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魔将軍の奥様になりました  作者: 浦 かすみ


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11/22

マジーの町でマジですかっ?!





 レミィ兄様は妙に言い淀みます。気になるじゃないですか。


 ま、まさかお父様達から、ヴェル君のことを大反対をされたのではないでしょうか!?


 最近噂の駆け落ち疑惑が現実になる日が来るのでしょうか?


「レミオ殿下、勿体つけたらカデリーナ様が誤解なさいますでしょう?」


 シモンヌが突然話に入ってきました。


 何?どういうこと?シモンヌは苦笑いをしています。


「ヴェルヘイム様は陛下とお会いされた時、もうそれは緊張されていたみたいでして、それをダヴルッティ様とナッシュルアン皇子殿下が上手く取り成して下さいましてね~」


 ああ、良かった!お二人には感謝ですね!


 ナッシュルアン皇子殿下には明日のコンコレドから揚げを、マシマシであげましょう。ダヴルッティ様は何がいいのだろう?ロイエルホーンのお肉マシマシにしましょうか?


「ああ、それで父上達に何とか紹介出来たのは出来たのだが、ヴェルヘイム殿が大人しい方のようで父上達だけが盛り上がってしまって、シュテイントハラルでお前達の婚姻式をするようにと、丸め込まれてしまったのだよ」


「えええ!?そ、そんなぁ勝手に」


 ヴェル君!?こんな所で押しの弱い所を遺憾無く発揮してどうするんですかぁ!


 不満をレミィ兄様に訴えましたが……


「だったらお前が父上に言えよ」


 と、言われてしまいました。


 どうしましょう……シュテイントハラルで、だなんて知人の方々は来にくいですよぉ。


 するとパン生地を成形して木箱に並べていたエレンデラが、でしたら……と、秘策を教えてくれた。


「シュテイントハラルとカステカート両方ですればいいのでは?その婚姻書は一式しか提出は出来ませんけど、別に書いて持っていても違法じゃない、ですよね?」


「エレンデラ、偉いっ!」


 なんだかダジャレみたいに叫んでしまいましたが、そうですよ!その案、採用ですよっ!


 いや~一気に解決策が出てきましたよ。なんだか元気出て来ましたよ!調子に乗ってレモンパイも焼いておきましょうかね。下ごしらえはここへ来る前にしていますしね。そしてレモンパイ五個を焼いて、本日は休むことにしました。


 翌朝……


 朝からレモンパイの生地作りに精を出しています。取り敢えず百切れ分ほど作らねばなりません。いや~ケーキ屋さんって大変ですね。せめてレモンパイホール十個は頑張って作りましょう。ヴェル君がワンホール食べそうですし。


 外ではナッシュルアン皇子殿下と男の子達、主にヴェル君の部下の子達とで鍛錬をしています。


 皇子殿下というだけでも皆様、会えて興奮?と感動をしているみたいなのに、そこに加えて男の子達の憧れのトリプルスターということで、昨日からナッシュルアン皇子殿下のチビッ子人気が凄いです。


 ええ、殿下にだけなのです……多分あのカッコいい演説も効いているのでしょうけど。


 もう一方SSS様がいらっしゃるんですけどねぇギリデ様、すっかり拗ねていらっしゃいます。


 まあ、ハッキリ言ってしまえば顔面偏差値の違いですよ、色々諦めて認めてしまえば楽ですよ?ギリデ様?


