゃないですか?


すみません…うちのヴェル君が殿下を害虫駆除薬剤と同じ扱いをして…ヴェル君に代わって心の中で謝っておきます。そうだ、魔力を高めてしまう差し入れは出来ませんが、お菓子なら大丈夫でしょうか?大量にクッキーを焼いて、お詫びに殿下に差し入れておきましょう。今日は眼福をありがとうございましたー!


翌々日…


フォリアリーナ=カッテルヘルストお姉様とルーブルリヒト=ダヴルッティ様の婚姻式が行われました。


元王子殿下様とシュテイントハラル一の美貌と謳われる公爵家の令嬢の底力は凄かった!


「ま…眩しいね、ヴェル君…」


「うん…二倍だ…」


参列者の方も遮光魔法をかけている方、多数です。それに…なんでしょうね?ダヴルッティ様がやたらとリア姉様にベタベタ…おまけに頬やおでこにキスとか、とにかくすごいです。いやあの、皆見てるし?貴族のご令嬢方から悲鳴が、男性陣からは感嘆の溜め息が、おまけに私の斜め前でめっちゃ号泣しているリア姉様のお母様とギルド長の姿が…


なんでも…もう21才だし、嫁にも行かずこのままなのでは…と思っていたのが最後の最後で超優良物件(元王子殿下、今は影の支配者?)のイケメン次期騎士団長、後の大元帥、軍の最高司令官の出世頭を捕まえた!とのことで…ご両親は大興奮でした。


「カデリーナッ!あなたがリアをダヴルッティ様にご紹介してくれたそうねぇ…本当によくやったわ!」


と、婚姻式の前に興奮気味の叔母様に捕まって…延々と泣かれてしまったりもしました。


今更、偽装婚姻が~とか言いませんが、まあ…親孝行なことをしていると思えば良いことですよね?


「何にせよ、ご両親が喜んでいらっしゃるからいいんじゃない?」


とヴェル君も言っているし結果オーライですよね。さーて4日後ですかね…


待ってろよーー厚塗りーー!うちのリア姉様とダヴルッティ様のキラキラ爆弾を受けてみやがれぃ!


…あらいけない。元王女殿下なのに…おほほ…


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