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斑-マダラ-  作者: 伶
2/2

2 奪われた日常

あまりの衝撃に、言葉を失う。

そんな経験は人生で何回あるのだろう。

わからない、でも、少なくとも私達は

経験することになったのだから。

—————————————

「結衣!!!」

「ゆいちょん!!!」

私達の声が病院に響き渡る。

過ぎ去っていく結衣の姿はまるで、愛李の電車を見送る時のように、向こうへ、向こうへと遠くなっていった。

—————————————

「結衣ー、ここどうしたらいいのー?」

私は結衣に問う。勉強は苦手だし、結衣に聞いた方が早いからだ。

「あー、ここはねー…。」

結衣の喋りは静かで心地よい。勉強などどうでもよくて、私は結衣の声が聞きたいのかもしれない。

「んじゃ、まったねー。」

「うん、また明日。」

私は結衣と別れるとゆっくりと空を見上げて歩く。今私は青春してるな。そう、実感していた。


「ゆいちょーん!」

「ちょっとなになにー!」

私はゆいちょんが大好きで、だから、いつも突進するし、くっつく。もちろん、クラスに仲のいい友達もいるけど、ゆいちょんと明音は特別だ。

「今日あそこ行こう!」

「うん、いいよ。」

ゆいちょんは私のお願いを何でも聞いてくれる。

そういう所も、大好きだった。

「それじゃまた明日。」

「うん!またねー!」

私は電車に乗り、遠くなっていくゆいちょんをずっと追っていた。


私はダンス部だから、あの二人とは放課後などにしか会えない。でも、だからこそその時間をより一層大切だと思う。

チームマダラと、私と愛李は勝手に呼んでいるが、この三人でいる事に喜びを感じるのだ。

「ねえねえ、なんでこのグループの名前チームマダラなの?」

結衣は私に聞いた。

「あー、それね、澤山のま、下田のだ、設楽のらを取ってまだら。」

「えー、なんでそんなとこ取ったの?」

「だって澤山下田設楽だったらさししになるじゃん!」

「SSSとかで良くない!?」

「あ、確かに…。」

盲点だった…と思った。

「いやでもマダラの方がなんかカッコつけてなくていいじゃん!」

「えー、SSSもカッコつけてるわけじゃないんだけど…。」

「それに、マダラには漢字もあるんだもん!”斑”って!」

「うーん…。」

納得しなさそうに眉をひそめる結衣も、また愛らしかった。


しかし、こんな日常が突然崩れるだなんて、誰が想像しただろう。


神は突然、私達から日常を奪った。


「あれー?ゆいちょんは?」

「さあ?何も連絡ないよ。」

帰りの待ち合わせの時間。いつもなら来るはずの結衣は来なかった。

「うーん、先帰っちゃったのかな?」

「結衣に限ってそれはないでしょ。」

「うーん、だよねぇ…。」

「もう少し、待ってみよう。」

それから十分、二十分、三十分と時が流れた。

「だめだ、帰ろう。」

「じゃあ、ゆいちょんにメッセージしとく!」

「うん、よろしく。」

「あ!そうだ!今度の土曜日お出かけしようよ!」

「うーん、空いてるかわからないけど、いいね。」

「じゃあ今度グループで聞くね!」

私達は会話しながら駅へ向かい、別れ、家へ帰った。


「おはよーう!」

「おはよう。」

「おはよう。」

朝、結衣の姿はあった。

「結衣昨日何してたの?先帰っちゃった?」

「ゆいちょん待ったんだけど時間合わなくて帰っちゃった!ごめんね!」

結衣は口を開いた。

「ああ、こちらこそごめん、連絡もなしに。ちょっと、忙しくてさ!」

「それならいいけど…!」

私は、何か突っかかる思いを感じた。

この時、詳しく聞いておくべきだった。


結衣に何があったのか、この時の私達には、知る由もなかった。

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