「おはようございます、カデリーナ姫。朝から精が出ますね」


 サラサラとミントの香りがしそうなナッシュルアン皇子殿下と、男の子達五人(十~十三才くらいかな?)はキッチンに顔を出すと、わあっ!と歓声を上げました。


「お菓子だ~パイ?」


 銀色の髪の男の子とダークブラウン色の髪の男の子二人が、私の方へ駆けて来ました。


 ダークブラウンの髪の子は肩の骨を粉砕骨折していましたが、無事に動くようになりましたね。良かった。


「はい、おやつはレモンパイをお出ししますよ~お好きですか?」


「「うん!」」


 銀色の髪のルル君、ダークブラウン色の髪のジャックス君、二人は元気よく返事をした。


 フムフム……ルル君の魔力の廻りが悪いですね。


 私はルル君の頭に手を置きました。


「ルル君、ちょっと魔力の廻りを動かしますね。少し体がフワフワするかもですが我慢ですよ?」


「はい」


 ルル君の魔力を引っぱり上げて押し戻してあげるイメージを頭に描きます。


 よし、乱れが治った。


「どうですか?ふらつきは大丈夫ですか?」


「うん、さっきちょっとしんどかったけど、治りました」


 私はビューリ果実水を人数分入れると皆様に配りました。


「皆も怪我は完治していますが、少しでも異変、体がおかしいな~と思ったら大人に相談して下さいね」


「はーーい」


 私はコンコレドのから揚げの下準備を始めました。


 そうだ、ナッシュルアン皇子殿下にお礼を言っておかなくちゃ。


「ナッシュルアン皇子殿下、昨日は父親、国王陛下にヴェル君との紹介を取り成していただいて、ありがとうございました」


 ナッシュルアン皇子殿下は苦笑しています。


「いやいや、どこの王族も特に女性は姦しいものだなと思ってね。うちの叔母上も押しが強いしさ、他人事には思えなかったよ」


 実感籠っていますね……うちの母がナッシュルアン皇子殿下にも、王妃圧で威圧でもしたのでしょうか?何だかすみません。


「それはそうと、ダヴルッティ様とリアさん、本物の恋人同士なの?二人も一緒にシュテイントハラルで婚姻を挙げるとかなんとか、言ってたみたいだけど?」


 え?なんだって~?いやでも待って下さいよ?確かに偽物の妻役を演じるから、偽婚姻式でもするのかな?


「偽装婚姻式、でもするのでしょうか?」


「あ、そうですね、しかしそれほどしないとその、ガンドレアの姫って執拗な方なのですか?」


 問いかけたナッシュルアン皇子殿下の後ろに、ヌオーッとヴェル君が立っていた。


 びっくりしたなぁ~もう。


「おはようございます殿下、あの姫は不敬な言い方ですが……人外なのです」


 おおっとヴェル君、とうとうラブランカ王女を地球外生物扱いし始めましたね。


 あ、この世界は本当に地球外でしたね。


 ヴェル君は如何にラブランカ王女がすごいのかを切々と、ナッシュルアン皇子殿下に説明していました。


 ヴェル君……説明は構いません、構いませんが!その間にレモンパイ食べるのは止めて下さい!ナッシュルアン皇子殿下あなたもです!チビッ子達が呆れていますよ!


 さて、本日の朝食は、ローストロイエルホーンのサラダとロールパン、クリームコーンスープです。デザートはビューリ…みかんをおひとりに付き一個です。


 因みにダヴルッティ様のサラダにはお肉マシマシにしました。ダヴルッティ様にはすごく喜んで頂けたようです。


 さて、皆様で召し上がった後、私は広間の高台によっこいせと登りました。


 えっと、メモ用紙はガサガサ……


「皆様~本日の予定をお伝えします!午前は昨日、治療された方の再検査を行いま~す。ご気分の優れない方、体調が思わしくない方は遠慮なく治療術士にお伝えください!本日の昼食は、ロイエルホーンミートパゲッテーナとトマトシチューを予定しています。今日はおやつがありま~す。レモンパイの予定です。十四刻からお渡し可能なのでお忘れなくです!それと午後からはすべての方の検診を行いま~す。治療術士の先生に治して欲しい怪我や病気、慢性の疾患や事故や怪我でのお体の欠損など古傷でも構いませんので、遠慮せずにご相談下さいませ~以上です!」


「姫様、姫様。どんな体の部分でも治るんでしょうか?」


 すっかり皆様から姫様呼びされていますが、今回はまあいいでしょう。いちいち否定も面倒ですしね。


 聞きに来られたのは、両足を失くされていらっしゃるお爺様です。


 私は座られている車椅子の前に膝をつきました。


「そうですね、詳しくお話しておいた方がよろしいですわね。すみませ~ん、治療について補足します!お体の欠損やー体の内側、内臓の欠損などは縫合、傷を縫う魔術とは違って『再生』という特殊高度魔術になりま~す。これはすぐには治りませんので、傷の再生に少しお日にちかかることは、ご了承くださ~い!再生の治療中は傷の部位は極力動かさないこと、内臓関係の治療の方は食べ物を控えて頂くこともご了承くださ~い!」


「姫様ご質問が!再生魔術してもらうと、痛みとかあるんですか?」


 今度は若い男性ね。あ、ヴェル君の部下さんですね。


「痛みには個人差があります。ですが痛みが出ると言うというより体力を使うという表現のほうがあっております!ご自身の体力や魔力を出しながら、自分の力で治していると考えて下さいませ~ですから出来るだけ治療期間中は安静にして下さると治りが早いです~」


 ふぅ~やれやれ。


 私は説明を終えてユタカンテ商会へ頼む買い出しリストを手に、伯父様と伯母様そしてレモネア伯母様と四人でじっくり検討するために、応接室に移動しました。


 私がお茶の準備をします。一番慣れていますからね〜


「タクハイハコが出来たって、バルミングが浮かれて連絡してきた時は何事かと思ったけど、開発はカデリーナの旦那様が手伝ってくれたんだって?」


 レモネア伯母様のこの気安い感じ、実はユタカンテ商会のバルミング主任とレモネア伯母様はご夫婦になります。つまりバルミング主任は単身赴任という形をとっています。


「旦那ってまだ婚姻は先ですよ。そうだ、聞いて下さいよ〜なんだかうちのお母様達が悪ノリして、婚姻式をシュテイントハラルでしろ!てヴェル君に迫ったって」


「ああ、それ?私が言ったのよ!カデリーナの婚姻はシュテイントハラルでしたいって!あのヴェル君って押しに弱いわね〜オタオタして何も言えないからグイグイ押しちゃった」


 犯人はレモネア伯母様でしたか!


「そんな勝手なことを~もういいですけど!カステカートとシュテイントハラル両国で婚姻式することにしましたし~あ、オランジェル伯父様達はどちらも参加して頂いても大丈夫です。是非お願い致します」


 伯父様と伯母様はすごく嬉しそうです。はい、是非お祝いして下さいませ~


 やがて話し合いも終わろうかという時に、応接室の扉がノックされて噂のヴェル君と銀髪のルル君、そしてナッシュルアン皇子殿下が顔を覗かせました。


 あら、なんでしょう?


「カデちゃん、午後からマジーの町に皆でギルド支部長の捜索に出たいんだ。それでこのルルのご家族もマジーに住んでいて安否が分からないから調べたいって」


 周りの女性陣から沈痛なお声が上がります。


 本当に小さき男の子になんてご不幸が降りかかるのでしょうか。


 ヴェル君の話の続きをナッシュルアン皇子殿下が代わりました。


「それで、マジーの町の様子も分からないので、出来れば最高の治療術が使えるカデリーナ姫にもご同行して頂きたいのです」


 ルル君の綺麗な瞳が私をジッと見詰めます。ええ、ええ不肖ながらご一緒させて頂きますよ!


「レミオリーダ王太子殿下は私に代わり、こちらの邸の防御障壁を張って頂くことになりました。少しでも治療術士の手が欲しいので。アルクリーダ殿下にもご同行をお願いしております。流石に王太子殿下を、魔獣が蹂躙している場所へ引っ張り出す訳には参りませんしね」


 ナッシュルアン皇子殿下がおっしゃった時に、アレ?と思いました。あら、だったら……


「でしたらナッシュルアン皇子殿下も……」


私が言い掛けるとその私の言葉に被せるように、私は第二皇子ですので……と、勢いよくナッシュルアン皇子殿下に否定されてしまいました。


 うそだぁ!少し泣き虫さんだけど指示は的確だし、周りを良く見ていらっしゃるし落ち着いてるし、あの演説の凄さといい、誰がどう見ても次期国王様でしょう?


 じゃあこの皇子よりもっとすごいの?ナジャガルの皇太子殿下って?


 そういえばシュテイントハラルの表敬訪問の時、ナッシュルアン皇子殿下が来ていませんでしたっけ?皇太子殿下はお忙しいのかしら?


「あ、あの皇太子殿下は?」


 恐る恐る尋ねると、ナッシュルアン皇子殿下は益々苦笑いを浮かべました。


 あ……なんだかマズい質問だったようですね。


「今回のガンドレア潜入はSSSの依頼で動いているのです。本来はナジャガルの名を出す予定ではなかったのですが」


 ああっ!私がこちらにいらした時に、ナッシュルアン殿下呼びしてしまったせいですね。すみません!


「私が皇子殿下とお呼びしてしまったせいですね、申し訳……」


「あ~いえいえ、それはまあ構わないのですよ。そうですね、種明かしをしますと、もう一人のトリプルスターの方がいるのはご存じでしょうか?」


「あ、はい。現存するSSS様は三人いらっしゃいますよね?」


 ナッシュルアン皇子殿下は頷くと、応接室に居る面々の顔をぐるりと見渡しました。


「今、ここに来ていないSSSのポルンスタ老はご高齢で、無理は出来ませんので遠隔で出来るお手伝いをお願いしているのですよ」


 遠隔ってなんでしょう?現地にいなくても出来ること?う~ん……


「ガンドレアでの任務、今回は冒険者ギルドの無事と、ガンドレアの現状の確認です。表向きはその任務が終わればポルンスタ老に『冒険者ギルドの人が来て助けてくれた』というぼんやりとした記憶しか残らないように、ガンドレア帝国全体に記憶誘導の術式をかけてもらう予定なのですよ。そうすれば私がナジャガルの皇子だと認識されなくなりますので」


 ……え?ちょっと待って?今聞き間違い?ガンドレア帝国全体(・・・・・・・・・・)ておっしゃいましたか?


「ガンドレア帝国……全体?」


「ええ、国のすべてです」


「ええええ!」


 私以外の皆様のお声も重なります。嘘でしょ?嘘じゃないとありえませんわ。そんな規模の魔術扱えるなんて……


「だからトリプルスターなのですよ」


 その一言で皆様が黙り込みました。そうですよね、そういえばこのナッシュルアン皇子殿下はまだ二十歳なのにSSSですよね。


 冒険者ギルド登録者数、数十億人頂点の三人が一人。この方だって只人な訳はないのだ。物腰柔らかい泣き虫君は世を忍ぶ仮の姿、その真実は……


「俺はSSSだけど只のおじさんだよ~」


 突然入って来たギリデ様が、ニヤニヤしながらそう言いました。


「SSSなんて特別なことないさ~昇格の試験が面倒で受けないっていう、ヴェルちゃんみたいなのもいるしさ~ヴェルちゃんなんて絶対SSSなれるもん。実際、僕の知っているSSクラスの子で試験が怠いとか言って受けない子いるもの」


 そんなものなんだろうか。ナッシュルアン皇子殿下もまた苦笑いをされています。


「本当そうだね、私もSSSの昇格を受けなきゃ良かったと後悔しているよ。だってこの只のおじさんは依頼をこちらにばかり押し付けて来るし、ポルンスタ老は年だから~とかなんかでこっちに投げてよこすし、私ばかりとんだ貧乏くじだ」


 皇子殿下に押し付けるおじさんとおじいさん、とんでもない大人ですね。異世界日本じゃ労働基準監督署が過重労働だ!とか言いだす案件ですよ。皇子業との兼任お疲れ様です。


 さてさて、夕食の仕込みをしてから私達は伯爵邸を出ることにしました。


「カデリーナこれ使う?」


 出かける前に従兄弟のクリシアネが、回復薬が入った小瓶を大量にくれました。おおっ!シュテイントハラル特製回復薬じゃないですか。コレ高いほうですね!


「やった!いいのですか~?」


「うん、持って行ってよ。ここの人達は食事が出るけど、きっと他の街じゃ食べる物にも困ってるはずだしね。それとカデリーナが帰ってから相談したいことあるんだ~」


 おお、なんだろう?クリシアネは腹黒君ではないので、企みごとではないのは確かですが。ポッケの中に小瓶達を詰め込むと私達は張り切って出かけました。


 私達はヴェル君の転移でマジーの町に降り立ちました。ギルドチームのメンバーの他にアルクリーダ兄様、ルル君、ジャックス君、それと護衛のお兄様二人が今回は参加です。


 ガンドレアのあちこちの場所を知っているヴェル君が居てくれて助かりますね。


 転移魔法で移動出来る場所は術を行使する術者が記憶している場所、そして記憶している人が居る場所など色々と制約があります。


 魔力量が少ない方が転移魔法を使っても、短い距離しか移動出来ません。逆にヴェル君やナッシュルアン皇子殿下のように、魔力量が底なしの方は長距離、且つ的確な位置に転移出来るのです。


「い!ふぐふぐーーっ」


 思わず叫び声を挙げそうになった所を、フォリアリーナ姉様に口を塞がれました。


 め、目の前に黒くガサガサ動く大群がぁぁぁ!ぎゃあああ気持ち悪い!


 これ、何?虫じゃないけどはっ!もしかしてアレじゃないか?いやでも大きいし、何だろう?


 ポッケから図鑑を出して『昆虫獣』項目を確認します。


 ルル君とジャックス君も私と一緒に図鑑を覗き込んできました。


 ルル君が静かに図鑑のある生き物の絵を指差しました。


「ひぇぇ!イモゲレラドアンキー……名前も怖いぃ。昆虫類、繁殖力が強く一度の産卵で百~三百匹産むと言われ大軍で飛行して住処を替えます。生息地は山林周辺、主食は雑食」


 そっと図鑑を閉じました。


 間違いなく黒いアレの親戚です。しかも大きさヤバい。


 羽ばたくのですか?アイツら。


 私は四重魔物理防御障壁を張り、ルル君とジャックス君を中に入れました。


 ナッシュルアン皇子殿下は私達が障壁の中に入ったのを確認すると、ものすごい火炎魔術を使いました。


 しかも虫の周りに逆防御障壁を張っています。


 つまり透明な筒のなかで炎に巻かれるゴ……の大量炎舞状態という訳です。


 ヴェル君も飛び上がり逃げようとするイモゲなんとかに、炎をぶっかけながら私を見ました。


「カデちゃん、この魔獣も食べられるけど?」


「いりませんっ!」






こらーっヴェル君!婦女子にゴ…の丸焼きを食せっと申すのかーっ!

8年前はまだ可愛かったな…

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